10 / 366
傷心するキツネ曰く
しおりを挟む
次の停車所で降りないと……。揺れるつり革を眺めながら、息を吐く。
まだ誰も降車ボタンを押していない。そんな状況に、心音が大きくなっていく。
とうとう僕、キツネもこのボタンを押せる機会が巡ってきたのだ。
そう思うと、隠している尻尾が暴れ出しそうだった。
市内をぐるりと周回するバスの前方の座席に座り、固唾を呑む。
問題は、僕が手を伸ばすと誰かがボタンを押してしまうことだ。
これまで挑戦すること、数十。
過去の僕は、知らない誰かに破れてきた。いや、謀られてきたんだ。
ボタンに手を伸ばす僕、押す直前に誰かに押されて硬直する僕、気まずくなって手をおろす僕。
そんな僕を見て誰かはあざ笑っているに違いない。
今回こそは、よし、と人差し指を伸ばして……。
ポン、と車内に降車を知らせる音が鳴った。
停車したバスのドアが開くと、バスに乗っていた幾人かが降りていく。
その中の一人、悲しい気持ちのまま僕は目的地に向かった。
まだ誰も降車ボタンを押していない。そんな状況に、心音が大きくなっていく。
とうとう僕、キツネもこのボタンを押せる機会が巡ってきたのだ。
そう思うと、隠している尻尾が暴れ出しそうだった。
市内をぐるりと周回するバスの前方の座席に座り、固唾を呑む。
問題は、僕が手を伸ばすと誰かがボタンを押してしまうことだ。
これまで挑戦すること、数十。
過去の僕は、知らない誰かに破れてきた。いや、謀られてきたんだ。
ボタンに手を伸ばす僕、押す直前に誰かに押されて硬直する僕、気まずくなって手をおろす僕。
そんな僕を見て誰かはあざ笑っているに違いない。
今回こそは、よし、と人差し指を伸ばして……。
ポン、と車内に降車を知らせる音が鳴った。
停車したバスのドアが開くと、バスに乗っていた幾人かが降りていく。
その中の一人、悲しい気持ちのまま僕は目的地に向かった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
5
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる