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外伝 1章〜8章
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1章. 外伝一章
新しい拠点になった、魔導士の屋敷に『魔法の手紙』が届く。
どこまでも、送り先を追いかける魔法のそれを、カリナは読み終えると、顔色が一気に変わった。
そして、ひと言ポツリとこぼす。
「…先生が奴隷に…。」
2章. 伯爵令嬢オンファレ
─エール海沿岸部の地方都市リュディア。
その南西に、沿岸からの風から守るように、深い防風樹林帯が広がり、
その先にとてつもなく広大で、荘厳なお屋敷が構えられている。
豪華な屋敷にも負けない程の、重厚で美しいノッカーを叩くと、美しい黒髪の令嬢が出迎えてくれた。
「あら、お待ちしてましたわ。良かった、せっかくの手紙が無駄にならなくて…」
そう言われて、カリナは挨拶をする。
「お手紙いただきました。カリナ•オルデウスでございます。」
カリナは少し緊張しながら、ひさびさの侯爵令嬢モードに、頭を切り替える。
この煌びやかな邸宅は、ダノス伯爵家のもので、
カリナは、件の手紙により、呼び出されていた。
「初めまして、カリナ様。私は、オンファレ・ダノスと申します。」
伯爵令嬢はそう言って、丁寧にカリナに挨拶をした。
カリナは、この伯爵令嬢オンファレ・ダノスから呼び出されて、この屋敷に訪れたのだった。
お茶を勧められて、いただくと、さっそくといったように、令嬢は話しをはじめる。
「失礼ですけど、カリナ様の事、少し調べさせていただきましたの。」
「ご自分の生家のお屋敷を焼くなんて、なかなかできる事ではありませんわ。
ねぇ、私たちお友達になりませんこと?ご実家が、没落したとは言え、
侯爵家のご令嬢でしたら、お友達として申し分ございませんし。」
カリナは、オンファレ嬢のあまりにも明け透けな物言いに、少したじろぐ。
「…オンファレ様は、とてもはっきりとした物言いをする方ですね。
もちろん、わたしもお友達は大歓迎ですわ。」
2人はそう言って握手をした。
「それで…あの…。」
「ええ。心得ておりますわ。こちらでございます。」
そう言って、伯爵令嬢のオンファレは屋敷の『地下牢』に案内する。
「カリナちゃん!待ってたよー。ここの暮らしは酷いんですよ!」
魔導士カシウス・オルデウスが、鉄格子に飛びつくと、牢を握りしめてカリナに訴える。
どうやら、魔導士カシウスは地下牢に、ずっと閉じ込められているようだ。
「この奴隷が、お金は『弟子』が持ってくるからと、しきりに訴えるので、仕方なくお手紙を差し上げたのです。」
オンファレ嬢はそう説明する。
「こんなハレンチな男が、侯爵令嬢様の関係者だとは思えなかったので捨ておいたのですが…。
探されていたのであれば、私の骨折りも無駄ではありませんでしたね。」
オンファレはそう言って、カリナに尋ねる。
「いかがてすか?」
「…ええ。認めたくありませんが、わたしの師匠です」
「…まぁ。そうですの。お気の毒ですこと」
師匠の魔導士カシウス・オルデウスは心外だとばかりに、訴える。
「…何それ!?酷い言われよう!そもそも侯爵家を勃興したのは、私なんですよ!」
「…………。」
顔を見合わせる令嬢たち。
「えーん。助けてよぉ…」
やつれた魔導士に、とうとう泣きが入った。
魔導士カシウス・オルデウスは、度重なる夜のお店の『ツケ』─つまり借金を重ね、それを踏み倒した。
それが、マフィアのボスの逆鱗にふれ『奴隷』として売られてしまったのである。
そして、とある貴族のお嬢様に買われることとなった。
それが、この伯爵令嬢オンファレ・ダノス嬢だったのだ。
令嬢は淡々と、この魔導士の状況を説明する。
「彼の負債は3000万Fです」
オンファレ嬢は、さらりとカリナにそう告げる。
「…さっ…3000万…F…!!」
余りの、膨大な借金にカリナは、声を上げる。
「…少し先生と相談してもいいですか?」
カリナと師匠は牢の隅で、コソコソと、話し合いを始める。
「3000万Fって、わたし達の年収の1万年分ですよ!
なんでそんなに借金抱えたんですか!
……逆立ちしても払えませんよ!」
「えーん。だって利息が、かさんじゃって…」
師匠の魔導士は、カリナに訴える。
「助けて、このままじゃ尻アナのバージンがめちゃくちゃにされちゃうよぉ!
