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14章〜15章
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14.章 王太后メアリー
ある初秋の昼下がり、突然、王太后メアリーの邸宅にカリナ・オルデウスは招かれた。
最終試験の内容が決まって、かなりの月日がたち、ずいぶんと待たされた後、ようやくカリナは王太后メアリーに謁見を許された。
しかも、それは急な呼び出しで、決まってすぐ、その日の午後のお招きだった。
王太后メアリーを前にカリナ・オルデウスは首を垂れて、控えている。王太后に問われるまで、挨拶も声も掛けてはいけない。
「お前が、私の宝石を盗みに来た、カリナ•オルデウスだね。」
カリナを一瞥すると、王太后メアリーは腹立たしげに、そう言った。
「可愛い孫息子のリアル王太子を、上手くたらし込んで。
王妃やリアルは騙せても、
この私、メアリー•アルスラヌス。この国の王太后の目は誤魔化せないよ。」
そう言うと、急にスイッチが入ったように、カリナに食ってかかる。
「…何があっても、私の大切な宝石は渡さない。
さぁ、欲しければこのか弱い年寄りから力づくで奪ってお行きなさい!」
カリナは少し面食らったものの、丁寧に膝を曲げて、挨拶をした。そして、次のように、弁明した。
「いえ、わたくしは、そんなつもりは、全くありません。本日は王太后様のお話を伺いたく、参りました。」
カリナが話すやいなや、ますます王太后は激した。
「お前など、話し相手によんだ覚えはない!卑しい盗人め。下がりなさい!」
そう言うとカリナを下がらせた。
王太后メアリーの感情の起伏の激しさにカリナは少々面食らってしまった。
やはり、お噂通り、王太后メアリーはお心のご病気なのだというのは、なんとなく察するものがあった。
カリナ•オルデウスはメアリー王太后の屋敷を出るころに、ようやく、ふっと息を吐く事が出来た。
「どうやら、王太后様に完全に嫌われてしまったみたい。」
カリナはこれから、どうすべきなのだろうと途方に暮れた。
15.章 愛のない結婚
─翌日。
またしても王太后メアリーの屋敷にカリナは赴く。なるべく慇懃無礼にならないよう、気をつけながら、カリナは丁寧に挨拶をする。
王太后は、またしてもカリナの挨拶を無視しながら、独り言のように話す。
「また来たのね、卑しい盗人め。ちょうどお茶を淹れている時に来るなんて、なんて卑しい子だろうね。」
カリナ•オルデウスはそう言われながらも、王太后の用意した、お茶のセットを見る。
『そう言いながらも、2人分のお茶のセット。王太后様は、わたくしの分までお茶とお菓子の用意をして下さっている。』
カリナはこの嬉しい発見に、心のなかで喜んだ。
『この方は言われているより、ずっと優しい方なのでは、ないかしら?』
こうして、ふたりはぎこちなくもある、お茶会を毎日、習慣として、続けることになった。
カリナは王太后メアリーの手ずからから、のお茶をいただきながら、王太后の趣味の良さについてはなした。
「王太后様はいつも素敵なお召し物を身につけておられますね。
それにお部屋の内装の趣味もとても、素晴らしいです。
わたくしには王太后様ほどの物は、手に入らないでしょうが、少しでも近づきたく存じますので、どちらで手配されたのか、教えていただけないでしょうか?」
カリナがそう言うと、王太后メアリーは毒舌で返す。
「ふん、取り入ろうったってそうはいかないよ。」
王太后はそう憎まれ口を叩きながらも、満更でもないようだ。
この様にして、カリナ•オルデウスと王太后は少しずつ打ち解けていき、何度もお茶を飲む間柄になっていった。
ある日の午後、珍しく機嫌の良い王太后は、こんな、先国王陛下との思い出話しを聞かせてくれた。
「先国王陛下とわたくしは、しょせん、政略結婚というやつで、
新婚当初から、戦争で長い間、離れ離れだったわ。」
そう言って王太后は遠い目をした。
