デスメタル転生

伊勢カイン

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第二話 デスボに魅せられし仲間たち

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 モヒカン男に——名前は確かモヒートと名乗っていたな。
 彼に引っ張られて神殿らしき場所を出ると、そこはどうやら城だったようで、眼前には城下町が広がっていた。

「ああ、それでか」

 僕は街を行く人々を見て納得する。
 獣人や羽のある妖精、爬虫類顔の亜人種たち。
 この世界で、モヒートの悪魔メイクに反応する人がいないのは、『そういう顔の種族だと思われているから』だな。

「で、ヴェイス!
 破壊神のいるっていう北はどっちだ?」
「この街道を進んだ方向です」
「ちょっと、二人とも!
 破壊神への道中って危険なんじゃないの?」

 足早に破壊神退治へ向かう二人を呼び止める。

「たしかに、モンスターが出ますね」
「やっぱり危険なんだ!?」
「しかし、エルフであるわたしは上級魔法が使えますから問題ありません」
「俺はデスボイスが使えるぜ!」
「デスボイス!?
 師匠、実に強力そうな名前の技ですね!」
「そういうのいいから!
 なんか、武器とか必要なんじゃないの?」
「それでしたら!
 ちょうど、この街には凄腕で評判の鍛冶屋がいますね」


 ◆ ◆ ◆


 エルフの青年——ヴェイスの案内で、街にある武器屋へとやってきた。

 奥からは、カンカンと職人たちが鉄を鍛えているらしき音が日々言いてくる。

——カンカン、カンカカン、カカカカン、カカカカカ!

 複数の職人がいるのだろう。
 奥の工房から響いてくる音は、何重にも聴こえた。

「ここのドワーフの職人は両手で金槌を振るう二刀流で、同時に八本の剣を鍛えられるんですよ」

 ヴェイスの説明を聞くや否や、モヒカン男はずかずかと奥の工房へと勝手に入っていた。

「お、おいちょっと!」

 慌てて追いかけて中に入ると、8つの炉に取り囲まれた小柄な髭モジャ筋肉男がいた。
 複数の鍛治職人がいるのかと思ったが、工房には彼一人しかいない。
 両手には鉄槌を持ち、リズミカルに武器らしき金属を叩いている。
 しかも、8つの炉を同時にだ!

『ヴォ”エ”エ”エ”エ”エ”エ”!!
 肉を焦がす灼熱!!
 何度も何度も鉄槌を振り下ろす!!
 悲鳴を上げても止まらない!!
 逃れられない運命ィ”ィ”ィ”ィ”ィ”ィ”ィ”ィ”ィ”ィ”!!』

 ちょっと!?
 なんで歌い出した!?

——ダムダムドン、ダンドドン、ズドドド、ダダダダダダダーン!

 彼のデスボイスと共に、金槌の音が変化する。
 これはドラムの音なのか!?
 金属のぶつかる音じゃないだろ!

「ふう。なんじゃ、お主らは!?」
「わたしたちは勇者パーティ。
 これから破壊神を倒しに行くので、武器を調達しに来たのですよ」
「そんなことを聞いているんじゃない!
 なんだったんだ、今の音は?」
「デスメタルだぜ。
 今の音がオメーの求める魂の音色だ!」
「魂の……!
 どうりで、いつも以上に鍛治のキレがあった」
「よし、オメーも一緒に来い」
「ぜひそうさせてもらおう」
「俺はモヒート、こいつはノゾム!」
「わたしはヴェイス」
「ワシは鍛治職人のドワムじゃ」

 ひいい!?
 僕が見ている前で、どんどん話が進んでいく。
 今度は『ドワーフのドワムが仲間になった』だな?

「ぼ、僕たちは、身を守るための武器を探しに来たんです!」

 当初の目的をドワーフに伝える。

「好きなものを持っていけ!
 旅に出るなら、しばらくは閉店だからな」
「俺はこの鉄の大斧にするぜ」
「わたしは魔法が使えるので、ここにあるような武器は要りませんね」

 僕は戦いたくないので、この店に唯一あった防具——大盾を持っていくことにした。


 ◆ ◆ ◆


 街を出て草原を抜け、森までたどり着いたところで辺りはすっかり暗くなっていた。

「わたしは『旅の吟遊詩人』をやっていましたからね。
 ここはお任せください」

 エルフのヴェイスがテキパキとキャンプの準備を進める。
 実に頼もしい。
 けど……僕はなんでこんな旅しているんだっけ?
 女神や王様に何か言われたとして、断る選択肢もあったはずなのに。
 いつもあの男——モヒートが勝手に話を進めてここまで来てしまった。

「こんな感じで、任せたぜ!」
「ワシにかかれば朝飯前じゃよ!」

 そのモヒートはというと、ドワムと何か相談している。
 僕は破壊神に会っても何もできないからな!
 きみたちで勝手に倒してくれ!


 ◆ ◆ ◆


 翌朝。

——ギャギャギャギュイーン♪

 派手な音で目を覚ます。

「ギャハハ!
 マジで朝飯前にやってくれるとはな!
 さすが凄腕の鍛冶屋だぜ」

 モヒートが鉄の大斧を振り回してご機嫌に叫んでいる。
 朝から悪魔メイクがバッチリすぎるな。

 ん? な、なんだあれ!
 鉄の大斧に、弦が引いてある!?
 まるでギター!?

「師匠、さすがの音です!
 わたしがやるとどうしてもこう——」

——べべべべン♪ ビーン♪

 ヴェイスはリュートの音ではないが、ギターの音とも違う音を奏でた。
 ベース……か?

「オメーはそれでいいぜ!
 それが、オメーの魂の音だ」
「わたしの、音……!」

——べべべべン♪ ビーン♪

 ヴェイスはその言葉に吹っ切れたのか、嬉しそうにリュートを奏でた。
 なんだこれ?


 ◆ ◆ ◆


 森の奥深く、僕たちは狼の群れに囲まれていた。
 腹をすかせた狼たち。

「ひいっ」

 僕は大きな盾に身を隠すことしかできない。

「こいつはやべえ!
 というわけで、オメーら行くぜ!」

——ギャギャギャギュイーン♪

『ヴォ”エ”エ”エ”エ”エ”エ”!!
 腹をすかせた狼!
 肉を切り裂き牙を剥く!
 今夜は人肉パーティだァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”!!』

 え、演奏!?
 モヒート、歌っている場合じゃないだろ!

——べべべべン♪ ビーン♪
——ズドドド、ダダダダダダダーン!

 ヴェイスとドワムも演奏を合わせ始めた!?
 も、もうお終いだああー!

「…………?」

 だが、無防備な僕たちに対して、狼たちは襲ってこない。
 大音量にひるんでいるのか?

 !?

 いや、そうではない。
 狼たちが演奏に合わせて頭を上下に——ヘドバンしている!

「ウォウ♪ ウォウ♪ ワオーン♪」

 ついには曲に合わせて、狼たちの遠吠えが始まった!

「ノリのいいオーディエンスだぜ!
 センキュー!
 オメーらも一緒に地獄へ送ってやるぜえ!」

 こうして、僕たちの旅に狼の群れが加わった。
 山を越えたころには、狼の他にも熊やらゴリラやらゴブリンやらのモンスターも観客となり、総勢50匹を超える軍団となっていた。
 なんだよこれ、こええよ!
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