魔力ゼロの悪役令嬢が 最強の魔女になれたのは、優しい魔王さまの嫁だから

恋月 みりん

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59章

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59.章 新月しんげつの魔獣、襲撃しゅうげき



─新月ある夜。


星もなく、漆黒よりも暗い真夜中。


遠く半鐘はんしょうの音が、山深い村落に響く。


夜半過ぎのカナイ村は、魔獣一匹に襲撃され、人々が逃げ惑っている。


魔獣の攻撃で、集落の屋根は燃え、村人は消火と、避難で、大通りは大混乱が起きていた。



慌ただしく、警告の鐘が鳴り、


村の男たちは、女子供、年寄りなどを逃がそうと、奔走している。



「起きてください、魔法使い様。」



カリナは真夜中、ひとりで間借りしている民家で眠っていると、急に村人から起こされる。


急いで、着替えつつ、魔法の杖を握り、魔獣のいる村広場に向かう。


「どうしよう…先生もいないのに、

わたしひとりで、討伐出来るのかしら…?」


このカナイ村には、中央に広場がある。

その広場には村の規模にしては、かなり大きな鐘楼しょうろう塔がある。


カリナが広場に着くと、魔獣は鐘楼しょうろう(しょうろう)塔に、鉤爪かぎづめをひっかけ登っている。


魔獣は、村人から矢をいかけれられ、それをトゲの付いた尾で振り払っている。


「魔法使い様だ…!」


「本当だ、助かった…!」


村の男たちは、安堵の表情とともに、カリナを心強い援軍として迎えた。


カリナは村の男たちの期待に、凄まじい、プレッシャーを感じる。



そして意識を集中し、炎の魔法を詠唱する。


「わが誓いと、古き契約により、

炎舞えんぶの女神 テアよ

浄火の炎で、咎人とがびと穿うがち

一握いちあく灰燼かいじんせ」



「ゴッドネス フレイム!」



しかし、炎の魔法は魔獣に命中するものの、全く効果がない。


それどころか、魔獣はカリナの明確な敵意を感じとり、ますます勢いがついてしまう。


魔獣は、目を細め狙いを定ると、喉元の火焔袋かえんぶくろを膨らまし、激しい炎の霧を吹き出した。


《ゴォォォォォ…!!》


しかし、カリナはまだ魔法防御が使えない。


とにかく、魔獣の火吹きブレスに、ひたすら逃げ惑うしかない。


その様子に、村の男衆おとこしゅうは落胆する。


この魔法使いは、とても頼りにならないべと、

男達はわらわらと広場から逃げ出していく。


その時、炎に照らされて、塔の中に9歳くらいの男の子がいることに、カリナは気づく。


『塔の中に男の子…。大変…!助けないと。』


カリナは塔の階段を登りながら、考える。


『でも、どうしよう、どうしよう…。』


『どうやって魔獣を倒そう…。』



『わたしまだ、炎の魔法と風の魔法しか使えないのに…。』



『…炎の魔獣に、炎の魔法が効くとも思えないし…。』



なんとか塔に登り、男の子を助けようとする。


「そこの、君…!大丈夫?」



ところが、男の子はカリナの登場に不満げだ。


「もちろん…大丈夫だったよ!お姉ちゃんが魔獣を引き連れて、コッチにくる前はね。」



《ギャオォーン!!》



魔獣が迫り、近く咆哮ほうこうが聞こえる。



「ご……ごめんなさい!」



やがて登ってきた魔獣は、カリナに狙いを定め、塔の中に目を凝らす。


そして、炎で追い立てようと、第二波の炎の霧を、吐き出した。


「お姉ちゃんこっち!」

カリナは急ぎ、塔のガーゴイルの彫像ちょうぞうの影に隠れて炎をやり過ごす。


「お姉ちゃん、魔法使いにしては鈍臭いな。俺が手伝ってやるよ。」

 
男の子はそう言って、作戦を説明する。


「俺がおとりとして、魔獣の前からにげるから…」


カリナはうなずく。


「魔獣は人間の子供の、心臓が大好物なんだ。

きっとお姉ちゃんより、俺の方へ、興味が移るから、俺は塔の下へ逃げる。

その時に、塔の上にいるお姉ちゃんが、塔の大鐘おおがねを落として、魔獣にぶつけるんだ。」


そう言って、男の子は、塔の下へ縄梯子を下ろすと、するすると降りていく。


魔獣は、男の子を捕まえようと、

鉤爪かぎづめで塔の壁にとりつき、猛スピードで駆け降りる。


魔獣が鐘楼の真下に降りたことを確認すると、男の子は叫ぶ。


「お姉ちゃん!今だよ!」


カリナは、急ぎ、風魔法を詠唱する。


「森の精霊、その芳名ほうめいを捧げ

我が願いを叶えたまえ、

大地を揺さぶり支配せん

風の叡智えいちよ、我が元に宿れ…」



「リーフ ブラスト…!」



カリナは、風の魔法で鐘楼しょうろうを吹き飛ばし、真下へ落下させる。


真下にいる、魔獣は重さ5トンはする、鐘楼しょうろうをまともに受け、押し潰された。


「やったー!」


男の子は、喜びの雄叫びをあげる。


現場が落ち着くと、カリナは男の子にお礼を言った。


「お姉ちゃん、鈍臭いから心配したよ」



「…どうしよう。わたし、大鐘を落としてしまって…」



カリナは釣鐘を塔の下に、落としてしまった事を心配している。



「いいって、いいって。俺の死んだ爺ちゃんが、この大鐘塔おおがねとうを管理してたんだ。


爺ちゃんなら、人の命に比べたら大した事ないって笑ってくれるよ!」


そう言って、男の子は豪快ごうかいに笑った。



「俺、アスタクって言うんだ。」



そんなわけで、村の男の子、アスタクと仲良くなった。



翌朝、カリナは、カナイ村の人達に鐘楼を落とした事を平謝りする。


長老はこころよく、カリナを許してくれた。


「まあ、人の被害がなかったから良しじゃ。

隣村と協力して元に戻すわい。」



カリナは村人たちから、とりあえず感謝される。


「魔法使いの弟子さん、弱いのに、よく頑張ったね」


とりあえず、カリナは村の役に立てたことを喜んだ。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

あとがき


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるの!!」


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