昨日だって散々おもちゃにされてっ…!」
芝居じみた、師匠の話しに内心うんざりしながら、カリナは突っ込む。
「…嘘言わないでください。」
カリナは、ため息を吐く。
仕方なく、騒ぐ師匠に安心を与えるよう、カリナはこう言う。
「先生、心配しないで下さい、今に出してあげますから。」
そう言うと、オンファレ嬢に向きなおり言葉をかける。
「ご連絡ありがとうございます。
膨大な現金ですので、今しばらくお待ちいただいてもよろしいでしょうか?」
カリナは言葉を濁しながら、続ける。
「ひとまず、宿に帰って金策を考えてきますわ。」
オンファレ嬢は、カリナの焦りっぷりに、微笑しながらも、内心面白い暇つぶしが出来たと、喜んだ。
「カリナ•オルデウス様、侯爵家のご令嬢を、
木賃宿に追い返したとあっては我がダノス家のなおれです。」
オンファレ嬢はそう言い、カリナに提案する。
「もう、時も遅いので、ぜひ我が家にご滞在下さい。」
親切なお言葉だったが、その語感は有無をいわさぬ、圧があった。
「ご…ご親切に、ありがとうございます。」
カリナは、若干の苦手意識を持ちながらも、令嬢に従うほかない。
令嬢は、召使いにあれこれ指示しながら、カリナを客室に案内しようと手配する。
令嬢にカリナは恐縮しながらも、オンファレの側に控えている、男性が目に留まった。
「あの方は?」
オンファレ嬢はいかにも、つまらないモノのように、彼を一瞥する。
「この男は私の元婚約者のクレス。でも親の事業が失敗して、可哀想に奴隷の身分まで転落しましたの。」
伯爵令嬢のオンファレはそこで、言葉を切る。
「……哀れに思い、私が引き取りました。」
そして、語気に苛立ちを募らせて、吐き捨てる。
「ほ、ん、と、う!か、わ、い、そ、う…。なんで、こんな男と婚約していたのか七不思議よね。」
目を伏せた男性を一瞥すると、カリナに話を戻す。
「…いかがです?
私のこと、元婚約者まで奴隷にしちゃうアブナイお嬢様だって分かって頂けたかしら?」
カリナは、このお嬢様の物言いには、三度驚きつつ、
コチラは借金を抱えている立場の弱さから、カリナは、やんわりと言葉を返す。
「オンファレ様は、本当にとても…ハッキリとお話しされる方なんですね…」
オンファレは、そんなカリナの反応に、満足しながら微笑む。
「私、カリナ様といいお友達に、なれそうな気がしますわ」
オンファレ嬢は、そう言うと、自分の侍女を呼ぶ。
「マリー、はやくお客様をお部屋にご案内して」
来客用の部屋に、カリナを案内しようと、侍女が先に立ち、部屋を出ようとする。
カリナが部屋を出ようとすると、オンファレ嬢の苛立たしげな、声が聞こえてきた。
「あなたにはお仕事があるのよ、クレス。こちらへいらっしゃい。」
そう言われて、元婚約者の奴隷は、令嬢のオンファレに意見する。
「お嬢様、暖炉の炭替えは何も今で無くてはいけませんか?」
「その、、お嬢様がいなくなってからでも…」
奴隷のクレスは、そう言いよどむ。
「あら、私を凍えさせる気なの?…それに、私が私の部屋に居たらいけなくて?」
「…お嬢様いけません。若い令嬢が異性と2人きりで部屋に居ては、誤解されます。」
伯爵令嬢は、困り顔の元婚約者の奴隷に、諭すように言う。
「あら、勘違いされては困るわ。私、本当に寒くて、凍えそうなの…。
それに、あなたにお仕事を頼んでいるの。つまり、これは『奴隷』の義務なのよ。」
「…分かりました、なるべくお嬢様に近づかないよう、お姿を見ないよう、気をつけます。」
そう言って、婚約者の奴隷はオンファレ嬢の部屋へ入って行った。
カリナは、この2人やりとりに驚く。
うら若き淑女の令嬢が、奴隷とはいえ異性と2人きりで同室するなど、考えられない事だった。
しかし、オンファレ嬢の召使いたちは、とくに気にする様子もない。
どうも、いつもの風景のようだ。
この事にも、カリナは面食らってしまうのだった。
3章. 本心
部屋に入ると、元婚約者の奴隷はなるべく目線を落とし、言いつけられた作業を行おうとする。
そこに、伯爵令嬢のオンファレは抱きつく。
「私が、まだ貴方をお慕いしていること、分かってらっしゃるでしょ。」
奴隷はお嬢様の方を見ないように、しながら話す。
「…いけません。そのような事。」
奴隷はそう言って、逃げようとした。
「あら、いけない。肩紐が落ちてしまったわ。」
そう言いながら、奴隷の手を自らの胸に当てる。
元婚約者の男奴隷は、肩紐の落ちた下着姿のお嬢様に、うろたえている。
オンファーレ嬢は内心の企みがあるらしく、元婚約者の奴隷の瞳を見つめる。
『どうかしら?これなら、私の魅力に参って、キスしたくなるんではなくて?』
しかし、元婚約者の奴隷は、この誘惑に応じる気が全くない。
風邪ひきますよと、オンファレ嬢の肩に、洋服をかけると、逃げてしまうのだった。
『…ムカッ』
令嬢はこの態度に、大層腹を立て、つい心無い言葉を投げかけてしまう。
「…ふん!ちょっと、からかっただけよ!」
「べ……別に、貴方みたいな弱男に、本気でこんな事する訳ないじゃない!」
こうしていつも、令嬢は元婚約者の奴隷のつれない態度に、苛立ちを募らせていった。
