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小学生編
幸せが集う場所 21
小林が持ってきたチョコレートを口に含むと、濃厚な甘さが口腔内に一気に広がった。
糖分が疲れ果てた身体の隅々まで行き渡り、細胞が次々と活性化していくようだ。
「滝沢さんって、やっぱり甘いものお好きなんですね」
「あぁ大好物さ」(特に瑞樹が)
「良かったです。あの、そのまま少し眠って下さい」
小林がブランケットを持って来て、かけてくれた。
こんな風に部下に世話されるは慣れてない。だが、もうここまで恥を晒したので、怖いものはない。
「滝沢さん、恥なんて思わないで下さいね。今日のことは男の勲章ですよ。倒れるまで頑張るなんて、カッコいいですよ」
目をキラキラさせる様子に、やっぱりあの小坊主くんを重ねてしまう。
「えっと……僕の従兄弟がよく言っています。疲れた時は甘いものを食べて15分~30分間ほど眠ると心身共にすっきりすると」
「なるほど、しかし俺は普段仮眠しないから眠れるかな?」
「とにかく目を閉じて力を抜いて、自然と浮かんだ映像に従って下さい」
自然と浮かぶ映像?
それって煩悩のことじゃないか。
「おもしろいことを言うんだな」
「従兄弟の受け売りですよ」
「……あんこ好きな従兄弟か」
「えぇ」
目を閉じて愛しの瑞樹の可愛い顔を思い浮かべようとしたのに、何故かあんこを食べながら転た寝をするこもりんの映像が浮かんできた。
こっくりこっくり。
メトロノームのようにこもりんの頭が揺れる様子に、急激な眠気が……
こもりんは庫裡で大きな饅頭を5個食べた後、大きな欠伸を3回し、そのままコテっと眠りに落ちた。
俺の意識も一緒に落ちた。
「おーい、こもりん、歯を磨け!」
流の声がした気がしてビクッと目覚めると、怠かった身体は軽くなり頭痛も治まっていた。
「お? もしかして復活したのか」
辺りを見渡すと小林がせっせと俺が脱ぎ散らかした俺の背広の皺を伸ばしてくれていた。
「おう!」
「あ! 滝沢さん起きたのですね。きっかり15分です」
「そうか、本当にお前の言った通り、スッキリしたよ!」
「よかったです。はい、これスーツです。ネクタイも」
手渡されたスーツを見て、例のヘンテコなタイツスーツのまま眠っていたのかと唖然とし、その後大きく笑った。
「あーあ、小林の前じゃ、もう格好つけられないな」
「そんなことないですよぅ。人は見た目じゃなく中身です。滝沢さんのカッコいい中身をバッチリ見られて良かったです」
「そっか……ありがとうな。俺、水族館の様子見てくるわ」
「大丈夫ですか」
甲斐甲斐しく世話をされて、照れ臭くなった。
「お前も、いい夫夫《ふうふ》になりそうだな」
「へ?」
「いや、何でもない」
着てきたスーツに着替え、瑞樹が朝吟味してくれた一張羅のネクタイをキュッと締めると、気持ちも引き締まった。
「よし! もういつもの調子だ」
「タフですね、やっぱり」
「ここは頼む」
俺はスタッフの腕章をつけて館内に入った。
後の報告のためにイベントが順調にいっているか確かめる必要がある。
おぉ! どこもかしこも賑わっている。
皆、楽しそうだ。
館内の売店も覗いた。
このイベントのために新商品を沢山作ったから、売れ行きチェックしなくては。チョコレートアザラシはこの水族館の名物で、愛嬌のある顔だちのぬいぐるみは既に完売マークがついていた。
「お! まさかの冗談で作った等身大のアザラシのぬいぐるみまで、売れるとは……驚いたな、一体誰が買ったんだ?」
そのまま館内を歩くと、アザラシの着ぐるみがサッカー芸をしているのが見えた。
潤、頑張ってくれて、ありがとう。
着ぐるみを着たまま、軽快に動き回る姿には感服するぜ!
