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第2章
心は氷の如く 7
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北の塔の牢獄に横たわる徐々に凍りついてくヨウの躰。
私は辺りに誰もいないことを確かめ、そっと手首を脈診する。
途切れそうな程、微かな頼りないヨウの脈。 今にも彼方へ旅立ってしまいそうなほど微弱だった。
駄目だ……ヨウ!
逝くな! 私を置いて逝くな!
私で治せるのか。この冷たい躰を私の躰で受け止め、温めるというのが唯一の治療方法だ。そう悟った。だがその治療はもしかしたらヨウを救えるが、私を救えないかもしれない危険なものだ。
それでも私はヨウに治療を施したい。ヨウがいない世界なんて私には考えられない。
万が一のことがあるかもしれないが、覚悟の上、私はヨウの躰に己の躰を重ねる。
まずは唇から、精気を込めてヨウへ運気調息を施していく。
ビクッ──
合わせた唇のあまりの温度差に、思わず躰が一瞬跳ねる。
「くっ……こんなに冷たくなって……これではもう凍死寸前だ」
温かく聖なる気を、ヨウの口を伝って躰の隅々へ行き渡るように送りこんでいく。その温度差にビクつく躰に耐えながら、何度も深呼吸を繰り返した。まずはヨウの脳の温度をもとに戻し、意識を取り戻してやりたい。
ふーっふーっ
何度も何度も繰り返し口づけるうちに、ふっと鼻先にヨウの吐息を感じた。その直後ヨウの長い睫毛がぴくりと蝋燭の灯りに揺れた。ヨウの額に手をやり熱を確かめると、うっすらと汗が浮かび上がっていた。
体温が戻って来ている! よしっもうひと息だ!
ヨウの整った綺麗な唇をこじ開け舌を挿し入れ、口腔を撫でるように動かし、私の気をさらに喉奥へぐっと送りこむ。
ゴホッ──
ヨウが咳き込んだ! 意識が戻って来ている証拠だ。
「気が付いたか! しっかりしろ!」
もう少しで目覚めるだろう。何度も何度もヨウの頬をさすり、額を撫でてやる。
「うっ……これは……酷い……なんてことをヨウにしたのだ……」
ヨウの乱れた着衣から見え隠れする、キチからの凌辱の痕が痛々しく目を反らしたくなったった程だ。目覚める前に少しでも綺麗にしてやりたくて、温かい布で拭ってやった。
****
あぁ……優しくあたたかい手だ。
額を優しく撫でるのは誰?
覚えている。幼い頃、母がやさしく触ってくれたあの温もり。
もしや母上…ですか。
母上がお亡くなりになられたのは、本当に幼い頃です。
俺はもう一度、お会いしたいと思っていました。
****
「ヨウ!気が付いたか。良かった……」
「んっ……?」
母の温かい手の感触を思い出し、涙が自然に頬を伝いつーっと流れる感覚に、はっと目覚めると、俺は寝台に寝かされていた。
辺りは蝋燭の灯りのみで薄暗いが、すぐそばにジョウが心配そうな顔で覗きこんでいるのが分かり、ほっとした。
「……」
「ヨウ!私が見えるか」
「あぁ……ジョウ……心配かけた。ここは?」
「牢獄の中だ」
「そうか……すべて終わったのか。俺はいつの間に気を失って……」
母の手だと思ったのは、ジョウが俺の躰を清めてくれているお湯で絞った布の温もりだった。
「ヨウ……」
ジョウは辛そうな表情を浮かべ、次の言葉が出て来ないようであった。俺は我に返って、慌てて起き上がろうとしたが下半身を全く動かすことが出来なかった。さらに下半身に、あの忘れていた忌々しい鈍い痛みが蘇り、顔を歪めてしまった。
「うっ……躰が動かない」
「ヨウ!まだ動くな。君の躰はまだ半分凍っている。このままでは危険なんだ」
「凍っている?」
「あぁ……キチが氷功使いだったなんて。ヨウはキチによって躰の熱を奪われた状態で仮死状態になっていたのだ。まだ危険な状態だ!」
「……キチに……」
先ほどキチに受けたあの辱めを知られてしまったかと思うと苦しく、恥ずかしくジョウの顔を直視できずに、思わず顔を横に背けてしまった。
「ジョウ……頼む……俺のことを見ないで欲しい……」
私は辺りに誰もいないことを確かめ、そっと手首を脈診する。
途切れそうな程、微かな頼りないヨウの脈。 今にも彼方へ旅立ってしまいそうなほど微弱だった。
駄目だ……ヨウ!
