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プロローグ1
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プロローグ。
秋の天候は変わりやすい。
雨が止んだと思ったらまた雨が降り、日差しが強く暖かいと思ったら雲行きが怪しくなり冷たい風が吹く。
最初は雨なんか降っていなかった。
私は家に出る前に天気予報を確認し、晴れマークを確認していたはずだった。
それなのに何故今雨が降るのだろう。
空を見るとポツ、ポツと降る雨は私を苛立たせるように降り始めた。
坂道を登っている時に雨が降るとか、なんだか運が味方についていないようでなんだか気だるい。
私ははぁ、とため息をついて少し下に俯く。
「千咲ー、傘いるか?」
私の隣で歩いていた司が声をかけてきた。
「え?傘持ってきてるの?」
私は驚いたように司に言葉を返す。
「ああ、天気予報なんて信用できないからな」
「じゃ、行こーぜ。」
司は笑顔を見せて少し自慢ぶるように誇らしげにそう言い、折りたたみ傘をさして先に歩き始める。
それから数分間、私と司は距離を置いて再会を忘れていたかのように私達は何も話さず、目的地を目指し坂を登っていた。
「よーし、着いたな」
司が目的地に着き足を止めると私も司の横に行き目的地の景色を眺める。
何年ぶりだろうか?この景色を見るのは。
ここは10年前の高校時代の学校帰り、なんども皆で行った展望台がある公園である。
私は懐かしさと感動を同時に覚える。
「雨、止んできたな」
司が懐かしむように少し小声で喋り傘をたたむ。
私はそういえば、と思い出して傘をたたみ上を見上げる。
すると強い日差しが私の目を歪ませた。
私は目の前に手を出して光を遮った。
手の甲と頬に水滴が落ちてきた感覚があった。
「雨…?」
声がこぼれたかのように私の口から声が出る。
天気雨というやつだろうか、
展望台の柵の外の景色を見下ろすと海と海に浮いてるこのような小さな入り島が、秋の光を吸い込んだかのように光を帯びている。
それに加え顔をあげれるくらいな弱い雨がゆっくりと、スローモーションかのように。
この景色を囲うかのように。
美しく、綺麗に。
幻想的な景色を創り出すかのように降っている。
「綺麗……。」
一瞬言葉を失ったが言葉にしないとこの美しい景色が消えてしまいそうで、ゆっくりとためて息をするかのようにためて言葉を出す。
私はこの景色を眺めていてどれくらい経ったかは分からないが、この懐かしさと感動が混じった感覚は一生忘れられないくらいに私の心を動かしていた。
「そろそろあっちの景色も観てみないか」
司が存在を気づかせるかのように私に言った。
そこで私は自分でこの景色に集中し過ぎている事に気づいて、私は慌てて謝る。
「ごめん司、分かった。」
「いいや、いいんだ。」
司は10年前とは別人のように、少し掠れた小さな声で答えながら目を逸らして歩く。
私はその司の仕草に驚いた。
10年前の司は誰よりも元気で、そして誰よりも優しかった彼が今、別人になっているように見えた。
その後ろ姿は懐かし気な彼の姿とは別に、後悔を重ねていった大人のような彼の後ろ姿にも見えた。
私は後を追いゆっくりと歩き始める。
私が歩いていると急に司は、何かを見たのか、歩みを止めた。
私はなんだろうと思い司の目先を見てみる。
ベンチの上に白い花束が置いてあった。
私は気が付くと足を止めていた。
この世界から音が消えたのかと錯覚するかのように私の耳には雨の音も入らなかった。
ただ、風の音だけが、音を立てて私の耳に入ってくる。
急に、天候が変わった事など、今はどうでもいいのだ。
あいつだ。
この花を見て一番最初に思った言葉がそれだった。
この花を見ると酷く悲しげに、感情的になってしまう。
この花を見ると、消えたくなるほどの後悔が頭の中でいっぱいになる。
この花束を見ると、何故か私は泣いてしまう。
