【完結】Reversal

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本編

6.

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 キスをしたのは、初めてだった。
 ひとり残されたラウンジのソファーに深く腰掛けて、北斗は深く息を吐く。唇に触れてみる。感触がまだ残っている。彼の閉じた瞼が頬に影を作っていた。近寄ると、表現しづらい香りがした。ダージリン、香水、何処か甘く清涼な脳がくらりと回る、そんな香り。
 真白は慣れているのか、少しも動揺していなかった。それにも関わらず、北斗は今、全身が粟立って、すぐに立ち上がることが出来ない。
――秘密、ですよ。
 声はすぐ、鼓膜を揺らした。兄に対して秘密など持ったことが無い。兄のみならず、北斗は誰とも意図的に秘匿した出来事を持たない。今までの人生で、必要がなかったからだ。
 人生に必要が生じた。であれば、北斗は、家に帰るまでに決めなければならない。真白開との四回目の邂逅を望むかどうかを、だ。
 兄は一度だけだからこそ、今回を許した。次を、と望んで、快く対応してくれるかは定かではない。口では厳しく言えど心根が優しい兄だ、個人としては最終的には許可してくれるだろう。問題は、彼の立場が、皇の方針と合うかどうかである。企業としての姿勢や、兄の指針がある以上、オメガの地位向上を謳う彼の活動を許容できるかどうかは、兄や北斗自身の意思が関わらないところの判断になる。
 だからこそ、「活動の関係ないところで」と真白は告げたのだ。
 誰と会うかも決められない子供。その通りだ。家の指針をなしに、北斗は自分で決められない。だが、あの時のあの言葉は、北斗の奥底では否定したかった。
 真白の目は奥底で北斗を推し量り、同時に何かに挑みかかるように、強烈な光で煌めいていた。真白はその瞬間、瞬間を、凄絶な光をもって生きている。北斗が見たことが無い生命力を持って、目を逸らしたらその瞬間に消えそうな光のような人間であった。
 珈琲のカップを置き、北斗はそこに映る自分の顔を見た。そして、気が付く。
「……そうか」
 答えは出ているのだ。先程から北斗は「会える為の理由付け」を探している。それが、答えなのだ。
 兄に嘘はつきたくない。ならば北斗に出来る道は一つだ。兄に納得してもらえるまで、訴えるしかない。企業と活動が関わらない個人であれば、聞く耳をもってくれるはずだ。
 次に吐いた息は安堵したものになった。選択をするのは、疲弊する。改めて毎日、重大な決断を迫られている兄の苦労を思った。
 真白はどうなのだろう。活動の代表者だ。彼も、決断をする毎日なのだろうか。気になった北斗はタブレットを開き、真白の名を検索した。実は昨晩も調査はしている。直接会う相手なのだから、事前に下調べをしておくのは当然で、概要くらいは把握していた。
 活動内容はオメガの地位向上を謳い、裁判における弁護士の手配や、オメガの生活困窮者に対する生活のサポートであったり。たまに講演会も開かれている。ホームページにはインタビュー形式でオメガの体験談なども共有されていた。
 北斗は体験談を眺めるが、いまいち実感が沸かない。アルファによって暴行を加えられた、独身で子を産むことになったなどの経験は、虚構ではないと思っているし、心が痛む。だが、こんなことばかりではないだろうと、どうしても考えてしまう。
 母や義姉は、父や兄と婚姻して幸せであると言う。実際、共に過ごして生きてきた母が、父の不満を漏らしたり、酷い暴行を受けている姿など、北斗は見たことが無い。父は愛情をあまり表に出さない人ではあっても、母を疎んじていたり、傷つけることはなかった。そして、父も兄も母も義姉も、北斗には優しい。これほど非情で無情なことが出来る人間がいることが、信じられない。少なくとも北斗の周りにはおらず、そんな話をする人間もいなかった。