逝くな! 私を置いて逝くな!
私で治せるのか。この冷たい躰を私の躰で受け止め、温めるというのが唯一の治療方法だ。そう悟った。だがその治療はもしかしたらヨウを救えるが、私を救えないかもしれない危険なものだ。
それでも私はヨウに治療を施したい。ヨウがいない世界なんて私には考えられない。
万が一のことがあるかもしれないが、覚悟の上、私はヨウの躰に己の躰を重ねる。
まずは唇から、精気を込めてヨウへ運気調息を施していく。
ビクッ──
合わせた唇のあまりの温度差に、思わず躰が一瞬跳ねる。
「くっ……こんなに冷たくなって……これではもう凍死寸前だ」
温かく聖なる気を、ヨウの口を伝って躰の隅々へ行き渡るように送りこんでいく。その温度差にビクつく躰に耐えながら、何度も深呼吸を繰り返した。まずはヨウの脳の温度をもとに戻し、意識を取り戻してやりたい。
ふーっふーっ
何度も何度も繰り返し口づけるうちに、ふっと鼻先にヨウの吐息を感じた。その直後ヨウの長い睫毛がぴくりと蝋燭の灯りに揺れた。ヨウの額に手をやり熱を確かめると、うっすらと汗が浮かび上がっていた。
体温が戻って来ている! よしっもうひと息だ!
ヨウの整った綺麗な唇をこじ開け舌を挿し入れ、口腔を撫でるように動かし、私の気をさらに喉奥へぐっと送りこむ。
ゴホッ──
ヨウが咳き込んだ! 意識が戻って来ている証拠だ。
「気が付いたか! しっかりしろ!」
もう少しで目覚めるだろう。何度も何度もヨウの頬をさすり、額を撫でてやる。
「うっ……これは……酷い……なんてことをヨウにしたのだ……」
ヨウの乱れた着衣から見え隠れする、キチからの凌辱の痕が痛々しく目を反らしたくなったった程だ。目覚める前に少しでも綺麗にしてやりたくて、温かい布で拭ってやった。
****
あぁ……優しくあたたかい手だ。
額を優しく撫でるのは誰?
覚えている。幼い頃、母がやさしく触ってくれたあの温もり。
もしや母上…ですか。
母上がお亡くなりになられたのは、本当に幼い頃です。
俺はもう一度、お会いしたいと思っていました。
****
「ヨウ!気が付いたか。良かった……」
「んっ……?」
母の温かい手の感触を思い出し、涙が自然に頬を伝いつーっと流れる感覚に、はっと目覚めると、俺は寝台に寝かされていた。
辺りは蝋燭の灯りのみで薄暗いが、すぐそばにジョウが心配そうな顔で覗きこんでいるのが分かり、ほっとした。
「……」
「ヨウ!私が見えるか」
「あぁ……ジョウ……心配かけた。ここは?」
「牢獄の中だ」
「そうか……すべて終わったのか。俺はいつの間に気を失って……」
母の手だと思ったのは、ジョウが俺の躰を清めてくれているお湯で絞った布の温もりだった。
「ヨウ……」
ジョウは辛そうな表情を浮かべ、次の言葉が出て来ないようであった。俺は我に返って、慌てて起き上がろうとしたが下半身を全く動かすことが出来なかった。さらに下半身に、あの忘れていた忌々しい鈍い痛みが蘇り、顔を歪めてしまった。
「うっ……躰が動かない」
「ヨウ!まだ動くな。君の躰はまだ半分凍っている。このままでは危険なんだ」
「凍っている?」
「あぁ……キチが氷功使いだったなんて。ヨウはキチによって躰の熱を奪われた状態で仮死状態になっていたのだ。まだ危険な状態だ!」
「……キチに……」
先ほどキチに受けたあの辱めを知られてしまったかと思うと苦しく、恥ずかしくジョウの顔を直視できずに、思わず顔を横に背けてしまった。
「ジョウ……頼む……俺のことを見ないで欲しい……」
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