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発展編
さくら色の故郷 20
僕に話しかけてきたのは、高校の同級生だった。
高校3年の1年間だけ同じクラスで、名前は……確か篠崎だったよな。
「……篠崎か」
「おーそうだよ! 葉山とは卒業以来だな」
「そうだね」
10歳で大沼から函館にやって来てから、人と深く付き合ってこなかった僕には、故郷で友人らしい友人がいない。だから地元でこんな風に声をかけられるのは意外だった。
だが……その理由はすぐに分かった。
彼の背中から顔を覗かせた女性の顔に、息が止まりそうになった!
小柄で華奢な女の子。ヘアスタイルがボブに変わっていたがすぐに分かった。
「……瑞樹くん、お久しぶりね。私のこと分かる?」
「……みっ……美里《みさと》ちゃん?」
「びっくしたわ。こんな所であなたに会うなんて。いつこっちに戻ってきたの?」
「いや、帰省中で」
「えっまさか……その子……瑞樹くんのお子さんなの?」
「えっ」
彼女の視線が僕の向かいのブランコの席で、美味しそうにオムライスを頬張る芽生くんに注がれていた。
何と答えるべきか迷ったが、ここは心の声に正直に素直になろう。
「うん、そうだよ。血は繋がっていないけれども、僕の大切な子だよ」
「そうなんだ。ふぅん……よくわからないけれども、安心したわ」
美里ちゃんと僕は……高校時代に付き合っていた。高2の文化祭の後夜祭で告白され、勢いに押されたこともあり、付き合いだした仲だった。
と言っても……その……結局、キス止まりだったが。
僕は大学のために上京し、彼女は地元の短大に進学した。
遠距離になると上手く時間が合わず……数か月後、あっけなく僕はふられてしまった。
僕の方からの熱烈な恋愛ではなかったが、大切にしていたつもりだった。だから一方的に縁を切られてしまったのは、親しい人と縁遠かった僕を、当時かなり落ち込ませた。
その後、寮で隣室だった一馬に慰めてもらい、その場の勢いもあり、同性との恋に足を踏み入れた……という恋の変遷だ。もちろん一馬のことが好きだったから抱かれたのだけど……
あれこれと振り返って茫然としていると、美里ちゃんに笑われてしまった。
「くすっ、そんなに驚いた? 瑞樹くんは……今はとても元気そうで安心したわ」
「……ありがとう」
「あのね、実は私、今は篠崎くんと付き合っているのよ。それで秋に結婚することが決まったばかりなの。だから、こうやってあなたに直接報告出来て良かった、これもご縁なのかしらね。えっあら、やだ! 瑞樹くんってば連れが沢山いたのね。わっ……なっなんかごめんなさい! 私、変な話しちゃって!ごめんね。もう行くわ」
その時になってようやく宗吾さんや母や弟の存在に気がついてくれたようだった。僕の隣の宗吾さんがジドっと僕を見つめているのを感じた。
「えっ」
「ほら、篠崎くん、もう行こう!」
「あのっ……待って! 」
美里ちゃんが篠崎の背中を押して店から出て行こうとしたので、慌てて呼び止めた。
次いつ会えるか分からない。だから後悔のないようにしたい。
伝えたい言葉は今……伝えておきたい!
「な、に?」
「ありがとう。美里ちゃんには、幸せになって欲しい」
「……あっ、ありがとう。私こそ、あの時はごめんね」
「いや、大丈夫だよ」
「うん、そうみたいね。瑞樹くん、あの頃よりずっと幸せそうに笑っているもの」
「そうかな?」
「もうすっかり、いいパパね。篠崎くんもいずれ見習ってよ~じゃあまたいつか」
「うん、また……いつか!」
一陣の風のように、二人はあっという間に消えていった。
こんなフルメンバーで揃っている時に元彼女と再会するなんて、なんの因果かと最初は思ったけれども……美里ちゃんの最後の言葉に救われた。
(もうすっかり、いいパパね……)
正確には……僕はママにもパパにもなれないけれども、なんだか無性に嬉しかった。
そんな風に見えたことが、嬉しかった。
「瑞樹……今の……」
宗吾さんの低い声が響く。
もしかして怒られる? 覚悟を決めたが、彼は何もかも察してくれたのか、僕の頭を小さな子供みたいにクシャッと撫でて笑ってくれた。
「すっかりパパ業が板についたなぁ」
「えっそんな……」
「よかったな」
「……はい」
「幸せそうと言ってもらえて、俺も嬉しかったぞ」
「はい!」
僕が笑うと、キョトンとしていた芽生くんも笑ってくれた。
「今の女の人……おにいちゃんのこと、ほめてくれていたねぇ」
「そうだ。パパの瑞樹は最高だからな!」
「そっ宗吾さん……っ声が大きいですっ」
「ははっ」
あとがき(不要な方はスルーで)
****
志生帆海です。世の中が突然一変してしまいましたね。私は都内在住なのでとにかく人との接触を減らすために、二人の娘とお家籠りしています。仕事はテレワークになりました。
皆さん……いろんなお立場で過ごされていると思います。
お互い出来ることを頑張っていきたいですね。
そんな中、変わらず私の創作を読みにいらして下さってありがとうございます。
なかなか子供たちが同じ部屋にいる環境なので集中できませんが、「幸せな存在」は、
変わらずに毎日書き下ろしています。
細切れな時間の中で書いているので、校正推敲が行き届かず、誤字等すみません。
気が付いたら修正するようにしております
少しでも私の創作が、皆様のこの日常の癒しになればと願いを込めて。
ますます幸せ色に染まっていく瑞樹を応援していただけたら嬉しいです。
高校3年の1年間だけ同じクラスで、名前は……確か篠崎だったよな。
「……篠崎か」
「おーそうだよ! 葉山とは卒業以来だな」
「そうだね」
10歳で大沼から函館にやって来てから、人と深く付き合ってこなかった僕には、故郷で友人らしい友人がいない。だから地元でこんな風に声をかけられるのは意外だった。
だが……その理由はすぐに分かった。
彼の背中から顔を覗かせた女性の顔に、息が止まりそうになった!