サッカーボール何ていつの間に用意したんだ。
すっかり頼もしくなった姿を、目を細めて見つめていると、可愛い声援が届いた。いつも大人しいいっくんが、大きな声を出して嬉しそうに笑っている。
「アザラシマンしゃーん、だいしゅきー!」
ははっ! どうやら身バレしたようだな。
いっくんの目は憧れに満ち、キラキラと輝いていた。
あれはいつものパパを見る目だ。
きっとアザラシマンに変身したんだと真面目に思っているのだろうな。
子供は夢を見る。
その夢を守るのが大人の役目だ。
夢は人を育てる。
現実社会で生きて行く術を授けてくれる。
現実しかない大人は脆く倒れやすい。
だからこそ、いくつになっても夢を見る心のゆとりが必要だ。
子供には沢山夢を見て欲しい。
潤といっくんの親子関係は、もう出来上がっている。
あとはその関係を繋げていけばいいんだ。
俺と瑞樹と芽生のようにチームとなって。
瑞樹……そろそろ姿を見せてくれないか。
会いたい。
そう願えば、俺の夢も叶うだろう!
大きな水槽の向こうに、すらりとした瑞樹が立っていた。
可憐な顔立ち、スタイルのよい身体。
揺らぐ水槽越しでも、君の魅力は筒抜けさ。
瑞樹もやがて俺に気付く。
愛おしさが交差する瞬間だ。
心の底から俺の体調を心配し、見抜き、潤を遣わせてくれた。
きめ細やかに相手を想い大切にしてくれる君といると、俺は自分が好きになる。
君に愛される人になりたいと、頑張れるんだよ。
瑞樹……
口に出したいが、ここでは無理だ。
そんな俺たちの気持ちを結びつけてくれたのは、エンジェルフィッシュだった。
まさか魚たちがキスするなんて!
「先を越されちまったな」
だから俺は、声は出さずに口を動かした。
大切な五文字を、君の心に刻んで欲しくて。
いつも……
アイシテル!
糖分が疲れ果てた身体の隅々まで行き渡り、細胞が次々と活性化していくようだ。
「滝沢さんって、やっぱり甘いものお好きなんですね」
「あぁ大好物さ」(特に瑞樹が)
「良かったです。あの、そのまま少し眠って下さい」
小林がブランケットを持って来て、かけてくれた。
こんな風に部下に世話されるは慣れてない。だが、もうここまで恥を晒したので、怖いものはない。
「滝沢さん、恥なんて思わないで下さいね。今日のことは男の勲章ですよ。倒れるまで頑張るなんて、カッコいいですよ」
目をキラキラさせる様子に、やっぱりあの小坊主くんを重ねてしまう。
「えっと……僕の従兄弟がよく言っています。疲れた時は甘いものを食べて15分~30分間ほど眠ると心身共にすっきりすると」
「なるほど、しかし俺は普段仮眠しないから眠れるかな?」
「とにかく目を閉じて力を抜いて、自然と浮かんだ映像に従って下さい」
自然と浮かぶ映像?
