悲しい月(改訂版)

志生帆 海

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第2章

プロローグ あの一夜

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 お前と過ごしたあの一夜が、忘れられぬ。

 いつも戦うこと、耐えることを強いられてきた俺にとって、初めての体験だった。優しく大切に扱ってもらい、その優しさに戸惑ってしまうほど、慈しんでもらった。

 今……俺に出来ることは

 お前を失わないように、お前を守ること。

 お前が悲しまないように、俺が生きることだ。

 こんな感情は初めてだ。

 王宮の中庭を通り過ぎた時、真っ白な花が咲いているのを見つけた。葉の影に見え隠れする白い花に、医局にいるジョウの白衣を着た姿を思い出した。

 次はいつ二人きりで会えるのだろうか。恥ずかしくも会いたい気持ちばかりが募り、時間が長く長く感じてしまう。

 ジョウ、君は今……何をしている?

 俺は……お前のことを想っている。

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