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小学生編
実りの秋 16
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「みーくん、カメラ係は、俺でいいか」
驚いて顔をあげると、くまさんの満面の笑みとぶつかった。
くまみたいに大きな身体、人懐っこい優しい黒い瞳。
僕の大好きな森のくまさんだ!
「くまさん……お父さん……うそ?……どうして?」
「あぁ、やっぱり初孫の運動会は見に来ないとな」
「あ……」
あまりに驚いてグラッと身体が揺らぐと、宗吾さんに「おっと! 危ないぞ」と支えられた。
「瑞樹、大丈夫か。しかし驚いたな」
「……宗吾さんは知って?」
「いや、君がいない時に日程は詳しく聞かれたけど、まさか本当に飛んでくるとは流石だな」
「瑞樹、まずは芽生くんを見てあげないと」
「お、お母さんまで!」
「ふふ、驚くのは後でよ。あ、あの赤い帽子ね。勇大さん~ うーんと可愛く写真を撮ってくださいね」
「あぁ任せておけ」
我に返って芽生くんを見ると、ちらっとこちらを見て目を見開いて、その後最高の笑顔を浮かべてくれた。
すごい……すごい……大応援団だよ!
みんな芽生くんのために集まってくれたんだよ。
これは嬉しいね、お兄ちゃんも嬉しいよ。
まさか函館のお母さんとくまさんまで、来てくれるなんて。
入場行進の後は校長先生の言葉や来賓の祝辞、優勝旗返還などが行われ、次はいよいよ『誓いの言葉』だ。
「よしっ、芽生の出番だな」
「はい!」
実はこの誓いの言葉を宣言する2年生代表に、芽生くんが選ばれていた。
『2年1組 滝沢芽生』
『はい!』
あぁ、いいね、とても元気なお返事が出来たね。
もうそれだけで僕ら大応援団は、幸せになるよ。
芽生くんと3年生の女の子と並んで朝礼台に立って、大きな声を張り上げた。
『せんせい! ぼくたち、わたしたちは、まいにちの練習の成果をはっきし、いつも応援してくれる先生とかぞくにかんしゃのきもちをこめて、おともだちとのきずなを大切に、せいせいどうどうとたたかうことをちかいます!
10月10日
あかぐみだいひょう たきざわめい!
しろぐみだいひょう たなかはなこ』
出逢ったばかりの小さな芽生くんは、まだひとりでお着替えも上手にできなかったのに、こんなに難しい台詞を間違えもせずに大きな声で言えるなんて、本当にすごいよ!
「うぉぉー ヤバイ、これは感動するな」
「はい、芽生くん、立派です」
宗吾さんも僕も、目の端に涙を浮かべていた。
お母さんも憲吾さんも、函館のお母さんもお父さんも目頭を押さえていた。
運動会は、どこかノスタルジックな心地になるのかもしれない。自分たちが子供だった頃を思い出したり、過ぎ去った子育てを思い出したり……広い校庭に、いろんな感情が沸き上がっているんだ。
「次は準備体操、広がれ!」
校庭にいっぱいに広がるの赤と白い帽子の子供だち。
その生命力溢れる光景に圧倒される。
僕もあの中にいたことがある。
『おとなは、だれも、はじめは子供だった』これは星の王子さま サン=テグジュペリの一節で、(しかし、そのことを忘れずにいるおとなはいくらもいない)と続く。
人が親となり子育てをするという行為は、自分が歩んで来た人生を違った視点で辿っていることになるんだね。
「みーくん、俺、運動会を見るのは久しぶりだよ……君が9歳の時が最後だ」
「僕の運動会に来てくれていたんですね」
「あぁ、まだなっくんが小さいから手伝いでな」
「そうだったんですね」
「可愛かったよ。みーくんは足が速くてクラスの人気者だった。大樹さんが嬉しそうに写真を何枚も撮っていたよ」
「そうなんですね」
くまさんが、僕の知らない光景を見せてくれる。
「みーくん、子供の瞳っていいな。初めて見るものに純粋に感動する心や、知ろうとする好奇心、どこまでも羽ばたく自由な想像力で溢れている。だから大勢の子供が集まる運動会って素晴らしいいな。今日は芽生くんの活躍を見たくて来てしまったよ」