「手紙をたくさん書いたのだけど、返事の手紙は1通も返してはくれなかったわ。
そのせいか、初めから打ち解けられなくて、いつまでもぎこちなかったの。
わたくし寂しくて、ワザと困らせる様な、ひどい浪費をしたわ。でも王陛下はどんなに浪費しても、咎めることもなく、何も言ってはくれなかったわ。」
「それが、ますます悔しくて。そんなことをしているうちに、今の国王エリエルが生まれて。
やっと愛する存在が出来たけれど、先王陛下との関係は変わらず。結局、先王陛下はわたくしの事どう思っていたのか分からず仕舞いだったわ。」
「先王陛下はもしかしたら、わたくしを持て余していたのかもしれないわね。」
王太后は自らの婚約の指輪を眺めながら話す。
「そんな結婚生活で、唯一慰めが宝石だった。」
「だからどうしてもこの宝石、婚約の指輪を手放すことが出来ないの。ごめんなさいね。」
この哀れな老女から、指輪を取り上げるなんてとても出来ない。そうカリナはそう思った。
王太后は気を取り直して、庭に目をやり、話題を変えた。
「この庭は先国王陛下が作ってくれた薔薇の庭なのよ。」
カリナは薔薇園を眺めながら、考える。
『とても、素敵なお庭。こんなお庭を作ってくださるのなら、先国王陛下は、きっと王太后様を愛していたはずだわ。』
そんなことを考えて、カリナは庭を散策している。
王太后さまは、足がお悪いのでついてはこない。
「わたくしもお供したいのだけれど、今日は足が悪くて。」
「いえ、そんなお気になさらないで、すぐに戻りますわ。王太后さまの侍女も、ついてきてくださるし」
カリナは歩きながら、侍女に尋ねる。
「あの古い塔はなんですか?」
侍女がそれに答える。
「こちらですか。」
「本当か定かではありませんが、古の時代、魔王が王宮に攻めて来た時に、王妃様とその子供達が隠れるため逃げ込み、難を逃れた。
という伝説が残っているそうですよ。その記念に壊されずに残されたと、きいています。」
侍女は続ける。
「とても古くてもう何十年も人が入ったことは無いという話しですよ。」
カリナは、それを聴いてわくわくする。
『まぁ!古い打ち捨てられた古塔。なんだかお宝の匂いが、ぷんぷんしますわ!』
古い塔を見上げながら、
侍女は心配しながら声をかける。
「お嬢様お気を付けて下さい!
お怪我などされては、王太后さまに叱られてしまいます。」
『古塔マニアのわたしに、目を付けられたのが運のつき。
もしかしたら、忘れ去られた、王家の秘密の魔術書が眠ってたりして!』
『それにしても、すごい鳩のフン。』
そう言って頭上を見上げると─。
『鳩?!』
無数の鳩に囲まれるカリナ。
「一体、何羽いるのよこの鳩!」
その中の1羽がカリナの頭上をくるりと、ひと回りする。
すーっと旋回しカリナをまじまじと眺め、しばらくすると彼女の肩に止まった。
「お前は、すごく人懐っこいのね。」
そう言って、肩から指に止まらせた。
『とても不思議、他の鳩達も全然逃げない。とても人慣れしてるわ。』
カリナはある事に気づく。
『あら、この鳩は…もしかして……⁈』
15.章 愛の真実
─後日。
「お久しぶりです王太后様。」
そう言ってカリナは、挨拶をした。
「ずっと待っていたのよ。
貴女がわたくしをほっておくから、わたくしはまた信じた人に裏切られたと、勘違いしちゃったじゃない。」
『王太后様は、素直でかわいい人なんだなぁ…。』
カリナはこの頃は、このおばあちゃまがとても可愛らしく、好ましく感じていた。
「長らくお暇を頂いたのには、理由があります。とても、とても、素敵なプレゼントを用意するためです。」
カリナが窓を開けると、鳩がバサバサと部屋の中に入って来た。
鳥はひとまわり旋回すると、カリナの肩に止まった。
王太后は尋ねる。
「すごく、かわいいわ。それがわたくしへのプレゼント?」
「いえこの子は、古い塔に入った時に、懐かれてしまいまして。それから、ずっとわたしから、離れないもので…」
「古い塔?」
「ええ、庭の隅に立つあの塔でございます」
「王太后さまこの手紙を読んでいただけないでしょうか?」
