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第四章
残された日々 10
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【R18】
「流水……」
絶望は僕を闇に引きずり込んだ。
追いかけたいのに、足が動かない。
流水をこれ以上追い求めてはいけない。
下された運命は、享受しないとならない。
これは…そういうことを意味するのか。
やがて闇に落ちた僕は、そこで一歩も動けず固まっていた。寂しさと悲しさで凍り付いたように。
湖翠……行かせてやれ。
この世の中で兄弟での禁忌なんて冒すわけいかないだろう。
月影寺は何百年も続いた由緒正しき寺。
誰が存続させるのか。それはお前の役目だ。
祖父と自分の声が入り交ざり、葛藤に苦しむ。
流水がいない世界で、あとどれだけ生きればいいのだ。
ならばいっそ……はらはらと風に舞って散っていくのは桜の花びらか。
不思議なことにまだ季節も早いというのに、僕の周りには桜吹雪が降っていた。
慰めてくれるのか。
花弁は僕の涙を吸い取りながら、僕の頬をかすめていく。
もっと温めてくれ……
そんな願いと引き換えに、僕に触れてくれる手を感じた。
人の手だ。
見知らぬ……?
いや違う。
これは良く知った手。
生まれたばかりのお前の……楓の葉のように小さくあどけない手を握り締めた時、僕たちは初めて繋がった。
それから幼子のお前をおんぶしたり抱っこしたり、手をつないで夕陽を浴びた手だ。
年頃になってからはもう手を繋いだりすることはなかったけれども、ずっとまた触れたかった手。
この手になら何をされてもいい。
いっそ僕をあの世へ連れて行ってくれてもいい。
ところが手は優しく僕の衣を開き、僕を生まれたままの姿にし触れて行く。
あぁ……これは……愛撫されている。
そう思った。
ずっとずっと心の奥底に秘めた弟への恋情。
いつのまに漏れ出して、祖父から咎めを受けるまでになってしまったことを許してくれ。
僕が悪かった。
だから行かないで欲しい。
舌が触れた。
温かい温もりを僕に与えてくれる。
そんなところを?
これは夢のはずなのに妙に現実的で身を捩りたくなる。
男の胸の乳首。そんなものは何の役に立たないと思っていたが、今は違う。
流水……が僕のそんな部分に触れてくれるなんて、信じられない。
やがて感じるままに君に向かってもっと欲しいとばかりに立ち上がっていくのが恥ずかしい。
恥ずかしさはやがて心地よさに変化して、僕の下半身へ直結し、はりつめていく。
今度は……まさか……そんなことまで。
夢だ。夢なんだから甘えてしまえ。
起きたら暗黒の世界しか待っていないのだから、今は委ねろ。
そんなもう一人の僕の声がする。
「湖翠……」
低く痺れた声で僕の名を君が呼ぶ。
その途端に僕は弾けた。
「あぁっ」
欲望を吐き捨てた。
僕の欲望は流水の腹へと収まった。
ところが一度出してしまうと、酷く乾いた気分になった。
出した想いの分だけ、今度は流水の想いが欲しい。
夢か現か。もうそんなことは、どうでもいい。
手は離れ静寂が訪れる。
流水が躊躇い、去ろうとする気配がしたので、必死に重たい手を伸ばす。
「……だめ……やめるな。流水…いく…な…」
呼び止めたい。
せめて夢の中でなら、お前は立ち止まって僕を抱いてくれるのでは……そんな儚い甘い期待を込めて僕は呼んだ。
その数秒後、僕はいきなり激しい嵐に巻き込まれた。
流水の手が僕の脚を左右に大きく開いて来る。
そして舌先でありえぬ場所をぴちゃぴちゃと長い時間をかけて濡らされていく。
夢じゃなかったらこんなことするはずがない場所だ。
僕の入り口はじっとりと濡れて行く。
流水の唾液によって、解されて行く。
更にそこへ指がはいり、広げられていく。
それはひどく恥ずかしく苦痛を伴うものだったが、この先に待っているものを知っているから、僕は必死に耐えた。
「くっ……うっ…」
苦痛は快楽へ、
痛みで浮かんだ涙はやがて渇き、僕は求めた。
