キツネと龍と天神様

霧間愁

文字の大きさ
上 下
9 / 366

残酷で蠱惑的な微笑みの天神曰く

しおりを挟む
 自分の居場所がないと嘆く少女の話ね。

 少女は自分に自信がなかった。
 歌ってみたり、絵を描いてみたり、芝居をしてみたり、勉強をしてみたりしたけれど、どれも巧くいかない。
 いつも周りと自分を比べて、巧い人間ばかりを仰いで絶望していたわ。

 だから、雷を落として異世界に転移させてあげたのだわ。
 ちーと能力を一つ付与して。

 そして少女は転移したその日に死んだわ。
 魔物に喰い殺された。でも、ちーと能力“死に戻り”で死ねずに、転移直後に巻き戻る。
 ここからは簡単な想像力で解るだろうから、詳しくは書かないけれど、少女は死んで死んで死にまくったのよ。

 四桁に届かなかったけれど、異世界で殺されまくった少女が、寿命をまっとうした時に再会したわ。
 感謝してくる少女は、後悔もしてた。

 だから少女を雷を落とした直後の、元の世界に戻してあげた。
 勿論、ちーと能力はナシよ。

 慈愛? 慈善? 違うわ、お布施をしてくれる人間を一人増やしただけよ。それだけ。
しおりを挟む

処理中です...