『…意気地なし、どうして、私の気持ちを、分かってくだらさないの…!』
そしてなおさら、この元婚約者の奴隷をイジメてしまう。それが日常だった。
4.章 恋人たちの事情
─翌日。
午後のお茶の時間、カリナは、金策に頭を絞りながら、オンファレお嬢様のお相手をしている。
ふいに、お嬢様は、召使いに呼ばれると、退席していった。
『…お金、どうしよう…。』
カリナは、1人ぼんやりと、借金の事を考えている。
そうして、元婚約者の奴隷である、クレスがお茶の給仕をしてくれる。
「カリナ様。お茶のおかわりは、いかがですか?」
声をかけられて、カリナはお礼を言った。
「クレス様、ありがとうございます。
こんな事を申し上げては、失礼かもしれませんが、貴方のお茶はとても優しい味がしますわ」
クレスは少し驚いたように、話す。
「そんな、奴隷に礼などは、必要ではありません。
……でも、美味しくいただいてもらえたのであれば、嬉しいです。」
クレスはそう言うと、微笑した。
そうして、言い出しにくそうに、言葉を繋げる。
「…あの…。お嬢様を、人でなしの冷たい方だと思われましたか?」
奴隷は、やはり思い直して、恐縮し謝った。
「…いえ、すみません。奴隷から話しを振るなど、とんだ失礼を…」
「…いえ、構いませんわ。」
「そうですね。オンファレ様には、…初めは驚かされましたが…。
とてもはっきりお話をされる方だとおもいましたわ」
カリナはそう言うと、こう付け加える。
「それよりむしろ、貴方様の身の上の方が、……お気の毒に思いましたわ。」
そう言って、クレスに同情をよせた。
「私の事など…。それより、お嬢様が悪く取られるのは辛いのです。」
そう言って、奴隷のクレスは、目を伏せた。
「お嬢様は…本当は、あんな方ではないのです。
もっと、溌剌とした、意志の強い方だった。」
「…少なくとも、あんな意地悪な言い方をする人じゃなかった。」
カリナは、元婚約者の奴隷クレスの、話しを黙って聞いている。
「それというのも、私の身の上が落ちぶれたばかりに、変わってしまわれたのです。」
クレスはそう言ってから思い直し、また謝罪する。
「…すみません、奴隷の分際で主人の悪口など……。」
「…あら、お気になさらないで。わたし、貴方の独り言でしたら、何も聞いていませんわ。
でも……気になるので、もう少し伺っても、よろしいかしら?」
「その…でも…」
「お二人の事もっと、教えて欲しいんです。」
そう話す、カリナの押しの強さに、クレスは観念し、ぽつり、ぽつりと話し始める。
「私の……両親の事業が失敗した時点で、伯爵家のダノス家とは犬猿の仲となり、婚約は破棄されました…。」
クレスは、そう言って少し間を置く。
「ダノス家は力のある家柄です。」
「そのせいで、両親は親戚や付き合いのある家から、援助も受けられず、
私も、借金のカタに奴隷として売られてしまいました。」
「彼女が強く、引き取る事を望んだめ、私はこの家に引き取られました。」
彼は、言いにくそうに続ける。
「彼女にだけは、こんな落ちぶれた姿見られたくなかったのに…。」
クレスは、そう悔しそうに言う。
「彼女が、以前の彼女に戻るには、
自分が邪魔をしているのではないかと…。」
元婚約者の奴隷はそう言ってから、我に返る。
「…すみません、おかしな身の上話しをしてしまって。」
「クレス様はお優しいのね。」
カリナは、そう言って優しく声をかける。
「クレス様は止めてください、今は奴隷の身の上です。」
「そう…ならば、なおのこと好きに呼ばせていただくわ。」
そうこう、しているうちに、オンファレが用事を済ませて、帰ってくる。
彼女は、クレスと仲良さげに話すカリナを複雑そうに見ている。
その視線を感じながら、カリナはクレスと話しこむ。
「………。」
「クレス様は…、オンファレお嬢様が、お好きなのね。」
「そんな感情、……今は…許されません。」
「そうかしら?その気持ちお伝えになった方がいいわ。」
「奴隷の身分じゃとても、そんな事。」
クレスが答えると、カリナはひとり考える。
『お嬢様はどう思っているのかしら?』
そうして、オンファレお嬢様に、目をやる。
『きっと同じ気持ちね。さっきから、クレス様とお話していると、オンファレお嬢様が、じっとこちらを見ているもの。』
5章. バルコニーにて
─深夜、時を告げる大時計の音が聞こえる。
しかし、カリナは天蓋付きのベットで、寝付けず、幾度となく寝返りをうっていた。
膨大な借金、可哀想な恋人たち、そんな事が頭を占めてとても寝ていられない。
仕方なく、春の夜の少し冷たい風にあたろうと、夜着のまま、バルコニーに出てみる。
ふと見ると、バルコニーの通路でつながる、隣室のガラス扉から光が漏れている。
そして、開け放たれたガラス戸から、このような、会話が聞こえてきた。
どうやら、2人が、言い争いをしているようだ。
「主人の言う事が聞けないの?はやく、私を奪いなさい。」
「僕にもプライドが有ります。」
そう言って、元婚約者の奴隷は、お嬢様の申し出を断る。
「貴方は本当は分かっているでしょう?
