キツネと龍と天神様

霧間愁

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傷心するキツネ曰く

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 次の停車所で降りないと……。揺れるつり革を眺めながら、息を吐く。
 まだ誰も降車ボタンを押していない。そんな状況に、心音が大きくなっていく。

 とうとう僕、キツネもこのボタンを押せる機会が巡ってきたのだ。

 そう思うと、隠している尻尾が暴れ出しそうだった。
 市内をぐるりと周回するバスの前方の座席に座り、固唾を呑む。
 問題は、僕が手を伸ばすと誰かがボタンを押してしまうことだ。
 これまで挑戦すること、数十。
 過去の僕は、知らない誰かに破れてきた。いや、謀られてきたんだ。
 ボタンに手を伸ばす僕、押す直前に誰かに押されて硬直する僕、気まずくなって手をおろす僕。
 そんな僕を見て誰かはあざ笑っているに違いない。

 今回こそは、よし、と人差し指を伸ばして……。
 ポン、と車内に降車を知らせる音が鳴った。

 停車したバスのドアが開くと、バスに乗っていた幾人かが降りていく。
 その中の一人、悲しい気持ちのまま僕は目的地に向かった。
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