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小学生編
HAPPY HOLIDAYS 20
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「さぁ、立ち話も何だから、中に入ろう」
「そうよ。寒いから早く中へ入って。広樹もお茶くらい飲んでいけるでしょう?」
「いや、今日はこのまま帰るよ。3日に改めて家族で来るから、その時に」
「やっぱりそう言うと思ったわ。ちょっと待っててね」
お母さんは一旦家に入り、手提げ袋を持って出てきた。
「暖かい紅茶とドーナッツを詰めておいたわ。途中で疲れたら休憩するのよ」
「え? これ、俺に?」
「当たり前じゃない。広樹、ありがとう」
「新年から母さんの幸せそうな顔を拝めて良かったよ。可愛い瑞樹にも会えたし、お父さんと宗吾と芽生坊にも会えて、大満足だ」
お兄ちゃんらしいな。
一人一人を心から大切にしてくれる、お兄ちゃんらしい言葉だ。
「じゃあ、三日にまた来るよ」
「お兄ちゃん、本当にありがとう」
お兄ちゃんが僕の顔をじっとのぞき込む。
「瑞樹、まだ疲れているみたいだから、ここでゆっくり休めよ」
「あ、うん」
疲労困憊だったこと、やっぱりバレバレなんだな。
お兄ちゃんを見送った後、僕たちはログハウスに入った。
お父さんとお母さんが先に入り、続いて宗吾さんと芽生くんが入り、僕はあえて一番最後に入った。
一旦、玄関で立ち止まって深呼吸してから、ずっと言いたかった言葉を放った。
「ただいま!」
するとお父さんとお母さんが声を揃えて笑顔で「お帰り、瑞樹」と言ってくれた。
たったそれだけのことなのに、僕の視界は熱い涙で滲んでしまった。
ここが北の国だからなのか。
ここがお父さんの仕事部屋のあったログハウスだからなのか。
懐かしい気持ちで、心が一杯になる。
もう二度と、こんな満ち足りた気持ちで故郷に戻って来られるとは思っていなかった。
18歳で上京した時は、もう僕の故郷はどこにもないと勝手に決めつけてしまっていた。
あの頃の僕は、青かった。
自分から一人ぼっちになる道を選んで、母さんや兄さんを心配させて悲しませて……
「瑞樹、さぁ座って。ホットミルクを飲んで……あなたとても疲れているのね」
「お母さん、ありがとう」
「熱はない? なんだか顔を赤いような」
「え? 大丈夫だよ」
「ううん、大丈夫じゃないわ」
お母さんが額に手をあててくれる。
「まだ熱はないけど、少し横になった方がいいわ」
「大丈夫だよ。飛行機の中でも寝たし、もう元気いっぱいだよ」
本当は少しだけ怠かった。
寝ても寝ても疲れが取れない感じがしていた。
「瑞樹、ここはお母さんの言う通り、少し横になれ」
「宗吾さん、でも……申し訳ないです」
「おいおい、何のためにここにやってきたと? 瑞樹に寛いで欲しくて来たんだぞ。やっぱり相当疲れていたんだな。もう大丈夫だ。ここなら人手はあるから、思う存分休めるぞ」
「そうだぞ、みーくん、みんながついているから大丈夫だ」
宗吾さんとお父さんに促され、トドメは芽生くんに。
「お兄ちゃん、休めるときに休んでおかないとダメだよ。健康が一番だっておばあちゃんが言っていたよ」
「芽生くん……」
「みーくんはリビングの隣の部屋で眠るといい。ドアを開けておけば皆の様子は見えるから安心だぞ」
「お父さん、ありがとう。じゃあもう少し眠らせてもらおうかな」
こんな風に甘えていいのだろうか。
……甘えてみたくなった。
「瑞樹、いいのよ、眠りなさい」
「うん」
故郷に戻ってきて安心したのかな?
結局一眠りして起きると、熱を出してしまった。
「38℃あるわね。でも大丈夫よ、すぐに良くなるわ。咳や鼻水は出ていないし、きっと疲れが出ただけよ。安心して」
「うん」
「みーくん、宗吾さんと芽生坊の相手はお父さんに任せろ。庭先で雪遊びしてくるよ」
「うん」
結局用意してもらったお正月のご馳走は食べられなかったが、お母さん特製のおかゆとお父さん特製の蜂蜜レモンティーが、とても美味しかった。
眠りながら思い出すのは、成人式の日駆けつけてくれたお兄ちゃんと小さなホールケーキを食べたこと。
あの年も頑なに帰省せず、おせちもお雑煮もないお正月だったが、成人式のお兄ちゃんからのサプライズに……生きていて幸せだと思えた。
あの頃の僕には滅多に湧かない感情で少し戸惑ってしまったが、生きていると実感できて嬉しくもなった。
人生はいろいろだ。
思うようにいかないことばかり。
想定外のことばかり。
でも、悪いことばかりじゃない。
小さな幸せの花を摘んでいこう。
小さな幸せの芽を育てていこう。
****
軽井沢にも新年がやってきた。
「いっくん、起きられるか」
「ん……パパぁ、もうあさなの? いっくん……まだおねむだよぅ」
「いっくん、あけましておめでとう。パパと初日の出を見に行かないか」
「え? いく! いってみたかったの!」
「よし、じゃあ着替えて準備して」
「うん!」
いっくんはぴょんと飛び起きて、洗面所に走って行った。
すみれと槙はまだ夢の中。
昨日すみれには話しておいたんだ。
いっくんと初日の出を見に行って、家族の1年の幸せを祈願してくると。
家族が増えて初めてのお正月。