ずっと、私が貴方をお慕いしていた事……なのに、どうして?」
元婚約者の奴隷は、言いずらそうに、答えた。
「それは…分かっています、私もオンファレお嬢様の事を…その、想っています。」
「できたら、この身の上から、抜け出し、自分の力で財をなし、
貴女のお父上が、納得できる身分になるまで待って欲しい。」
奴隷のこの言葉に、オンファレは、つい声を荒げてしまう。
「そんなのいつになるか分からない。今、貴方は奴隷の身分、個人的な蓄財(ちくざい)すらできないのよ。」
「それでも…いつか…。」
「いつか、いつかって、いったいいつまで待てばいいの?」
いつも強気な令嬢は、涙を浮かべて、元婚約に詰め寄る。
『私たちが結ばれるには、もう子供を作ってお父様を説得する以外にないのに。』
「……私を信じて、待っていて下さい」
元婚約者の奴隷は、お嬢様にそう言うと部屋を出ていってしまう。
そこからは、オンファレの涙声が、寝室から聞こえてくるだけだった。
「お父様は奴隷に落ちぶれた、クレスとの結婚なんて、絶対お許しにならないわ…」
カリナは意図せずこれを立ち聞きしてしまう。
そして可哀想な恋人達を、どうにか出来ないものかと、考え込むのだった。
6.章 チェス勝負
─翌日。
朝食が済み、カリナとオンファレ伯爵令嬢は談話室で、お茶をいただきながら、くつろいでいる。
たまたま、窓から入った西陽が、なにかに当たりキラリと光った。
それは、談話室に飾られた、宝石と金銀の装飾で細工された、豪奢な『チェス盤』だった。
その『チェス盤』が、カリナの目に留まる。
『チェス盤』を触りながら、カリナに少なくない確信が生まれた。
「オンファレ様、あの豪華な『チェス盤』使われていますか?」
「いいえ、あれはただの装飾品よ、誰も使わないわ。」
「………。」
「もし良かったら、わたしとチェス勝負しませんか?」
「チェスゲームで賭けをしましょう。賭けるのは、わたし自身。」
カリナはお嬢様に、挑むように見つめる。
「あなたは何を賭けますか?」
それを聞いて、オンファレお嬢様は、ピンと来たようだ。
「いいわ。チェス勝負で、借金をチャラにしたいのね。」
お嬢様は、そう言って納得したようだ。
「私が負けたら、貴女の願いを叶えてあげる。
……どうせ、あの変態奴隷がお望みなんでしょうけど。」
こうして、カリナは人生を賭けた、チェス勝負をする事になるのだった。
7.章 全てを賭けたギャンブル
「決まりです、チェス並べますね。」
『ふん、チェスで私に勝とうなんて。』
『チェスが飾りと聞いて、私がチェスの素人だと思ったようだけど、私が一番得意なのはチェスなのよ』
オンファレは、カリナの意図を読み取って考える。
『5歳の頃から、ユーラ大陸のチャンピオンだった名人から手ほどきを受けてるのよ。今だって、その名人から週一で戦術指導されて、勝った事だってあるわ。
どれだけ、カリナ様がお強くても、この国一の名人に勝った事のある、私が負けるわけないわ』
そう考えて、カリナに提案する。
「ちょうどいいから、貴女の師匠も呼んであげるわ。」
そうして、魔導士のカシウス•オルデウスが連れてこられた。
「カリナちゃん、良かったー。牢にはネズミは出るし、もう出られないかと心配してましたよー(泣)」
「先生、情けない声出さないでください。」
そう言いいながら、師匠はカリナに尋ねる。
「カリナちゃん、カリナちゃん、ところで、チェス得意なの?」
師匠は不安気にカリナに尋ねる。
「あんまりそんな、イメージないけど……。」
それに対してカリナは、自信満々に言い放つ。
「大丈夫です先生。わたし、勝ちますから。」
8.章 魔法の契約書
「それでは賭けの前に、『魔法の契約書』を交わします。」
『魔法の契約書』とは、
お互いの魂を魔道具『運命の天秤』に計り(はかり)かけ、
さまざまな物理法則を無視し、自然の理を超越した、次元でお互いの約束を宣誓、絶対履行を決定づける『魔法契約』である。
もちろん、この契約を守らなければ、天罰としてあらゆる魔法の攻撃が降りそそぐ。
『魔法の契約』とは本来は、一生に一回あるか、ないかの、大変重い契約なのだった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
あとがき
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるの!!」
と思ったら
