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成就編
恋満ちる 21
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「ハンカチ以外にも書いたぞ。まだ気付いていないのか」
「えぇっ、他にもあるんですか」
「宝探しみたいだろう? 」
「そうですね」
宗吾さんは茶目っ気がある……でも、そんなに胸を張って言わなくても。僕も面白おかしくなって、クスクスと笑ってしまった。
「まぁ……俺からの愛だ」
「まったく宗吾さんには敵いません。とにかく、もう起きて下さいね」
「了解。芽生ーごめんなぁ。午後は公園にでも行くか」
「うん! 」
和やかな空気に包まれたまま、電話を終えた。
それから僕の荷物をひっくり返すと、肌着と部屋着にも、ご丁寧に名前が記入されていた。
小学校の修学旅行ではないのに……と、苦笑してしまった。
最後に芽生くんが書いてくれたパンツを取り出した。たどたどしいひらがなの『みずき印』に、ほっこりしてしまった。しかし、何度見てもバッテン印の位置が絶妙だ。
パンツを広げて一人でニヤニヤしていると、いきなり金森が戻ってきたので、慌てて荷物をかき集めた。
「あれー葉山先輩、何してんですか。手に何か持って? 」
「い、いや……何でもない。その……先に風呂の準備を」
「流石、段取りがいいですねぇ。そうだ、それより大変ですよ」
「な、何かな? 」
「山田さんが呼んでいました」
「何だろう? 」
「俺、滅茶苦茶、楽しみにしています」
「は? 」
首を傾げながら急いで山田さんの元に向かうと、とんでもない提案をされてしまった。
「え? 何でまた……僕が女装を⁉ 」
新入社員の余興でした経験は確かにある。もう今回は免れたと思っていたのに、何故?
というか……最初から仕組まれていたのかもしれない。衣装も何故か僕の分まで準備されているし。
「ねねね、お願い! みずきちゃんなら似合うし……人助けだと思って……この通り」
「ですが、今回の余興は新人だけだって」
「みずきちゃんがいないと『華』が足りないのよ、お願い」
山田さん……電車の中でのいい人はどこへ? 今はすっかり『みずきちゃん』呼びだし、しかもソレ理由になっていないですよと……突っ込みたくなった。
「なになに? 女装。お? 俺らも、またやっていいんですか。みずきちゃんがやるなら、俺もやりたいな」
「菅野ぉ……聞いてくれよ」
菅野に泣きつこうと思ったが、駄目だ。彼はノリノリだ。
「まぁそう堅苦しく考えんなよ。すでに一度やった仲じゃないか」
「うう……でも宗吾さんに言えないよ」
「それな。黙っといてやる。それに俺も一緒ならこわくないよな」
ムードメーカーの菅野が一緒なら、確かに場が盛り上がり、楽しいひと時かも? 僕って流されやすいのかな。
「仕方がないですね。付き合いますよ……部署の皆さんにはお世話になっていますし」
「やったぁ♡ あ、菅野君もよろしくね!」
「なんか、俺はついで感、半端ないっすね」
****
「公園……にでも、行くか~」
「もう、パパってば、テンションさがりすぎ」
「そうだよな。以前は、こうやってお前とふたりで週末を過ごしていたのに。瑞樹のいる華やいだ生活に慣れてしまったんだなぁ……」
「パパがそんなんじゃ、ボクだって……おにいちゃんにあいたくなるよ。くすん……」
「パパも会いたいよ」
芽生としんみりしていると、母がひょっこりと顔を出してくれた。母も最近はすっかり元気になって良かったよ。夏にいきなり倒れた時は焦ったが……