「流水が欲しい……せめて」
夢の中で抱いて欲しい。
「あうっ!」
ついに願いは叶う。
僕の中に挿入されてくる質量のあるものに、思わず仰け反った。
すごい衝撃だ。
ぐっぐっと狭い道を押し広げながら確実に躰の奥へ入って来るもの。
あぁ……一気に貫かれていく。
僕は必死に悲鳴を呑み込んだ。
痛い。痛いけれども……流水を受け止めていると思うと我慢できる。
「うっ……」
呻き声がする。
僕じゃない。流水の嗚咽。
「う……う…すまない。湖翠。お前を穢した」
そんなことない。
お前は僕が欲しかったものを今与えてくれているのだ。
そう教えてあげたいのに、声が出ない。
僕の唇は、ぴったりと流水の唇によって塞がれている。
口唇を重ね、躰を重ねながら、僕の最奥へと擦りあげながら流水のものがやってくる。
上下に揺さぶられ、腰を抱かれ、嵐のような口づけをされながら僕は流水の命をもらった。
「湖翠……俺を忘れないで欲しい。お前の躰の中にずっといるから。いつかまた出逢おう。その時は柵のない世界で愛しあおう。寿命を全うするまで二人で暮らそう。だから一番近いところに俺はまた生まれたい。湖翠の弟として……また」
そこで暗転し、世界が閉じて行く。
次に目覚めたとき、僕は布団の上に寝かされていた。
夢…いや違う。
この体の奥に残った痛み、違和感、そして……それ上回る甘い余韻。
まさか……起き上がろうとすると下半身に激痛が走ったが、必死に堪えて僕は庭に出た。
流水がいってしまう。
「流水いくな!」
流水の姿はもう遥か彼方。
背中がどんどん小さくなっていく。
躰が動かず、そこで躓いて転んだ。
いつもなら飛んできてくれるお前が、僕に背を向けて去っていく。
「あぁ…なんてことだ…」
それが僕が流水を見た最後。
『残された日々』了
****
悲恋で申し訳ありません。
必ず『重なる月』とセットで読んでいただきたいです。来世では必ず幸せにします!
この後もう少し続きます。少しでも彼らに救いがあればいいのですが……
いつもリアクション等で励ましていただきありがとうございます。
頑張って完結させます!
「流水……」
絶望は僕を闇に引きずり込んだ。
追いかけたいのに、足が動かない。
流水をこれ以上追い求めてはいけない。
下された運命は、享受しないとならない。
これは…そういうことを意味するのか。
やがて闇に落ちた僕は、そこで一歩も動けず固まっていた。寂しさと悲しさで凍り付いたように。
湖翠……行かせてやれ。
この世の中で兄弟での禁忌なんて冒すわけいかないだろう。
月影寺は何百年も続いた由緒正しき寺。
誰が存続させるのか。それはお前の役目だ。
祖父と自分の声が入り交ざり、葛藤に苦しむ。
流水がいない世界で、あとどれだけ生きればいいのだ。
ならばいっそ……はらはらと風に舞って散っていくのは桜の花びらか。
不思議なことにまだ季節も早いというのに、僕の周りには桜吹雪が降っていた。
慰めてくれるのか。
花弁は僕の涙を吸い取りながら、僕の頬をかすめていく。
もっと温めてくれ……
そんな願いと引き換えに、僕に触れてくれる手を感じた。
人の手だ。
見知らぬ……?
いや違う。
これは良く知った手。
生まれたばかりのお前の……楓の葉のように小さくあどけない手を握り締めた時、僕たちは初めて繋がった。
それから幼子のお前をおんぶしたり抱っこしたり、手をつないで夕陽を浴びた手だ。
年頃になってからはもう手を繋いだりすることはなかったけれども、ずっとまた触れたかった手。
この手になら何をされてもいい。
いっそ僕をあの世へ連れて行ってくれてもいい。
ところが手は優しく僕の衣を開き、僕を生まれたままの姿にし触れて行く。
あぁ……これは……愛撫されている。
そう思った。
ずっとずっと心の奥底に秘めた弟への恋情。
いつのまに漏れ出して、祖父から咎めを受けるまでになってしまったことを許してくれ。
僕が悪かった。
だから行かないで欲しい。
舌が触れた。
温かい温もりを僕に与えてくれる。
そんなところを?
