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小学生編
HAPPY HOLIDAYS 38
雲の上から地上を見下ろすと、赤いニット帽が3つ見えた。
仲良く遊んでいるようだ。
まるでボールが弾むように元気よく、まるで太陽が輝くように明るく。
きっと今頃、地上では笑顔の花が満開だろう。
俺はここで待つよ。
夏樹が地上に置いてきた未練を昇華して戻って来るのを待っている。
俺の恋人は、もう夏樹だけだ。
俺の腕の中に戻って来てくれるよな?
そこに光が差し込み、大きな虹が架かる。
その虹を滑るように夏樹が戻ってきた。
手には赤いニット帽を持って、再び青年の姿に戻って。
「夏樹……もう……いいのか。早かったな」
「うん、双葉、ただいま! ずっと心残りだったことを無事に昇華してきたよ。お兄ちゃんに僕の最高の笑顔を見せてあげられたんだ。だからもう満足したから、戻ってきた」
「夏樹……」
「あの事故の日が最後だなんて……お兄ちゃんはずっと僕の顔を思い浮かべる度に苦しんだと思う。だって……僕は……お兄ちゃんの腕の中で冷たくなったから……」
そういう最期もある。
悲痛な想いと残酷な思い出が、遺された人にも逝った人にも、いつまでも留まってしまうこともある。
「良かったな。神様の粋な計らいに感謝しないと」
「うん! 僕はもうこれで大丈夫。『また会えるよ』ってお兄ちゃんにちゃんと伝えられたから」
「夏樹、戻って来てくれてありがとう」
「当たり前だよ。僕は双葉と前に進むのだから」
夏樹の心が、俺の心と揃った。
それが嬉しい。
天上と地上。
とてつもなく遠いようで、実は近いんだな。
会いたくなったら、空に浮かぶ雲を見上げて欲しい。
夜空の星に願って欲しい。
永遠の別れじゃない。
いつかまた会える……
そんな別れなんだ。
****
窓ガラス越しに外を見つめていると、お父さんに声を掛けられた。
「宗吾くんは、一緒に遊ばないのか」
「俺はここで十分ですよ。今は芽生と瑞樹と……夏樹くんの時間ですから」
「そうか……君も感じるのか」
お父さんに聞かれて、コクンと頷いた。
窓の外では瑞樹と芽生が夢中で雪合戦している。
そこにもう一人いるような気がした。
赤いニット帽を被った瑞樹と芽生があちこち動き回るせいか、目に残像が残る。
もう一つ赤いニット帽が見える気がする。
俺には残念ながらはっきり見えないが、心で感じているよ。
何よりも、瑞樹、君の笑顔が物語っている。
きっと君の赤ニット帽が目印になって、夏樹くんが遊びに来てくれたんだな。
「なっくんは……まだ5歳だった……たった5年しか生きられなかった」
隣りで、お父さんが目頭を手で押さえている。
俺は夏樹くんには写真でしか知らないが、お父さんは五歳までずっと目の前で成長を見守ってきたのだ。
どんなに会いたいことか、どんなに悔しいことか。
必死に我慢しているが、肩が小刻みに震えているのが分かった。
俺はそんなお父さんの肩をそっと支えてやった。
背格好は大して変わらないので、しっかり支えられる。
「お父さん……元気を出して下さい」
「……宗吾くん?」
すると、お父さんが意外そうに俺を見つめる。
「ドイツやスウェーデンのことわざに『喜びは分かち合うことによって倍になり、悲しみは分かち合うことによって半分になる』って、あるじゃないですか。あれ、好きなんですよ。正確には瑞樹と付き合うようになってから好きになりました。大切な人がいるっていいですね。大切にしたくなります。お父さんは……俺にとって……お父さんと呼べる大切な人ですから……」
こんな風に面と向かっていうのは照れ臭いが、言葉できちんと伝えたかった。
「ありがとう。頼もしい息子だよ。君は……」
そこに瑞樹と芽生が戻ってくる。
鼻の頭を赤くして、息を切らして。
生きている!