 詳しく話を聞けるかと思ったが、真白は語らなかった。ここはラウンジだ。場所が悪かったのかもしれない。例えば性被害にあった話など、こんな場でするには適切ではない。場所を指定したのは北斗なのだから、元々真白は活動の話をするつもりはなかったとも考えられた。
 北斗が立ち上がると、支配人が寄ってきた。手には預けていたコートが携えられている。支配人は素早く北斗の表情を見た。
「お帰りでございますか?」
「はい。すみません、つい長居をしてしまって。珈琲美味しかったです。気を遣わせてすみませんでした」
「とんでもございません。お口にあいましたら恐悦至極でございます。いつでもお越しくださいませ」
 支配人は柔和な笑みを向けてくれた。天理の知り合いは都内には特に多い。気にかけてくれていたことに笑って礼を言い、コートを着せてもらった北斗はラウンジを出る。
 日は暮れ、夕暮れとなっている。外の空気は冬の寒さが風となって、ビルの隙間から吹き荒れていた。暖冬とはいえ、寒い冬の日だ。駅までの距離を北斗は歩く。そういえば兄は今日、この辺りの取引先と打合せをし、近場の拠点で執務にあたると聞いていた。一応兄に連絡をしようかと、通信機器を取り出した矢先。
 ビルとビルの隙間を通りがかると、何かが打ち付けられるような物音と、押し殺した悲鳴が耳に届いた。
「……?」
 足を止め、ビルの間に目を向ける。暗い奥は、何があるのか分からなかった。落ちていく日が余計に視認性を悪くしている。考え、北斗は機器をしまい、進路を変える。
 歩を進めると、悲鳴は掠れて、断続的に続いていると分かった。男の声が、違う声音で二つある。悲鳴と合わせて三人。そう気付いた時、北斗は引き返すか迷った。北斗ひとりで対応できない事態かもしれない。自分の身も守れない状態は避けなければならないと厳命されている。そうして背後に転換しようとした際、強烈な匂いが鼻腔をついた。瞬間、膝が崩れて、足元が大きな音を立てる。ビルの壁に手を掛けるが、自分の体重を支えられなかった。防衛本能で、目から涙が溢れそうになる。吐いた息が荒い。視界が、回る。
「あ? なんだ、こいつ」
 ガンガンとうるさく鳴り響く頭痛とこめかみの血流の中、男の声が聞こえる。
「あれじゃね? こいつに釣られてきたんだろ」
 もう一人の男が何かを持ち上げる音が聞こえた。そこから、悲鳴が、漏れる。服が破かれ、顔を殴打されている男であった。その男から、大量の甘い香りを感じる。すぐにそちらに向かって、組み敷きたくなる気持ちが、腹の底に燻った。
 ただただ、気持ちが悪い。
「……その人に何をしているんだ」
 北斗が何とか声を絞り出すと、二人の男は笑った。
「何って……なぁ?」
「兄ちゃん、苦しそうだな。オメガか? いや、アルファか。こいつのフェロモンだだ漏れだからな、抱かせてやろうか?」
「やめとけって。アルファ様に手を出すと後がややこしいぜ。やっぱオメガはいいよな、面倒がなくて」
 男たちは北斗には近寄らなかった。代わりに暴行を受けている男の脚を無理矢理持ち上げる。それで、何をしようとしているかが分かった北斗は、全身から血の気が引く。気持ちの悪い眩暈が続いて、口元を抑えた。先程まで清浄だった冬の空気すら、熱く感じる。淀んだ、粘土の高い、肌に張り付く空気だ。
 やめてください、と、男は言った。二人の男は聞く耳も持たず、男の上に圧し掛かる。
「やめろ!」
 何とか膝を叱咤して立ち上がると、一人の男が面倒くさそうに北斗を振り返る。
「何だよ、こいつが先に俺たちを誘惑してきたんだからな。飯が食えねぇから、仕事がしたい、何でもするって」
「そんな……」
 男はどうにか男たちの手から逃れようとしているが、細い手は一向に振り払うことが出来ない。彼は男たちを怯えた目で見て、北斗に手を伸ばした。
「助けて、」