私はこの花束の存在を忘れてなんかいなかったはずだった。
いつも心の中のどこかにあるのだと思っていたはずだった。
いつからだろう。こんなことを考えていたのは。
気付けばいつの間にか私は、10年経ち大人になっていた。
今年も気づけば夏は終わり、秋になっていた。
風は気にせずとも勝手に冷たくなっていくのと同じように、
忘れてなんか、いない。と
心の中にあるのだと勝手に勘違いしていたのだろう。
忘れないで欲しかったのに。
今では凄く後悔している。
風が木を揺らす。そして優しく吹く。
やっぱり、冷たい。
目の前の白い花束が、私の、私達の前で揺れ動く。
「× × × × × × × × × だっけ?」
誰が喋っているのだろう。
風の音で聞こえない。
「あいつ、この花、好きだったよな」
今度は聞こえた。
司だ。
私の隣で優しく喋る。
「来たのかな。」
うん。きっとそう。
あいつはそういう奴だ。
この花はあいつが置いていった。
保証はないが自信はある。
不思議とそんな気がするのだ。
そう、私は思う。
♦
俺はあいつを行かせて良かったのだろうか、10年経った今でも考えている。
寒くてポケットに入れた手を思わず強く、想いと力を強く込め握りしめる。
いいや、行かせて良かったんだ。行かせないと、駄目だったんだ。と、
頭の中で何回も呪文のように、繰り返す。
ここは、この場所は、あいつと、あいつらとの、
約束の場所。
あの日の事を、あの夏のできごとを。
花火のように一瞬で消えていってしまったあのできごとを。
俺は、あの日の事を思い出す。
♦
空にも、花が咲く。
空にだって、花が咲く。
花火の音が、聞こえる。
人々は、その光に、魅せられていた。
その炎のような光に。
息をするかを、忘れていたかのように。
綺麗に、咲く。
儚いから、美しい。
何よりも美しい。
音が追いつくのが遅い。光が、消えてしまうのが早い。
その光は、大切な人と夏の記憶を、一瞬で奪い去ってしまう。
そんな気がする。
だから俺は、花火が、
だから私は、花火が、
好きだ。
嫌いだ。
秋の天候は変わりやすい。
雨が止んだと思ったらまた雨が降り、日差しが強く暖かいと思ったら雲行きが怪しくなり冷たい風が吹く。
最初は雨なんか降っていなかった。
私は家に出る前に天気予報を確認し、晴れマークを確認していたはずだった。
それなのに何故今雨が降るのだろう。
空を見るとポツ、ポツと降る雨は私を苛立たせるように降り始めた。
坂道を登っている時に雨が降るとか、なんだか運が味方についていないようでなんだか気だるい。
私ははぁ、とため息をついて少し下に俯く。
「千咲ー、傘いるか?」
私の隣で歩いていた司が声をかけてきた。
「え?傘持ってきてるの?」
私は驚いたように司に言葉を返す。
「ああ、天気予報なんて信用できないからな」
「じゃ、行こーぜ。」
司は笑顔を見せて少し自慢ぶるように誇らしげにそう言い、折りたたみ傘をさして先に歩き始める。
それから数分間、私と司は距離を置いて再会を忘れていたかのように私達は何も話さず、目的地を目指し坂を登っていた。
「よーし、着いたな」
司が目的地に着き足を止めると私も司の横に行き目的地の景色を眺める。
何年ぶりだろうか?この景色を見るのは。
ここは10年前の高校時代の学校帰り、なんども皆で行った展望台がある公園である。
私は懐かしさと感動を同時に覚える。
「雨、止んできたな」
司が懐かしむように少し小声で喋り傘をたたむ。
私はそういえば、と思い出して傘をたたみ上を見上げる。
すると強い日差しが私の目を歪ませた。
私は目の前に手を出して光を遮った。
手の甲と頬に水滴が落ちてきた感覚があった。
「雨…?」
声がこぼれたかのように私の口から声が出る。
天気雨というやつだろうか、
展望台の柵の外の景色を見下ろすと海と海に浮いてるこのような小さな入り島が、秋の光を吸い込んだかのように光を帯びている。
それに加え顔をあげれるくらいな弱い雨がゆっくりと、スローモーションかのように。