それを全身で表現して――
「お父さん、お父さん……お父さん……夏樹が……来てくれたんです」
「あぁ、感じたよ。ここで……」
「お父さん、別れは永遠のようで永遠ではないのですね。また会えるのですね」
「みーくん」
瑞樹の言葉に俺もお父さんも救われた。
仲良く遊んでいるようだ。
まるでボールが弾むように元気よく、まるで太陽が輝くように明るく。
きっと今頃、地上では笑顔の花が満開だろう。
俺はここで待つよ。
夏樹が地上に置いてきた未練を昇華して戻って来るのを待っている。
俺の恋人は、もう夏樹だけだ。
俺の腕の中に戻って来てくれるよな?
そこに光が差し込み、大きな虹が架かる。
その虹を滑るように夏樹が戻ってきた。
手には赤いニット帽を持って、再び青年の姿に戻って。
「夏樹……もう……いいのか。早かったな」
「うん、双葉、ただいま! ずっと心残りだったことを無事に昇華してきたよ。お兄ちゃんに僕の最高の笑顔を見せてあげられたんだ。だからもう満足したから、戻ってきた」
「夏樹……」
「あの事故の日が最後だなんて……お兄ちゃんはずっと僕の顔を思い浮かべる度に苦しんだと思う。だって……僕は……お兄ちゃんの腕の中で冷たくなったから……」
そういう最期もある。
悲痛な想いと残酷な思い出が、遺された人にも逝った人にも、いつまでも留まってしまうこともある。
「良かったな。神様の粋な計らいに感謝しないと」
「うん! 僕はもうこれで大丈夫。『また会えるよ』ってお兄ちゃんにちゃんと伝えられたから」
「夏樹、戻って来てくれてありがとう」
「当たり前だよ。僕は双葉と前に進むのだから」
夏樹の心が、俺の心と揃った。
それが嬉しい。
天上と地上。
とてつもなく遠いようで、実は近いんだな。
会いたくなったら、空に浮かぶ雲を見上げて欲しい。
夜空の星に願って欲しい。
永遠の別れじゃない。
いつかまた会える……
そんな別れなんだ。
****
窓ガラス越しに外を見つめていると、お父さんに声を掛けられた。
「宗吾くんは、一緒に遊ばないのか」
「俺はここで十分ですよ。今は芽生と瑞樹と……夏樹くんの時間ですから」
「そうか……君も感じるのか」
お父さんに聞かれて、コクンと頷いた。
窓の外では瑞樹と芽生が夢中で雪合戦している。
そこにもう一人いるような気がした。
赤いニット帽を被った瑞樹と芽生があちこち動き回るせいか、目に残像が残る。
もう一つ赤いニット帽が見える気がする。
俺には残念ながらはっきり見えないが、心で感じているよ。
何よりも、瑞樹、君の笑顔が物語っている。
きっと君の赤ニット帽が目印になって、夏樹くんが遊びに来てくれたんだな。
「なっくんは……まだ5歳だった……たった5年しか生きられなかった」
隣りで、お父さんが目頭を手で押さえている。
俺は夏樹くんには写真でしか知らないが、お父さんは五歳までずっと目の前で成長を見守ってきたのだ。
どんなに会いたいことか、どんなに悔しいことか。
必死に我慢しているが、肩が小刻みに震えているのが分かった。
俺はそんなお父さんの肩をそっと支えてやった。
背格好は大して変わらないので、しっかり支えられる。
「お父さん……元気を出して下さい」
「……宗吾くん?」
すると、お父さんが意外そうに俺を見つめる。
「ドイツやスウェーデンのことわざに『喜びは分かち合うことによって倍になり、悲しみは分かち合うことによって半分になる』って、あるじゃないですか。あれ、好きなんですよ。正確には瑞樹と付き合うようになってから好きになりました。大切な人がいるっていいですね。大切にしたくなります。お父さんは……俺にとって……お父さんと呼べる大切な人ですから……」
こんな風に面と向かっていうのは照れ臭いが、言葉できちんと伝えたかった。
「ありがとう。頼もしい息子だよ。君は……」
そこに瑞樹と芽生が戻ってくる。
鼻の頭を赤くして、息を切らして。
生きている!
それを全身で表現して――
「お父さん、お父さん……お父さん……夏樹が……来てくれたんです」
「あぁ、感じたよ。ここで……」
「お父さん、別れは永遠のようで永遠ではないのですね。また会えるのですね」
「みーくん」
瑞樹の言葉に俺もお父さんも救われた。
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