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小学生編
ムーンライト・セレナーデ 27(月影寺の夏休み編)
どうしよう、涙が止らないよ。
月影寺の庭に突如現れたナイトピクニック会場。
そこに集う人があまりに優しくて、あまりにも穏やで、泣いてしまう。
皆が極上の笑顔を浮かべて、僕に「お帰り」と声をかけてくれる。
それが嬉しかった。
しみじみと……嬉しかった!
思いがけない『おもてなし』を客人から受けたことに感動し、その場で泣き崩れる僕を、流と薙がしっかり支えてくれた。
「翠、俺に寄りかかれ」
「父さん、おれにもたれていいよ。父さんは泣き虫だなぁ」
「ううっ……」
僕の家族が支えてくれる。
兄弟と客人が、そっと見守ってくれている。
僕の涙が出切るまで、待ってくれている。
すると静かに『ムーンライト・セレナーデ』のメロディが流れてきた。これは僕が東京のマンションでいつも聴いていたジャズソングで、哀愁漂う美しいメロディに、いつも月影寺への思慕を募らせていた。
僕の脳内では歌詞がテロップのように流れ出していた。
『君の家の戸口で、君に捧げる月明かりの歌。僕はここで待っているよ、君の手に触れる時を……君に捧げる月明かりの歌、愛の歌、僕の愛しい人、月明かりのセレナーデ……』
すると流暢な英語で、僕の心と一緒に歌ってくれる人がいた。
洋……君なのか。
君の声は厳かで、まるで天使の歌声。
孤独に震えた日々、暗闇に怯えた日々。
あらゆる困難を越えて辿り着いた場所が、ここだ。
だからもう涙は止めて、顔を上げよう。
僕の想いを伝えよう。
「今宵は素晴らしい『ナイトピクニック』にお招きありがとうございます。少しお話しても?」
「そうこなくっちゃ! 翠さんの説法を皆、聞きたがっていましたよ!」
宗吾さんが明るく仕切ってくれる。彼は本当にムードメーカーだ。
「では、コホン」
深呼吸すると流と目が合った。
流はいつも僕の光だ。
あたたかく包み込んでくれる視線を浴びて、元気をもらった。
「まだまだ夏の盛り、騒がしい蝉の鳴き声で始まった朝も、すっかり日が暮れて、月影寺は今、美しい夕日に包まれています。この後、この竹林の上に満月が現れるでしょう」
僕は夕焼けを見つめ、一呼吸置いた。
皆も空を見上げている。
きっと……それぞれの満月を心に描いているのだろう。
「今日はここに集まってくれた人たちは0歳から70代まで様々です。それぞれの場所から月影寺に集まってくれました。今宵の『ナイトピクニック』……とても素晴らしい企画ですね。僕はふとお茶の世界を思い出しました。茶道を嗜んでいると、お茶を共通の話題に、出身地や職業、性別を超えて、祖父母からひ孫の世代まで仲良く交流することがよくあります。今日、この場も同じですね。多くの人と触れあうことは大切です。それぞれの人が自分とは違うことに気付けると、今度はお互いを理解したくなります。『水魚の交わり』という言葉をご存知でしょうか。お互いの立場を踏まえ敬い理解しあっていきたいものですね。さぁ今宵は一服のお茶ではなく、ソフトドリンクやお酒で交流を深めましょう」
一気に挨拶した。僕の想い、伝わるのか。
すると宗吾さんを筆頭に、皆が笑顔で拍手をしてくれた。
艶めいた凜々しい声が響く。
「まずは乾杯しましょう。 皆さん『MOONLIGHT BAR』へようこそ」
彼は白金のお屋敷の執事さん。
彼の手は魔法の手だ。
次々と色鮮やかなカクテルやジュースが、この世界に生まれていく。
****
翠さんの話、心に沁みた。
本当にその通りだ。
僕も人と接するのを極力避けていた時期があり、避ければ避ける程、孤独になって苦しんでいた。
あの頃は気付けなかったが、多くの人と話すと、育ってきた環境や性別や年齢によって考えが様々だということに気付ける。
同じ一輪の花を見ても人それぞれ、大きい、立派、綺麗、可愛い、さみしげと感じ方は様々だ。だが……感じ方は違くとも、大きな括りで言えば、花が好き、花に興味があるという共通点がある。
そうか……
違いを受け入れることは、相手を知る第一歩なんだ。
しみじみとしていると、宗吾さんに手を引っ張られた。
「瑞樹、俺たちもカクテルを作ってもらおうぜ!