 男が言葉を発する度に、空気が淀む。息が出来なくなる。吐く息は荒くなるばかりで、うまく吸うことが出来ない。耳の後ろが痛い。男の声は、徐々に発狂するかのように、切羽詰まったものになった。目が潤み、呼吸が乱れ、頬に赤みが差す。半狂乱した彼は、瞳孔を見開かせた。
「抱いて! 抱いてください、抱かれるならあなたがいい! 助けて下さい!」
 男たちが口笛を吹く。何を言っているかは北斗には分からなかった。助けなければならない、だが、同時に、助けを求める男を、その声の求めるがままに組み敷きたくなる衝動が走る。
 それが、自分から生まれた衝動であることが、心の底から気持ち悪かった。
「そこの人たち、彼から離れてください」
 冷静な声が、北斗の耳に入る。動けない北斗を置いて、声の持ち主は男たちの前に立った。特筆すべきことがない平凡な姿の男だ。凛とした声音で男たちに対峙する。その手に持っているのは、通信機器であるようだった。
「御覧の通り、警察に通報済みです。逮捕されたくなければ、速やかにこの場から離れてください。ここには」
 言葉を切った男は、北斗を示した。
「彼がいます。アルファに対する公然わいせつ罪が適用されますよ」
 男たちは舌打ちをする。だが、鳴り響き始めたパトカーのサイレンに分が悪いと判断したのか、悪態をついて、北斗たちとは反対側の路地裏へと走っていった。
 残された北斗はとうとう膝と肘をついて、身体を支える。突如現れた平凡な男は、暴行を受けていた男にすぐに駆け寄った。
「ダメです、真白さん、こっちには来ないでください。アルファがいる。おそらく凄まじいフェロモンが出てます。あなたも影響を受ける」
 通信機器に告げた男が、男を介抱する。鞄から迅速に取り出した薬は、抑制剤だろう。男の口に詰め、同じく取り出したペットボトルの水を飲ませる。手慣れた手つきであった。彼は介抱しながら、地を向いたままの北斗に声を掛けてくる。
「あなた、大丈夫ですか。誰か呼びますか。ここで待っていれば警察が来ます。そっちでも大丈夫ですか」
「それは、そっこうせい、ですか?」
 男は、一瞬質問の意味を測りかねたようで、黙ってから答えた。
「……そうです、彼は五分で治まります」
 五分。今の北斗にとっては一時間にも思える時間だ。歯を食い縛り、アスファルトに爪を立てる。警察に世話になっても構わないが、家族に連絡がいけば迷惑をかけることになる。穏やかに生きている母や義姉を驚かせるのは出来るだけ避けたい。心配させることも、避けたい。
 北斗が答える前に、通信機器から声が聞こえてきた。
『待ってくれ、凪! すぐに皇天理に連絡を取る!』
 聞いたことがある声だ。それはすぐにわかった。ラウンジで別れた、真白の声だ。何故真白が、と考える暇は、今の北斗にはない。凪と呼ばれた男は、男を横たわらせて、通信機器に返した。
「ああ、彼なんですね。でも、知ってるんですか、真白さん。皇天理の連絡先なんて。だいたい、なんて連絡します? 下手したら僕たち諸共攻撃されますよ」
 兄の名が飛び交っている。北斗はどうにか口を開いた。
「すみ、ません、私の、携帯を……そこに、連絡先があるので」
 徐々に薬が効き始めたのか、空気がわずかに清浄になり、少しだけ視界が晴れてくる。ぼろりと落ちた涙が、アスファルトに染みを作った。顔を上げた先、「凪」が渋面を作って通信機器に答える。
「真白さん、彼から連絡させます。いいですよね」
『構わない』
 凪は近寄り、「触りますよ」と言ってから、北斗の携帯を操作する。すぐに兄の連絡先に辿り着き、通信のボタンを押した。
 コールは何回も続かない。特に今日は真白開と会うと知っているから、天理の行動は早かった。
『北斗?』
 兄の落ち着いた声に、北斗の目からもう一度涙が落ちる。兄さん、と辛うじて言葉を紡ぐと、天理が立ち上がった音が電話越しに聞こえてきた。
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