社会のゴミカップルに絶たれた青年の夢と命~1994年・青山学院大生殺人事件~

44年の童貞地獄

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底なしの厚かましさ

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松本の断末魔の悲鳴が近所中に響き渡ったにもかかわらず、住民たちは誰も通報しなかったらしい。
犯行が発覚したのは、何と二日も後の2月18日午前10時半ごろだった。

それは、和歌山県の松本浩二の母が「16日から浩二が電話に出ない」と心配して東京在住の姉、すなわち松本の伯母に様子を見に行ってくれるように依頼したことによる。
この伯母とは、出水に奪われた航空大学校への入学祝い金5万円を送った人物だ。

203号室を訪れた伯母は、部屋に鍵がかかって応答がないことから不動産会社から合鍵を借りて入り、そこで変わり果てた姿となった甥を発見したのだった。

半狂乱になった伯母の通報で駆け付けた警察による捜査が始まったが、すぐに出水智秀と飯田正美が捜査線上に浮かぶ。

勝手に生活していた205号室まで血の足跡が残り、その室内からは血の付いたタオルなどの物証が出てきたし、同じマンションに住む学生が不審な男女を見たという証言もあった。
何より宮崎に逃げていた本来の205号室住民である名尾の口から出水と飯田のことが語られたからである。
捜査本部が置かれた警視庁玉川署は、さっそく二人を重要参考人として手配した。

一方の出水と飯田は、犯行現場を離れた後、静岡県熱海市へ逃亡。

同市内の銀行で松本から奪ったキャッシュカードで現金1万円を引き出したりして当初はホテルにも宿泊したが、無計画にもパチンコで使い果たすなどして瞬く間に懐が寂しくなっていた。
すると、雨露をしのぐために熱海市伊豆山にある企業の別荘に入り込んで潜伏する。
またも無断での侵入であることは言うまでもない。

その逃亡中に自分たちに捜査の手が及んでいることをテレビで知った。
すでに、青山学院大生が自宅マンションで殺されたことが報じられており、容疑者と疑われている男女が自分たちとしか思えないことが彼らにも分かったのだ。

22日午後4時、所持金も数十円しかなく、もう逃げきれないと観念した出水が決意したのは、またしても勝手に入り込んだ場所で心中することだった。
ここまで他人に平気で迷惑をかけることができる奴らも珍しい。
死にたければ山奥とかで死ね、と言いたくなる。

二人は、別荘内の押し入れに入ってガスコンロを持ち込み、今度こそ覚悟を決めてガス心中を図った。

そして、今度も腹がたつことに死ねなかった。

ここで出水が信じられないくらいマヌケなことをやらかしたからである。
最後の一服を吸おうと、ガスが充満する中でタバコに火をつけたのだ。

当然爆発が起こり、火元だった出水は大やけどを負ってのたうち回った。

一方の飯田は軽傷であり、苦しむ彼氏を見かねた彼女は、夜になって119番通報。
やって来た救急車で病院へ運ばれたが、二人ともこの別荘の所有者ではないことは誰の目にも見え見えだったために、熱海署に住居侵入の容疑で逮捕されてしまった。

警察にいったん捕まった以上、今度こそ年貢の納め時である。
その日のうちに、青山学院大生殺人の重要参考人であることが判明し、翌23日には捜査本部のある玉川署に移送された結果、両人ともあっさり容疑を認めて強盗殺人容疑で逮捕された。
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