小柄で華奢な女の子。ヘアスタイルがボブに変わっていたがすぐに分かった。
「……瑞樹くん、お久しぶりね。私のこと分かる?」
「……みっ……美里《みさと》ちゃん?」
「びっくしたわ。こんな所であなたに会うなんて。いつこっちに戻ってきたの?」
「いや、帰省中で」
「えっまさか……その子……瑞樹くんのお子さんなの?」
「えっ」
彼女の視線が僕の向かいのブランコの席で、美味しそうにオムライスを頬張る芽生くんに注がれていた。
何と答えるべきか迷ったが、ここは心の声に正直に素直になろう。
「うん、そうだよ。血は繋がっていないけれども、僕の大切な子だよ」
「そうなんだ。ふぅん……よくわからないけれども、安心したわ」
美里ちゃんと僕は……高校時代に付き合っていた。高2の文化祭の後夜祭で告白され、勢いに押されたこともあり、付き合いだした仲だった。
と言っても……その……結局、キス止まりだったが。
僕は大学のために上京し、彼女は地元の短大に進学した。
遠距離になると上手く時間が合わず……数か月後、あっけなく僕はふられてしまった。
僕の方からの熱烈な恋愛ではなかったが、大切にしていたつもりだった。だから一方的に縁を切られてしまったのは、親しい人と縁遠かった僕を、当時かなり落ち込ませた。
その後、寮で隣室だった一馬に慰めてもらい、その場の勢いもあり、同性との恋に足を踏み入れた……という恋の変遷だ。もちろん一馬のことが好きだったから抱かれたのだけど……
あれこれと振り返って茫然としていると、美里ちゃんに笑われてしまった。
「くすっ、そんなに驚いた? 瑞樹くんは……今はとても元気そうで安心したわ」
「……ありがとう」
「あのね、実は私、今は篠崎くんと付き合っているのよ。それで秋に結婚することが決まったばかりなの。だから、こうやってあなたに直接報告出来て良かった、これもご縁なのかしらね。えっあら、やだ! 瑞樹くんってば連れが沢山いたのね。わっ……なっなんかごめんなさい! 私、変な話しちゃって!ごめんね。もう行くわ」
その時になってようやく宗吾さんや母や弟の存在に気がついてくれたようだった。僕の隣の宗吾さんがジドっと僕を見つめているのを感じた。
「えっ」
「ほら、篠崎くん、もう行こう!」
「あのっ……待って! 」
美里ちゃんが篠崎の背中を押して店から出て行こうとしたので、慌てて呼び止めた。
次いつ会えるか分からない。だから後悔のないようにしたい。
伝えたい言葉は今……伝えておきたい!
「な、に?」
「ありがとう。美里ちゃんには、幸せになって欲しい」
「……あっ、ありがとう。私こそ、あの時はごめんね」
「いや、大丈夫だよ」
「うん、そうみたいね。瑞樹くん、あの頃よりずっと幸せそうに笑っているもの」
「そうかな?」
「もうすっかり、いいパパね。篠崎くんもいずれ見習ってよ~じゃあまたいつか」
「うん、また……いつか!」
一陣の風のように、二人はあっという間に消えていった。
こんなフルメンバーで揃っている時に元彼女と再会するなんて、なんの因果かと最初は思ったけれども……美里ちゃんの最後の言葉に救われた。
(もうすっかり、いいパパね……)
正確には……僕はママにもパパにもなれないけれども、なんだか無性に嬉しかった。
そんな風に見えたことが、嬉しかった。
「瑞樹……今の……」
宗吾さんの低い声が響く。
もしかして怒られる? 覚悟を決めたが、彼は何もかも察してくれたのか、僕の頭を小さな子供みたいにクシャッと撫でて笑ってくれた。
「すっかりパパ業が板についたなぁ」
「えっそんな……」
「よかったな」
「……はい」
「幸せそうと言ってもらえて、俺も嬉しかったぞ」
「はい!」
僕が笑うと、キョトンとしていた芽生くんも笑ってくれた。
「今の女の人……おにいちゃんのこと、ほめてくれていたねぇ」
「そうだ。パパの瑞樹は最高だからな!」
「そっ宗吾さん……っ声が大きいですっ」
「ははっ」
あとがき(不要な方はスルーで)
****
志生帆海です。世の中が突然一変してしまいましたね。私は都内在住なのでとにかく人との接触を減らすために、二人の娘とお家籠りしています。仕事はテレワークになりました。
皆さん……いろんなお立場で過ごされていると思います。
お互い出来ることを頑張っていきたいですね。
そんな中、変わらず私の創作を読みにいらして下さってありがとうございます。
なかなか子供たちが同じ部屋にいる環境なので集中できませんが、「幸せな存在」は、
変わらずに毎日書き下ろしています。
細切れな時間の中で書いているので、校正推敲が行き届かず、誤字等すみません。
気が付いたら修正するようにしております
少しでも私の創作が、皆様のこの日常の癒しになればと願いを込めて。
ますます幸せ色に染まっていく瑞樹を応援していただけたら嬉しいです。
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