魔力ゼロの悪役令嬢が 最強の魔女になれたのは、優しい魔王さまの嫁だから

恋月 みりん

文字の大きさ
63 / 69

88章 魔法学校編 

しおりを挟む
88.章 入学


3連の鋭利な山々が連なる、魔の霊峰マジック・マウント。ユーラ大陸の東、針葉樹の広大な群生地である暗黒の森の奥に、その山々はそびえ立っている。

そして、マジック・マウント魔法学校は、その山たちと深黒しんこくの森に隠される様に創設されていた。


──マジック・マウント魔法学校。魔法学を学ぶため、主に女子の魔法使いを育成するため設立された女子学校。現在は、建前上の共学となる。


その理事長室において、新入生徒の入学の可否かひを問う、検討会議が行われていた。


「──しかし問題の生徒ですが、伝説の大魔法使いのカシウス・オルデウスの推薦状を持って来ていますし。一応、編入試験もパスしていますので……」


気弱そうな初老の男性、校長のヘラルドは、そう言って【カシウス・オルデウス】という大物おおもの魔法使いのネームバリューにたじろいでいる。


「……しかし、校長!この生徒は『魔法の適正試験で魔力ゼロ』を叩き出したんですよ!」


そう言って、マジック・マウント魔法学校の入学テストの担当試験官は、くだんの気弱な校長に訴えかける。


「それなのに、魔力ゼロ適正のこの生徒は、魔法の実技試験で普通に魔法を使っている。

これは何か特殊な魔具、……例えば魔蓄管まちくかんなどのアイテムでズルをしているとしか、考えられません!」


そう言って、担当した実技試験官はこの生徒の不可解さを指摘する。


「そんな、不穏因子の生徒を入学させたら、我が校に何が起こるか分からないんですよ!」


この報告を黙って聞いていたマジック・マウント魔法学校、老齢の女理事長は、静かに口を開いた。


「……そう。入試番号2025、【カリナ・オルデウス】──この子は要注意人物のようね。」


このいかにも厳格そうな、女理事長トレメインはそう言って、書類に目を落とした。


入学可否の検討会議に出席した関係者一同は、女理事長の決裁けっさい固唾かたずを飲んで待っている。


「──やはり。このカリナ・オルデウスの入学は否決とします!」


マジック・マウント魔法学校の理事長が、そう宣言すると、一同、これで不穏因子の入学を回避できたとホッと胸を撫で下ろすのだった。



──1ヶ月後。


マジック・マウント魔法学校の監査かんさをしに、魔法協会から派遣された書記のリステアは、早朝にこの魔法学校に到着していた。


「本当にマジック・マウント魔法学校って、遠いのね。

馬車でお尻が痛くなっちゃった……もう!」


そう独り言を漏らす。


「でも、あの噂。カシウス・オルデウス様の推薦状を持参した生徒がいた、という話し。

滅多に人前に姿を現さない、伝説の大魔法使いが、なぜ弟子をこの学校に入学させたのか?その生徒とは…何者なのか……。

これは必ず真相を究明しなくちゃ……!!」



一方その頃──。


カリナ・オルデウスを乗せた魔石炉ませきろ型蒸気機関車は、マジック・マウント魔法学校に向かい、ユーラ大陸を東西とうざいに貫く鉄道路をひた走る。


カリナは車窓の外、流れるような緑と渓谷、遠ざかる街並みを長い間眺めながら回想していた。


『マジック・マウント魔法学校で──、

必ず魔王様を見つけ出す……!』


カリナはそう決意しながらも、ふっと寂しさが込み上げてくる。


『もし、魔王様に会えたら……。どうして、わたしから去ったのか、それを聞こう。

例え、それが意味の無いことでも……』


そうしなければ、どうしても気持ちの整理が付かなかった。



──しばらく後、カリナを乗せた蒸気機関車はマジック・マウント魔法学校へ到着した。


急ぎ、マジック・マウント魔法女学校の事務局へ向かうと、カリナは自分の入学試験の合否を聞かされる。


「……ふ、不合格ですか……!!」


まさかの、不合格にカリナは意気消沈していた。


『どうしよう……。また先生に怒られる。やっぱり、わたし魔法の才能が無いって事なのかな……』


そうして、カリナは落ち込みながら、校庭をトボトボと歩いていた。


『このままじゃ……、魔王様を探せない……!』


不意に、カリナは綺麗な女の人に声をかけられ顔を上げる。


「あのー……ちょっと、お話しいいかしら?」


「……え…?はい、大丈夫です。」


「あなた、伝説の魔法使い、カシウス・オルデウス様の弟子の方じゃないかしら?」


「!!」


『どうしてこのお姉さんは、わたしが先生の弟子なのが、分かったんだろう?