下にある⭐︎⭐︎⭐︎から、作品の応援お願いいたします。
面白くても、つまらなくても、正直に感じた気持ちをコメント頂けると、今後につながるのでありがたいです。
『お気に入り』『しおり』もいただけると本当にうれしいです。
何卒よろしくお願いいたします。
新しい拠点になった、魔導士の屋敷に『魔法の手紙』が届く。
どこまでも、送り先を追いかける魔法のそれを、カリナは読み終えると、顔色が一気に変わった。
そして、ひと言ポツリとこぼす。
「…先生が奴隷に…。」
2章. 伯爵令嬢オンファレ
─エール海沿岸部の地方都市リュディア。
その南西に、沿岸からの風から守るように、深い防風樹林帯が広がり、
その先にとてつもなく広大で、荘厳なお屋敷が構えられている。
豪華な屋敷にも負けない程の、重厚で美しいノッカーを叩くと、美しい黒髪の令嬢が出迎えてくれた。
「あら、お待ちしてましたわ。良かった、せっかくの手紙が無駄にならなくて…」
そう言われて、カリナは挨拶をする。
「お手紙いただきました。カリナ•オルデウスでございます。」
カリナは少し緊張しながら、ひさびさの侯爵令嬢モードに、頭を切り替える。
この煌びやかな邸宅は、ダノス伯爵家のもので、
カリナは、件の手紙により、呼び出されていた。
「初めまして、カリナ様。私は、オンファレ・ダノスと申します。」
伯爵令嬢はそう言って、丁寧にカリナに挨拶をした。
カリナは、この伯爵令嬢オンファレ・ダノスから呼び出されて、この屋敷に訪れたのだった。
お茶を勧められて、いただくと、さっそくといったように、令嬢は話しをはじめる。
「失礼ですけど、カリナ様の事、少し調べさせていただきましたの。」
「ご自分の生家のお屋敷を焼くなんて、なかなかできる事ではありませんわ。
ねぇ、私たちお友達になりませんこと?ご実家が、没落したとは言え、
侯爵家のご令嬢でしたら、お友達として申し分ございませんし。」
カリナは、オンファレ嬢のあまりにも明け透けな物言いに、少したじろぐ。
「…オンファレ様は、とてもはっきりとした物言いをする方ですね。
もちろん、わたしもお友達は大歓迎ですわ。」
2人はそう言って握手をした。
「それで…あの…。」
「ええ。心得ておりますわ。こちらでございます。」
そう言って、伯爵令嬢のオンファレは屋敷の『地下牢』に案内する。
「カリナちゃん!待ってたよー。ここの暮らしは酷いんですよ!」
魔導士カシウス・オルデウスが、鉄格子に飛びつくと、牢を握りしめてカリナに訴える。
どうやら、魔導士カシウスは地下牢に、ずっと閉じ込められているようだ。
「この奴隷が、お金は『弟子』が持ってくるからと、しきりに訴えるので、仕方なくお手紙を差し上げたのです。」
オンファレ嬢はそう説明する。
「こんなハレンチな男が、侯爵令嬢様の関係者だとは思えなかったので捨ておいたのですが…。
探されていたのであれば、私の骨折りも無駄ではありませんでしたね。」
オンファレはそう言って、カリナに尋ねる。
「いかがてすか?」
「…ええ。認めたくありませんが、わたしの師匠です」
「…まぁ。そうですの。お気の毒ですこと」
師匠の魔導士カシウス・オルデウスは心外だとばかりに、訴える。
「…何それ!?酷い言われよう!そもそも侯爵家を勃興したのは、私なんですよ!」
「…………。」
顔を見合わせる令嬢たち。
「えーん。助けてよぉ…」
やつれた魔導士に、とうとう泣きが入った。
魔導士カシウス・オルデウスは、度重なる夜のお店の『ツケ』─つまり借金を重ね、それを踏み倒した。
それが、マフィアのボスの逆鱗にふれ『奴隷』として売られてしまったのである。
そして、とある貴族のお嬢様に買われることとなった。
それが、この伯爵令嬢オンファレ・ダノス嬢だったのだ。
令嬢は淡々と、この魔導士の状況を説明する。
「彼の負債は3000万Fです」
オンファレ嬢は、さらりとカリナにそう告げる。
「…さっ…3000万…F…!!」
余りの、膨大な借金にカリナは、声を上げる。
「…少し先生と相談してもいいですか?」
カリナと師匠は牢の隅で、コソコソと、話し合いを始める。
「3000万Fって、わたし達の年収の1万年分ですよ!
なんでそんなに借金抱えたんですか!
……逆立ちしても払えませんよ!」
「えーん。だって利息が、かさんじゃって…」
師匠の魔導士は、カリナに訴える。
「助けて、このままじゃ尻アナのバージンがめちゃくちゃにされちゃうよぉ!