それって煩悩のことじゃないか。
「おもしろいことを言うんだな」
「従兄弟の受け売りですよ」
「……あんこ好きな従兄弟か」
「えぇ」
目を閉じて愛しの瑞樹の可愛い顔を思い浮かべようとしたのに、何故かあんこを食べながら転た寝をするこもりんの映像が浮かんできた。
こっくりこっくり。
メトロノームのようにこもりんの頭が揺れる様子に、急激な眠気が……
こもりんは庫裡で大きな饅頭を5個食べた後、大きな欠伸を3回し、そのままコテっと眠りに落ちた。
俺の意識も一緒に落ちた。
「おーい、こもりん、歯を磨け!」
流の声がした気がしてビクッと目覚めると、怠かった身体は軽くなり頭痛も治まっていた。
「お? もしかして復活したのか」
辺りを見渡すと小林がせっせと俺が脱ぎ散らかした俺の背広の皺を伸ばしてくれていた。
「おう!」
「あ! 滝沢さん起きたのですね。きっかり15分です」
「そうか、本当にお前の言った通り、スッキリしたよ!」
「よかったです。はい、これスーツです。ネクタイも」
手渡されたスーツを見て、例のヘンテコなタイツスーツのまま眠っていたのかと唖然とし、その後大きく笑った。
「あーあ、小林の前じゃ、もう格好つけられないな」
「そんなことないですよぅ。人は見た目じゃなく中身です。滝沢さんのカッコいい中身をバッチリ見られて良かったです」
「そっか……ありがとうな。俺、水族館の様子見てくるわ」
「大丈夫ですか」
甲斐甲斐しく世話をされて、照れ臭くなった。
「お前も、いい夫夫《ふうふ》になりそうだな」
「へ?」
「いや、何でもない」
着てきたスーツに着替え、瑞樹が朝吟味してくれた一張羅のネクタイをキュッと締めると、気持ちも引き締まった。
「よし! もういつもの調子だ」
「タフですね、やっぱり」
「ここは頼む」
俺はスタッフの腕章をつけて館内に入った。
後の報告のためにイベントが順調にいっているか確かめる必要がある。
おぉ! どこもかしこも賑わっている。
皆、楽しそうだ。
館内の売店も覗いた。
このイベントのために新商品を沢山作ったから、売れ行きチェックしなくては。チョコレートアザラシはこの水族館の名物で、愛嬌のある顔だちのぬいぐるみは既に完売マークがついていた。
「お! まさかの冗談で作った等身大のアザラシのぬいぐるみまで、売れるとは……驚いたな、一体誰が買ったんだ?」
そのまま館内を歩くと、アザラシの着ぐるみがサッカー芸をしているのが見えた。
潤、頑張ってくれて、ありがとう。
着ぐるみを着たまま、軽快に動き回る姿には感服するぜ!
サッカーボール何ていつの間に用意したんだ。
すっかり頼もしくなった姿を、目を細めて見つめていると、可愛い声援が届いた。いつも大人しいいっくんが、大きな声を出して嬉しそうに笑っている。
「アザラシマンしゃーん、だいしゅきー!」
ははっ! どうやら身バレしたようだな。
いっくんの目は憧れに満ち、キラキラと輝いていた。
あれはいつものパパを見る目だ。
きっとアザラシマンに変身したんだと真面目に思っているのだろうな。
子供は夢を見る。
その夢を守るのが大人の役目だ。
夢は人を育てる。
現実社会で生きて行く術を授けてくれる。
現実しかない大人は脆く倒れやすい。
だからこそ、いくつになっても夢を見る心のゆとりが必要だ。
子供には沢山夢を見て欲しい。
潤といっくんの親子関係は、もう出来上がっている。
あとはその関係を繋げていけばいいんだ。
俺と瑞樹と芽生のようにチームとなって。
瑞樹……そろそろ姿を見せてくれないか。
会いたい。
そう願えば、俺の夢も叶うだろう!
大きな水槽の向こうに、すらりとした瑞樹が立っていた。
可憐な顔立ち、スタイルのよい身体。
揺らぐ水槽越しでも、君の魅力は筒抜けさ。
瑞樹もやがて俺に気付く。
愛おしさが交差する瞬間だ。
心の底から俺の体調を心配し、見抜き、潤を遣わせてくれた。
きめ細やかに相手を想い大切にしてくれる君といると、俺は自分が好きになる。
君に愛される人になりたいと、頑張れるんだよ。
瑞樹……
口に出したいが、ここでは無理だ。
そんな俺たちの気持ちを結びつけてくれたのは、エンジェルフィッシュだった。
まさか魚たちがキスするなんて!
「先を越されちまったな」
だから俺は、声は出さずに口を動かした。
大切な五文字を、君の心に刻んで欲しくて。
いつも……
アイシテル!
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