この景色を囲うかのように。
美しく、綺麗に。
幻想的な景色を創り出すかのように降っている。
「綺麗……。」
一瞬言葉を失ったが言葉にしないとこの美しい景色が消えてしまいそうで、ゆっくりとためて息をするかのようにためて言葉を出す。
私はこの景色を眺めていてどれくらい経ったかは分からないが、この懐かしさと感動が混じった感覚は一生忘れられないくらいに私の心を動かしていた。
「そろそろあっちの景色も観てみないか」
司が存在を気づかせるかのように私に言った。
そこで私は自分でこの景色に集中し過ぎている事に気づいて、私は慌てて謝る。
「ごめん司、分かった。」
「いいや、いいんだ。」
司は10年前とは別人のように、少し掠れた小さな声で答えながら目を逸らして歩く。
私はその司の仕草に驚いた。
10年前の司は誰よりも元気で、そして誰よりも優しかった彼が今、別人になっているように見えた。
その後ろ姿は懐かし気な彼の姿とは別に、後悔を重ねていった大人のような彼の後ろ姿にも見えた。
私は後を追いゆっくりと歩き始める。
私が歩いていると急に司は、何かを見たのか、歩みを止めた。
私はなんだろうと思い司の目先を見てみる。
ベンチの上に白い花束が置いてあった。
私は気が付くと足を止めていた。
この世界から音が消えたのかと錯覚するかのように私の耳には雨の音も入らなかった。
ただ、風の音だけが、音を立てて私の耳に入ってくる。
急に、天候が変わった事など、今はどうでもいいのだ。
あいつだ。
この花を見て一番最初に思った言葉がそれだった。
この花を見ると酷く悲しげに、感情的になってしまう。
この花を見ると、消えたくなるほどの後悔が頭の中でいっぱいになる。
この花束を見ると、何故か私は泣いてしまう。
私はこの花束の存在を忘れてなんかいなかったはずだった。
いつも心の中のどこかにあるのだと思っていたはずだった。
いつからだろう。こんなことを考えていたのは。
気付けばいつの間にか私は、10年経ち大人になっていた。
今年も気づけば夏は終わり、秋になっていた。
風は気にせずとも勝手に冷たくなっていくのと同じように、
忘れてなんか、いない。と
心の中にあるのだと勝手に勘違いしていたのだろう。
忘れないで欲しかったのに。
今では凄く後悔している。
風が木を揺らす。そして優しく吹く。
やっぱり、冷たい。
目の前の白い花束が、私の、私達の前で揺れ動く。
「× × × × × × × × × だっけ?」
誰が喋っているのだろう。
風の音で聞こえない。
「あいつ、この花、好きだったよな」
今度は聞こえた。
司だ。
私の隣で優しく喋る。
「来たのかな。」
うん。きっとそう。
あいつはそういう奴だ。
この花はあいつが置いていった。
保証はないが自信はある。
不思議とそんな気がするのだ。
そう、私は思う。
♦
俺はあいつを行かせて良かったのだろうか、10年経った今でも考えている。
寒くてポケットに入れた手を思わず強く、想いと力を強く込め握りしめる。
いいや、行かせて良かったんだ。行かせないと、駄目だったんだ。と、
頭の中で何回も呪文のように、繰り返す。
ここは、この場所は、あいつと、あいつらとの、
約束の場所。
あの日の事を、あの夏のできごとを。
花火のように一瞬で消えていってしまったあのできごとを。
俺は、あの日の事を思い出す。
♦
空にも、花が咲く。
空にだって、花が咲く。
花火の音が、聞こえる。
人々は、その光に、魅せられていた。
その炎のような光に。
息をするかを、忘れていたかのように。
綺麗に、咲く。
儚いから、美しい。
何よりも美しい。
音が追いつくのが遅い。光が、消えてしまうのが早い。
その光は、大切な人と夏の記憶を、一瞬で奪い去ってしまう。
そんな気がする。
だから俺は、花火が、
だから私は、花火が、
好きだ。
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