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小学生編
HAPPY HOLIDAYS 2
「えっ」
「なるほど、そう来たか」
芽生からのリクエストに思わず瑞樹と顔を見合わせてしまった。
成長のタイミング的に、そろそろこういう質問も来るのではと、予想はしていた。
……
サンタさんへ
ボクもだいぶおおきくなりました。
ちいさなこのおせわもできるようになりました。
だから、ワンちゃんをかいたいです。
ぜったいに、ちゃんと、おせわします。
だから、どうか、ボクのおうちにわんこをプレゼントしてください。
……
なるほどなぁ。
誰もが通る道かもしれないが、芽生もペットを飼いたい年頃になったのか。
そう言えば昔から芽生は犬が好きだ。
いつも散歩中の犬を憧れの眼差しで見つめていたよな。
公園でも目を輝かせて眺めていた。
「うーん、これはハードルが高いですね」
「そうだな。だがまだまだサンタさんを信じているようだな」
「そうですね! 僕も犬が好きなので是非叶えてあげたいですが、そう簡単にはいきませんよね? ここはマンションだし生き物ですし」
「うーん、このマンションは一応ペット可のようだが……俺たちは共働きで留守が多いしなぁ」
「……ですよね」
瑞樹も俺も、顎に手をあてて考え込んでしまった。
「この先……芽生が一人で家にいることも多くなるだろう。そんな時、犬がいたら寂しくないよな」
「確かにそれは一理ありますよね。高学年になると放課後スクールを利用する子も減るそうなので案じていました」
「それにしても性急だよな。いつか一軒家に引っ越したらと思っていたが。クリスマスまで時間もないし、かといって……犬のぬいぐるみで誤魔化せる年でもないしな。3年生にもなると、やっぱり年々ハードルが上がってくるな」
いっくんと遊ぶようになって、小さな子のお世話に目覚めたのだろう。それから、いっくんに弟が生まれたことも影響しているのだろう。
一人っ子の芽生が『兄弟』に憧れを抱くのは、自然の道理だ。
「少し考えてみるよ」
「はい、僕も考えてみます。ペットは飼った経験がないので……宗吾さんは?」
「俺は実家で昔、豆柴を飼っていたよ」
「そうだったのですね。可愛かったでしょうね」
「あぁ、犬は懐いてくれるからな」
「いいですね」
「そうだ、瑞樹……手を出してみろ」
「あ、はい」
瑞樹の手を取って、引き出しから柚子茶をイメージしたシトラス系の香りのハンドクリームを取り出して、塗ってやった。
「わぁ、これ、いい香りですね」
「同僚の韓国土産だよ。きっと気に入ると思って」
「柚子の香り、好きです。ほっと和みます」
「あぁ、俺も好きだ」
瑞樹のほっそりとした指先にクリームを揉み込み、丁寧にマッサージをしてやった。あの日の傷痕にもすり込んだ。
綺麗に消してやりたいと、密かに願いを込めて――
「んっ……」
一日酷使した手はカサついていたが、俺のマッサージで生き返る。
「あっ……気持ちいいです」
瑞樹は長いまつげを伏せ、うっとりとした声を出す。
「今日は俺の番だ」
「くすっ、いつも芽生くんがマッサージ係ですものね。あの……僕は手に触れてもらうのが好きなので嬉しいです」
手と手はいつでも気軽に触れ合えて、それでいて温もりを感じられる場所だ。
「しかし……芽生の願い……どうするかな」
「あの……叶えるのは難しいかもしれませんが、芽生くんが子供らしいお願いをしてくれたのは嬉しかったですね」
「確かに」
「芽生くんは、いつも聞き分けが良くて優しい子です。でも……子供には、この時期ならではの特権があると思うので、今は大いに行使して欲しいです。全てが叶うかは分かりませんが、夢や希望を持つことは大事なことですよね」
瑞樹がニコッと可憐に微笑んでくれたので、つい見蕩れてしまった。
今の瑞樹は未来へ希望を抱いている。
彼から夢と希望に溢れた前向きな言葉を聞けるのが嬉しい。
「瑞樹、クリスマスの予定は?」
