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成就編
聖なる夜に 18
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「ただいま……あれ?」
僕が帰宅したのに気づかない程、二人はキッチンで丸鶏の虜になっていた。だから背後からそっと近づいて様子を見守ってみた。一体、何をしているのかな。
芽生くんの子供らしい素朴な質問に答える宗吾さんのニタついた表情と、鶏肉の足をギュッと縛る様子にピンときてしまった。(あぁぁ、ピンとなんて来なくていいのに……やっぱり僕もヘンタイの一味になってしまったのか)
彼の脳内が薔薇色に染まっているのが、手に取るように分かった。
僕は『芽生くんがいるのですから、そんな卑猥な妄想はやめてください』と注意すべきなのに、何故か『そんなところも……嫌では、ないんですよ。宗吾さんのいろんな面が満遍なく好きですよ』なんて、彼に甘く答えてしまう始末だった。(もうダメだ……終わってる)
僕たち、聖なる夜に、相応しくない妄想をしすぎだ。
宗吾さんの壮大な大人な妄想に苦笑してしまった。すると一瞬、殊勝になったかと思えば、今度は宗吾さんの手足を、僕がたこ糸で縛るだって!?
そ、それは、絶対にあり得ないよ! 想像が追いつかない!
「くくっ、あはっ。もうやめてください。笑いすぎて……涙が」
肩を揺らし腹の底から笑ったら、すっきりした。
やっぱり僕は、宗吾さんの影響を受けまくりだ!
芽生くんが、百面相している僕を見上げて、目を丸くしていた。
「芽生くん? どうしたの?」
「あ、あのねっ、おにいちゃんが、おおきなお口でわらうの、いいね! たのしいって、いいね」
「そ、そうかな? うん、そうかも……」
「さぁ瑞樹も、手を洗って着替えてこいよ」
「はい!」
着替えのため自室のクローゼットを開けると、先日銀座で購入したクリスマスプレゼントの紙袋が目に入った。函館と、軽井沢には、宅配便で今日届くように送ってもらった。
もう、届いた頃だろう。
中を見てくれたかな……気に入ってもらえたかな。
宗吾さんのお母さんと、憲吾さんと美智さんには、明日、芽生くんと一緒に直接届ける予定だ。
「お待たせしました。僕も手伝います!」
そのタイミングで、軽井沢の潤からお礼の電話があった。
潤の声から、人恋しさが募っているのが伝わってきた。だから軽井沢に誘われた時、即答してしまった。
あの潤が、しおらしく……僕を兄として頼ってくれたのが嬉しくて――
あの事件に巻き込まれた暗い思い出の残る、軽井沢に行く。
本当に行けるのか――。
宗吾さんの心配は尤もだが、行きたかった。純粋に潤の元に行ってみたいと、素直に伝えると、納得してくれたようだった。
宗吾さんと芽生くんが傍にいてくれるから、怖くはない。
いつか通過しないとならない道ならば、このタイミングで最愛の人と行こう!
潤との電話を切った途端、今度は宅配便が届いた。
「忙しいな。今度は、俺が出るよ」
「はい」
「ねーねー、おにいちゃんも、ペタペタぬる?」
「何を?」
「あのねぇ、オリーブオイルって、お肉にぬるといいんだって」
「へ、へぇ」
「トリさんのおはだがつやつやで、スベスベだよ」
こっ、これはまずい。どうか……宗吾さんが夜……変なことを思いつきませんように! 練乳の再来は避けたい!
「おーい、これ、瑞樹宛の荷物だぞ」
「えっ、誰からですか」
宗吾さんが抱えているダンボール箱には、見慣れた文字が書かれていた。
「あ……、母からです」
「みたいだな。早速、開けてみたら、どうだ?」
「はい!」
中身は、函館の母からのクリスマスプレゼントだった。
この時期の花屋は繁忙期で忙しいのに、こんな風に荷物を送ってくれるなんて……今まで滅多になかったので、驚いてしまった。
「何だろう? 包みが3つ入っているぞ」
「きっと宗吾さんと芽生くんの分ですね」
「おー! うれしいな」
「おにいちゃん、あけてもいい?」
3人でツリーの柄のラッピングを開けると、なんと中身は『白いパンツ』だった!
……
瑞樹、メリークリスマス!