カリナはそう言うと、古い手紙を王太后に手渡した。
{…王太子妃メアリーよ、怒っているんだね。もう戦争が始まってから、3か月になる。
それでも、片時も君を想わない日はないよ。
生きて帰れると良いが、そうもいかない戦況だ。
どうか、私が死んだら、新しい家族を迎えてくれ。それでも、私はいつまでも貴女を愛している。…。
愛を込めて、王太子リアン より}
「この筆跡…先国王陛下のもの!どうしてこんな手紙があるの⁈」
王太后が驚いて尋ねる。
「実はこの肩に止まらせた鳩は、伝書鳩なんです。」
カリナ•オルデウスは鳩の喉を、優しく撫でながらそれに答える。
「実はあの古塔のなかに、何百羽とこの子みたいな、迷い伝書鳩が、住みついていました。そして、」
カリナは言葉を続ける。
「どうも、歴代の伝書鳩たちもあの古塔に迷い込んで、住み着いてしまう、悪い癖があったみたいなんです。
わたしが古塔を見つけて、鳩たちの巣のなかを探したところ、たくさんの読まれなかった手紙を発見したんです。」
カリナは塔の様子や手紙をこの様に続けた。
「大量の手紙は王印も解かれず、ひっそりと鳩のフンの紛れて、積もっていました。
それを綺麗にして、ほとんどは判読不能な物ばかりでしたが、奇跡的に読めるものか何通かありましたので。
その手紙の内容は、先国王陛下が常に王太后様を気遣う、愛のあるものばりでした。」
カリナは王太后様に、分かってもらいたい一心で、説明を続ける。
「王太后様。先国王陛下様は、はきっと王太后様を深く愛していらっしゃったと思います。」
カリナはここまで言うと、話を閉じた。
王太后は手紙を何度も読み返す。
王太后の手はブルブルと震え、やがて涙は頬を伝い落ちた。
「読めないけど…まだ手紙がたくさん見つかったのね。」
王太后は言葉を振り絞って、カリナに尋ねる。
「はい。読めないほど、破損がひどく、かなり汚いですが…。それでも保管してあります。」
王太后は言葉を続けて、懇願する。
「それをちょうだい。みんなわたくしに、みんな渡して、ちょうだい!」
カリナは少し、戸惑って念をおす。
「かなり汚くて、かなり、においも…ありますが。」
王太后は、ほっと笑みを浮かべる。
「それでもいいの。それは、わたくしのよ。返してちょうだい!」
王太后はそう言うと、愛おしそうに手紙を胸に抱いた。
庭のすみに、打ち捨てられた古い塔。その中に迷い伝書鳩が住み着いてしまった。
そのせいで、先国王が送った、王太后への手紙が届かなくなってしまった。
そのせいで、長い間、王太后様は先国王陛下に愛されていないと、恨みを募らせてしまう。
こんな話、誰が予測出来ただろう?
遅すぎる、知らせ。それでも…愛の真実が伝わってほんとうに良かった。
カリナ•オルデウスはしみじみ考えていた。
─後日、カリナに王太后から手紙が届く。
{この前は素晴らしい贈り物をありがとう。
おかげで、長い長い、わたくしのわだかまりが消えていったわ。
一番知りたかったことは最後にしか分からなかった。
この後悔は、最後まで愛を信じられなかった、わたくしの弱さが招いたものね。
…愛を信じなければ、何もはじまらないのに…。
わたくしが怒りで心を固くしているうちに、たくさんいた、お友達はみんな離れていってしまいました。
だから、とても寂しい時間を長く過ごしたの。
そのせいで、カリナに対して、ずいぶん風変わりな行動をとってしまったわね。ごめんなさいね。
でももう大丈夫。心配はいらないわ。
カリナ•オルデウス、歳はずいぶん離れているけれど、どうかわたくしと友達でいて下さい。
それと、手紙と一緒に、この箱を貴女に託します。}
添えられた箱には見たこともないような、大きな宝石のはまった、豪奢な指輪が入っていた。
{この指輪はわたくしの婚約のため、先国王陛下が下さったものです。
ほんとうはもっと昔に、王妃の結婚の際に渡さなければいけなかったの。
でも愛されないと、スネていたわたくしは王妃に素直に渡す事が出来なかった。
このわたくしの宝物を彼女に渡してもらえるかしら?
