魔力ゼロの悪役令嬢が 最強の魔女になれたのは、優しい魔王さまの嫁だから

恋月 みりん

文字の大きさ
14 / 66

セカンド・プロローグ 25章〜26章

しおりを挟む
25.章 セカンド・プロローグ



─侯爵令嬢カリナ•オルデウス16歳。


魔力ゼロのわたしは、強力な魔女になるため、

人類を破滅寸前に追い詰めた、いにしえの魔王と契りを交わし『結婚』した。



『生きるため、生き残るための選択だった。


選べる道なんて無かった…。』



『わたしはあといくつ、選択できない分かれ道を選ぶのだろう。』





─祖国、魔法都市国家アルドリア国。



魔力が全く無いのにもかかわらず、魔法一族の名門、オルデウス家の侯爵令嬢として、カリナ•オルデウスは生まれてしまう。


無力ゆえに、家族に虐げられて、生命さえも奪われたそうになった時、


わたしは強く力を求めた。


『─殺されたくない。』


そして、人類を滅亡寸前まで追い詰めたいにしえの魔王と、契約の契りを交わし、

わたしは強力な魔女に生まれ変わることができた。


魔王様とわたしは、こうして偽りの契りである、『契約結婚』を結んだ。


魔王様は意外なほど優しいけれど、

こんな『結婚』は、きっと上手くはいかない。


魔王と魔女として、

私たちは、祖国にもいられず、旅をする事になる。




26.章 チュートリアル 



深い森の奥で、火球の炸裂する音がする。


「魔王様、見て下さい。火球フレアが出ました!」


カリナ•オルデウスは、そう言って魔王を振り返った。


「感動です。」


カリナは初めての魔法に興奮している。


「あーハイハイ。」


そう言って魔王は手を、ひらひらと振った。


ここは祖国アルドリア国を越えた、シシリア平原の先、

─魔物の棲まう迷いの森ヴェルノ。



今までの、魔力ゼロの人生で、

ようやく魔力を手に入れたカリナは、はしゃいでいる。


もっと、もっと、上級の魔法に挑戦してみたい。


そうして魔法使いとして、一刻もはやく独り立ちしたい、そうカリナは思っていた。



「地獄の底に眠る篝火かがりびよ、


古の眠りより覚醒し、


裁きの手をかざせ…」


カリナは、さらに上級の魔法詠唱をはじめる。


「ダーク•フレイム…!!!」


《……シーン………。》



「あれ?出ない…?」


魔力もまだ十分にあるのに、どうして?
 

