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番外編
その後の三人『家へ帰ろう』1
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こんにちは。海です。
今日は最初にご挨拶をさせてください(不要な方は、飛ばして下さいね)
先日無事に『幸せな復讐』を終えたシーンで物語は完結させましたが、番外編として家に帰るまでの話を掲載します。
よろしければ……また三人に会ってやって下さいませ。
こちらは一旦、完結マーク外しています。
****
『家へ帰ろう』1
「ふぅ……」
一馬が見えなくなるまで、僕は手を振り続けた。
これがお前と僕が望んだ道だ。
また会う日まで、元気で――
旅館のバスが道を曲がったところで、視界からふっと一馬と春斗くんが見えなくなった。
ようやく僕は大きく息を吐いた。
バスの座席に深くもたれると、隣に座っていた芽生くんに話し掛けられた。
「お兄ちゃん、まだだよぉ~『お家に着くまでが遠足だ』って、先生が言っていたよ」
「あ……確かにそうだね」
僕も小さい頃、良く親にも先生にも言われていたことだ。
いつの世も同じだね。
芽生くんに同意するように微笑むと、今度が可愛いお誘いを受けた。
「お兄ちゃん、帰りもあそこによろうよ」
あそこって、どこかな?
芽生くんの黒い瞳がキラキラしている。
「もしかして……空港の足湯のこと?」
「そう! お兄ちゃんね、いっぱいがんばったから、ひとやすみしてね」
ひとやすみか。優しいことを言ってくれるね。
「ありがとう! 芽生くんはいつも優しいね」
「えへへ、お兄ちゃんが好きだからだよ」
隣に座っている宗吾さんと目が合うと、彼も同意してくれた。
「芽生の誘いは魅力的だ。そう言えば今日はまだ瑞樹と風呂に入ってなかったからな」
明るい笑顔で何を言うのかと思ったら、もう……誰のせいで入れなかったと?
しかし宗吾さんのおおらかな笑顔を見ていると、全部許せてしまうのだから、本当に憎めない人だ。
「あの……空港は足湯ですよ?」
「ははっ、だな」
****
瑞樹と芽生の会話は、いつ聞いてもいいな。
芽生の優しさの芽が、ぐんぐん成長しているのを感じるよ。
俺は隣の座席でふたりの会話に耳を傾けて、ほっこりしていた。
旅館の送迎バスを由布院駅前で降り、空港行きのバスに乗り換えた。
これでもう完全に若木旅館とはお別れだ。
と言っても、瑞樹が選んだ『幸せな復讐』は、俺が想像していたものとは違った。
俺は相変わらずだなと苦笑すると同時に、瑞樹らしい選択が気に入った。
もしも俺が彼の立場だったら、今の幸せな姿を、自分を置いて去っていった相手に見せつけて、それで満足して終わりだった気がする。
参ったな……あんなに『優しい復讐』があるなんてな。
相手の幸せを願い合う復讐があるなんて、この世も捨てたものではない。
流石、瑞樹だ。
君はいつも控えめで、つつましい。
しかし俺は知った。
つつましいというのは、シンプルなこと。
マイナスの感情などを置いて突き進む、潔い道は……美しいな。
君が進む道は、見通しがいい。
そのことに気付かせてもらう旅だったよ。
「宗吾さん、旅はいいですね。小さい頃は違う世界へ行くのが怖かったのに、今は違います。いつもと違う景色を見て、違う体験をすることによって、今の僕が置かれている場所を再認識できます」
瑞樹の横顔は夕日に照らされて、目映かった。
「……僕、九州の伸びやかな景色に、元気をもらいました。あいつも頑張っているのが分かったし、僕も僕の世界を謳歌したいです」
「俺もそう思うよ。あいつ……頑張っていたな。俺も父親としても恋人としても気合いが入るよ」
「はい。あの……僕は……僕らしい『幸せな復讐』を出来たでしょうか」
「あぁ、その通りだよ。とても良かった」