これは夢のはずなのに妙に現実的で身を捩りたくなる。
男の胸の乳首。そんなものは何の役に立たないと思っていたが、今は違う。
流水……が僕のそんな部分に触れてくれるなんて、信じられない。
やがて感じるままに君に向かってもっと欲しいとばかりに立ち上がっていくのが恥ずかしい。
恥ずかしさはやがて心地よさに変化して、僕の下半身へ直結し、はりつめていく。
今度は……まさか……そんなことまで。
夢だ。夢なんだから甘えてしまえ。
起きたら暗黒の世界しか待っていないのだから、今は委ねろ。
そんなもう一人の僕の声がする。
「湖翠……」
低く痺れた声で僕の名を君が呼ぶ。
その途端に僕は弾けた。
「あぁっ」
欲望を吐き捨てた。
僕の欲望は流水の腹へと収まった。
ところが一度出してしまうと、酷く乾いた気分になった。
出した想いの分だけ、今度は流水の想いが欲しい。
夢か現か。もうそんなことは、どうでもいい。
手は離れ静寂が訪れる。
流水が躊躇い、去ろうとする気配がしたので、必死に重たい手を伸ばす。
「……だめ……やめるな。流水…いく…な…」
呼び止めたい。
せめて夢の中でなら、お前は立ち止まって僕を抱いてくれるのでは……そんな儚い甘い期待を込めて僕は呼んだ。
その数秒後、僕はいきなり激しい嵐に巻き込まれた。
流水の手が僕の脚を左右に大きく開いて来る。
そして舌先でありえぬ場所をぴちゃぴちゃと長い時間をかけて濡らされていく。
夢じゃなかったらこんなことするはずがない場所だ。
僕の入り口はじっとりと濡れて行く。
流水の唾液によって、解されて行く。
更にそこへ指がはいり、広げられていく。
それはひどく恥ずかしく苦痛を伴うものだったが、この先に待っているものを知っているから、僕は必死に耐えた。
「くっ……うっ…」
苦痛は快楽へ、
痛みで浮かんだ涙はやがて渇き、僕は求めた。
「流水が欲しい……せめて」
夢の中で抱いて欲しい。
「あうっ!」
ついに願いは叶う。
僕の中に挿入されてくる質量のあるものに、思わず仰け反った。
すごい衝撃だ。
ぐっぐっと狭い道を押し広げながら確実に躰の奥へ入って来るもの。
あぁ……一気に貫かれていく。
僕は必死に悲鳴を呑み込んだ。
痛い。痛いけれども……流水を受け止めていると思うと我慢できる。
「うっ……」
呻き声がする。
僕じゃない。流水の嗚咽。
「う……う…すまない。湖翠。お前を穢した」
そんなことない。
お前は僕が欲しかったものを今与えてくれているのだ。
そう教えてあげたいのに、声が出ない。
僕の唇は、ぴったりと流水の唇によって塞がれている。
口唇を重ね、躰を重ねながら、僕の最奥へと擦りあげながら流水のものがやってくる。
上下に揺さぶられ、腰を抱かれ、嵐のような口づけをされながら僕は流水の命をもらった。
「湖翠……俺を忘れないで欲しい。お前の躰の中にずっといるから。いつかまた出逢おう。その時は柵のない世界で愛しあおう。寿命を全うするまで二人で暮らそう。だから一番近いところに俺はまた生まれたい。湖翠の弟として……また」
そこで暗転し、世界が閉じて行く。
次に目覚めたとき、僕は布団の上に寝かされていた。
夢…いや違う。
この体の奥に残った痛み、違和感、そして……それ上回る甘い余韻。
まさか……起き上がろうとすると下半身に激痛が走ったが、必死に堪えて僕は庭に出た。
流水がいってしまう。
「流水いくな!」
流水の姿はもう遥か彼方。
背中がどんどん小さくなっていく。
躰が動かず、そこで躓いて転んだ。
いつもなら飛んできてくれるお前が、僕に背を向けて去っていく。
「あぁ…なんてことだ…」
それが僕が流水を見た最後。
『残された日々』了
****
悲恋で申し訳ありません。
必ず『重なる月』とセットで読んでいただきたいです。来世では必ず幸せにします!
この後もう少し続きます。少しでも彼らに救いがあればいいのですが……
いつもリアクション等で励ましていただきありがとうございます。
頑張って完結させます!
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