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成就編
深まる絆 6
「おばーちゃん、メイだよー 」
「まぁ芽生。来てくれたの? 」
「こんばんは! 」
「瑞樹くんが連れて来てくれたのね」
「はい! 」
お母さん、すっかり元気そうだ。本当によかった。
僕たちが玄関に立つと、ちょうど塀の向こうの庭にお母さんの姿が見えたので、ホッとした。
「さぁさぁ入って頂戴」
「はい。あの……庭のお手入れをしにきました」
「まぁお仕事で疲れているのに悪いわね」
「いえ、僕がやりたいので」
「ありがとう。じゃあ、とりあえずおやつを食べましょう」
「わーい! オナカペコペコ」
確かにもう18時過ぎだもんな。
本当は出社前に早起きして寄れたらいいのに、なかなか時間が取れなくて……もう辺りは暗くなってしまったが、お母さんの庭の様子を見てあげたい。
「さぁさぁ手を洗って、おやつにしましょう」
「はーい! 」
芽生くんは青いスニーカーをポイポイっと脱ぎ捨てて、廊下を走って行ってしまった。
宗吾さんのマンションだと『ちゃんと揃えようね』と言うけれども、今日はいいよね。
僕がしゃがんで、そっと向きを直してあげた。
小さな軽い靴に触れた時、突然、胸の奥が切なくなった。亡くなった弟のことをふいに思い出したのだ。夏樹もこんな色の靴を持っていたな。いつも玄関で脱ぎ散らかすから、僕がこっそり揃えてあげていた。
「……瑞樹くん? 大丈夫?」
僕の様子を気にして、お母さんが背中に手をあててくれた。その温もりが、今は嬉しい。
「あ……すみません」
「謝らないの。もう、あなたって子は」
「すみません。あっまた!」
「……何か思い出したのね」
「……はい……亡くなった弟のことを少し」
「そうなのね。こっちにいらっしゃい」
お母さんが縁側に案内してくれると、秋の風物詩、金木犀の甘い香りが風に乗ってふわりと漂ってきた。
「あ、金木犀の香り……」
「そうよ。庭の奥に植わっているのよ。この時期ならではの、ご褒美よね」
「ここからでも十分香りを楽しめますね。そう言えば北海道では金木犀は越冬するのは難しく、野外ではなかなか植生されていませんでした。だからより貴重に感じます。本当にいい香りです」
葉の付け根にオレンジ色の小さな花を密集して咲かせ、咲き始めは鮮やかなオレンジ色をし、徐々に色が薄くなり散っていく儚い花だが、その存在感は大きい。
すうっと甘い香りを吸い込むと、気持ちがいくらか落ち着いてきた。
「そうそう、深呼吸して。金木犀の香りには、鎮静効果があるのよ」
「確かにリラックスします。開花時期が5日程度なので、どこか儚い印象ですが」
「そうね。でもこんなに小さい花なのに、こんなに強く香りを発して、存在感があるわ」
「確かに」
お母さんの言葉にハッとした。視点を変えれば、確かにそうだ。
「あなたの弟さんも短い生涯だったけど、存在感は薄れないのよ。定期的に思い出してしまうのは、悪いことじゃないわ。楽しかった思い出を、たまに思い出してあげましょうね」
「お母さん……」
僕の心のもやもやしたものを、いつも宗吾さんのお母さんはこうやって掬い取ってくれる。
大好きだ……本当に。
「甘えていいのよ。あなたはもっと……私に」
「僕はお母さんが大好きです」
「ふふ、ありがとう。私は金木犀の香りを嗅ぐと、息子たちが通った小学校への通学路に植わっていたのを思い出すわ。この時期はいつも運動会で……懐かしいわね。そうだ、宗吾の小学校の頃の写真を見る? とっても可愛いのがあるのよ」
宗吾さんの?