カリナは首を傾げていた。



『ちゃんと、魔術書を読み込んで、魔法の理解も深めているはずなのに…。』




─魔法は言霊ことだま

意味に命が宿り、魂に魔力が込められることで具現化する─チカラ。


音や言葉、図形、文字、数字にも命が宿る。

それらは、大気や大地もしくは、異空間から『神聖な元素エーテル』、つまり魔力を吸い上げて、具現化する。


そして、だからこそ、意味の集合体である魔術書、禁書などの『本』は、 概念封がいねんふうじが施されていなければ、本来はとてつもなく、恐ろしい代物なのだともいえた。




カリナは熱心に魔王に尋ねる。


「魔王様、もっと魔法のお手本を見せて下さい!」


「…はぁ…。(ため息)」


カリナがそう言うと、魔王は面倒くさそうに人差し指をたてる。


《ゴォォォォォッッッッッッ!!!!》


魔王が指先で出した火球は、業火となり、


その場一帯、25メートルくらいを焼き尽くした。


「…………。」



「…あのー、威力が強すぎます!」


カリナは当惑している。


「コレは、お前の火球と同程度のものだ。」


魔王はそう言った。


そう、魔王というより、魔族の魔法は人間のものと、根本的に全く違う。


魔族の身体には、『魔血まけつ』と言われる、血液が巡っている。

簡単にいうと、魔族の血は魔力が、溶け込んで流れている。

いやむしろ、魔族の血そのものが質量を持った、魔力といってもよかった。


わたし達、人間の出す魔法は、言霊に魔力を乗せて、大気から具現化するので、魔法が軽い。

対して魔族は、『魔血』から直接、魔法が解き放たれるので、質量が、圧倒的に違い過ぎる。

だから、人間は魔法に必ず詠唱が必要なのに対して、魔族は血液から魔法が作られるので、詠唱などは不要なのだ。


「詠唱もいらないし、質量の重い魔法が、簡単に出て羨ましいです。」


「ぜひ、もっと知りたいです!」


魔王は、ため息まじりに、答える。


「……教えると言っても、正直、これ以上、教えることはないが。」


魔王はそう言い、やれやれといった、ところだった。


「そもそも、お前は、魔法の知識がカンストしている。」



「そして、そこに十分な、魔力が加わっているのだから、理論上は全ての魔法が使えるはずだ」


それを聞いてカリナは、ますます首をかしげた。


『魔力も十分。魔法の知識がカンストしている。ではなぜ上級魔法は使えないのかしら?』


カリナはひとり首をひねった。


『もっと、もっと、魔法の本を、読んで勉強しないとダメなのかしら?』

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ヒロインだと言われましたが、人違いです!

みおな
恋愛
 目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でした。  って、ベタすぎなので勘弁してください。  しかも悪役令嬢にざまあされる運命のヒロインとかって、冗談じゃありません。  私はヒロインでも悪役令嬢でもありません。ですから、関わらないで下さい。

【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした

果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。 そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、 あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。 じゃあ、気楽にいきますか。 *『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

悪役令嬢の取り巻き令嬢(モブ)だけど実は影で暗躍してたなんて意外でしょ?

無味無臭(不定期更新)
恋愛
無能な悪役令嬢に変わってシナリオ通り進めていたがある日悪役令嬢にハブられたルル。 「いいんですか?その態度」

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

嫁ぎ先は悪役令嬢推しの転生者一家でした〜攻略対象者のはずの夫がヒロインそっちのけで溺愛してくるのですが、私が悪役令嬢って本当ですか?〜

As-me.com
恋愛
 事業の失敗により借金で没落寸前のルーゼルク侯爵家。その侯爵家の一人娘であるエトランゼは侯爵家を救うお金の為に格下のセノーデン伯爵家に嫁入りすることになってしまった。  金で買われた花嫁。政略結婚は貴族の常とはいえ、侯爵令嬢が伯爵家に買われた事実はすぐに社交界にも知れ渡ってしまう。 「きっと、辛い生活が待っているわ」  これまでルーゼルク侯爵家は周りの下位貴族にかなりの尊大な態度をとってきた。もちろん、自分たちより下であるセノーデン伯爵にもだ。そんな伯爵家がわざわざ借金の肩代わりを申し出てまでエトランゼの嫁入りを望むなんて、裏があるに決まっている。エトランゼは、覚悟を決めて伯爵家にやってきたのだが────。 義母「まぁぁあ!やっぱり本物は違うわぁ!」 義妹「素敵、素敵、素敵!!最推しが生きて動いてるなんてぇっ!美しすぎて眼福ものですわぁ!」 義父「アクスタを集めるためにコンビニをはしごしたのが昨日のことのようだ……!(感涙)」  なぜか私を大歓喜で迎え入れてくれる伯爵家の面々。混乱する私に優しく微笑んだのは夫となる人物だった。 「うちの家族は、みんな君の大ファンなんです。悪役令嬢エトランゼのね────」  実はこの世界が乙女ゲームの世界で、私が悪役令嬢ですって?!  ────えーと、まず、悪役令嬢ってなんなんですか……?

断罪現場に遭遇したので悪役令嬢を擁護してみました

ララ
恋愛
3話完結です。 大好きなゲーム世界のモブですらない人に転生した主人公。 それでも直接この目でゲームの世界を見たくてゲームの舞台に留学する。 そこで見たのはまさにゲームの世界。 主人公も攻略対象も悪役令嬢も揃っている。 そしてゲームは終盤へ。 最後のイベントといえば断罪。 悪役令嬢が断罪されてハッピーエンド。 でもおかしいじゃない? このゲームは悪役令嬢が大したこともしていないのに断罪されてしまう。 ゲームとしてなら多少無理のある設定でも楽しめたけど現実でもこうなるとねぇ。 納得いかない。 それなら私が悪役令嬢を擁護してもいいかしら?

処理中です...