「あ、はい!」
BARの列に並ぶと、前にいっくんと芽生くんがいた。
「めーくん、いっくんもおしゃけのむんでしゅか。だいじょうぶかな。よっぱらいさんにならないか、ちんぱい……」
「いっくん、ボクたちはおこさまチームだから、おこさまようのをたのもうね」
「あい! いっくん、おほしさまきらきらなのがいい」
「いいね」
「えへへ」
なんとも可愛らしい会話だ。
そうか……君たちにも大人になる時がやってくるんだね。
いっくんが20歳の時は、芽生くんは25歳?
わぁ! すごい!
大人になった芽生くんか。
うーん、僕にはまだ想像できないよ。
でも僕は25歳で宗吾さんと出会い、宗吾さんに抱かれた。
まだあどけなく幼い君も、いつか恋を知り、恋をするのかな?
誰かを愛し、誰かに愛されるのかな。
「さぁ、瑞樹さんには何を作りましょうか」
気がつくと僕の番になっていた。
「あ、あの『初恋』をイメージしたものをお願いしても?」
「ふっ、良いですね。お任せを! イタリアを代表するリキュール、カンパリとオレンジジュースを合わせた『カンパリオレンジ』は『初恋』の意味があります。オレンジジュースの甘酸っぱさが初恋を思い出させるようですよ」
「へぇ、どれどれ、君のはお日様色だな」
「宗吾さん、これは……いつか芽生くんが『初恋』をする日に想いを馳せてお願いしたので、芽生くんカラーで嬉しいです」
「えぇ! 芽生の初恋か。親としては複雑だな」
「僕たち、その頃何歳でしょう?」
「それは深く考えなくていい。君は永遠に可憐な瑞樹だから」
「くすっ、桂人さんや白江さんを見ていると、歳を重ねることが楽しみになります」
歳を重ねた分だけ深みが出て、人としての魅力が増す。
そんな風になりたい。
「よし、皆さんの手にドリンクは行き渡りましたか」
「はい!」
「あるよ~」
「あい!」
皆のGOサイン、宗吾さんのかけ声で……
「今宵ここに集まった友よ、ありがとう! 月影寺は俺たちにとって最高に居心地の良い場所だ。だから感謝の気持ちを込めて……今宵は月影寺に乾杯!」
グラスの音を合図に、ナイトピクニックがスタートした。
月影寺の庭に突如現れたナイトピクニック会場。
そこに集う人があまりに優しくて、あまりにも穏やで、泣いてしまう。
皆が極上の笑顔を浮かべて、僕に「お帰り」と声をかけてくれる。
それが嬉しかった。
しみじみと……嬉しかった!
思いがけない『おもてなし』を客人から受けたことに感動し、その場で泣き崩れる僕を、流と薙がしっかり支えてくれた。
「翠、俺に寄りかかれ」
「父さん、おれにもたれていいよ。父さんは泣き虫だなぁ」
「ううっ……」
僕の家族が支えてくれる。
兄弟と客人が、そっと見守ってくれている。
僕の涙が出切るまで、待ってくれている。
すると静かに『ムーンライト・セレナーデ』のメロディが流れてきた。これは僕が東京のマンションでいつも聴いていたジャズソングで、哀愁漂う美しいメロディに、いつも月影寺への思慕を募らせていた。
僕の脳内では歌詞がテロップのように流れ出していた。
『君の家の戸口で、君に捧げる月明かりの歌。僕はここで待っているよ、君の手に触れる時を……君に捧げる月明かりの歌、愛の歌、僕の愛しい人、月明かりのセレナーデ……』
すると流暢な英語で、僕の心と一緒に歌ってくれる人がいた。
洋……君なのか。
君の声は厳かで、まるで天使の歌声。
孤独に震えた日々、暗闇に怯えた日々。
あらゆる困難を越えて辿り着いた場所が、ここだ。
だからもう涙は止めて、顔を上げよう。
僕の想いを伝えよう。
「今宵は素晴らしい『ナイトピクニック』にお招きありがとうございます。少しお話しても?」
「そうこなくっちゃ! 翠さんの説法を皆、聞きたがっていましたよ!」
宗吾さんが明るく仕切ってくれる。彼は本当にムードメーカーだ。
「では、コホン」
深呼吸すると流と目が合った。
流はいつも僕の光だ。
あたたかく包み込んでくれる視線を浴びて、元気をもらった。
「まだまだ夏の盛り、騒がしい蝉の鳴き声で始まった朝も、すっかり日が暮れて、月影寺は今、美しい夕日に包まれています。この後、この竹林の上に満月が現れるでしょう」
僕は夕焼けを見つめ、一呼吸置いた。