さぁ、三人で空港へ向かおう。
そして空を駆けて、俺たちの家に帰ろう。
今日は最初にご挨拶をさせてください(不要な方は、飛ばして下さいね)
先日無事に『幸せな復讐』を終えたシーンで物語は完結させましたが、番外編として家に帰るまでの話を掲載します。
よろしければ……また三人に会ってやって下さいませ。
こちらは一旦、完結マーク外しています。
****
『家へ帰ろう』1
「ふぅ……」
一馬が見えなくなるまで、僕は手を振り続けた。
これがお前と僕が望んだ道だ。
また会う日まで、元気で――
旅館のバスが道を曲がったところで、視界からふっと一馬と春斗くんが見えなくなった。
ようやく僕は大きく息を吐いた。
バスの座席に深くもたれると、隣に座っていた芽生くんに話し掛けられた。
「お兄ちゃん、まだだよぉ~『お家に着くまでが遠足だ』って、先生が言っていたよ」
「あ……確かにそうだね」
僕も小さい頃、良く親にも先生にも言われていたことだ。
いつの世も同じだね。
芽生くんに同意するように微笑むと、今度が可愛いお誘いを受けた。
「お兄ちゃん、帰りもあそこによろうよ」
あそこって、どこかな?
芽生くんの黒い瞳がキラキラしている。
「もしかして……空港の足湯のこと?」
「そう! お兄ちゃんね、いっぱいがんばったから、ひとやすみしてね」
ひとやすみか。優しいことを言ってくれるね。
「ありがとう! 芽生くんはいつも優しいね」
「えへへ、お兄ちゃんが好きだからだよ」
隣に座っている宗吾さんと目が合うと、彼も同意してくれた。
「芽生の誘いは魅力的だ。そう言えば今日はまだ瑞樹と風呂に入ってなかったからな」
明るい笑顔で何を言うのかと思ったら、もう……誰のせいで入れなかったと?
しかし宗吾さんのおおらかな笑顔を見ていると、全部許せてしまうのだから、本当に憎めない人だ。
「あの……空港は足湯ですよ?」
「ははっ、だな」
****
瑞樹と芽生の会話は、いつ聞いてもいいな。
芽生の優しさの芽が、ぐんぐん成長しているのを感じるよ。
俺は隣の座席でふたりの会話に耳を傾けて、ほっこりしていた。
旅館の送迎バスを由布院駅前で降り、空港行きのバスに乗り換えた。
これでもう完全に若木旅館とはお別れだ。
と言っても、瑞樹が選んだ『幸せな復讐』は、俺が想像していたものとは違った。
俺は相変わらずだなと苦笑すると同時に、瑞樹らしい選択が気に入った。
もしも俺が彼の立場だったら、今の幸せな姿を、自分を置いて去っていった相手に見せつけて、それで満足して終わりだった気がする。
参ったな……あんなに『優しい復讐』があるなんてな。
相手の幸せを願い合う復讐があるなんて、この世も捨てたものではない。
流石、瑞樹だ。
君はいつも控えめで、つつましい。
しかし俺は知った。
つつましいというのは、シンプルなこと。
マイナスの感情などを置いて突き進む、潔い道は……美しいな。
君が進む道は、見通しがいい。
そのことに気付かせてもらう旅だったよ。
「宗吾さん、旅はいいですね。小さい頃は違う世界へ行くのが怖かったのに、今は違います。いつもと違う景色を見て、違う体験をすることによって、今の僕が置かれている場所を再認識できます」
瑞樹の横顔は夕日に照らされて、目映かった。
「……僕、九州の伸びやかな景色に、元気をもらいました。あいつも頑張っているのが分かったし、僕も僕の世界を謳歌したいです」
「俺もそう思うよ。あいつ……頑張っていたな。俺も父親としても恋人としても気合いが入るよ」
「はい。あの……僕は……僕らしい『幸せな復讐』を出来たでしょうか」
「あぁ、その通りだよ。とても良かった」
さぁ、三人で空港へ向かおう。
そして空を駆けて、俺たちの家に帰ろう。
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