いっくんと俺は、今年も沢山一緒に出かけてみよう。
外へ外へ。
中へ中へ。
親子で一緒にいられる時間を、満喫しよう。
「そうよ。寒いから早く中へ入って。広樹もお茶くらい飲んでいけるでしょう?」
「いや、今日はこのまま帰るよ。3日に改めて家族で来るから、その時に」
「やっぱりそう言うと思ったわ。ちょっと待っててね」
お母さんは一旦家に入り、手提げ袋を持って出てきた。
「暖かい紅茶とドーナッツを詰めておいたわ。途中で疲れたら休憩するのよ」
「え? これ、俺に?」
「当たり前じゃない。広樹、ありがとう」
「新年から母さんの幸せそうな顔を拝めて良かったよ。可愛い瑞樹にも会えたし、お父さんと宗吾と芽生坊にも会えて、大満足だ」
お兄ちゃんらしいな。
一人一人を心から大切にしてくれる、お兄ちゃんらしい言葉だ。
「じゃあ、三日にまた来るよ」
「お兄ちゃん、本当にありがとう」
お兄ちゃんが僕の顔をじっとのぞき込む。
「瑞樹、まだ疲れているみたいだから、ここでゆっくり休めよ」
「あ、うん」
疲労困憊だったこと、やっぱりバレバレなんだな。
お兄ちゃんを見送った後、僕たちはログハウスに入った。
お父さんとお母さんが先に入り、続いて宗吾さんと芽生くんが入り、僕はあえて一番最後に入った。
一旦、玄関で立ち止まって深呼吸してから、ずっと言いたかった言葉を放った。
「ただいま!」
するとお父さんとお母さんが声を揃えて笑顔で「お帰り、瑞樹」と言ってくれた。
たったそれだけのことなのに、僕の視界は熱い涙で滲んでしまった。
ここが北の国だからなのか。
ここがお父さんの仕事部屋のあったログハウスだからなのか。
懐かしい気持ちで、心が一杯になる。
もう二度と、こんな満ち足りた気持ちで故郷に戻って来られるとは思っていなかった。
18歳で上京した時は、もう僕の故郷はどこにもないと勝手に決めつけてしまっていた。
あの頃の僕は、青かった。
自分から一人ぼっちになる道を選んで、母さんや兄さんを心配させて悲しませて……
「瑞樹、さぁ座って。ホットミルクを飲んで……あなたとても疲れているのね」
「お母さん、ありがとう」
「熱はない? なんだか顔を赤いような」
「え? 大丈夫だよ」
「ううん、大丈夫じゃないわ」
お母さんが額に手をあててくれる。
「まだ熱はないけど、少し横になった方がいいわ」
「大丈夫だよ。飛行機の中でも寝たし、もう元気いっぱいだよ」
本当は少しだけ怠かった。
寝ても寝ても疲れが取れない感じがしていた。
「瑞樹、ここはお母さんの言う通り、少し横になれ」
「宗吾さん、でも……申し訳ないです」
「おいおい、何のためにここにやってきたと? 瑞樹に寛いで欲しくて来たんだぞ。やっぱり相当疲れていたんだな。もう大丈夫だ。ここなら人手はあるから、思う存分休めるぞ」
「そうだぞ、みーくん、みんながついているから大丈夫だ」
宗吾さんとお父さんに促され、トドメは芽生くんに。
「お兄ちゃん、休めるときに休んでおかないとダメだよ。健康が一番だっておばあちゃんが言っていたよ」
「芽生くん……」
「みーくんはリビングの隣の部屋で眠るといい。ドアを開けておけば皆の様子は見えるから安心だぞ」
「お父さん、ありがとう。じゃあもう少し眠らせてもらおうかな」
こんな風に甘えていいのだろうか。
……甘えてみたくなった。
「瑞樹、いいのよ、眠りなさい」
「うん」
故郷に戻ってきて安心したのかな?
結局一眠りして起きると、熱を出してしまった。
「38℃あるわね。でも大丈夫よ、すぐに良くなるわ。咳や鼻水は出ていないし、きっと疲れが出ただけよ。安心して」
「うん」
「みーくん、宗吾さんと芽生坊の相手はお父さんに任せろ。庭先で雪遊びしてくるよ」
「うん」
結局用意してもらったお正月のご馳走は食べられなかったが、お母さん特製のおかゆとお父さん特製の蜂蜜レモンティーが、とても美味しかった。
眠りながら思い出すのは、成人式の日駆けつけてくれたお兄ちゃんと小さなホールケーキを食べたこと。
あの年も頑なに帰省せず、おせちもお雑煮もないお正月だったが、成人式のお兄ちゃんからのサプライズに……生きていて幸せだと思えた。
あの頃の僕には滅多に湧かない感情で少し戸惑ってしまったが、生きていると実感できて嬉しくもなった。
人生はいろいろだ。
思うようにいかないことばかり。
想定外のことばかり。
でも、悪いことばかりじゃない。
小さな幸せの花を摘んでいこう。
小さな幸せの芽を育てていこう。
****
軽井沢にも新年がやってきた。
「いっくん、起きられるか」
「ん……パパぁ、もうあさなの? いっくん……まだおねむだよぅ」
「いっくん、あけましておめでとう。パパと初日の出を見に行かないか」
「え? いく! いってみたかったの!」
「よし、じゃあ着替えて準備して」
「うん!」
いっくんはぴょんと飛び起きて、洗面所に走って行った。
すみれと槙はまだ夢の中。
昨日すみれには話しておいたんだ。
いっくんと初日の出を見に行って、家族の1年の幸せを祈願してくると。
家族が増えて初めてのお正月。
いっくんと俺は、今年も沢山一緒に出かけてみよう。
外へ外へ。
中へ中へ。
親子で一緒にいられる時間を、満喫しよう。
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