まにゅ恋

とら

文字の大きさ
30 / 72

まにゅ恋27

しおりを挟む
 ───夏休みに入り、相変わらず暑い日が続く中、俺と間宮は電車に揺られていた。
 窓際に座って景色に目をやっていると、間宮が固い感じに呟いた。
「……寄席を見たいと真純の言う通り、旅行の行き先が東京になったのは百歩譲って良いとして───」
「百歩譲るんかよ」
「いや、いいんだけど……。そこで真純のお父さんに会うって言うのは……どういうことなんでしょうか……?」
 どゆこと? と俺を見る間宮に視線を向けて、俺はそのことかと思った。
「別に息子さんを俺に下さい、って言えっていうわけじゃないよ」
「……ハードル上げないで」
「父さんの赴任先でちょうど会いたがっててタイミング的に良かっただけだよ。……まあ、会っても、たぶん俺たちのこと理解しない感じだから」
「……反対されてるの?」
 不安そうな間宮に「違う違う」と手を振って、
「普通の人なんだよ。同性で、その……付き合うなんてこと思ってもない人だから。母さんもチラリと俺たちのことほのめかしたみたいだけど、わかってないみたいだったし。だから普通に友達ですって顔で会えばいいんだよ」
「─────」
 間宮は視線を外して、いたずらっぽく笑った。
「恋人なのに?」
 カッと顔が熱くなる。でもすぐ取り繕って、
「……恋人なのに」
 そう小声で答えた。間宮が俺を覗き込む。キスされるかな、と思ったが、他に乗客がいたせいか軽く手を握ってくる。振りほどかずに───俺は黙って、その手を握り返した。

 * * *

 荷物は間宮とも一緒で少なめだったが、邪魔になった。おのぼりさん状態で浅草の昼の部を見て(夜の部も見たかったが学生なので親が心配したので今回は見送った)堪能し(楽しかった! しばらく間宮のことを忘れて傷付いた……と言う顔をされた)、夕方スマホ片手に地下鉄に乗って父親とご飯する店まで間宮と行った。
 予約してあったみたいで、すんなり席に通された。道の喧騒をよそに、静かな落ち着いた店内だった。学生二人がくるような店じゃなかったが、居心地は悪くなかった。
 ───少し遅れて父親が来た。
「悪いね、遅くなった」
 それでも仕事を早めに切り上げたみたいで、暑いのにスーツ姿で、席につくと上着を脱いで椅子に掛けた。
 間宮がガチガチに緊張して挨拶したのを皮切りに、学校のことや家のことを話しながら食事が進んだ。
「彼女は二人ともできたのか?」
 父親が何気なく聞いてくる。間宮が隣で面白いぐらい固まった。
「いや……いないけど」
 彼女はね、と心の中で付け加えて答える。
「そうか。男子校だからなあ」
 納得したように父親が言った。「間宮くんモテそうなのになぁ」とも後に続ける。
「……………」
「……………」
 二人で無言になる。
「そう言えばホテル取ったけど、父さんのところに泊まっても大丈夫だぞ」
 話を変えた父親の言葉に間宮が「え?」と俺を見る。
「いいよ。明日も仕事なんだろ? こっちもこっちで東京満喫するし」
「そうか? そんなに部屋せまくないぞ」
「大丈夫だよ」
 断って、まったり時間を潰して父親と別れた。
 ───間宮と二人残されて、
「今日……お父さんのところに泊まると思ってた」
 間宮がぽつりと呟く。俺はチラリと間宮を見上げる。
「ならそうする?」
「いや、しないけど……」
「お前さ……」
 思いきって聞いてみようと俺は口を開いた。
「父さんにほんとのこと言って、別れろって言われたら別れた?」
 間宮が少し目を見開いて、それから静かに答える。
「別れないよ」
 そっと俺の手を握って、続ける。
「真純が怖がるぐらい、別れないでずっと好きでいるよ」
「──────」
 なんて返したらいいかわからず、黙ってから俺は手を握り返して「ホテル行くか」と促した。
 間宮は「そこは俺も好きって言うところじゃないかなぁ」と苦笑した後、意味ありげに俺を見て、「そんなにしたいの?」と、冗談っぽく笑って言った。
 俺は真っ直ぐ見返して、言葉を返した。
「───したい」
「──────」
 間宮が息を飲む。
 俺はスマホを出してホテルを探す。間宮が黙って後をついて来た───。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

処理中です...