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小学生編
冬から春へ 9
濡れてしまった兄さんの声が、どんどん明るくなっていくのを感じて、胸を撫で下ろした。
兄さんを悲しませないで済んで、良かった。
もう二度と、兄さんを悲しませたくないよ。
泣かせたくないんだ。
その反対にオレの安否を心配して、涙を流してくれる姿に感動した。
オレは兄さんに愛されている。
兄さんにとって、かけがえのない弟になれたんだな。
兄さん、ありがとう、大好きだ。
オレには最強の兄が二人もいる。
「電話を貸して下さってありがとうございます。本当に助かりました。どうしても連絡をしたかった人なんです」
「良かったですね。しかし本当に災難でしたね」
「はい……でも、なんとかなりますので大丈夫です。それより怪我人がいなくて良かったです」
「第一発見者のあなたのおかげですよ。早い発見、的確な避難誘導が生死を分けますので、非常事態の中よく頑張りましたね。あなたが助け出したおばあさんも元気ですので、ご安心下さい。あっ、ちょっと待って下さい」
警官は上司から呼ばれたのか、慌てた様子で無線に応じていた。
「すみません、火事現場の確認作業があるので……」
でもオレたちのことが気になるのか、何度も振り返ってくれた。
「どうぞ、気にせず行って下さい。もうすぐ兄たちが来てくれるので大丈夫です」
そうだ、お兄ちゃんが来てくれる。
オレには綺麗でかっこいい兄がいるのだから。
****
「宗吾さん、もう少しですね。あの……僕の運転で酔いませんでしたか」
「大丈夫さ。それにしても相変わらず綺麗な運転だな」
「そうでしょうか」
「なんというか、スキーで気持ちよく滑っている心地だ」
「くすっ、宗吾さん、スキーに詳しいんですね」
「はは、言ったな。オレの腕前は毎年更新……されてないが」
「また行きましょう。潤や広樹兄さん、くまさんとも滑りたいです」
「あぁ、北国も居心地いいよな」
「嬉しいです」
張り詰めた空気はもうない。
潤一家の無事を確認した君の瞳は明るかった。
俺もここまで必死に瑞樹を励ましてきたが、ようやく安堵した。
潤から連絡をもらえて良かった。
あれ以上は不安がる瑞樹を見ていられなかった。
細い身体が冷たく震えているの、見ていられなかった。
10歳の車の事故。
救急車が到着する前に、車が燃えてしまったと聞いている。
さぞかし怖かっただろう。
幼い瑞樹は冷たくなっていく弟を抱きしめたまま、まだ両親が閉じ込められている車が燃えていくのを、どんな気持ちで見つめていたのか。
想像するだけで胸が塞がる。
だが、だからこそ、思い出が消えていくのを目の当たりにした菫さん、潤、いっくんに寄り添える。
重ね重ね、潤の電話に感謝だ。
それにしても、どうしてあのタイミングで知らない番号からかかってきたのか……
頭の中で事象を整理すれば見えてくる。
誰が水面下で動いてくれたのか。
「あ、そうか。そういうことか」
全ての手筈を裏で整えてくれた人の顔が脳裏にポッと浮かんだ。
兄さんだ。
やはり堅物な兄はもういない。
相手の気持ちを汲んで、自分に出来ることをする。
今の兄さんは、それが出来る人だ。
「宗吾さん、到着前に、1本電話をしてくれませんか」
「ん? 誰にだ?」
「憲吾さんです。きっと憲吾さんが裏で手を回して、潤が僕に電話出来るように手筈を整えてくれたのではと思うのです」
「やっぱり、そう思うのか。オレも同感だ」
「じゃあ、それで正解ですね。一言、一刻も早くお礼を言いたいです。憲吾さんのおかげで潤の安否が分かったので、安心して運転できます」
「よし、かけてみるよ!」
兄さんが眼鏡のフレームを指でつまんで、照れ臭そうにぎこちなく微笑む様子が目に浮かぶ。
相手の気持ちに寄り添えるってすごいな。
それは相手が好きだから出来ること。
相手の幸せを願っているから、出来ることだ!