「嬉しいです」
「でも一番は……」
「はい?」
「みーくんに会いたかったのさ。1ヶ月も出向していたと聞いたぞ。大変だったな」
お父さんの労いと存在が心強い。
「……はい、大変でした。途中で僕……寂しくなってしまって」
「そうだろう、みーくんは寂しがり屋だもんな。皆、そんなところが可愛くて溜まらない」
「僕の負の部分を……可愛いと?」
「人ってもたれ合って生きているんだ。だからみーくんはもう一人で立って無くていい。いろんな人にもたれていいんだよ」
『許し』にも似た言葉を、また一つもらう。
生き残った者が誰かを頼るなんて贅沢だと自分を律していた僕は、もういない。
「来てくれて嬉しいです」
「瑞樹、少し手が疲れているわね。今日はカメラはお父さんに任せて、休めなさいね」
流石……お母さんだ。
僕の身体の少しの変化にも気付いてくれるなんて。
僕も目の前に広がる優しい光景を、あるがままに受け入れよう。
嬉しいことは嬉しいと
綺麗なものは綺麗と
寂しい時は寂しいと
悲しい時は悲しいと……
素直になると心ってスッキリして、片付けやすくなる。
心の土台がすっきり広々としていれば、寂しさは剥がれやすく、嬉しさは弾みやすくなるね。綺麗なものは光を反射して光が増すよ。
「次は二年生の徒競走です」
「次、出るぞ、瑞樹、よく見える所に行こう!」
「はい!」
宗吾さんがさり気なく僕の手を引っ張ってくれた。
一瞬の触れ合いに心が弾む。
ゴール付近で待っていると、大歓声の中、次々と子供達がこちらに向かって走ってくる。
二年生は50メートル走だ。
ドンっとピストルの音で走り出す子供達は、まるで光の流星群。
風になれ!
光になれ!
夢いっぱい、力一杯走り抜けて。
やがて芽生くんが走ってくる。
真剣な顔で思いっきり地面を蹴って手足を動かして、生命力に溢れた様子に胸を揺さぶられる。
「やった! 芽生! 一位だ!」
「すごい! すごいです! 芽生くーん!」
僕も大きな声で叫んでいた。
君は僕の星だから。
驚いて顔をあげると、くまさんの満面の笑みとぶつかった。
くまみたいに大きな身体、人懐っこい優しい黒い瞳。
僕の大好きな森のくまさんだ!
「くまさん……お父さん……うそ?……どうして?」
「あぁ、やっぱり初孫の運動会は見に来ないとな」
「あ……」
あまりに驚いてグラッと身体が揺らぐと、宗吾さんに「おっと! 危ないぞ」と支えられた。
「瑞樹、大丈夫か。しかし驚いたな」
「……宗吾さんは知って?」
「いや、君がいない時に日程は詳しく聞かれたけど、まさか本当に飛んでくるとは流石だな」
「瑞樹、まずは芽生くんを見てあげないと」
「お、お母さんまで!」
「ふふ、驚くのは後でよ。あ、あの赤い帽子ね。勇大さん~ うーんと可愛く写真を撮ってくださいね」
「あぁ任せておけ」
我に返って芽生くんを見ると、ちらっとこちらを見て目を見開いて、その後最高の笑顔を浮かべてくれた。
すごい……すごい……大応援団だよ!
みんな芽生くんのために集まってくれたんだよ。
これは嬉しいね、お兄ちゃんも嬉しいよ。
まさか函館のお母さんとくまさんまで、来てくれるなんて。
入場行進の後は校長先生の言葉や来賓の祝辞、優勝旗返還などが行われ、次はいよいよ『誓いの言葉』だ。
「よしっ、芽生の出番だな」
「はい!」
実はこの誓いの言葉を宣言する2年生代表に、芽生くんが選ばれていた。
『2年1組 滝沢芽生』
『はい!』
あぁ、いいね、とても元気なお返事が出来たね。
もうそれだけで僕ら大応援団は、幸せになるよ。
芽生くんと3年生の女の子と並んで朝礼台に立って、大きな声を張り上げた。
『せんせい! ぼくたち、わたしたちは、まいにちの練習の成果をはっきし、いつも応援してくれる先生とかぞくにかんしゃのきもちをこめて、おともだちとのきずなを大切に、せいせいどうどうとたたかうことをちかいます!