もしかして……特殊な予知の魔法?』


カリナはそんな事を考えながら、お姉さんを見返した。


もちろん、そんな予知魔法などではなく、この魔法協会書記のリステアは、合否を聞きにきた生徒全員に片っ端から声をかけていたのだった。


「………はい。カシウス・オルデウスはわたしの師匠になりますが……」


この答えに聞いた当の本人、書記のリステアが、びっくりする。


「……本当に!!あの伝説の魔法使いの!?」


「……えっ。」


カリナはお姉さんの驚きに、ますます困惑する。


『それを分かってて、わたしに聞いたのではないの?』


「……本当に、あの伝説の魔法使いの、カシウス様のお弟子さん!?」


魔法協会書記のリステアは、カリナをがくがくと揺さぶる。


「……ええ。カシウス・オルデウスは、わたしの曾々々々お祖父様で、お師匠様になりますが……」


書記のリステアはこの返事に、前のめりになる。


「ちょっと……ちょっとだけ、話しを聞いでもいいかしら?」


しかしリステアは言ってから、はたとある事に気づいた。


「あ!でも、合格者は、これから学校の案内説明があるはずよね……?」


言われて、カリナは気まずそうに答える。


「……いえ。わたし、入学試験に落ちてしまったので……。時間は大丈夫ですよ。」


その答えを聞いて、魔法協会書記のリステアは怪訝そうに眉をひそめた。


「…………なんですって。」


そして、書記のリステアは少し考えてから、カリナにこう提案した。


「……あのね。私こう見えて、けっこう偉い魔法使いなの。ちょっと私に、この件を任せてもらえるかしら?

