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「りゅ、隆ちゃん……」
「ん?」
全身の身体の力が抜けた。耳に響くように低音ボイスで囁かれ、身体中に彼の声が注がれる。「ん?」の一言で骨抜きにされちゃうとかこの先が思いやられるというか、期待で胸溢れるというか、なんというか……
「あの、そろそろ退いてください……死にそうになる」
「あぁ、ごめんごめん」と笑いながら手をパッと退かし、私は壁ドンからやっと解放された。心臓がバクバクと動きすぎて死ぬかと思った。
「美桜の部屋、漫画とか本でいっぱいだな。片付けるの手伝おうか? 大変だろ?」
「いやいやいや、ぜんっぜん大変じゃない! むしろ楽しいというか、なので大丈夫! 隆ちゃんは自分の部屋かたしてきてっ!」
全力で拒否した。さっき見られた漫画は少女漫画だから過激なシーンはないものの、他のやつにはそりゃ濃厚なシーンが沢山あって、まぁそれが最強に最高なんだけれども。ノーマル男子に見られた時の反応が恐ろしくて考えたくもない。そもそも新居に見られなくないなら持ってくるな! って思うかもしれないけどそれは無理だ。この本に囲まれる空間が無いと私はストレスで十円ハゲができるかもしれない。バレるかもしれないという危険と隣り合わせでも私はこの漫画達から離れる事は出来なかったのだ。
「じゃあとりあえず自分の部屋片してくるけど、今度美桜のオススメ漫画貸してよ、読んでみたいから」
この方はやはり神ですか? と聞きたい。誰か教えて下さい。この方は神なのですか? 相手の趣味を知ろうとするとか……手を合わせたくなる。
「じゃ、じゃあ後でオススメ教えるね」
「ん、ありがと」
バタンとドアが閉まり私は床に寝そべり、上がり切ったテンションをどうにか身体から逃そうと右に左にと転がりまくった。
「うぅ~神すぎるよぉ~好きすぎるよぉ~」
一人悶々としながら一冊ずつ本棚に仕舞い込み夕方の五時には八割ほど部屋は片付いた。
部屋を出るとリビングからなんだか香ばしくていい匂いが漂ってくる。匂いにつられるようにフラフラと足を進めるとキッチンには黒のエプロンをつけ菜箸を持っている隆ちゃんの姿が目に入り、グサッと心臓を射抜かれた。綺麗な黒髪と黒のエプロンのコンビネーション、菜箸を持つ右手の筋張った筋肉と左でもつ小鍋を支える二の腕の筋肉、上腕三頭筋がいい具合に張っている。眼福すぎて、もう今日は何度死にそうになったか数えきれない。
「え!? 隆ちゃん夜ご飯の支度してくれてるの!?」
「ん、美桜は部屋の片付け終わったの? 俺が夕飯用意しておくから休んでな」
「いやいやいや、私も一緒に準備するよ。むしろさせて下さいっ! 家事は分担してやらないと」
「そうだな、じゃあ今日は一緒に作ろうか。今グリルで肉と野菜を焼いてるから、味噌汁作ろう」
「了解でっす!」
新婚さん=エプロン(ごめんなさい、私裸エプロン想像しました)と思いこの日の為にエプロンは買ってあったのだ。急いで自室に戻り段ボールから漁り出す。ベタに白のフリル……と思ったが手に取って買うのはやめた。汚れも目立つし、白のフリルは二次元だから可愛いんだな、と思いとどまり普通のグレーのシンプルなエプロンを購入したのだ。
グレーのエプロンを身にまといキッチンに戻ると既に人参やキャベツなどの野菜は切り終わっていて後は鍋に入れるだけの状態になっていた。なんて手際がいいんだろうと感心してしまう。
「って、もう私やる事ないじゃんっ!」
「ははは、じゃあ鍋に野菜入れて、油揚げ切ってもらおうかな」
「はい! ……ねぇ隆ちゃん、油揚げって……どのくらいの大きさに切るの?」
「適当でいいよ」
「て、適当……」
この世で一番適当という言葉が難しいと思うのは私だけだろうか。実家で料理を手伝ったことがある。母親に適当に塩入れておいてと言われて適当に入れたが為に物凄くしょっぱい野菜炒めが完成した事がある。適当に味噌入れといてと言われて適当に入れたらまた、すっごくしょっぱい味噌汁が出来上がった。まだまだある、私の適当に入れといて事件。恐ろしくて声に出せない程の味……
でも今回は油揚げだ。味に影響が出るとは考えにくい。私は適当に油揚げを切ってお鍋の中に入れた。
「美桜、味噌はそこに準備してあるから、あと出汁の素はそこの小さい引き出しに閉まってあるよ」
(た、助かったぁ……)
私はホッと胸を撫で下ろした。味噌を入れて出汁の素を入れる……粉末の出汁の素。こ、これは一体どのくらい入れればいいんだろうか……適当とは本当に恐ろしい言葉だ。
「りゅ、隆ちゃん。出汁の素はいつもどのくらい入れてる?」
(この聞き方ならおかしくないよね……)
「俺も実家暮らしだったからそんなに料理しなかったからなぁ、適当でいいんじゃないか?」
ガクンと膝から崩れ落ちそうになる。適当って……もうこうなったら……適当に入れてやる! 思い切って計量スプーンなんて使わずに袋から直にサラサラサラ~と適当に入れてみた。味の保証は出来ません。