「あら? 今日は瑞樹くん、いないの? いつも家族でべったりなのに珍しいわね」
「あぁ……今日から社員旅行で、もう出掛けた」
「まぁどこに? 」
「箱根だ。強羅の温泉ホテルに1泊だそうだ」
「まぁ~いいわね。この季節の箱根は紅葉も始まって素敵でしょうね。お父さんが生きていた頃は、車で、よく週末にふらっと連れて行ってもらったのに……今年は夏も旅行出来なかったし、あーあ、つまらないわ」
つまらない……その一言にピンと来た。
「そうか! なぁ母さんもつまらないのか。なぁ、俺が運転するから、今から箱根に行かないか」
「え! 宗吾ってば、何を言いだすの? あぁなるほど……瑞樹くんに会いたいのね」
「ち、違うよ。たまたま思いついたんだ。母さんを外に連れ出してやりたい。箱根なら、3時間もあれば着くだろう」
「そうねぇ。夕食は向こうで温泉に入ってからの部屋食もいいわね。行っちゃう? 」
「いくいくー! おばあちゃんと旅行できるの、うれしいよ」
芽生もピョンピョン跳ねて、大喜びだ。
「そうだ、確か瑞樹が泊まる宿は、母さんが会員権を持っているリゾートホテルだったぞ。あそこなら広いから、当日、空きがあるかも」
「分かったわ! すぐに電話するわ」
母さんもノリノリだな。こういう面では二人とも行動が速い。お互いに『善は急げ』タイプなので、息があう。
そんなわけで、俺達はそれから1時間後には箱根に向かう車中にいた。
「しゅっぱつしんこーう! ボクたちもいざ『はこね』へー」
「まさか今日、息子と孫と旅行出来るなんて。おばあちゃんは幸せよ」
「母さん、俺たち、親孝行出来ているか」
「えぇ、宗吾、ありがとう」
『いざ、瑞樹の元へ』と言うのは控えないとな。
今回はそっと見守るだけで、瑞樹には見つからないようにするつもりだ。
瑞樹の社員旅行の邪魔をするつもりは毛頭ないので、安心してくれ。
瑞樹は瑞樹で、今回は楽しんでくれよ。
俺たちも、親孝行旅行を楽しむからな。
と、自分に言い聞かせておいた。
「えぇっ、他にもあるんですか」
「宝探しみたいだろう? 」
「そうですね」
宗吾さんは茶目っ気がある……でも、そんなに胸を張って言わなくても。僕も面白おかしくなって、クスクスと笑ってしまった。
「まぁ……俺からの愛だ」
「まったく宗吾さんには敵いません。とにかく、もう起きて下さいね」
「了解。芽生ーごめんなぁ。午後は公園にでも行くか」
「うん! 」
和やかな空気に包まれたまま、電話を終えた。
それから僕の荷物をひっくり返すと、肌着と部屋着にも、ご丁寧に名前が記入されていた。
小学校の修学旅行ではないのに……と、苦笑してしまった。
最後に芽生くんが書いてくれたパンツを取り出した。たどたどしいひらがなの『みずき印』に、ほっこりしてしまった。しかし、何度見てもバッテン印の位置が絶妙だ。
パンツを広げて一人でニヤニヤしていると、いきなり金森が戻ってきたので、慌てて荷物をかき集めた。
「あれー葉山先輩、何してんですか。手に何か持って? 」
「い、いや……何でもない。その……先に風呂の準備を」
「流石、段取りがいいですねぇ。そうだ、それより大変ですよ」
「な、何かな? 」
「山田さんが呼んでいました」
「何だろう? 」
「俺、滅茶苦茶、楽しみにしています」
「は? 」
首を傾げながら急いで山田さんの元に向かうと、とんでもない提案をされてしまった。
「え? 何でまた……僕が女装を⁉ 」
新入社員の余興でした経験は確かにある。もう今回は免れたと思っていたのに、何故?
