1,640 / 1,871
小学生編
特別番外編 瑞樹31歳の誕生日⑧
「芽生、眠そうだな」
「うん、お昼間いっぱい遊んだから、ねむい……」
「よし、じゃあ、もう寝ないとな」
「うん、パパ、お兄ちゃん、おやすみなさい」
パジャマの袖で目を擦る芽生くん。
まだあどけない可愛い仕草につい頬が緩む。
今日は沢山遊べたね。
僕も宗吾さんも仕事が多忙なので、春休みも夏休みも冬休みも、平日はいつも放課後スクールに預けているので、今日のように朝から晩まで一緒に遊べるのは貴重だ。
「あのね……」
「ん? どうしたのかな?」
芽生くんが僕のパジャマの裾をモジモジとした様子で引っ張る。
あ……これはあと少し甘えたいサインだね。
「もう、だめかなぁ……」
「大丈夫だよ。寝付くまで一緒にいてあげるよ」
「わぁい」
「宗吾さんいいですか」
「あぁ、俺は準備があるから頼む」
「準備?」
宗吾さんは何故か腕まくりしてウキウキとキッチンへ消えてしまったので、芽生くんと顔を見合わせて、くすっと笑ってしまった。
「見ちゃった! パパ、また悪いお顔になってた。これはおばあちゃんに報告しないと」
「くすっ、今日は大目にみてあげようか」
「そうだね、お兄ちゃんのおたんじょうびだもんね。特別すぺしゃるサービスだよ」
「ありがとう」
子供部屋に入ると、芽生くんが嬉しそうに本棚から本を持って来た。
「あのね、これ、読んでくれたらうれしいな」
「これって」
以前、僕が北鎌倉の美術館で芽生くんに買ってあげたものだ。
「これね、お話も絵もとっても好きなの。ボクのお気に入り」
北の大地を思わせる大草原に、オオカミと少年が手を繋いで立つ表紙絵の『トカプチ』という絵本。
「読んであげるよ。じゃあ、お布団に入ろうか」
「うん」
芽生くんのお布団は日溜まりの匂いがした。
初めて芽生くんのベッドにいれてもらった日を思い出す。
あの日の僕は疲労困憊だった。
精神的に追い詰められていて……
でも今日の疲れは違う。
心地よい疲労感だ。
芽生くんが僕に寄り添ってくれる。
あの時よりも一回りも二回りも大きくなって……でも芽生くんの優しく明るい所はそのままだ。
「むかしむかしある所に……」
何度も読んだのでストーリーは覚えている。
ある日、北の大地でオーロラ色に毛が輝くオオカミと可愛らしい少年が出会った。オオカミは全身が凍る恐ろしい病に冒されており、周囲から忌み嫌われるさみしい存在だった。だが少年は臆すことなく歩み寄ってくれ、二人はどんどん仲良くなり心を許しあえるようになった。
少年が優しくオオカミを抱きしめ身体を暖めると、オオカミの病と孤独は救われ、ふたりはいつまでも草原で仲良く暮らしたと言う内容の、幼い子供向けに書かれた友情物語だ。
とても読了感の良い絵本で、僕も気に入っている。
「お兄ちゃん、このオオカミさんってパパみたいだね」
「そうだね」
「優しい少年はお兄ちゃんみたいだよ」
「そうだといいな」
オオカミと人間という別の個性を持つ者同士が、尊重し合い、相手を思い遣る姿は何度読んでも心地良い。
「あのね、男の人同士でも大好きって気持ちは同じなんだね」
「あっ……」
「だからね、大丈夫だよ。お兄ちゃんとパパのことは、ボクがずっと応援するから」
ドキッとした。
芽生くんが同性愛について、こんなにはっきり自分の気持ちを言うのは初めてかもしれない。
僕と宗吾さんは同性同士で恋をしている。
愛し合っている。
そのことを、こんな小さいのに受け止めてくれるんだね。
「芽生くん、ありがとう。とても心強い言葉だよ」
「小さい時、いつもパパは忙しそうで、ボクのこと見えてなかったこともあったんだ。でもね、今は全然ちがうの。ボクだけでなく、周りのみんなをしっかり見ているの。パパがカッコいいのは、お兄ちゃんのおかげだよ」
芽生くんからもらう言葉は、愛に満ちている。
可愛らしく優しく明るくて清らかで……
もう間もなく10歳になる芽生くん。
「芽生くんのそばにいるよ。ずっと成長を見守るよ。芽生くんが大好きだから」
「お兄ちゃん大好き」
僕たちは手を繋いで眠った。
正確には僕は寝たふりを……
芽生くんの規則正しい呼吸が聞こえてくるまで、何度も囁いた。
芽生くんは僕の天使だよ。
大好きだよ――
「うん、お昼間いっぱい遊んだから、ねむい……」
「よし、じゃあ、もう寝ないとな」
「うん、パパ、お兄ちゃん、おやすみなさい」
パジャマの袖で目を擦る芽生くん。
まだあどけない可愛い仕草につい頬が緩む。
今日は沢山遊べたね。
僕も宗吾さんも仕事が多忙なので、春休みも夏休みも冬休みも、平日はいつも放課後スクールに預けているので、今日のように朝から晩まで一緒に遊べるのは貴重だ。
「あのね……」
「ん? どうしたのかな?」
芽生くんが僕のパジャマの裾をモジモジとした様子で引っ張る。
あ……これはあと少し甘えたいサインだね。
「もう、だめかなぁ……」
「大丈夫だよ。寝付くまで一緒にいてあげるよ」
「わぁい」
「宗吾さんいいですか」
