幸せな存在 ~歩み寄る恋をしよう~

志生帆 海

文字の大きさ
1,187 / 1,865
小学生編

実りの秋 10

しおりを挟む
 潤がお父さんになるなんて。

 昔を思い出すと、泣けてくるよ。

 近頃、僕の思い出はカラフルだ。

 函館の家に引き取られて、生命力に溢れた潤に最初は圧倒されたけれど、僕にはない力強さに惹かれてもいたんだよ。

 やんちゃな潤のお世話をするのは大変な時もあったが、僕の居場所を感じられる一時でもあった。

 たまに潤が照れ臭そうに「これ、やる!」と、手の平にのせてくれたキャラメルは潤の熱で溶けていたけれども、甘くて美味しかったよ。

 ずっと悲しいことや辛かったことばかり思いだしていたが。その奥にはちゃんと柔らかい思い出もあったんだ。

「瑞樹、いいニュースだったみたいだな」
「宗吾さん! もうお風呂から上がったんですか。芽生くんが寝てしまったので、潤に電話をしていたんです。実は……菫さんが妊娠されたそうで」
「おー! 本当か」
「はい! なので、とてもいいニュースでした」
「いいことが続くな」
「はい、なんだか昨日から不思議と心がすっきりしていて、そこに嬉しいニュースが飛び込んで来てくれました」
「本当にそうだな!」

  お風呂上がりの宗吾さんに、ギュッと抱き寄せられる。

 僕と同じ匂いになった身体に、そのまま体重を預ける。

 しっかり抱きしめてもらえると、ほっとする。

「赤ちゃんが無事に生まれてくるように祈ろう」
「はい、そうしたいです。僕も何かしたいです」
「そうだな、きっと瑞樹にも出来ることがあるよ」

 あどけないいっくんも、来年にはお兄ちゃんになるのか。

 生まれてくる子とは父親が違うきょうだいになるが、大丈夫だ。

 潤なら分け隔てなく、接することが出来るだろう。

 潤だから出来ることだ。

 思い返せば……この日を迎えるための試練だったのかもしれないね。

 潤と僕の間に起きたことは。

 僕はもう水に流している。

 今の僕がとても幸せだから、心にゆとりが出来たんだ。

 引き取られてから、ずっと心配ばかりかけていたが、もう違う。

 今の僕は、皆の幸せを心から願っている。

「瑞樹、なぁ……今日はダメか」
「……くすっ、お掃除……頑張りましたよね」
「あぁ! 見てくれよ。ベッドの下を」
「ふふっ、すっきりしていますね」
「部屋がすっきりしたが、俺の身体はムラムラだー」
「くすっ、知っています」
「なんだ、知ってたのか!」
「……抱いて下さい」


 僕からも宗吾さんに歩み寄ろう。

 身体を求め合うのは、好きならば自然なことだから。

 何も恥じない。

 僕も宗吾さんが欲しい。

 ひと月離れていた身体が焦がれている。

 

 宗吾さんが静かに寝室の扉を閉める。

 照明を落として、二人だけの時間にしてくれる。

 そのままキスをしながら、ベッドにもつれ込んだ。

 パジャマの裾から宗吾さんの熱い手が滑り込んでくる。

「ん……っ」

 胸の突起を摘ままれて、腰が跳ねる。

 過敏になったそこがすぐに尖り出すと、指の腹で丹念に転がされる。

 もう、たまらない気持ちになる。

 このひと月、抑え込んでいた気持ちが溢れ出してくる。

 呼吸が乱れ、体温が上昇してくる。

 身体が熱の置き場を探している。

「瑞樹、今日は積極的だな」
「ん……僕だって……男です。1ヶ月は……正直辛かったです」
「途中で電話でしたのに?」
「直に触れてもらうのとは別物です」
「確かに。君は俺をやる気にさせるな」
「あっ!」

 パジャマのズボンから手を差し入れられると、もうそこはぴちゃりと音がするほど湿っていた。

「すごい……こんなに濡らして」
「ん……」

 先端に浮かぶ蜜を指先で扱かれると、腰がぷるぷると震えてしまう。

「気持ち……良すぎて」
「感じまくっているな。まだ少ししか触ってないのに」
「ん……あっ、あっ」

 下着ごとずり降ろされ、足を開かせられた。

「可愛いな。そのまま足を広げて見せてくれ」
「恥ずかしいです」
「恥じらう君の顔もいい」
「も、もう――」

 宗吾さんの手が窄まりに触れてくる。

 この1ヶ月閉じていた場所に。

「狭いな」
「大丈夫です」
「ゆっくりだ」
「んっ……」

 じっくりと指を蠢かされ、泣きたい程気持ち良くて、じれったくて。

 宗吾さんにしがみついて、やっぱり泣いてしまう。

「もう……大丈夫です。早く……欲しいんです」
「瑞樹ぃ……煽るな」
「でも……ぐすっ」

 どうしてだろう?

 今すぐ、欲しい。

 宗吾さんが欲しい。

 腰を擦りつけ揺らして、必死に強請ってしまう。

 早く、早くと。

「瑞樹、そんなに泣くな……君が、こんなに乱れるなんて」
「ずっと……ずっと……恋しかったんです」
「あぉ、俺もだ」

 足を担ぎ上げられ、宗吾さんを受け止める姿勢を取らされる。

 押し当てられたものを、僕は力を抜いて受け入れて行く。

 僕の中にやってくる宗吾さんの熱を感じて、涙が溢れた。

 腰が浮くほど強く抱きしめられ、深くまで一気に貫かれた。

「……ふ、あっ、あっ……あ」

 最奥に宗吾さんの張り詰めたものが届くと同時に、僕は小刻みに震え、そのまま精を放ってしまった。

 こんなに早く?