兄さんを悲しませないで済んで、良かった。
もう二度と、兄さんを悲しませたくないよ。
泣かせたくないんだ。
その反対にオレの安否を心配して、涙を流してくれる姿に感動した。
オレは兄さんに愛されている。
兄さんにとって、かけがえのない弟になれたんだな。
兄さん、ありがとう、大好きだ。
オレには最強の兄が二人もいる。
「電話を貸して下さってありがとうございます。本当に助かりました。どうしても連絡をしたかった人なんです」
「良かったですね。しかし本当に災難でしたね」
「はい……でも、なんとかなりますので大丈夫です。それより怪我人がいなくて良かったです」
「第一発見者のあなたのおかげですよ。早い発見、的確な避難誘導が生死を分けますので、非常事態の中よく頑張りましたね。あなたが助け出したおばあさんも元気ですので、ご安心下さい。あっ、ちょっと待って下さい」
警官は上司から呼ばれたのか、慌てた様子で無線に応じていた。
「すみません、火事現場の確認作業があるので……」
でもオレたちのことが気になるのか、何度も振り返ってくれた。
「どうぞ、気にせず行って下さい。もうすぐ兄たちが来てくれるので大丈夫です」
そうだ、お兄ちゃんが来てくれる。
オレには綺麗でかっこいい兄がいるのだから。
****
「宗吾さん、もう少しですね。あの……僕の運転で酔いませんでしたか」
「大丈夫さ。それにしても相変わらず綺麗な運転だな」
「そうでしょうか」
「なんというか、スキーで気持ちよく滑っている心地だ」
「くすっ、宗吾さん、スキーに詳しいんですね」
「はは、言ったな。オレの腕前は毎年更新……されてないが」
「また行きましょう。潤や広樹兄さん、くまさんとも滑りたいです」
「あぁ、北国も居心地いいよな」
「嬉しいです」
張り詰めた空気はもうない。
潤一家の無事を確認した君の瞳は明るかった。
俺もここまで必死に瑞樹を励ましてきたが、ようやく安堵した。
潤から連絡をもらえて良かった。
あれ以上は不安がる瑞樹を見ていられなかった。
細い身体が冷たく震えているの、見ていられなかった。
10歳の車の事故。
救急車が到着する前に、車が燃えてしまったと聞いている。
さぞかし怖かっただろう。
幼い瑞樹は冷たくなっていく弟を抱きしめたまま、まだ両親が閉じ込められている車が燃えていくのを、どんな気持ちで見つめていたのか。
想像するだけで胸が塞がる。
だが、だからこそ、思い出が消えていくのを目の当たりにした菫さん、潤、いっくんに寄り添える。
重ね重ね、潤の電話に感謝だ。
それにしても、どうしてあのタイミングで知らない番号からかかってきたのか……
頭の中で事象を整理すれば見えてくる。
誰が水面下で動いてくれたのか。
「あ、そうか。そういうことか」
全ての手筈を裏で整えてくれた人の顔が脳裏にポッと浮かんだ。
兄さんだ。
やはり堅物な兄はもういない。
相手の気持ちを汲んで、自分に出来ることをする。
今の兄さんは、それが出来る人だ。
「宗吾さん、到着前に、1本電話をしてくれませんか」
「ん? 誰にだ?」
「憲吾さんです。きっと憲吾さんが裏で手を回して、潤が僕に電話出来るように手筈を整えてくれたのではと思うのです」
「やっぱり、そう思うのか。オレも同感だ」
「じゃあ、それで正解ですね。一言、一刻も早くお礼を言いたいです。憲吾さんのおかげで潤の安否が分かったので、安心して運転できます」
「よし、かけてみるよ!」
兄さんが眼鏡のフレームを指でつまんで、照れ臭そうにぎこちなく微笑む様子が目に浮かぶ。
相手の気持ちに寄り添えるってすごいな。
それは相手が好きだから出来ること。
相手の幸せを願っているから、出来ることだ!
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