「ん?」
全身の身体の力が抜けた。耳に響くように低音ボイスで囁かれ、身体中に彼の声が注がれる。「ん?」の一言で骨抜きにされちゃうとかこの先が思いやられるというか、期待で胸溢れるというか、なんというか……
「あの、そろそろ退いてください……死にそうになる」
「あぁ、ごめんごめん」と笑いながら手をパッと退かし、私は壁ドンからやっと解放された。心臓がバクバクと動きすぎて死ぬかと思った。
「美桜の部屋、漫画とか本でいっぱいだな。片付けるの手伝おうか? 大変だろ?」
「いやいやいや、ぜんっぜん大変じゃない! むしろ楽しいというか、なので大丈夫! 隆ちゃんは自分の部屋かたしてきてっ!」
全力で拒否した。さっき見られた漫画は少女漫画だから過激なシーンはないものの、他のやつにはそりゃ濃厚なシーンが沢山あって、まぁそれが最強に最高なんだけれども。ノーマル男子に見られた時の反応が恐ろしくて考えたくもない。そもそも新居に見られなくないなら持ってくるな! って思うかもしれないけどそれは無理だ。この本に囲まれる空間が無いと私はストレスで十円ハゲができるかもしれない。バレるかもしれないという危険と隣り合わせでも私はこの漫画達から離れる事は出来なかったのだ。
「じゃあとりあえず自分の部屋片してくるけど、今度美桜のオススメ漫画貸してよ、読んでみたいから」
この方はやはり神ですか? と聞きたい。誰か教えて下さい。この方は神なのですか? 相手の趣味を知ろうとするとか……手を合わせたくなる。
「じゃ、じゃあ後でオススメ教えるね」
「ん、ありがと」
バタンとドアが閉まり私は床に寝そべり、上がり切ったテンションをどうにか身体から逃そうと右に左にと転がりまくった。
「うぅ~神すぎるよぉ~好きすぎるよぉ~」
一人悶々としながら一冊ずつ本棚に仕舞い込み夕方の五時には八割ほど部屋は片付いた。
部屋を出るとリビングからなんだか香ばしくていい匂いが漂ってくる。匂いにつられるようにフラフラと足を進めるとキッチンには黒のエプロンをつけ菜箸を持っている隆ちゃんの姿が目に入り、グサッと心臓を射抜かれた。綺麗な黒髪と黒のエプロンのコンビネーション、菜箸を持つ右手の筋張った筋肉と左でもつ小鍋を支える二の腕の筋肉、上腕三頭筋がいい具合に張っている。眼福すぎて、もう今日は何度死にそうになったか数えきれない。
「え!? 隆ちゃん夜ご飯の支度してくれてるの!?」
「ん、美桜は部屋の片付け終わったの? 俺が夕飯用意しておくから休んでな」
「いやいやいや、私も一緒に準備するよ。むしろさせて下さいっ! 家事は分担してやらないと」
「そうだな、じゃあ今日は一緒に作ろうか。今グリルで肉と野菜を焼いてるから、味噌汁作ろう」
「了解でっす!」
新婚さん=エプロン(ごめんなさい、私裸エプロン想像しました)と思いこの日の為にエプロンは買ってあったのだ。急いで自室に戻り段ボールから漁り出す。ベタに白のフリル……と思ったが手に取って買うのはやめた。汚れも目立つし、白のフリルは二次元だから可愛いんだな、と思いとどまり普通のグレーのシンプルなエプロンを購入したのだ。
グレーのエプロンを身にまといキッチンに戻ると既に人参やキャベツなどの野菜は切り終わっていて後は鍋に入れるだけの状態になっていた。なんて手際がいいんだろうと感心してしまう。
「って、もう私やる事ないじゃんっ!」
「ははは、じゃあ鍋に野菜入れて、油揚げ切ってもらおうかな」
「はい! ……ねぇ隆ちゃん、油揚げって……どのくらいの大きさに切るの?」
「適当でいいよ」
「て、適当……」
この世で一番適当という言葉が難しいと思うのは私だけだろうか。実家で料理を手伝ったことがある。母親に適当に塩入れておいてと言われて適当に入れたが為に物凄くしょっぱい野菜炒めが完成した事がある。適当に味噌入れといてと言われて適当に入れたらまた、すっごくしょっぱい味噌汁が出来上がった。まだまだある、私の適当に入れといて事件。恐ろしくて声に出せない程の味……
でも今回は油揚げだ。味に影響が出るとは考えにくい。私は適当に油揚げを切ってお鍋の中に入れた。
「美桜、味噌はそこに準備してあるから、あと出汁の素はそこの小さい引き出しに閉まってあるよ」
(た、助かったぁ……)
私はホッと胸を撫で下ろした。味噌を入れて出汁の素を入れる……粉末の出汁の素。こ、これは一体どのくらい入れればいいんだろうか……適当とは本当に恐ろしい言葉だ。
「りゅ、隆ちゃん。出汁の素はいつもどのくらい入れてる?」
(この聞き方ならおかしくないよね……)
「俺も実家暮らしだったからそんなに料理しなかったからなぁ、適当でいいんじゃないか?」
ガクンと膝から崩れ落ちそうになる。適当って……もうこうなったら……適当に入れてやる! 思い切って計量スプーンなんて使わずに袋から直にサラサラサラ~と適当に入れてみた。味の保証は出来ません。
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