その代わり、その……ほんのちょっとで良いから、カシウス様に、会わせてもらえないかしら……?」


「先生にですか?」


カリナは、自分の師匠を思い浮かべて、ちょっとびっくりする。


「……い、いいですけど……」


「……!!!!」


書記のリステアは平静を装いながら、内心ガッツポーズをする。


『………やっっったぁぁぁぁ!!!』


それじゃあ行きましょうと、この書記とカリナは、連れ立って理事長室に乗り込む事にした。


────


書記のリステアは、バンと理事長室の扉を開け放つと、デスクに座る女理事長トレメインに、開口一番こう言い放つ。


「理事長、お話しがあります!」


「……あら、魔法協会書記のリステア様。いきなり騒がしく理事長室に押しかけられて、一体どういったご用件です?」


理事長は後ろに控えている、学生風の女子をめざとく見つめながらそう尋ねた。


「この学校の入学試験についてお話しがあります!」


リステアはそう切り出すと、そこから一気にまくし立てる。


「こちらの学校は、Sランク以上の魔法使いの推薦状を持参すれば、無条件で入学を許可する。

そういう規定ではありませんでしたか?」


それを聞いた、女理事長トレメインは澄ました顔で答える。


「ええ。そうですが、それが何か?」


「こちらの学生はカリナ・オルデウスさん、彼女は伝説の魔法使いカシウス・オルデウス様の愛弟子まなでしの方です。

その彼女が、この学校の入学試験で【不合格】になったと聞きつけたので、この様に魔法協会書記の私が、直接参上した次第なのです!!」


鼻息荒くそう一気に話すと、リステアは女理事長の言葉を待った。


それを聞いて、理事長はすぐに、カリナを不合格にした事を抗議しにきたのだと、合点がいった。


「つまり、Sランク以上の魔法使いカシウス様の推薦状がありながら、不合格になったのは不正であると、書記の私は訴えに来たのです!」


それを聞いて、理事長は冷静に口を開いた。


「確かに、その様な規定はありました。

しかし、提出された推薦状の書式はめちゃくちゃ。内容もおなじ有様ありさま

……ご自分で、ご覧になられます?」


理事長は汚い字で書かれた、カシウスの手紙を、書記のリステアに投げてよこす。


{マジック・マウント魔法学校の理事長トレメインちゃんへ カリナちゃんは、優秀な魔法使いなので入学させてあげてねー。byカシウス・オルデウスより♡(はーと)}


書記のリステアは、ちらりと手紙に目を落とすと少したじろいだ。


「……書式はあくまでも慣例で、正式に決まったものでは無かったはずよ……(汗)」


それを聞いて、理事長はこちらにがあるとみて、さらに話しを畳み掛ける。


「……それに、いくら伝説の魔法使いといっても、ランク制になる前の大昔の人物。

私の記憶が正しければ……。カシウス・オルデウス様は、確か正式なライセンスは取得されてはいなかったはずでは?」


それを聞いて、魔法協会書記のリステアの目の奥がキラリと光った。ふふんと勝利を確信し、理事長に勝ち誇る。


「あら、ご存知ないのかしら。魔法協会は名誉魔法使いとして、(一方的に)カシウス様を(私が)認定しましたの。

これは、SSランク以上の認定魔法使いという扱いに規定されるものなのですわっ!」


『ふふふ…。私が無理にゴリ押しした、《名誉魔法使い認定》がこんなトコで役に立つなんて♡

私、グッジョブ!!』


魔法協会書記のリステアは、密かに自分に賛辞さんじを贈る。


それを聞いて、感じ悪……と思いつつも、理事長は観念した様だ。


「……わかりました。カリナ・オルデウスさんの入学を許可しましょう……。それでよろしいですね。リステア様」


「ええ。ありがとう、話しのわかる方で助かったわ」


こうして、様々な一悶着があったものの、カリナはマジック・マウント魔法学校に入学が許される事となった。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

あとがき


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるの!!」


と思ったら


下にある⭐︎⭐︎⭐︎から、作品の応援お願いいたします。


《お気に入り》をいただけると、大変励みになります。


面白くても、つまらなくても、正直に感じた気持ちを《コメント》していただけると、今後につながってありがたいです。

誤字脱字ありましたら、教えていただけると大変ありがたいです。


《しおり》もいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

悪役令嬢が睨んでくるので、理由を聞いてみた

ちくわ食べます
恋愛
転生したのは馴染みのない乙女ゲームの世界だった。  シナリオは分からず、登場人物もうろ覚え、タイトルなんて覚えてすらいない。 そんな世界でモブ男『トリスタン』として暮らす主人公。 恋愛至上主義な学園で大人しく、モブらしく、学園生活を送っていたはずなのに、なぜか悪役令嬢から睨まれていて。 気になったトリスタンは、悪役令嬢のセリスに理由を聞いてみることにした。

悪役令嬢に転生したけど、知らぬ間にバッドエンド回避してました

神村結美
恋愛
クローデット・アルトー公爵令嬢は、お菓子が大好きで、他の令嬢達のように宝石やドレスに興味はない。 5歳の第一王子の婚約者選定のお茶会に参加した時も目的は王子ではなく、お菓子だった。そんな彼女は肌荒れや体型から人々に醜いと思われていた。 お茶会後に、第一王子の婚約者が侯爵令嬢が決まり、クローデットは幼馴染のエルネスト・ジュリオ公爵子息との婚約が決まる。 その後、クローデットは体調を崩して寝込み、目覚めた時には前世の記憶を思い出し、前世でハマった乙女ゲームの世界の悪役令嬢に転生している事に気づく。 でも、クローデットは第一王子の婚約者ではない。 すでにゲームの設定とは違う状況である。それならゲームの事は気にしなくても大丈夫……? 悪役令嬢が気付かない内にバッドエンドを回避していたお話しです。 ※溺れるような描写がありますので、苦手な方はご注意ください。 ※少し設定が緩いところがあるかもしれません。

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

転生ガチャで悪役令嬢になりました

みおな
恋愛
 前世で死んだと思ったら、乙女ゲームの中に転生してました。 なんていうのが、一般的だと思うのだけど。  気がついたら、神様の前に立っていました。 神様が言うには、転生先はガチャで決めるらしいです。  初めて聞きました、そんなこと。 で、なんで何度回しても、悪役令嬢としかでないんですか?

目覚めたら大好きなアニメの悪役令嬢でしたが、嫌われないようにしただけなのに全員から溺愛されています

月影みるく
恋愛
目を覚ましたら、大好きだったアニメの世界。 しかも私は、未来で断罪される運命の悪役令嬢になっていた。 破滅を回避するために決めたことはただ一つ―― 嫌われないように生きること。 原作知識を頼りに穏やかに過ごしていたはずなのに、 なぜか王族や騎士、同年代の男女から次々と好意を向けられ、 気づけば全員から溺愛される状況に……? 世界に一人しかいない光属性を持つ悪役令嬢が、 無自覚のまま運命と恋を変えていく、 溺愛必至の異世界転生ラブファンタジー。

処理中です...