「あぁ、俺は準備があるから頼む」
「準備?」
宗吾さんは何故か腕まくりしてウキウキとキッチンへ消えてしまったので、芽生くんと顔を見合わせて、くすっと笑ってしまった。
「見ちゃった! パパ、また悪いお顔になってた。これはおばあちゃんに報告しないと」
「くすっ、今日は大目にみてあげようか」
「そうだね、お兄ちゃんのおたんじょうびだもんね。特別すぺしゃるサービスだよ」
「ありがとう」
子供部屋に入ると、芽生くんが嬉しそうに本棚から本を持って来た。
「あのね、これ、読んでくれたらうれしいな」
「これって」
以前、僕が北鎌倉の美術館で芽生くんに買ってあげたものだ。
「これね、お話も絵もとっても好きなの。ボクのお気に入り」
北の大地を思わせる大草原に、オオカミと少年が手を繋いで立つ表紙絵の『トカプチ』という絵本。
「読んであげるよ。じゃあ、お布団に入ろうか」
「うん」
芽生くんのお布団は日溜まりの匂いがした。
初めて芽生くんのベッドにいれてもらった日を思い出す。
あの日の僕は疲労困憊だった。
精神的に追い詰められていて……
でも今日の疲れは違う。
心地よい疲労感だ。
芽生くんが僕に寄り添ってくれる。
あの時よりも一回りも二回りも大きくなって……でも芽生くんの優しく明るい所はそのままだ。
「むかしむかしある所に……」
何度も読んだのでストーリーは覚えている。
ある日、北の大地でオーロラ色に毛が輝くオオカミと可愛らしい少年が出会った。オオカミは全身が凍る恐ろしい病に冒されており、周囲から忌み嫌われるさみしい存在だった。だが少年は臆すことなく歩み寄ってくれ、二人はどんどん仲良くなり心を許しあえるようになった。
少年が優しくオオカミを抱きしめ身体を暖めると、オオカミの病と孤独は救われ、ふたりはいつまでも草原で仲良く暮らしたと言う内容の、幼い子供向けに書かれた友情物語だ。
とても読了感の良い絵本で、僕も気に入っている。
「お兄ちゃん、このオオカミさんってパパみたいだね」
「そうだね」
「優しい少年はお兄ちゃんみたいだよ」
「そうだといいな」
オオカミと人間という別の個性を持つ者同士が、尊重し合い、相手を思い遣る姿は何度読んでも心地良い。
「あのね、男の人同士でも大好きって気持ちは同じなんだね」
「あっ……」
「だからね、大丈夫だよ。お兄ちゃんとパパのことは、ボクがずっと応援するから」
ドキッとした。
芽生くんが同性愛について、こんなにはっきり自分の気持ちを言うのは初めてかもしれない。
僕と宗吾さんは同性同士で恋をしている。
愛し合っている。
そのことを、こんな小さいのに受け止めてくれるんだね。
「芽生くん、ありがとう。とても心強い言葉だよ」
「小さい時、いつもパパは忙しそうで、ボクのこと見えてなかったこともあったんだ。でもね、今は全然ちがうの。ボクだけでなく、周りのみんなをしっかり見ているの。パパがカッコいいのは、お兄ちゃんのおかげだよ」
芽生くんからもらう言葉は、愛に満ちている。
可愛らしく優しく明るくて清らかで……
もう間もなく10歳になる芽生くん。
「芽生くんのそばにいるよ。ずっと成長を見守るよ。芽生くんが大好きだから」
「お兄ちゃん大好き」
僕たちは手を繋いで眠った。
正確には僕は寝たふりを……
芽生くんの規則正しい呼吸が聞こえてくるまで、何度も囁いた。
芽生くんは僕の天使だよ。
大好きだよ――
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
キミと2回目の恋をしよう
なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。
彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。
彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。
「どこかに旅行だったの?」
傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。
彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。
彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが…
彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
僕の幸せは
春夏
BL
【完結しました】
【エールいただきました。ありがとうございます】
【たくさんの“いいね”ありがとうございます】
【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】
恋人に捨てられた悠の心情。
話は別れから始まります。全編が悠の視点です。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。