 宗吾さんより先に……?
 
 自分でもびっくりして、目を見開いた。
 
「あっ、どうして……」
「瑞樹、今ので?」
「……ごめんなさい」
 
 カッと顔が火照る。
 
「何を謝る? 最高に嬉しいよ」
「でも一緒に……いきたかったんです」
「なあに、何度でもタイミングを合わせればいいんだ」
「え……あ、まだ動かないで」

 宗吾さんが嬉しそうに僕を揺さぶる。

 顔中に口づけし、喉仏も耳朶も鎖骨にもキスの嵐。

「待って……待ってください」

 反射的に押し返す手をシーツに縫い取られ、再び奥を突かれた。

 達したばかりで敏感な身体が、甘く蕩け出す。

 崩れ落ちていく理性。

 前を扱かれながら、後ろを責められ……

 甘ったるい声ばかり出してしまう。

「……あ、あぁ……」
「瑞樹の中、気持ちいい。俺も恋しかった」
「もうっ……い……く」

 さっき出したばかりなのに、僕はどうなってしまったのだろうか。

「今度は一緒に」
「くっ……」

 ギュッと抱きしめられ、そのまま一つになった。

 宗吾さんが絶頂の後、泣きそうな顔をした。

「瑞樹……俺……寂しかったよ」
「宗吾さん……僕もです。僕も寂しかった」

 大人になったら……なかなか言えない言葉も、ここでは吐き出そう。

「我慢しなくていいんですよ」
「あぁ……悪かった。弱音を吐いちまった」
「嬉しいです。宗吾さんの気持ち……もっともっと聞かせて下さい。僕も受け止めたい」
「瑞樹、君は少し変わったな」
「ヘンですか、こんなの……」

 宗吾さんが破顔する。

 胸元に溜まった汗がキラキラしている。

 生命力に溢れた凜々しい身体をぼんやりと見つめていると、とても幸せな気持ちになった。

「僕……宗吾さんを生かす人になりたいです」

 その一言に宗吾さんが泣きそうな顔を埋めてきた。

「瑞樹……もうなっているよ。君がいるから生きて行ける。瑞樹……あの時……うっ……今、生きていてくれてありがとう。俺と出会ってくれてありがとう」

 僕の鼓動を聴きながら、宗吾さんが放つ言葉に目が覚める。

「宗吾さん……僕は生きていて良かったです。こんな風に宗吾さんと繋がれて満たされて……僕はまた生きて行けます。ありがとうございます」

 

 二人の思いを重ね合う行為は、身も心も満たしてくれる。
 
 この先も、僕たちはこんな風に繋がっていく。

 それがとても自然なことだから。











 あとがき(不要な方は飛ばしてくださいね)





*****

ここでようやく宗吾さんと瑞樹、1ヶ月ぶりの逢瀬です。

新しい命の誕生に喜ぶ瑞樹です。

瑞樹自身が宗吾さんとの間に新しい命を作り出すことはないのですが、こうやって宗吾さんとつながることで、宗吾さんを生かし、自分を生かすことに繋がっているのかなと……書いていてしみじみと思いました。

生きる力を授け合う行為は、神聖ですね。
  
  



  
 
しおりを挟む
感想 85

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻本作品(オリジナル)の結末をif(運命の番)ルートに入れ替えて、他サイトでの投稿を始めました。タイトルは「一度目の結婚で愛も希望も失くした僕が、移住先で運命と出逢い、二度目の結婚で愛されるまで」に変えてます。 オリジナルの本編結末は完全なハッピーエンドとはいえないかもしれませんが、「一度目の〜…」は琳が幸せな結婚をするハッピーエンド一択です。

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

天啓によると殿下の婚約者ではなくなります

ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。 フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。 ●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。 性表現は一切出てきません。

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

夫には好きな相手がいるようです。愛されない僕は針と糸で未来を縫い直します。

伊織
BL
裕福な呉服屋の三男・桐生千尋(きりゅう ちひろ)は、行商人の家の次男・相馬誠一(そうま せいいち)と結婚した。 子どもの頃に憧れていた相手との結婚だったけれど、誠一はほとんど笑わず、冷たい態度ばかり。 ある日、千尋は誠一宛てに届いた女性からの恋文を見つけてしまう。 ――自分はただ、家からの援助目当てで選ばれただけなのか? 失望と涙の中で、千尋は気づく。 「誠一に頼らず、自分の力で生きてみたい」 針と糸を手に、幼い頃から得意だった裁縫を活かして、少しずつ自分の居場所を築き始める。 やがて町の人々に必要とされ、笑顔を取り戻していく千尋。 そんな千尋を見て、誠一の心もまた揺れ始めて――。 涙から始まる、すれ違い夫婦の再生と恋の物語。 ※本作は明治時代初期~中期をイメージしていますが、BL作品としての物語性を重視し、史実とは異なる設定や表現があります。 ※誤字脱字などお気づきの点があるかもしれませんが、温かい目で読んでいただければ嬉しいです。

処理中です...