それは僕にとって最高のご褒美だ。
彼はなかなか恥ずかしがって見せてくれないので、僕はたまにお母さんからこっそり見せてもらっている。
「絶対に、見たいです!」
「元気になってきたわね。じゃあ中に入っておやつにしましょうね」
「まぁ芽生。来てくれたの? 」
「こんばんは! 」
「瑞樹くんが連れて来てくれたのね」
「はい! 」
お母さん、すっかり元気そうだ。本当によかった。
僕たちが玄関に立つと、ちょうど塀の向こうの庭にお母さんの姿が見えたので、ホッとした。
「さぁさぁ入って頂戴」
「はい。あの……庭のお手入れをしにきました」
「まぁお仕事で疲れているのに悪いわね」
「いえ、僕がやりたいので」
「ありがとう。じゃあ、とりあえずおやつを食べましょう」
「わーい! オナカペコペコ」
確かにもう18時過ぎだもんな。
本当は出社前に早起きして寄れたらいいのに、なかなか時間が取れなくて……もう辺りは暗くなってしまったが、お母さんの庭の様子を見てあげたい。
「さぁさぁ手を洗って、おやつにしましょう」
「はーい! 」
芽生くんは青いスニーカーをポイポイっと脱ぎ捨てて、廊下を走って行ってしまった。
宗吾さんのマンションだと『ちゃんと揃えようね』と言うけれども、今日はいいよね。
僕がしゃがんで、そっと向きを直してあげた。
小さな軽い靴に触れた時、突然、胸の奥が切なくなった。亡くなった弟のことをふいに思い出したのだ。夏樹もこんな色の靴を持っていたな。いつも玄関で脱ぎ散らかすから、僕がこっそり揃えてあげていた。
「……瑞樹くん? 大丈夫?」
僕の様子を気にして、お母さんが背中に手をあててくれた。その温もりが、今は嬉しい。
「あ……すみません」
「謝らないの。もう、あなたって子は」
「すみません。あっまた!」
「……何か思い出したのね」
「……はい……亡くなった弟のことを少し」
「そうなのね。こっちにいらっしゃい」
お母さんが縁側に案内してくれると、秋の風物詩、金木犀の甘い香りが風に乗ってふわりと漂ってきた。
「あ、金木犀の香り……」
「そうよ。庭の奥に植わっているのよ。この時期ならではの、ご褒美よね」
「ここからでも十分香りを楽しめますね。そう言えば北海道では金木犀は越冬するのは難しく、野外ではなかなか植生されていませんでした。だからより貴重に感じます。本当にいい香りです」
葉の付け根にオレンジ色の小さな花を密集して咲かせ、咲き始めは鮮やかなオレンジ色をし、徐々に色が薄くなり散っていく儚い花だが、その存在感は大きい。
すうっと甘い香りを吸い込むと、気持ちがいくらか落ち着いてきた。
「そうそう、深呼吸して。金木犀の香りには、鎮静効果があるのよ」
「確かにリラックスします。開花時期が5日程度なので、どこか儚い印象ですが」
「そうね。でもこんなに小さい花なのに、こんなに強く香りを発して、存在感があるわ」
「確かに」
お母さんの言葉にハッとした。視点を変えれば、確かにそうだ。
「あなたの弟さんも短い生涯だったけど、存在感は薄れないのよ。定期的に思い出してしまうのは、悪いことじゃないわ。楽しかった思い出を、たまに思い出してあげましょうね」
「お母さん……」
僕の心のもやもやしたものを、いつも宗吾さんのお母さんはこうやって掬い取ってくれる。
大好きだ……本当に。
「甘えていいのよ。あなたはもっと……私に」
「僕はお母さんが大好きです」
「ふふ、ありがとう。私は金木犀の香りを嗅ぐと、息子たちが通った小学校への通学路に植わっていたのを思い出すわ。この時期はいつも運動会で……懐かしいわね。そうだ、宗吾の小学校の頃の写真を見る? とっても可愛いのがあるのよ」
宗吾さんの?
それは僕にとって最高のご褒美だ。
彼はなかなか恥ずかしがって見せてくれないので、僕はたまにお母さんからこっそり見せてもらっている。
「絶対に、見たいです!」
「元気になってきたわね。じゃあ中に入っておやつにしましょうね」
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