愛をこめて。メアリー・アルスラヌス}
こうして、本来あるべきところにあるべき物が収まり、
晴れて、カリナは王太子妃候補の試験をパスする事が出来た。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
あとがき
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるの!!」
と思ったら
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何卒よろしくお願いいたします。
ある初秋の昼下がり、突然、王太后メアリーの邸宅にカリナ・オルデウスは招かれた。
最終試験の内容が決まって、かなりの月日がたち、ずいぶんと待たされた後、ようやくカリナは王太后メアリーに謁見を許された。
しかも、それは急な呼び出しで、決まってすぐ、その日の午後のお招きだった。
王太后メアリーを前にカリナ・オルデウスは首を垂れて、控えている。王太后に問われるまで、挨拶も声も掛けてはいけない。
「お前が、私の宝石を盗みに来た、カリナ•オルデウスだね。」
カリナを一瞥すると、王太后メアリーは腹立たしげに、そう言った。
「可愛い孫息子のリアル王太子を、上手くたらし込んで。
王妃やリアルは騙せても、
この私、メアリー•アルスラヌス。この国の王太后の目は誤魔化せないよ。」
そう言うと、急にスイッチが入ったように、カリナに食ってかかる。
「…何があっても、私の大切な宝石は渡さない。
さぁ、欲しければこのか弱い年寄りから力づくで奪ってお行きなさい!」
カリナは少し面食らったものの、丁寧に膝を曲げて、挨拶をした。そして、次のように、弁明した。
「いえ、わたくしは、そんなつもりは、全くありません。本日は王太后様のお話を伺いたく、参りました。」
カリナが話すやいなや、ますます王太后は激した。
「お前など、話し相手によんだ覚えはない!卑しい盗人め。下がりなさい!」
そう言うとカリナを下がらせた。
王太后メアリーの感情の起伏の激しさにカリナは少々面食らってしまった。
やはり、お噂通り、王太后メアリーはお心のご病気なのだというのは、なんとなく察するものがあった。
カリナ•オルデウスはメアリー王太后の屋敷を出るころに、ようやく、ふっと息を吐く事が出来た。
「どうやら、王太后様に完全に嫌われてしまったみたい。」
カリナはこれから、どうすべきなのだろうと途方に暮れた。
15.章 愛のない結婚
─翌日。
またしても王太后メアリーの屋敷にカリナは赴く。なるべく慇懃無礼にならないよう、気をつけながら、カリナは丁寧に挨拶をする。
王太后は、またしてもカリナの挨拶を無視しながら、独り言のように話す。
「また来たのね、卑しい盗人め。ちょうどお茶を淹れている時に来るなんて、なんて卑しい子だろうね。」
カリナ•オルデウスはそう言われながらも、王太后の用意した、お茶のセットを見る。
『そう言いながらも、2人分のお茶のセット。王太后様は、わたくしの分までお茶とお菓子の用意をして下さっている。』
カリナはこの嬉しい発見に、心のなかで喜んだ。
『この方は言われているより、ずっと優しい方なのでは、ないかしら?』
こうして、ふたりはぎこちなくもある、お茶会を毎日、習慣として、続けることになった。
カリナは王太后メアリーの手ずからから、のお茶をいただきながら、王太后の趣味の良さについてはなした。
「王太后様はいつも素敵なお召し物を身につけておられますね。
それにお部屋の内装の趣味もとても、素晴らしいです。
わたくしには王太后様ほどの物は、手に入らないでしょうが、少しでも近づきたく存じますので、どちらで手配されたのか、教えていただけないでしょうか?」
カリナがそう言うと、王太后メアリーは毒舌で返す。
「ふん、取り入ろうったってそうはいかないよ。」
王太后はそう憎まれ口を叩きながらも、満更でもないようだ。
この様にして、カリナ•オルデウスと王太后は少しずつ打ち解けていき、何度もお茶を飲む間柄になっていった。
ある日の午後、珍しく機嫌の良い王太后は、こんな、先国王陛下との思い出話しを聞かせてくれた。
「先国王陛下とわたくしは、しょせん、政略結婚というやつで、
新婚当初から、戦争で長い間、離れ離れだったわ。」
そう言って王太后は遠い目をした。
「手紙をたくさん書いたのだけど、返事の手紙は1通も返してはくれなかったわ。