昨日だって散々おもちゃにされてっ…!」
芝居じみた、師匠の話しに内心うんざりしながら、カリナは突っ込む。
「…嘘言わないでください。」
カリナは、ため息を吐く。
仕方なく、騒ぐ師匠に安心を与えるよう、カリナはこう言う。
「先生、心配しないで下さい、今に出してあげますから。」
そう言うと、オンファレ嬢に向きなおり言葉をかける。
「ご連絡ありがとうございます。
膨大な現金ですので、今しばらくお待ちいただいてもよろしいでしょうか?」
カリナは言葉を濁しながら、続ける。
「ひとまず、宿に帰って金策を考えてきますわ。」
オンファレ嬢は、カリナの焦りっぷりに、微笑しながらも、内心面白い暇つぶしが出来たと、喜んだ。
「カリナ•オルデウス様、侯爵家のご令嬢を、
木賃宿に追い返したとあっては我がダノス家のなおれです。」
オンファレ嬢はそう言い、カリナに提案する。
「もう、時も遅いので、ぜひ我が家にご滞在下さい。」
親切なお言葉だったが、その語感は有無をいわさぬ、圧があった。
「ご…ご親切に、ありがとうございます。」
カリナは、若干の苦手意識を持ちながらも、令嬢に従うほかない。
令嬢は、召使いにあれこれ指示しながら、カリナを客室に案内しようと手配する。
令嬢にカリナは恐縮しながらも、オンファレの側に控えている、男性が目に留まった。
「あの方は?」
オンファレ嬢はいかにも、つまらないモノのように、彼を一瞥する。
「この男は私の元婚約者のクレス。でも親の事業が失敗して、可哀想に奴隷の身分まで転落しましたの。」
伯爵令嬢のオンファレはそこで、言葉を切る。
「……哀れに思い、私が引き取りました。」
そして、語気に苛立ちを募らせて、吐き捨てる。
「ほ、ん、と、う!か、わ、い、そ、う…。なんで、こんな男と婚約していたのか七不思議よね。」
目を伏せた男性を一瞥すると、カリナに話を戻す。
「…いかがです?
私のこと、元婚約者まで奴隷にしちゃうアブナイお嬢様だって分かって頂けたかしら?」
カリナは、このお嬢様の物言いには、三度驚きつつ、
コチラは借金を抱えている立場の弱さから、カリナは、やんわりと言葉を返す。
「オンファレ様は、本当にとても…ハッキリとお話しされる方なんですね…」
オンファレは、そんなカリナの反応に、満足しながら微笑む。
「私、カリナ様といいお友達に、なれそうな気がしますわ」
オンファレ嬢は、そう言うと、自分の侍女を呼ぶ。
「マリー、はやくお客様をお部屋にご案内して」
来客用の部屋に、カリナを案内しようと、侍女が先に立ち、部屋を出ようとする。
カリナが部屋を出ようとすると、オンファレ嬢の苛立たしげな、声が聞こえてきた。
「あなたにはお仕事があるのよ、クレス。こちらへいらっしゃい。」
そう言われて、元婚約者の奴隷は、令嬢のオンファレに意見する。
「お嬢様、暖炉の炭替えは何も今で無くてはいけませんか?」
「その、、お嬢様がいなくなってからでも…」
奴隷のクレスは、そう言いよどむ。
「あら、私を凍えさせる気なの?…それに、私が私の部屋に居たらいけなくて?」
「…お嬢様いけません。若い令嬢が異性と2人きりで部屋に居ては、誤解されます。」
伯爵令嬢は、困り顔の元婚約者の奴隷に、諭すように言う。
「あら、勘違いされては困るわ。私、本当に寒くて、凍えそうなの…。
それに、あなたにお仕事を頼んでいるの。つまり、これは『奴隷』の義務なのよ。」
「…分かりました、なるべくお嬢様に近づかないよう、お姿を見ないよう、気をつけます。」
そう言って、婚約者の奴隷はオンファレ嬢の部屋へ入って行った。
カリナは、この2人やりとりに驚く。
うら若き淑女の令嬢が、奴隷とはいえ異性と2人きりで同室するなど、考えられない事だった。
しかし、オンファレ嬢の召使いたちは、とくに気にする様子もない。
どうも、いつもの風景のようだ。
この事にも、カリナは面食らってしまうのだった。
3章. 本心
部屋に入ると、元婚約者の奴隷はなるべく目線を落とし、言いつけられた作業を行おうとする。
そこに、伯爵令嬢のオンファレは抱きつく。
「私が、まだ貴方をお慕いしていること、分かってらっしゃるでしょ。」
奴隷はお嬢様の方を見ないように、しながら話す。
「…いけません。そのような事。」
奴隷はそう言って、逃げようとした。
「あら、いけない。肩紐が落ちてしまったわ。」
そう言いながら、奴隷の手を自らの胸に当てる。
元婚約者の男奴隷は、肩紐の落ちた下着姿のお嬢様に、うろたえている。
オンファーレ嬢は内心の企みがあるらしく、元婚約者の奴隷の瞳を見つめる。
『どうかしら?これなら、私の魅力に参って、キスしたくなるんではなくて?』
しかし、元婚約者の奴隷は、この誘惑に応じる気が全くない。
風邪ひきますよと、オンファレ嬢の肩に、洋服をかけると、逃げてしまうのだった。
『…ムカッ』
