悲しい月(改訂版)

志生帆 海

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第1章

秘められた過去 4

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 ヨウは突然のことに驚き、漆黒の瞳を大きく見開いていたが、何故か抵抗せずに私の口づけを受け入れてくれた。

 男なのに綺麗な桜色の柔らかなヨウの唇は、どこまでも甘く切ない味がして、私は我を忘れて夢中になって吸い続けてしまった。
 
 くちゅくちゅ……

 唾液の混ざる音が、静かな部屋に響いていく。

 どれくらいの時間そうしていたのだろうか。口づけだけでは興奮がとまらなくなってきた私は、そのままヨウの両肩を押さえつけていた手をずらし、着物の袷から中にそっと手を滑らせ、ヨウの滑らかで温かい肌を直に感じたくなった。更には、胸の小さな突起を探ってしまった。

「あっやめろ!」
 
 その途端ヨウはビクッと怯えたような表情をして、慌てて胸元を手で押さえ私から身を離した。
 
 ヨウの怯えた声で、はっと我に返り急に気恥ずかしくなり冷や汗が出てきた。

「ジョウ、なっ……何を?」
「すまないヨウ!どうかしていたみたいだ」
「何故このようなこと?」
「その……許してくれ。どうか忘れてくれ」
「……」

 これ以上淫らな気持ちが自分の中から湧きおこる前に去らねば。慌ててヨウから逃げるように去ろうとすると、ヨウが私の手首を突然掴んだ。

「待ってくれ!」

 しばしの沈黙の後、ヨウは躊躇いがちに問いかけてきた。

「もう一度聞く……なんで……口づけなんてしたんだ?俺は男だぞ?」
「……」
「いつものお前らしくない」

 責めるように見つめられ観念した。正直に話さないとならない。この男には…。

「それはヨウがうなされて怯えているように見えて…何故だか急に抱きしめてやりたくなった。本当にすまない」
「ジョウ……俺は……」

 目の前には、月夜の湖のように澄んだ瞳を潤ませたヨウが、頬を赤らめて俯いていた。その表情にドキっと胸がまた高鳴ってしまった。

 なんでこんな言葉が口から出てきたのだろう。もう自分を抑えられなかった。

 そうなんだ。ヨウと王のもとで毎日顔を合わせるようになって一年以上過ぎ、いつも沈んだ表情のヨウに微笑んで欲しくなっていたのだ。ヨウを悩ましているものを取り除いてあげたくなっていたのだ!

 この思いはなんなのか。ずっとずっと私自身が知りたかったことだった!

 あぁ……そうか。私はヨウのことが好き気になっていたのだ。ストンと腑に落ちた。そう思うと告白の言葉が自然と口から漏れていた。

「私は、君ことがずっとずっと気になっていた」
「えっ?」
「つまり好きなんだ!女に抱くのと同じ感情だ!ヨウ、私は君のことが好きだ!」

 こんなあからさまな告白、女にだってしたことはないのに……私は一体どうなってしまうのか。
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