そのせいか、初めから打ち解けられなくて、いつまでもぎこちなかったの。
わたくし寂しくて、ワザと困らせる様な、ひどい浪費をしたわ。でも王陛下はどんなに浪費しても、咎めることもなく、何も言ってはくれなかったわ。」
「それが、ますます悔しくて。そんなことをしているうちに、今の国王エリエルが生まれて。
やっと愛する存在が出来たけれど、先王陛下との関係は変わらず。結局、先王陛下はわたくしの事どう思っていたのか分からず仕舞いだったわ。」
「先王陛下はもしかしたら、わたくしを持て余していたのかもしれないわね。」
王太后は自らの婚約の指輪を眺めながら話す。
「そんな結婚生活で、唯一慰めが宝石だった。」
「だからどうしてもこの宝石、婚約の指輪を手放すことが出来ないの。ごめんなさいね。」
この哀れな老女から、指輪を取り上げるなんてとても出来ない。そうカリナはそう思った。
王太后は気を取り直して、庭に目をやり、話題を変えた。
「この庭は先国王陛下が作ってくれた薔薇の庭なのよ。」
カリナは薔薇園を眺めながら、考える。
『とても、素敵なお庭。こんなお庭を作ってくださるのなら、先国王陛下は、きっと王太后様を愛していたはずだわ。』
そんなことを考えて、カリナは庭を散策している。
王太后さまは、足がお悪いのでついてはこない。
「わたくしもお供したいのだけれど、今日は足が悪くて。」
「いえ、そんなお気になさらないで、すぐに戻りますわ。王太后さまの侍女も、ついてきてくださるし」
カリナは歩きながら、侍女に尋ねる。
「あの古い塔はなんですか?」
侍女がそれに答える。
「こちらですか。」
「本当か定かではありませんが、古の時代、魔王が王宮に攻めて来た時に、王妃様とその子供達が隠れるため逃げ込み、難を逃れた。
という伝説が残っているそうですよ。その記念に壊されずに残されたと、きいています。」
侍女は続ける。
「とても古くてもう何十年も人が入ったことは無いという話しですよ。」
カリナは、それを聴いてわくわくする。
『まぁ!古い打ち捨てられた古塔。なんだかお宝の匂いが、ぷんぷんしますわ!』
古い塔を見上げながら、
侍女は心配しながら声をかける。
「お嬢様お気を付けて下さい!
お怪我などされては、王太后さまに叱られてしまいます。」
『古塔マニアのわたしに、目を付けられたのが運のつき。
もしかしたら、忘れ去られた、王家の秘密の魔術書が眠ってたりして!』
『それにしても、すごい鳩のフン。』
そう言って頭上を見上げると─。
『鳩?!』
無数の鳩に囲まれるカリナ。
「一体、何羽いるのよこの鳩!」
その中の1羽がカリナの頭上をくるりと、ひと回りする。
すーっと旋回しカリナをまじまじと眺め、しばらくすると彼女の肩に止まった。
「お前は、すごく人懐っこいのね。」
そう言って、肩から指に止まらせた。
『とても不思議、他の鳩達も全然逃げない。とても人慣れしてるわ。』
カリナはある事に気づく。
『あら、この鳩は…もしかして……⁈』
15.章 愛の真実
─後日。
「お久しぶりです王太后様。」
そう言ってカリナは、挨拶をした。
「ずっと待っていたのよ。
貴女がわたくしをほっておくから、わたくしはまた信じた人に裏切られたと、勘違いしちゃったじゃない。」
『王太后様は、素直でかわいい人なんだなぁ…。』
カリナはこの頃は、このおばあちゃまがとても可愛らしく、好ましく感じていた。
「長らくお暇を頂いたのには、理由があります。とても、とても、素敵なプレゼントを用意するためです。」
カリナが窓を開けると、鳩がバサバサと部屋の中に入って来た。
鳥はひとまわり旋回すると、カリナの肩に止まった。
王太后は尋ねる。
「すごく、かわいいわ。それがわたくしへのプレゼント?」
「いえこの子は、古い塔に入った時に、懐かれてしまいまして。それから、ずっとわたしから、離れないもので…」
「古い塔?」
「ええ、庭の隅に立つあの塔でございます」
「王太后さまこの手紙を読んでいただけないでしょうか?」
カリナはそう言うと、古い手紙を王太后に手渡した。
{…王太子妃メアリーよ、怒っているんだね。もう戦争が始まってから、3か月になる。
それでも、片時も君を想わない日はないよ。
生きて帰れると良いが、そうもいかない戦況だ。
どうか、私が死んだら、新しい家族を迎えてくれ。それでも、私はいつまでも貴女を愛している。…。
愛を込めて、王太子リアン より}