令嬢はこの態度に、大層腹を立て、つい心無い言葉を投げかけてしまう。
「…ふん!ちょっと、からかっただけよ!」
「べ……別に、貴方みたいな弱男に、本気でこんな事する訳ないじゃない!」
こうしていつも、令嬢は元婚約者の奴隷のつれない態度に、苛立ちを募らせていった。
『…意気地なし、どうして、私の気持ちを、分かってくだらさないの…!』
そしてなおさら、この元婚約者の奴隷をイジメてしまう。それが日常だった。
4.章 恋人たちの事情
─翌日。
午後のお茶の時間、カリナは、金策に頭を絞りながら、オンファレお嬢様のお相手をしている。
ふいに、お嬢様は、召使いに呼ばれると、退席していった。
『…お金、どうしよう…。』
カリナは、1人ぼんやりと、借金の事を考えている。
そうして、元婚約者の奴隷である、クレスがお茶の給仕をしてくれる。
「カリナ様。お茶のおかわりは、いかがですか?」
声をかけられて、カリナはお礼を言った。
「クレス様、ありがとうございます。
こんな事を申し上げては、失礼かもしれませんが、貴方のお茶はとても優しい味がしますわ」
クレスは少し驚いたように、話す。
「そんな、奴隷に礼などは、必要ではありません。
……でも、美味しくいただいてもらえたのであれば、嬉しいです。」
クレスはそう言うと、微笑した。
そうして、言い出しにくそうに、言葉を繋げる。
「…あの…。お嬢様を、人でなしの冷たい方だと思われましたか?」
奴隷は、やはり思い直して、恐縮し謝った。
「…いえ、すみません。奴隷から話しを振るなど、とんだ失礼を…」
「…いえ、構いませんわ。」
「そうですね。オンファレ様には、…初めは驚かされましたが…。
とてもはっきりお話をされる方だとおもいましたわ」
カリナはそう言うと、こう付け加える。
「それよりむしろ、貴方様の身の上の方が、……お気の毒に思いましたわ。」
そう言って、クレスに同情をよせた。
「私の事など…。それより、お嬢様が悪く取られるのは辛いのです。」
そう言って、奴隷のクレスは、目を伏せた。
「お嬢様は…本当は、あんな方ではないのです。
もっと、溌剌とした、意志の強い方だった。」
「…少なくとも、あんな意地悪な言い方をする人じゃなかった。」
カリナは、元婚約者の奴隷クレスの、話しを黙って聞いている。
「それというのも、私の身の上が落ちぶれたばかりに、変わってしまわれたのです。」
クレスはそう言ってから思い直し、また謝罪する。
「…すみません、奴隷の分際で主人の悪口など……。」
「…あら、お気になさらないで。わたし、貴方の独り言でしたら、何も聞いていませんわ。
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彼は、言いにくそうに続ける。
「彼女にだけは、こんな落ちぶれた姿見られたくなかったのに…。」
クレスは、そう悔しそうに言う。
「彼女が、以前の彼女に戻るには、
自分が邪魔をしているのではないかと…。」
元婚約者の奴隷はそう言ってから、我に返る。
「…すみません、おかしな身の上話しをしてしまって。」
「クレス様はお優しいのね。」
カリナは、そう言って優しく声をかける。
「クレス様は止めてください、今は奴隷の身の上です。」
「そう…ならば、なおのこと好きに呼ばせていただくわ。」
そうこう、しているうちに、オンファレが用事を済ませて、帰ってくる。
彼女は、クレスと仲良さげに話すカリナを複雑そうに見ている。
その視線を感じながら、カリナはクレスと話しこむ。
「………。」
「クレス様は…、オンファレお嬢様が、お好きなのね。」
「そんな感情、……今は…許されません。」
「そうかしら?その気持ちお伝えになった方がいいわ。」
「奴隷の身分じゃとても、そんな事。」
クレスが答えると、カリナはひとり考える。
『お嬢様はどう思っているのかしら?』
そうして、オンファレお嬢様に、目をやる。
『きっと同じ気持ちね。さっきから、クレス様とお話していると、オンファレお嬢様が、じっとこちらを見ているもの。』
5章. バルコニーにて
─深夜、時を告げる大時計の音が聞こえる。
しかし、カリナは天蓋付きのベットで、寝付けず、幾度となく寝返りをうっていた。
膨大な借金、可哀想な恋人たち、そんな事が頭を占めてとても寝ていられない。
仕方なく、春の夜の少し冷たい風にあたろうと、夜着のまま、バルコニーに出てみる。
ふと見ると、バルコニーの通路でつながる、隣室のガラス扉から光が漏れている。
そして、開け放たれたガラス戸から、このような、会話が聞こえてきた。
どうやら、2人が、言い争いをしているようだ。
「主人の言う事が聞けないの?はやく、私を奪いなさい。」
「僕にもプライドが有ります。」
そう言って、元婚約者の奴隷は、お嬢様の申し出を断る。
「貴方は本当は分かっているでしょう?