元気にしているかしら。
今頃、家族で仲良くクリスマスパーティーをしているのでしょうね。
これはささやかな私からのプレゼント。といっても、母さんはお洒落なお店なんてわからないから、こんな実用的なもので、ごめんね。肌着類はいくらあっても困らないでしょう? 新年には、新しいものを身につけるものよ。
また函館にも帰ってらっしゃい。皆で仲良くね。
函館の母より
……
「ははは、お母さんよく分かっているなぁ。そうなんだよ。俺たちには、とにかく数が必要なんだよなぁ。特に瑞樹のが」
「そ、宗吾さんは、もうっ――」
「おにいちゃん、パンツうれしいね。ボクのね、さいきん、ちょっときつかったんだ」
「そうだったの? ごめんね。そうかぁ……背がまた伸びたもんね。子供の成長は早いね」
「ねーね、また、おなまえをかいてあげるよ」
わっ! 社員旅行での『み×き印』のパンツ騒動を思い出し、赤面してしまった。芽生くんが書いてくれた文字の部分を宗吾さんに撫でられた時は、背徳感が半端なかった。
「えーっと、とりあえず今度にしようか。そろそろチキンが焼けるしね」
「あ、そうだーお肉さん、こんがりやけたかな。きっとおいしいだろうなぁ。よだれがでちゃうね」
「おう!」
オーブンに向かって前のめりな宗吾さんと芽生くんの後ろ姿を、微笑ましく見つめた。
今年は、賑やかで明るい楽しいクリスマスだ。
子供の頃のクリスマスを思い出す。
あれは夏樹と過ごしたラストクリスマスだったのか。
雪の積もった草原を、一緒に走り回ったのは……。
『夏樹、おいで! 走ろう』
『うん、お兄ちゃん、クリスマスって、ウキウキするね~」
後でお母さんにお礼の電話をしよう。広樹兄さんとも話したいし。
「瑞樹、後でなく、今、電話しろよ。皆、君の声を早く聞きたいと、待っているよ」
まるで……僕の心の声が聞こえたかのようだ。
宗吾さんは、いつも僕をいい方向に導いてくれる。
「はい、そうしてみます!」
僕が帰宅したのに気づかない程、二人はキッチンで丸鶏の虜になっていた。だから背後からそっと近づいて様子を見守ってみた。一体、何をしているのかな。
芽生くんの子供らしい素朴な質問に答える宗吾さんのニタついた表情と、鶏肉の足をギュッと縛る様子にピンときてしまった。(あぁぁ、ピンとなんて来なくていいのに……やっぱり僕もヘンタイの一味になってしまったのか)
彼の脳内が薔薇色に染まっているのが、手に取るように分かった。
僕は『芽生くんがいるのですから、そんな卑猥な妄想はやめてください』と注意すべきなのに、何故か『そんなところも……嫌では、ないんですよ。宗吾さんのいろんな面が満遍なく好きですよ』なんて、彼に甘く答えてしまう始末だった。(もうダメだ……終わってる)
僕たち、聖なる夜に、相応しくない妄想をしすぎだ。
宗吾さんの壮大な大人な妄想に苦笑してしまった。すると一瞬、殊勝になったかと思えば、今度は宗吾さんの手足を、僕がたこ糸で縛るだって!?
そ、それは、絶対にあり得ないよ! 想像が追いつかない!
「くくっ、あはっ。もうやめてください。笑いすぎて……涙が」
肩を揺らし腹の底から笑ったら、すっきりした。
やっぱり僕は、宗吾さんの影響を受けまくりだ!