「この筆跡…先国王陛下のもの!どうしてこんな手紙があるの⁈」
王太后が驚いて尋ねる。
「実はこの肩に止まらせた鳩は、伝書鳩なんです。」
カリナ•オルデウスは鳩の喉を、優しく撫でながらそれに答える。
「実はあの古塔のなかに、何百羽とこの子みたいな、迷い伝書鳩が、住みついていました。そして、」
カリナは言葉を続ける。
「どうも、歴代の伝書鳩たちもあの古塔に迷い込んで、住み着いてしまう、悪い癖があったみたいなんです。
わたしが古塔を見つけて、鳩たちの巣のなかを探したところ、たくさんの読まれなかった手紙を発見したんです。」
カリナは塔の様子や手紙をこの様に続けた。
「大量の手紙は王印も解かれず、ひっそりと鳩のフンの紛れて、積もっていました。
それを綺麗にして、ほとんどは判読不能な物ばかりでしたが、奇跡的に読めるものか何通かありましたので。
その手紙の内容は、先国王陛下が常に王太后様を気遣う、愛のあるものばりでした。」
カリナは王太后様に、分かってもらいたい一心で、説明を続ける。
「王太后様。先国王陛下様は、はきっと王太后様を深く愛していらっしゃったと思います。」
カリナはここまで言うと、話を閉じた。
王太后は手紙を何度も読み返す。
王太后の手はブルブルと震え、やがて涙は頬を伝い落ちた。
「読めないけど…まだ手紙がたくさん見つかったのね。」
王太后は言葉を振り絞って、カリナに尋ねる。
「はい。読めないほど、破損がひどく、かなり汚いですが…。それでも保管してあります。」
王太后は言葉を続けて、懇願する。
「それをちょうだい。みんなわたくしに、みんな渡して、ちょうだい!」
カリナは少し、戸惑って念をおす。
「かなり汚くて、かなり、においも…ありますが。」
王太后は、ほっと笑みを浮かべる。
「それでもいいの。それは、わたくしのよ。返してちょうだい!」
王太后はそう言うと、愛おしそうに手紙を胸に抱いた。
庭のすみに、打ち捨てられた古い塔。その中に迷い伝書鳩が住み着いてしまった。
そのせいで、先国王が送った、王太后への手紙が届かなくなってしまった。
そのせいで、長い間、王太后様は先国王陛下に愛されていないと、恨みを募らせてしまう。
こんな話、誰が予測出来ただろう?
遅すぎる、知らせ。それでも…愛の真実が伝わってほんとうに良かった。
カリナ•オルデウスはしみじみ考えていた。
─後日、カリナに王太后から手紙が届く。
{この前は素晴らしい贈り物をありがとう。
おかげで、長い長い、わたくしのわだかまりが消えていったわ。
一番知りたかったことは最後にしか分からなかった。
この後悔は、最後まで愛を信じられなかった、わたくしの弱さが招いたものね。
…愛を信じなければ、何もはじまらないのに…。
わたくしが怒りで心を固くしているうちに、たくさんいた、お友達はみんな離れていってしまいました。
だから、とても寂しい時間を長く過ごしたの。
そのせいで、カリナに対して、ずいぶん風変わりな行動をとってしまったわね。ごめんなさいね。
でももう大丈夫。心配はいらないわ。
カリナ•オルデウス、歳はずいぶん離れているけれど、どうかわたくしと友達でいて下さい。
それと、手紙と一緒に、この箱を貴女に託します。}
添えられた箱には見たこともないような、大きな宝石のはまった、豪奢な指輪が入っていた。
{この指輪はわたくしの婚約のため、先国王陛下が下さったものです。
ほんとうはもっと昔に、王妃の結婚の際に渡さなければいけなかったの。
でも愛されないと、スネていたわたくしは王妃に素直に渡す事が出来なかった。
このわたくしの宝物を彼女に渡してもらえるかしら?
愛をこめて。メアリー・アルスラヌス}
こうして、本来あるべきところにあるべき物が収まり、
晴れて、カリナは王太子妃候補の試験をパスする事が出来た。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
あとがき
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なぜか王族や騎士、同年代の男女から次々と好意を向けられ、
気づけば全員から溺愛される状況に……?
世界に一人しかいない光属性を持つ悪役令嬢が、
無自覚のまま運命と恋を変えていく、
溺愛必至の異世界転生ラブファンタジー。
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