ずっと、私が貴方をお慕いしていた事……なのに、どうして?」
元婚約者の奴隷は、言いずらそうに、答えた。
「それは…分かっています、私もオンファレお嬢様の事を…その、想っています。」
「できたら、この身の上から、抜け出し、自分の力で財をなし、
貴女のお父上が、納得できる身分になるまで待って欲しい。」
奴隷のこの言葉に、オンファレは、つい声を荒げてしまう。
「そんなのいつになるか分からない。今、貴方は奴隷の身分、個人的な蓄財(ちくざい)すらできないのよ。」
「それでも…いつか…。」
「いつか、いつかって、いったいいつまで待てばいいの?」
いつも強気な令嬢は、涙を浮かべて、元婚約に詰め寄る。
『私たちが結ばれるには、もう子供を作ってお父様を説得する以外にないのに。』
「……私を信じて、待っていて下さい」
元婚約者の奴隷は、お嬢様にそう言うと部屋を出ていってしまう。
そこからは、オンファレの涙声が、寝室から聞こえてくるだけだった。
「お父様は奴隷に落ちぶれた、クレスとの結婚なんて、絶対お許しにならないわ…」
カリナは意図せずこれを立ち聞きしてしまう。
そして可哀想な恋人達を、どうにか出来ないものかと、考え込むのだった。
6.章 チェス勝負
─翌日。
朝食が済み、カリナとオンファレ伯爵令嬢は談話室で、お茶をいただきながら、くつろいでいる。
たまたま、窓から入った西陽が、なにかに当たりキラリと光った。
それは、談話室に飾られた、宝石と金銀の装飾で細工された、豪奢な『チェス盤』だった。
その『チェス盤』が、カリナの目に留まる。
『チェス盤』を触りながら、カリナに少なくない確信が生まれた。
「オンファレ様、あの豪華な『チェス盤』使われていますか?」
「いいえ、あれはただの装飾品よ、誰も使わないわ。」
「………。」
「もし良かったら、わたしとチェス勝負しませんか?」
「チェスゲームで賭けをしましょう。賭けるのは、わたし自身。」
カリナはお嬢様に、挑むように見つめる。
「あなたは何を賭けますか?」
それを聞いて、オンファレお嬢様は、ピンと来たようだ。
「いいわ。チェス勝負で、借金をチャラにしたいのね。」
お嬢様は、そう言って納得したようだ。
「私が負けたら、貴女の願いを叶えてあげる。
……どうせ、あの変態奴隷がお望みなんでしょうけど。」
こうして、カリナは人生を賭けた、チェス勝負をする事になるのだった。
7.章 全てを賭けたギャンブル
「決まりです、チェス並べますね。」
『ふん、チェスで私に勝とうなんて。』
『チェスが飾りと聞いて、私がチェスの素人だと思ったようだけど、私が一番得意なのはチェスなのよ』
オンファレは、カリナの意図を読み取って考える。
『5歳の頃から、ユーラ大陸のチャンピオンだった名人から手ほどきを受けてるのよ。今だって、その名人から週一で戦術指導されて、勝った事だってあるわ。
どれだけ、カリナ様がお強くても、この国一の名人に勝った事のある、私が負けるわけないわ』
そう考えて、カリナに提案する。
「ちょうどいいから、貴女の師匠も呼んであげるわ。」
そうして、魔導士のカシウス•オルデウスが連れてこられた。
「カリナちゃん、良かったー。牢にはネズミは出るし、もう出られないかと心配してましたよー(泣)」
「先生、情けない声出さないでください。」
そう言いいながら、師匠はカリナに尋ねる。
「カリナちゃん、カリナちゃん、ところで、チェス得意なの?」
師匠は不安気にカリナに尋ねる。
「あんまりそんな、イメージないけど……。」
それに対してカリナは、自信満々に言い放つ。
「大丈夫です先生。わたし、勝ちますから。」
8.章 魔法の契約書
「それでは賭けの前に、『魔法の契約書』を交わします。」
『魔法の契約書』とは、
お互いの魂を魔道具『運命の天秤』に計り(はかり)かけ、
さまざまな物理法則を無視し、自然の理を超越した、次元でお互いの約束を宣誓、絶対履行を決定づける『魔法契約』である。
もちろん、この契約を守らなければ、天罰としてあらゆる魔法の攻撃が降りそそぐ。
『魔法の契約』とは本来は、一生に一回あるか、ないかの、大変重い契約なのだった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
あとがき
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