皆も空を見上げている。
きっと……それぞれの満月を心に描いているのだろう。
「今日はここに集まってくれた人たちは0歳から70代まで様々です。それぞれの場所から月影寺に集まってくれました。今宵の『ナイトピクニック』……とても素晴らしい企画ですね。僕はふとお茶の世界を思い出しました。茶道を嗜んでいると、お茶を共通の話題に、出身地や職業、性別を超えて、祖父母からひ孫の世代まで仲良く交流することがよくあります。今日、この場も同じですね。多くの人と触れあうことは大切です。それぞれの人が自分とは違うことに気付けると、今度はお互いを理解したくなります。『水魚の交わり』という言葉をご存知でしょうか。お互いの立場を踏まえ敬い理解しあっていきたいものですね。さぁ今宵は一服のお茶ではなく、ソフトドリンクやお酒で交流を深めましょう」
一気に挨拶した。僕の想い、伝わるのか。
すると宗吾さんを筆頭に、皆が笑顔で拍手をしてくれた。
艶めいた凜々しい声が響く。
「まずは乾杯しましょう。 皆さん『MOONLIGHT BAR』へようこそ」
彼は白金のお屋敷の執事さん。
彼の手は魔法の手だ。
次々と色鮮やかなカクテルやジュースが、この世界に生まれていく。
****
翠さんの話、心に沁みた。
本当にその通りだ。
僕も人と接するのを極力避けていた時期があり、避ければ避ける程、孤独になって苦しんでいた。
あの頃は気付けなかったが、多くの人と話すと、育ってきた環境や性別や年齢によって考えが様々だということに気付ける。
同じ一輪の花を見ても人それぞれ、大きい、立派、綺麗、可愛い、さみしげと感じ方は様々だ。だが……感じ方は違くとも、大きな括りで言えば、花が好き、花に興味があるという共通点がある。
そうか……
違いを受け入れることは、相手を知る第一歩なんだ。
しみじみとしていると、宗吾さんに手を引っ張られた。
「瑞樹、俺たちもカクテルを作ってもらおうぜ!
「あ、はい!」
BARの列に並ぶと、前にいっくんと芽生くんがいた。
「めーくん、いっくんもおしゃけのむんでしゅか。だいじょうぶかな。よっぱらいさんにならないか、ちんぱい……」
「いっくん、ボクたちはおこさまチームだから、おこさまようのをたのもうね」
「あい! いっくん、おほしさまきらきらなのがいい」
「いいね」
「えへへ」
なんとも可愛らしい会話だ。
そうか……君たちにも大人になる時がやってくるんだね。
いっくんが20歳の時は、芽生くんは25歳?
わぁ! すごい!
大人になった芽生くんか。
うーん、僕にはまだ想像できないよ。
でも僕は25歳で宗吾さんと出会い、宗吾さんに抱かれた。
まだあどけなく幼い君も、いつか恋を知り、恋をするのかな?
誰かを愛し、誰かに愛されるのかな。
「さぁ、瑞樹さんには何を作りましょうか」
気がつくと僕の番になっていた。
「あ、あの『初恋』をイメージしたものをお願いしても?」
「ふっ、良いですね。お任せを! イタリアを代表するリキュール、カンパリとオレンジジュースを合わせた『カンパリオレンジ』は『初恋』の意味があります。オレンジジュースの甘酸っぱさが初恋を思い出させるようですよ」
「へぇ、どれどれ、君のはお日様色だな」
「宗吾さん、これは……いつか芽生くんが『初恋』をする日に想いを馳せてお願いしたので、芽生くんカラーで嬉しいです」
「えぇ! 芽生の初恋か。親としては複雑だな」
「僕たち、その頃何歳でしょう?」
「それは深く考えなくていい。君は永遠に可憐な瑞樹だから」
「くすっ、桂人さんや白江さんを見ていると、歳を重ねることが楽しみになります」
歳を重ねた分だけ深みが出て、人としての魅力が増す。
そんな風になりたい。
「よし、皆さんの手にドリンクは行き渡りましたか」
「はい!」
「あるよ~」
「あい!」
皆のGOサイン、宗吾さんのかけ声で……
「今宵ここに集まった友よ、ありがとう! 月影寺は俺たちにとって最高に居心地の良い場所だ。だから感謝の気持ちを込めて……今宵は月影寺に乾杯!」
グラスの音を合図に、ナイトピクニックがスタートした。
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