芽生くんが、百面相している僕を見上げて、目を丸くしていた。
「芽生くん? どうしたの?」
「あ、あのねっ、おにいちゃんが、おおきなお口でわらうの、いいね! たのしいって、いいね」
「そ、そうかな? うん、そうかも……」
「さぁ瑞樹も、手を洗って着替えてこいよ」
「はい!」
着替えのため自室のクローゼットを開けると、先日銀座で購入したクリスマスプレゼントの紙袋が目に入った。函館と、軽井沢には、宅配便で今日届くように送ってもらった。
もう、届いた頃だろう。
中を見てくれたかな……気に入ってもらえたかな。
宗吾さんのお母さんと、憲吾さんと美智さんには、明日、芽生くんと一緒に直接届ける予定だ。
「お待たせしました。僕も手伝います!」
そのタイミングで、軽井沢の潤からお礼の電話があった。
潤の声から、人恋しさが募っているのが伝わってきた。だから軽井沢に誘われた時、即答してしまった。
あの潤が、しおらしく……僕を兄として頼ってくれたのが嬉しくて――
あの事件に巻き込まれた暗い思い出の残る、軽井沢に行く。
本当に行けるのか――。
宗吾さんの心配は尤もだが、行きたかった。純粋に潤の元に行ってみたいと、素直に伝えると、納得してくれたようだった。
宗吾さんと芽生くんが傍にいてくれるから、怖くはない。
いつか通過しないとならない道ならば、このタイミングで最愛の人と行こう!
潤との電話を切った途端、今度は宅配便が届いた。
「忙しいな。今度は、俺が出るよ」
「はい」
「ねーねー、おにいちゃんも、ペタペタぬる?」
「何を?」
「あのねぇ、オリーブオイルって、お肉にぬるといいんだって」
「へ、へぇ」
「トリさんのおはだがつやつやで、スベスベだよ」
こっ、これはまずい。どうか……宗吾さんが夜……変なことを思いつきませんように! 練乳の再来は避けたい!
「おーい、これ、瑞樹宛の荷物だぞ」
「えっ、誰からですか」
宗吾さんが抱えているダンボール箱には、見慣れた文字が書かれていた。
「あ……、母からです」
「みたいだな。早速、開けてみたら、どうだ?」
「はい!」
中身は、函館の母からのクリスマスプレゼントだった。
この時期の花屋は繁忙期で忙しいのに、こんな風に荷物を送ってくれるなんて……今まで滅多になかったので、驚いてしまった。
「何だろう? 包みが3つ入っているぞ」
「きっと宗吾さんと芽生くんの分ですね」
「おー! うれしいな」
「おにいちゃん、あけてもいい?」
3人でツリーの柄のラッピングを開けると、なんと中身は『白いパンツ』だった!
……
瑞樹、メリークリスマス!
元気にしているかしら。
今頃、家族で仲良くクリスマスパーティーをしているのでしょうね。
これはささやかな私からのプレゼント。といっても、母さんはお洒落なお店なんてわからないから、こんな実用的なもので、ごめんね。肌着類はいくらあっても困らないでしょう? 新年には、新しいものを身につけるものよ。
また函館にも帰ってらっしゃい。皆で仲良くね。
函館の母より
……
「ははは、お母さんよく分かっているなぁ。そうなんだよ。俺たちには、とにかく数が必要なんだよなぁ。特に瑞樹のが」
「そ、宗吾さんは、もうっ――」
「おにいちゃん、パンツうれしいね。ボクのね、さいきん、ちょっときつかったんだ」
「そうだったの? ごめんね。そうかぁ……背がまた伸びたもんね。子供の成長は早いね」
「ねーね、また、おなまえをかいてあげるよ」
わっ! 社員旅行での『み×き印』のパンツ騒動を思い出し、赤面してしまった。芽生くんが書いてくれた文字の部分を宗吾さんに撫でられた時は、背徳感が半端なかった。
「えーっと、とりあえず今度にしようか。そろそろチキンが焼けるしね」
「あ、そうだーお肉さん、こんがりやけたかな。きっとおいしいだろうなぁ。よだれがでちゃうね」
「おう!」
オーブンに向かって前のめりな宗吾さんと芽生くんの後ろ姿を、微笑ましく見つめた。
今年は、賑やかで明るい楽しいクリスマスだ。
子供の頃のクリスマスを思い出す。
あれは夏樹と過ごしたラストクリスマスだったのか。
雪の積もった草原を、一緒に走り回ったのは……。
『夏樹、おいで! 走ろう』
『うん、お兄ちゃん、クリスマスって、ウキウキするね~」
後でお母さんにお礼の電話をしよう。広樹兄さんとも話したいし。
「瑞樹、後でなく、今、電話しろよ。皆、君の声を早く聞きたいと、待っているよ」
まるで……僕の心の声が聞こえたかのようだ。
宗吾さんは、いつも僕をいい方向に導いてくれる。
「はい、そうしてみます!」
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