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第三章
白き花と夏の庭 13
しおりを挟む「夕凪! 」
夕凪は俺の手を取ろうと確かに歩み寄ってくれた。
なのに何故だ? このタイミングでこんなことが起きるなんて!
突然足場が崩れ、滝つぼに落下していく夕凪を助けようと、私は一気に崖を駆け下りた。
その時目の端に、夕凪を助けようと滝つぼに迷いなく飛び込んだ黒い影が映った。一瞬だったが分かった。
あれは律矢だ。あいつもここを見つけたのか!
私も道なき道を一気に駆け下りた。
夕凪! こんなところで死なすわけにはいかない! すぐに助けてやる!
しかし二人共沈んだまま……浮き上がってこないではないか。
どうする? 私も助けに入るか否か。
次の判断に一瞬迷った瞬間、夕凪を抱きかかえた律矢が水面にザバっっと浮上してきた。しかし夕凪の意識がないようで、今にもまた沈みそうだ。律矢の方も息が上がって溺れる寸前のような状態だ。
「おいっ無事か! 夕凪をまずこちらへ! 」
私の声に反応した律矢がはっとした表情で、こちらを見た。
「さぁ早く! また沈んでしまうぞ! 」
ほんの少しの戸惑いの後、私の腕の中に再び夕凪が戻って来た。水を吸った夕凪の体は異常に重たく、必死の思いで岩場まで引きずるように引き上げたが、ぐったりと横たわったまま動かない。
「おいっ夕凪しっかりしろ、水を飲んだのか」
頬を必死に叩いて覚醒させる。まもなくして夕凪はぴくんと躰を震わせ、横を向いて咳き込んだ。
「ゴホッ……ゴホッ」
胸に耳をあてて確認すると、少しの水を吐いただけで呼吸は無事だった。次に頭を打っていないか怪我をしていないか、一気に躰の無事を確認した。
あの高さから落ちたのに、どうやら怪我一つないようで安堵した。だがほっとしたのもつかの間、背後でうめき声がしたので振り向くと、律矢が大きな躰の半身をまだ水につけたまま倒れていた。
「うっう……」
なんとか自力で途中まで這い上がったようだが、ぐったりとしている。どうしたんだ?
「おいっ律矢っ無事か! 」
夕凪の呼吸を確認できたので、慌てて律矢の方へ駆け寄ると……そこには……
「なっなんてことだ!」
夕凪は俺の手を取ろうと確かに歩み寄ってくれた。
なのに何故だ? このタイミングでこんなことが起きるなんて!
突然足場が崩れ、滝つぼに落下していく夕凪を助けようと、私は一気に崖を駆け下りた。
その時目の端に、夕凪を助けようと滝つぼに迷いなく飛び込んだ黒い影が映った。一瞬だったが分かった。
あれは律矢だ。あいつもここを見つけたのか!
私も道なき道を一気に駆け下りた。
夕凪! こんなところで死なすわけにはいかない! すぐに助けてやる!
しかし二人共沈んだまま……浮き上がってこないではないか。
どうする? 私も助けに入るか否か。
次の判断に一瞬迷った瞬間、夕凪を抱きかかえた律矢が水面にザバっっと浮上してきた。しかし夕凪の意識がないようで、今にもまた沈みそうだ。律矢の方も息が上がって溺れる寸前のような状態だ。
「おいっ無事か! 夕凪をまずこちらへ! 」
私の声に反応した律矢がはっとした表情で、こちらを見た。
「さぁ早く! また沈んでしまうぞ! 」
ほんの少しの戸惑いの後、私の腕の中に再び夕凪が戻って来た。水を吸った夕凪の体は異常に重たく、必死の思いで岩場まで引きずるように引き上げたが、ぐったりと横たわったまま動かない。
「おいっ夕凪しっかりしろ、水を飲んだのか」
頬を必死に叩いて覚醒させる。まもなくして夕凪はぴくんと躰を震わせ、横を向いて咳き込んだ。
「ゴホッ……ゴホッ」
胸に耳をあてて確認すると、少しの水を吐いただけで呼吸は無事だった。次に頭を打っていないか怪我をしていないか、一気に躰の無事を確認した。
あの高さから落ちたのに、どうやら怪我一つないようで安堵した。だがほっとしたのもつかの間、背後でうめき声がしたので振り向くと、律矢が大きな躰の半身をまだ水につけたまま倒れていた。
「うっう……」
なんとか自力で途中まで這い上がったようだが、ぐったりとしている。どうしたんだ?
「おいっ律矢っ無事か! 」
夕凪の呼吸を確認できたので、慌てて律矢の方へ駆け寄ると……そこには……
「なっなんてことだ!」
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