「あの、23日にかろうじて休みをもらえました」
「土曜日なのにいいのか」
「はい、12月は休み返上だったので、リーダーが気遣って死守してくれたんです」
「へぇ、いつも思うが君の上司は最高だな」
「はい。でも宗吾さんはもっと最高ですよ」
瑞樹が甘えてくれる。
瑞樹が心を許して、心を見せてくれる。
もう何もかもが嬉しくて、身体をつなげなくても幸せだ。
「全部終わったら、君が起きられなくなる程、抱きたいな」
「……はい。僕もそうして欲しいです」
「それまでぐっと我慢するよ。23日はクリスマスの街に家族で出かけよう」
「あの……僕……23日に行きたい場所があります」
「どこだ?」
「お台場です。菅野から教えてもらったのですが、大きなおもちゃ屋さんがあるので、そこでいっくんと槙くん、そして僕たちから芽生くんへのクリスマスプレゼントを選びませんか」
「楽しそうだな。芽生も喜ぶよ」
「よかった」
楽しい約束をして眠りにつこう。
夢を抱き、希望を持とう。
それが大人になっても……毎日をキラキラと輝かせられる秘訣だ。
****
軽井沢
「いっくん、サンタさんへのお手紙、そろそろ書けたか」
「あい! パパぁ、これ、サンタさんにおとどけしてね」
小首を傾げてニコッと笑ういっくんに、今日もメロメロだ。
去年は『エルフしゃんになる』と可愛いお願いだったな。
今年は、なんだろう?
いっくんがぐっすり眠ってから、すみれに手紙の内容を解読してもらった。いっくんの文字を読み取れるのがすごい。やっぱり母親は偉大だと思う。
そしてその健気なお願いに、すみれと涙ぐんでしまった。
「……いっくんらしいお願いだな」
「もう、いっくんってば……いつも気を遣って、私が小さい時に我慢ばかりさせちゃったからかな」
「そんなことない。これはいっくんらしい優しいお願いだ」
さんたさんへ
あのね、いっくんにおとうとができまちた。
かわいいおとうとでしゅ。
だから、まきくんにおもちゃをとどけてほちいです。
いっくんおてつだいするから、おねがいしましゅ。
「なるほど、そう来たか」
芽生からのリクエストに思わず瑞樹と顔を見合わせてしまった。
成長のタイミング的に、そろそろこういう質問も来るのではと、予想はしていた。
……
サンタさんへ
ボクもだいぶおおきくなりました。
ちいさなこのおせわもできるようになりました。
だから、ワンちゃんをかいたいです。
ぜったいに、ちゃんと、おせわします。
だから、どうか、ボクのおうちにわんこをプレゼントしてください。
……
なるほどなぁ。
誰もが通る道かもしれないが、芽生もペットを飼いたい年頃になったのか。
そう言えば昔から芽生は犬が好きだ。
いつも散歩中の犬を憧れの眼差しで見つめていたよな。
公園でも目を輝かせて眺めていた。
「うーん、これはハードルが高いですね」
「そうだな。だがまだまだサンタさんを信じているようだな」
「そうですね! 僕も犬が好きなので是非叶えてあげたいですが、そう簡単にはいきませんよね? ここはマンションだし生き物ですし」
「うーん、このマンションは一応ペット可のようだが……俺たちは共働きで留守が多いしなぁ」
「……ですよね」
瑞樹も俺も、顎に手をあてて考え込んでしまった。
「この先……芽生が一人で家にいることも多くなるだろう。そんな時、犬がいたら寂しくないよな」
「確かにそれは一理ありますよね。高学年になると放課後スクールを利用する子も減るそうなので案じていました」
「それにしても性急だよな。いつか一軒家に引っ越したらと思っていたが。クリスマスまで時間もないし、かといって……犬のぬいぐるみで誤魔化せる年でもないしな。3年生にもなると、やっぱり年々ハードルが上がってくるな」
いっくんと遊ぶようになって、小さな子のお世話に目覚めたのだろう。それから、いっくんに弟が生まれたことも影響しているのだろう。
一人っ子の芽生が『兄弟』に憧れを抱くのは、自然の道理だ。
「少し考えてみるよ」
「はい、僕も考えてみます。ペットは飼った経験がないので……宗吾さんは?」