10月10日
あかぐみだいひょう たきざわめい!
しろぐみだいひょう たなかはなこ』
出逢ったばかりの小さな芽生くんは、まだひとりでお着替えも上手にできなかったのに、こんなに難しい台詞を間違えもせずに大きな声で言えるなんて、本当にすごいよ!
「うぉぉー ヤバイ、これは感動するな」
「はい、芽生くん、立派です」
宗吾さんも僕も、目の端に涙を浮かべていた。
お母さんも憲吾さんも、函館のお母さんもお父さんも目頭を押さえていた。
運動会は、どこかノスタルジックな心地になるのかもしれない。自分たちが子供だった頃を思い出したり、過ぎ去った子育てを思い出したり……広い校庭に、いろんな感情が沸き上がっているんだ。
「次は準備体操、広がれ!」
校庭にいっぱいに広がるの赤と白い帽子の子供だち。
その生命力溢れる光景に圧倒される。
僕もあの中にいたことがある。
『おとなは、だれも、はじめは子供だった』これは星の王子さま サン=テグジュペリの一節で、(しかし、そのことを忘れずにいるおとなはいくらもいない)と続く。
人が親となり子育てをするという行為は、自分が歩んで来た人生を違った視点で辿っていることになるんだね。
「みーくん、俺、運動会を見るのは久しぶりだよ……君が9歳の時が最後だ」
「僕の運動会に来てくれていたんですね」
「あぁ、まだなっくんが小さいから手伝いでな」
「そうだったんですね」
「可愛かったよ。みーくんは足が速くてクラスの人気者だった。大樹さんが嬉しそうに写真を何枚も撮っていたよ」
「そうなんですね」
くまさんが、僕の知らない光景を見せてくれる。
「みーくん、子供の瞳っていいな。初めて見るものに純粋に感動する心や、知ろうとする好奇心、どこまでも羽ばたく自由な想像力で溢れている。だから大勢の子供が集まる運動会って素晴らしいいな。今日は芽生くんの活躍を見たくて来てしまったよ」
「嬉しいです」
「でも一番は……」
「はい?」
「みーくんに会いたかったのさ。1ヶ月も出向していたと聞いたぞ。大変だったな」
お父さんの労いと存在が心強い。
「……はい、大変でした。途中で僕……寂しくなってしまって」
「そうだろう、みーくんは寂しがり屋だもんな。皆、そんなところが可愛くて溜まらない」
「僕の負の部分を……可愛いと?」
「人ってもたれ合って生きているんだ。だからみーくんはもう一人で立って無くていい。いろんな人にもたれていいんだよ」
『許し』にも似た言葉を、また一つもらう。
生き残った者が誰かを頼るなんて贅沢だと自分を律していた僕は、もういない。
「来てくれて嬉しいです」
「瑞樹、少し手が疲れているわね。今日はカメラはお父さんに任せて、休めなさいね」
流石……お母さんだ。
僕の身体の少しの変化にも気付いてくれるなんて。
僕も目の前に広がる優しい光景を、あるがままに受け入れよう。
嬉しいことは嬉しいと
綺麗なものは綺麗と
寂しい時は寂しいと
悲しい時は悲しいと……
素直になると心ってスッキリして、片付けやすくなる。
心の土台がすっきり広々としていれば、寂しさは剥がれやすく、嬉しさは弾みやすくなるね。綺麗なものは光を反射して光が増すよ。
「次は二年生の徒競走です」
「次、出るぞ、瑞樹、よく見える所に行こう!」
「はい!」
宗吾さんがさり気なく僕の手を引っ張ってくれた。
一瞬の触れ合いに心が弾む。
ゴール付近で待っていると、大歓声の中、次々と子供達がこちらに向かって走ってくる。
二年生は50メートル走だ。
ドンっとピストルの音で走り出す子供達は、まるで光の流星群。
風になれ!
光になれ!
夢いっぱい、力一杯走り抜けて。
やがて芽生くんが走ってくる。
真剣な顔で思いっきり地面を蹴って手足を動かして、生命力に溢れた様子に胸を揺さぶられる。
「やった! 芽生! 一位だ!」
「すごい! すごいです! 芽生くーん!」
僕も大きな声で叫んでいた。
君は僕の星だから。
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