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小学生編
春色旅行 14
洋館から出ると、ふわりと風が吹いて、薔薇の香りがした。
芽生くんが、僕の隣で嬉しそうに声をあげる。
「お兄ちゃん、ここ、すっごくきれいだね。おばあちゃんにも見せてあげたいな」
その無垢な笑顔に、僕も自然と頬がゆるむ。
「ほんとだね。今度、一緒に来たいね」
「うん!」
「大沼のおじいちゃんとおばあちゃんのデートにもいいよね」
「くすっ、そうだね」
眼前に広がるのは、太陽の明るい光をたっぷり受けた花々と、歴史の刻まれた建物、そしてどこまでも青く澄んだ空と海。
そんな景色の中に、僕たちの家族旅行の時間がそっと溶け込んでいる。
宗吾さんが、僕にだけ聞こえるような声で言った。
「瑞樹、今日の君、すごくいい顔してるな!」
「あっ、ありがとうございます」
心の奥がトクンと跳ねて、くすぐったくも嬉しい気持ちになった。
昔の僕だったら、そんな言葉をまっすぐ受け取ることは出来なかった。でも今は胸を張って受け入れられる。
見上げた空は高く、夏のような日射しが長崎の街を照らしていた。
――毎日は、小さな幸せでできている。
それを、ちゃんと感じ取れる人でありたい。
旅の途中で出会った味、香り、景色、言葉。
どれも、大切に胸に刻んでいこう。
今の僕には、何気ない一日が、こんなにも愛おしいのだから。
僕たちはグラバー園を出て、次の角を曲がった。
家族そろって、また新しい幸せに出会うための一歩を踏み出そう。
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