「俺は実家で昔、豆柴を飼っていたよ」
「そうだったのですね。可愛かったでしょうね」
「あぁ、犬は懐いてくれるからな」
「いいですね」
「そうだ、瑞樹……手を出してみろ」
「あ、はい」
瑞樹の手を取って、引き出しから柚子茶をイメージしたシトラス系の香りのハンドクリームを取り出して、塗ってやった。
「わぁ、これ、いい香りですね」
「同僚の韓国土産だよ。きっと気に入ると思って」
「柚子の香り、好きです。ほっと和みます」
「あぁ、俺も好きだ」
瑞樹のほっそりとした指先にクリームを揉み込み、丁寧にマッサージをしてやった。あの日の傷痕にもすり込んだ。
綺麗に消してやりたいと、密かに願いを込めて――
「んっ……」
一日酷使した手はカサついていたが、俺のマッサージで生き返る。
「あっ……気持ちいいです」
瑞樹は長いまつげを伏せ、うっとりとした声を出す。
「今日は俺の番だ」
「くすっ、いつも芽生くんがマッサージ係ですものね。あの……僕は手に触れてもらうのが好きなので嬉しいです」
手と手はいつでも気軽に触れ合えて、それでいて温もりを感じられる場所だ。
「しかし……芽生の願い……どうするかな」
「あの……叶えるのは難しいかもしれませんが、芽生くんが子供らしいお願いをしてくれたのは嬉しかったですね」
「確かに」
「芽生くんは、いつも聞き分けが良くて優しい子です。でも……子供には、この時期ならではの特権があると思うので、今は大いに行使して欲しいです。全てが叶うかは分かりませんが、夢や希望を持つことは大事なことですよね」
瑞樹がニコッと可憐に微笑んでくれたので、つい見蕩れてしまった。
今の瑞樹は未来へ希望を抱いている。
彼から夢と希望に溢れた前向きな言葉を聞けるのが嬉しい。
「瑞樹、クリスマスの予定は?」
「あの、23日にかろうじて休みをもらえました」
「土曜日なのにいいのか」
「はい、12月は休み返上だったので、リーダーが気遣って死守してくれたんです」
「へぇ、いつも思うが君の上司は最高だな」
「はい。でも宗吾さんはもっと最高ですよ」
瑞樹が甘えてくれる。
瑞樹が心を許して、心を見せてくれる。
もう何もかもが嬉しくて、身体をつなげなくても幸せだ。
「全部終わったら、君が起きられなくなる程、抱きたいな」
「……はい。僕もそうして欲しいです」
「それまでぐっと我慢するよ。23日はクリスマスの街に家族で出かけよう」
「あの……僕……23日に行きたい場所があります」
「どこだ?」
「お台場です。菅野から教えてもらったのですが、大きなおもちゃ屋さんがあるので、そこでいっくんと槙くん、そして僕たちから芽生くんへのクリスマスプレゼントを選びませんか」
「楽しそうだな。芽生も喜ぶよ」
「よかった」
楽しい約束をして眠りにつこう。
夢を抱き、希望を持とう。
それが大人になっても……毎日をキラキラと輝かせられる秘訣だ。
****
軽井沢
「いっくん、サンタさんへのお手紙、そろそろ書けたか」
「あい! パパぁ、これ、サンタさんにおとどけしてね」
小首を傾げてニコッと笑ういっくんに、今日もメロメロだ。
去年は『エルフしゃんになる』と可愛いお願いだったな。
今年は、なんだろう?
いっくんがぐっすり眠ってから、すみれに手紙の内容を解読してもらった。いっくんの文字を読み取れるのがすごい。やっぱり母親は偉大だと思う。
そしてその健気なお願いに、すみれと涙ぐんでしまった。
「……いっくんらしいお願いだな」
「もう、いっくんってば……いつも気を遣って、私が小さい時に我慢ばかりさせちゃったからかな」
「そんなことない。これはいっくんらしい優しいお願いだ」
さんたさんへ
あのね、いっくんにおとうとができまちた。
かわいいおとうとでしゅ。
だから、まきくんにおもちゃをとどけてほちいです。
いっくんおてつだいするから、おねがいしましゅ。
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