というか……最初から仕組まれていたのかもしれない。衣装も何故か僕の分まで準備されているし。
「ねねね、お願い! みずきちゃんなら似合うし……人助けだと思って……この通り」
「ですが、今回の余興は新人だけだって」
「みずきちゃんがいないと『華』が足りないのよ、お願い」
山田さん……電車の中でのいい人はどこへ? 今はすっかり『みずきちゃん』呼びだし、しかもソレ理由になっていないですよと……突っ込みたくなった。
「なになに? 女装。お? 俺らも、またやっていいんですか。みずきちゃんがやるなら、俺もやりたいな」
「菅野ぉ……聞いてくれよ」
菅野に泣きつこうと思ったが、駄目だ。彼はノリノリだ。
「まぁそう堅苦しく考えんなよ。すでに一度やった仲じゃないか」
「うう……でも宗吾さんに言えないよ」
「それな。黙っといてやる。それに俺も一緒ならこわくないよな」
ムードメーカーの菅野が一緒なら、確かに場が盛り上がり、楽しいひと時かも? 僕って流されやすいのかな。
「仕方がないですね。付き合いますよ……部署の皆さんにはお世話になっていますし」
「やったぁ♡ あ、菅野君もよろしくね!」
「なんか、俺はついで感、半端ないっすね」
****
「公園……にでも、行くか~」
「もう、パパってば、テンションさがりすぎ」
「そうだよな。以前は、こうやってお前とふたりで週末を過ごしていたのに。瑞樹のいる華やいだ生活に慣れてしまったんだなぁ……」
「パパがそんなんじゃ、ボクだって……おにいちゃんにあいたくなるよ。くすん……」
「パパも会いたいよ」
芽生としんみりしていると、母がひょっこりと顔を出してくれた。母も最近はすっかり元気になって良かったよ。夏にいきなり倒れた時は焦ったが……
「あら? 今日は瑞樹くん、いないの? いつも家族でべったりなのに珍しいわね」
「あぁ……今日から社員旅行で、もう出掛けた」
「まぁどこに? 」
「箱根だ。強羅の温泉ホテルに1泊だそうだ」
「まぁ~いいわね。この季節の箱根は紅葉も始まって素敵でしょうね。お父さんが生きていた頃は、車で、よく週末にふらっと連れて行ってもらったのに……今年は夏も旅行出来なかったし、あーあ、つまらないわ」
つまらない……その一言にピンと来た。
「そうか! なぁ母さんもつまらないのか。なぁ、俺が運転するから、今から箱根に行かないか」
「え! 宗吾ってば、何を言いだすの? あぁなるほど……瑞樹くんに会いたいのね」
「ち、違うよ。たまたま思いついたんだ。母さんを外に連れ出してやりたい。箱根なら、3時間もあれば着くだろう」
「そうねぇ。夕食は向こうで温泉に入ってからの部屋食もいいわね。行っちゃう? 」
「いくいくー! おばあちゃんと旅行できるの、うれしいよ」
芽生もピョンピョン跳ねて、大喜びだ。
「そうだ、確か瑞樹が泊まる宿は、母さんが会員権を持っているリゾートホテルだったぞ。あそこなら広いから、当日、空きがあるかも」
「分かったわ! すぐに電話するわ」
母さんもノリノリだな。こういう面では二人とも行動が速い。お互いに『善は急げ』タイプなので、息があう。
そんなわけで、俺達はそれから1時間後には箱根に向かう車中にいた。
「しゅっぱつしんこーう! ボクたちもいざ『はこね』へー」
「まさか今日、息子と孫と旅行出来るなんて。おばあちゃんは幸せよ」
「母さん、俺たち、親孝行出来ているか」
「えぇ、宗吾、ありがとう」
『いざ、瑞樹の元へ』と言うのは控えないとな。
今回はそっと見守るだけで、瑞樹には見つからないようにするつもりだ。
瑞樹の社員旅行の邪魔をするつもりは毛頭ないので、安心してくれ。
瑞樹は瑞樹で、今回は楽しんでくれよ。
俺たちも、親孝行旅行を楽しむからな。
と、自分に言い聞かせておいた。
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