495 / 1,871
成就編
深まる絆 31
マイム・マイムか……
去年は宗吾さんが海外出張中だったので、僕がこの時間だけ飛び入りして芽生くんと踊ったんだ。あの日から1年も経つなんて、早いな。
「親子でダンスか、瑞樹が踊ってこいよ」
「いいえ。今年は宗吾さんが躍って下さい。僕は去年踊りましたから、今年は写真係になります」
「……そうか、本当にいいのか」
「はい! 是非そうして欲しいです」
宗吾さんは一瞬躊躇した様子だったが、努めて明るく送り出した。宗吾さんにとって最初で最後の幼稚園の運動会だ。去年の僕の感動を、彼にも味わって欲しい。
「芽生、今年はパパと踊るか」
「うん、いいよ。でもお兄ちゃんは」
「あっちで写真を撮ってくれているよ」
「おにいちゃーん!! 見ていてね」
芽生くんが弾ける笑顔で小さな手をブンブンと振ってくれる。それだけで心がぽっと温まるよ。やがて音楽が流れ出すと、目の前の光景が、まるで去年のように見えて眩しかった。
園児がお父さんやお母さんと手を握って輪になって、時計回りにステップを踏んでいく。
くすっ、宗吾さんもノリノリだ。
大きな動きに芽生くんがぶらさがっているみたい。
可愛い──
シャッターボタンを夢中で押していた。
『マイム・マイム・マイム マイムベッサンソン……』
やがて僕の前で二人は立ち止まりステップを踏み、手を叩き合ってラストを迎えた。
どこまでも和やかで明るい光景に、心から感激してしまった。
そういえば去年『マイム・マイム』は、どこの国の言葉なのか、芽生くんと話したな。ヘブライ語でマイムが『水』でベッサンソンが『喜びの中』だから、水が出て喜んでいるという内容の歌だったね。
あの日、芽生くんと宗吾さんの水になりたいと願った夢は叶った。
今の僕は二人と生活を共にして、家族の一員として過ごさせてもらっている。ずっと欲しかった僕だけの家族を手に入れたのだ。
だから今の僕にとっての水は、宗吾さんと芽生くんの存在だ。
「瑞樹こっちこっち」
「はい? 」
「瑞樹くん、行っておいで」
宗吾さんに手招きされたので、一眼レフを憲吾さんに預けて駆け寄った。
「どうしたんですか」
「いいから、早く来い」
続いてアナウンスが入った。
『これより保護者の方が、おんぶしての退場になります』
「え……もしかして、僕が?」
「そうだ。芽生はすぐに大きくなる。瑞樹がいつまでおんぶ出来るか分からないから、今日は君がしてやってくれ」
秋祭りでは靴擦れしてしまった芽生くんを、宗吾さんが背負った。
親子らしい光景が逞しくも、実は少しだけ……羨ましかったんだ。
宗吾さんはいつだって僕にサプライズをくれる。
予想外想定外のことは、僕の人生に於いて不吉で不要だと思っていたが、宗吾さんがくれるサプライズは嬉しいことばかり。
もう、この人は……本当にいつも最高だ。
「あ、あの……僕が背負っても?」
「あぁそうだ」
「おにいちゃん、早くしゃがんでー」
「うん! どうぞ、芽生くん! 」
背中にかかる芽生くんの重みは『幸せの重み』。
ありがとう……僕を信頼してくれて、本当にありがとう。
去年は宗吾さんが海外出張中だったので、僕がこの時間だけ飛び入りして芽生くんと踊ったんだ。あの日から1年も経つなんて、早いな。
「親子でダンスか、瑞樹が踊ってこいよ」
「いいえ。今年は宗吾さんが躍って下さい。僕は去年踊りましたから、今年は写真係になります」
「……そうか、本当にいいのか」
「はい! 是非そうして欲しいです」
宗吾さんは一瞬躊躇した様子だったが、努めて明るく送り出した。宗吾さんにとって最初で最後の幼稚園の運動会だ。去年の僕の感動を、彼にも味わって欲しい。
「芽生、今年はパパと踊るか」
「うん、いいよ。でもお兄ちゃんは」
「あっちで写真を撮ってくれているよ」
「おにいちゃーん!! 見ていてね」
芽生くんが弾ける笑顔で小さな手をブンブンと振ってくれる。それだけで心がぽっと温まるよ。やがて音楽が流れ出すと、目の前の光景が、まるで去年のように見えて眩しかった。
園児がお父さんやお母さんと手を握って輪になって、時計回りにステップを踏んでいく。
くすっ、宗吾さんもノリノリだ。
大きな動きに芽生くんがぶらさがっているみたい。
可愛い──
シャッターボタンを夢中で押していた。
『マイム・マイム・マイム マイムベッサンソン……』
やがて僕の前で二人は立ち止まりステップを踏み、手を叩き合ってラストを迎えた。
どこまでも和やかで明るい光景に、心から感激してしまった。
そういえば去年『マイム・マイム』は、どこの国の言葉なのか、芽生くんと話したな。ヘブライ語でマイムが『水』でベッサンソンが『喜びの中』だから、水が出て喜んでいるという内容の歌だったね。
あの日、芽生くんと宗吾さんの水になりたいと願った夢は叶った。
今の僕は二人と生活を共にして、家族の一員として過ごさせてもらっている。ずっと欲しかった僕だけの家族を手に入れたのだ。
だから今の僕にとっての水は、宗吾さんと芽生くんの存在だ。
「瑞樹こっちこっち」
「はい? 」
「瑞樹くん、行っておいで」
宗吾さんに手招きされたので、一眼レフを憲吾さんに預けて駆け寄った。
「どうしたんですか」
「いいから、早く来い」
続いてアナウンスが入った。
『これより保護者の方が、おんぶしての退場になります』
「え……もしかして、僕が?」
「そうだ。芽生はすぐに大きくなる。瑞樹がいつまでおんぶ出来るか分からないから、今日は君がしてやってくれ」
秋祭りでは靴擦れしてしまった芽生くんを、宗吾さんが背負った。
親子らしい光景が逞しくも、実は少しだけ……羨ましかったんだ。
宗吾さんはいつだって僕にサプライズをくれる。
予想外想定外のことは、僕の人生に於いて不吉で不要だと思っていたが、宗吾さんがくれるサプライズは嬉しいことばかり。
もう、この人は……本当にいつも最高だ。
「あ、あの……僕が背負っても?」
「あぁそうだ」
「おにいちゃん、早くしゃがんでー」
「うん! どうぞ、芽生くん! 」
背中にかかる芽生くんの重みは『幸せの重み』。
ありがとう……僕を信頼してくれて、本当にありがとう。
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
キミと2回目の恋をしよう
なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。
彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。
彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。
「どこかに旅行だったの?」
傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。
彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。
彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが…
彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
僕の幸せは
春夏
BL
【完結しました】
【エールいただきました。ありがとうございます】
【たくさんの“いいね”ありがとうございます】
【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】
恋人に捨てられた悠の心情。
話は別れから始まります。全編が悠の視点です。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。