幸せな存在 ~歩み寄る恋をしよう~

志生帆 海

文字の大きさ
670 / 1,865
成就編

幸せな復讐 24

しおりを挟む
 
 さぁ、今のうちに着替えないと!

 宗吾さんと芽生くんが露天風呂に行った後、僕は慌てて飛び起きた。

「ふぅ……危なかった。また芽生くんに怪我したと思われるのは、居たたまれないよ」
 
 洗面所で少しはだけた浴衣の首筋を確認すると、赤い痕が胸元にかけて転々とついていた。

 これを、つけてもらったのは、僕だ。
 僕が強請った。ここにつけてと――

 触れた場所から、また新たな熱が生まれるようで、照れ臭くなった。

 もう、早く封印しないと……今日は流石に浴衣は無理だな。朝食会場には浴衣で行こうと思ったが断念し、急いで洋服を着た。

  ボタンをしっかり首元までしっかり止めて、首を左右に振って鏡に映る姿を、しっかり確認した。

「よい、大丈夫そうだ」

 良かった。宗吾さん……シャツでギリギリ隠れる場所につけてくれていたのですね。彼も僕も……昨夜はお互いに熱く求め合って、理性が飛んでしまったのに、ギリギリのところで、僕を気遣ってくれた。

 宗吾さんは、とても大らかで広い心を持っている。

 もしも僕が逆の立場だったら、じっと黙っていられるだろうか。

 宗吾さんは、何も言わず見守ってくれている。僕の『幸せな復讐』を、傍らで――

 宗吾さんは、一緒に過ごせば過ごす程、好きになる人。

 大好き人だ。

 
 そのまま顔を洗って寝癖をさっと整えた。昨日、最後にふたりで温泉に入ってそのまま眠ってしまったので、髪が跳ねているな。

 洗面所から部屋に戻ると、宗吾さんたちはまだ戻って来ていなかった。すぐに帰って来ると思ったのに、よほど露天風呂が気に入ったのかな?

 僕だけ……ぽつんと手持ち無沙汰になってしまったよ。

 テレビをつけても、ちっとも頭に入ってこなし、部屋を見渡すと急に寂しくなってしまった。

「そうだ! 迎えに行こう」

 僕はもう以前のように、寂しさを我慢して、じっとしていなくてもいい。

 寂しいのなら会いに、会いたいのなら、僕からも歩み寄っていいことを知っている。

 それに若木旅館の名物『樹木の湯』という露天風呂の様子も見たいな。

 館内の案内図を確認してから、思い切って外に出た。露天風呂までは1本道なので、行き違いにはならないはずだ。

 まだ朝の7時前――

 空気が澄んで少し肌寒い。でも、とても気持ちいい。

 宗吾さんによって散々高められた身体を、程よく冷やしてくれる。

 露天風呂は丘の上にあるので、景色が良いだろう。

 それにしても改めて見渡すと、本当に驚くべき広大な敷地だと実感するよ。この立派な旅館は、一馬の代まで先祖代々受け継がれてきたのだ。 

  僕には計り知れない、とても重たい歴史なのかもしれない。

 あいつが背負ったものは――

 しかし今の一馬には、すぐ横で明るく太陽のように照らし、支えてくれる人がいる。昨日部屋に来てくれた若女将の溌剌とした様子を想い出し、思わず目を細めてしまった。

 本当に良かった。

 彼女なら……お前を明るく笑わせてくれる。背中を押してもらえるし、背中を預けることもできる。

 僕にもいるよ。
 今の僕にも、そんな人がいるんだ。

 早く宗吾さんに会いたいと前を見据えて坂道を上りだした時、逆光の中に突然、黒っぽい人影が浮かんだ。

 旅館スタッフが制服として着ている濃紺の作務衣姿の男性。
 
 あれ? このシルエットには見覚えが――

 












あとがき(不要な方はスルー)

****

えっと……誰でしょうね?(..;)

本日はクロスオーバーを3000文字ほど書いていたので、こちらは短い更新で申し訳ありません。

クロスオーバー作品集 『甘雨のあとの、幸せな存在』https://estar.jp/novels/25642826

すべて芽生視点の可愛いお話です。
可愛い芽生にぜひ会って下さい♡





しおりを挟む
感想 85

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

自分勝手な恋

すずかけあおい
BL
高校の卒業式後に幼馴染の拓斗から告白された。 拓斗への感情が恋愛感情かどうか迷った俺は拓斗を振った。 時が過ぎ、気まぐれで会いに行くと、拓斗には恋人ができていた。 馬鹿な俺は今更自覚する。 拓斗が好きだ、と――。

【bl】砕かれた誇り

perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。 「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」 「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」 「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」 彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。 「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」 「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」 --- いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。 私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、 一部に翻訳ソフトを使用しています。 もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、 本当にありがたく思います。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

目線の先には。僕の好きな人は誰を見ている?

綾波絢斗
BL
東雲桜花大学附属第一高等学園の三年生の高瀬陸(たかせりく)と一ノ瀬湊(いちのせみなと)は幼稚舎の頃からの幼馴染。 湊は陸にひそかに想いを寄せているけれど、陸はいつも違う人を見ている。 そして、陸は相手が自分に好意を寄せると途端に興味を失う。 その性格を知っている僕は自分の想いを秘めたまま陸の傍にいようとするが、陸が恋している姿を見ていることに耐えられなく陸から離れる決意をした。

鈴木さんちの家政夫

ユキヤナギ
BL
「もし家事全般を請け負ってくれるなら、家賃はいらないよ」そう言われて鈴木家の住み込み家政夫になった智樹は、雇い主の彩葉に心惹かれていく。だが彼には、一途に想い続けている相手がいた。彩葉の恋を見守るうちに、智樹は心に芽生えた大切な気持ちに気付いていく。

処理中です...