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第2章
今、その時 4
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視界に飛び込んできたのは、真っ赤な髪。
「誰だ? この見慣れぬ女は」
キチが厳しい眼差しで彼女を見据える。
「駄目です! 今ここへ来ては」
慌てて赤い髪の女を隠すように、俺は前に立った。
「何言っているの!? あなた達が今すべきことは喧嘩じゃなくて、王様を看病することでしょう!」
俺の背後から、女はまだ強気に発言する。
「くくっ……この女見かけぬ者だが、一体何者だ?」
「私? 私は……医者よ」
「医者? 医官のことか? 呪い師かと思ったぞ、威勢が良いから」
「キチ殿、この医官に今一度王様を診察させてもよろしいでしょうか」
「ふんっ何度診察しても変わらぬさ。どうせなら医官のジョウも一緒に診察してみろ」
そうキチが言うので部屋を見回すと、蒼白な顔でジョウが立っていた。先ほどまでの穏やかな眼差しは、今暗黒の空のように沈んでいた。
「そうさせていただきます。赤い髪のお方とジョウ……お願いだ。王様を診察してくれ」
キチとその護衛兵が見守る中、王様の寝所に俺は入った。寝室には高熱で、息も絶え絶えに意識を混濁させている幼い王様が横たわっていた。胸に込み上げてくる熱いものを必死に沈めた。
「王様! しっかりしてください」
「……んっ……ヨ……ヨウなの? 」
「はい、ヨウでございます」
「ヨウ……僕……すごく苦しいよ……どうしよう」
「何処がですか。言ってください」
「脚の腫れた部分が特に……あぁでも体中も熱く痛い。我慢できないよ……もう」
「ここですか?」
赤い女が患部を診察するのを、ジョウも隣で手伝う。
「ヨウ……怖い……怖いよ。助けてよ……」
縋るように伸ばされた少年王の幼い手を取り、恐怖に震える指先をぎゅっと握ってやった。
「王様……しっかり……俺が御守りします」
不覚にも涙が込み上げてきてしまった。そっと腕貫で拭い、その場を一旦退き、ジョウと赤い女の診察を受けさせた。
「それで……王様の様態はどうなのだ? 見慣れぬ医官の女と王様の主治医のジョウよ」
キチが意地悪く問うと、二人は暗い表情を浮かべた。
「まさか……そんな!」
思わず声をあげてしまった。
「クククッ……もう手遅れだな」
キチの意地悪な問いにジョウは静かに、悲し気に頷いた。
そんな!ジョウ……それは駄目だ。
赤い髪の女のことを縋るように見ると、悔しそうな表情を浮かべていた。
「今、このまま此処にいたら残念だけど……手の施しようがないの。あぁ元の世界に戻ることが出来たら助かる可能性があるのに……悔しいわ」
何てことだ。間に合わないのか。このまま王様が逝ってしまわれるなんて……そんなのは駄目だ。御守りすると約束したのだ。膝が震え……立っていられぬ。しかし近衛隊長として無様な姿を見せられぬ。必死の思いで揺らぐ躰を奮い立たせる俺に、更に絶望的な現実が突き付けられる。
キチの命令する声が、遠くから無残に聴こえて来た。
「ふふふ……特別に王の死期を看取るために、お前の大事なこの二人の医官を付き添わせてやろう。更にあの世までな……くくくっ」
「なっ!なんてことを」
「お前はこの王宮の習わしを知らぬわけではないな。近衛隊長なら知っているはずだろう。足掻くな」
「死期が近い王は退位するのだ。医官がそう判断した時点で、それは実行される。亡くなるまで北の塔に主治医と共に幽閉し、さらに王亡き後は王の主治医は共に逝くのが習わしだろう。くくくっ、これで今日から私がこの国の王だ!」
「くそっ」
「捕らえよ!そして王と医官を幽閉せよ!」
「誰だ? この見慣れぬ女は」
キチが厳しい眼差しで彼女を見据える。
「駄目です! 今ここへ来ては」
慌てて赤い髪の女を隠すように、俺は前に立った。
「何言っているの!? あなた達が今すべきことは喧嘩じゃなくて、王様を看病することでしょう!」
俺の背後から、女はまだ強気に発言する。
「くくっ……この女見かけぬ者だが、一体何者だ?」
「私? 私は……医者よ」
「医者? 医官のことか? 呪い師かと思ったぞ、威勢が良いから」
「キチ殿、この医官に今一度王様を診察させてもよろしいでしょうか」
「ふんっ何度診察しても変わらぬさ。どうせなら医官のジョウも一緒に診察してみろ」
そうキチが言うので部屋を見回すと、蒼白な顔でジョウが立っていた。先ほどまでの穏やかな眼差しは、今暗黒の空のように沈んでいた。
「そうさせていただきます。赤い髪のお方とジョウ……お願いだ。王様を診察してくれ」
キチとその護衛兵が見守る中、王様の寝所に俺は入った。寝室には高熱で、息も絶え絶えに意識を混濁させている幼い王様が横たわっていた。胸に込み上げてくる熱いものを必死に沈めた。
「王様! しっかりしてください」
「……んっ……ヨ……ヨウなの? 」
「はい、ヨウでございます」
「ヨウ……僕……すごく苦しいよ……どうしよう」
「何処がですか。言ってください」
「脚の腫れた部分が特に……あぁでも体中も熱く痛い。我慢できないよ……もう」
「ここですか?」
赤い女が患部を診察するのを、ジョウも隣で手伝う。
「ヨウ……怖い……怖いよ。助けてよ……」
縋るように伸ばされた少年王の幼い手を取り、恐怖に震える指先をぎゅっと握ってやった。
「王様……しっかり……俺が御守りします」
不覚にも涙が込み上げてきてしまった。そっと腕貫で拭い、その場を一旦退き、ジョウと赤い女の診察を受けさせた。
「それで……王様の様態はどうなのだ? 見慣れぬ医官の女と王様の主治医のジョウよ」
キチが意地悪く問うと、二人は暗い表情を浮かべた。
「まさか……そんな!」
思わず声をあげてしまった。
「クククッ……もう手遅れだな」
キチの意地悪な問いにジョウは静かに、悲し気に頷いた。
そんな!ジョウ……それは駄目だ。
赤い髪の女のことを縋るように見ると、悔しそうな表情を浮かべていた。
「今、このまま此処にいたら残念だけど……手の施しようがないの。あぁ元の世界に戻ることが出来たら助かる可能性があるのに……悔しいわ」
何てことだ。間に合わないのか。このまま王様が逝ってしまわれるなんて……そんなのは駄目だ。御守りすると約束したのだ。膝が震え……立っていられぬ。しかし近衛隊長として無様な姿を見せられぬ。必死の思いで揺らぐ躰を奮い立たせる俺に、更に絶望的な現実が突き付けられる。
キチの命令する声が、遠くから無残に聴こえて来た。
「ふふふ……特別に王の死期を看取るために、お前の大事なこの二人の医官を付き添わせてやろう。更にあの世までな……くくくっ」
「なっ!なんてことを」
「お前はこの王宮の習わしを知らぬわけではないな。近衛隊長なら知っているはずだろう。足掻くな」
「死期が近い王は退位するのだ。医官がそう判断した時点で、それは実行される。亡くなるまで北の塔に主治医と共に幽閉し、さらに王亡き後は王の主治医は共に逝くのが習わしだろう。くくくっ、これで今日から私がこの国の王だ!」
「くそっ」
「捕らえよ!そして王と医官を幽閉せよ!」
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