魔力ゼロの悪役令嬢が 最強の魔女になれたのは、優しい魔王さまの嫁だから

恋月 みりん

文字の大きさ
15 / 69

27章〜28章

しおりを挟む
27.章 ホーリング・ラブ・アゲイン



─遠く、どこからともなく、魔獣たちの遠吠えが聞こえる。


深き闇にまどわせる、魔物の棲まう森ヴェルノ。


この場所は本来、強力な魔物が住まう、人跡未踏じんせきみとうの地のはずである。


しかし不思議とまったく、強力なモンスターは現れない。


もちろん、それは魔王のせいであり、


平和に歩いていけるのは、とても不思議な事なのだか、


初めて国の外に出るカリナに、それは全く分からない。


後ろ手で杖を持ち、鼻歌まじり、軽い足取りで、魔王の後をついていく。



正直、面倒くさそうな魔王から、魔法を教わりながら、森を歩いて行く。



そしてもうすぐ、魔物の森を抜けそうだ。



「魔王様…。海ですよ!」



眼下には広く大海原が見える。カリナは生まれて初めて海を見た。



『きれい…』



東の空の彼方から白い鳥が、こちらへ滑り込んでくる。


はるか上空を飛ぶ鳩、


カリナはそれを見上げている。


「あれは…!…わたしの鳩です。

仲間のいたところにかえそうと、屋敷に火をつける前に逃した子です。そのまま、逃げてしまっても良かったのに、

こうして、わたしのところに帰ってきてくれたみたいです。」


そう言って、カリナは空を指さす。


「わたしを慕って、こうして追いかけてきてくれたんですね。」


そう言って、魔王を振り返り、笑顔を見せた。


「すごく、嬉しいです。」


陽光と、揺れて反射する、水平線、


太陽と海をバックに、カリナはそう言う。


羽ばたく鳩、


蒼ぞらに、舞い散る、白い羽根。


まぶしい笑顔を向け、カリナは空に手を伸ばした。


鳩はカリナの指先にとまり、愛おしそうに、頬に顔をうずめた。



それを見ている、魔王は、


なぜか、見てはいけないものを見たような、


ざわつきを感じた。


眩しいような、儚いけれど美しい、


でも、もう戻らない何か、を見た気がした。


失われたどこかが、ひどく痛む。


ふいに、笑顔のカリナが、こちらに手を振る。


泣きたくなるような、でもどこか懐かしい、



ふしぎな感情を抱いた。





28.章 父への手紙




─拝啓。お父様、お元気ですか?


わたしは今日、初めて、魔法のフレアを使えるようになりました。

いつかは、上級魔法に挑戦するべく、

日々精進しています。

今までは、知っているだけで、使うこともかなわなかった魔法が、使えるようになってきました。

魔力って素晴らしいですね。



魔王は、カリナが何事かを紙に書きつけていることに気づいた。


「お前、父親に手紙を書いているのか?」


魔王は驚愕の声を上げる。


「はい。」


「…………。」


「ファザコンだな。」


「ちっ、違います!」




─実家の魔王様も元気です。よく食べ、よく寝て、機嫌も良いです。
(…我をペットみたいにいうなっ!(魔王怒))


わたし達は、サライサの町から、船に乗り、ユーラ大陸のドド国に向かおうとしています。


─追伸。風の噂で、

お父様が、王立魔兵軍の司令官を解任され、左遷されたと聞きました。

元部下の方が今度は、上司になるそうですね。

気の短いお父様が、いつか元部下の方を殴ってしまうんじゃないかと、心配しています。

また、妹たちは、悪い噂のせいで学校を辞めてしまったと聞きました。

お兄様たちも、同じように、
魔法騎士団を辞めさせられた、と聞きました。

お父様を、とても心配しています。


それでは、どうか、お身体に気をつけて。


─カリナ•オルデウス より。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

悪役令嬢が睨んでくるので、理由を聞いてみた

ちくわ食べます
恋愛
転生したのは馴染みのない乙女ゲームの世界だった。  シナリオは分からず、登場人物もうろ覚え、タイトルなんて覚えてすらいない。 そんな世界でモブ男『トリスタン』として暮らす主人公。 恋愛至上主義な学園で大人しく、モブらしく、学園生活を送っていたはずなのに、なぜか悪役令嬢から睨まれていて。 気になったトリスタンは、悪役令嬢のセリスに理由を聞いてみることにした。

悪役令嬢に転生したけど、知らぬ間にバッドエンド回避してました

神村結美
恋愛
クローデット・アルトー公爵令嬢は、お菓子が大好きで、他の令嬢達のように宝石やドレスに興味はない。 5歳の第一王子の婚約者選定のお茶会に参加した時も目的は王子ではなく、お菓子だった。そんな彼女は肌荒れや体型から人々に醜いと思われていた。 お茶会後に、第一王子の婚約者が侯爵令嬢が決まり、クローデットは幼馴染のエルネスト・ジュリオ公爵子息との婚約が決まる。 その後、クローデットは体調を崩して寝込み、目覚めた時には前世の記憶を思い出し、前世でハマった乙女ゲームの世界の悪役令嬢に転生している事に気づく。 でも、クローデットは第一王子の婚約者ではない。 すでにゲームの設定とは違う状況である。それならゲームの事は気にしなくても大丈夫……? 悪役令嬢が気付かない内にバッドエンドを回避していたお話しです。 ※溺れるような描写がありますので、苦手な方はご注意ください。 ※少し設定が緩いところがあるかもしれません。

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

転生ガチャで悪役令嬢になりました

みおな
恋愛
 前世で死んだと思ったら、乙女ゲームの中に転生してました。 なんていうのが、一般的だと思うのだけど。  気がついたら、神様の前に立っていました。 神様が言うには、転生先はガチャで決めるらしいです。  初めて聞きました、そんなこと。 で、なんで何度回しても、悪役令嬢としかでないんですか?

目覚めたら大好きなアニメの悪役令嬢でしたが、嫌われないようにしただけなのに全員から溺愛されています

月影みるく
恋愛
目を覚ましたら、大好きだったアニメの世界。 しかも私は、未来で断罪される運命の悪役令嬢になっていた。 破滅を回避するために決めたことはただ一つ―― 嫌われないように生きること。 原作知識を頼りに穏やかに過ごしていたはずなのに、 なぜか王族や騎士、同年代の男女から次々と好意を向けられ、 気づけば全員から溺愛される状況に……? 世界に一人しかいない光属性を持つ悪役令嬢が、 無自覚のまま運命と恋を変えていく、 溺愛必至の異世界転生ラブファンタジー。

処理中です...