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第三章(3年後の話。資質鑑定からレオンを奴隷にするまで)
(カルパス)134 不穏な未来
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(カルパス)
何故かフラフラし始めたリーフ様を無事部屋まで送り届けた後、私は自身の部屋にて本日受け取った調査書に目を通す。
そして予想通りのその内容にため息を漏らしていると、ドアが開き、顔に大きな紅葉マークをつけたドノバンが入ってきた。
「おう、カルパス、そっちの調子はどうだ?」
「あぁ、あまり良いとは言えないな。……お前の方は絶好調だな。」
私は揶揄う様に、ヤツの紅葉マークを見ながら自身の頬を叩く。
するとドノバンは、へっと短く笑った。
「まぁ~な!俺のモットーは、『去り際スライムの如し』だからな!終わったことは気にしねぇってことよ。 」
<去り際スライムの如し>
スライムは消化液により何でも溶かして食べてしまうため、去った後は綺麗にゴミ一つ残さない事から、終わった事は気にせず、すぐに切り替えられる様の事を言う
「はぁ……。つまりまた振られたということか。いつまでもお前は元気で羨ましいよ。
……さて、冗談はこれくらいにして、これが今日上がってきた情報だ。目を通してくれ。」
私が手に持っていた報告書をドノバンへ渡すと、ドノバンはすぐにそれに目を通す。
すると、自然と表情が険しくなっていった事から────それが何を意味しているのか流石に気づいたようだった。
「メルンブルク家の支出表か……。随分とまぁ、【傭兵ギルド】に金を流してるようだな。」
私はそれに肯定を込めて、押し黙る。
この国が持つ戦力で筆頭と言えるのは、王宮が抱える騎士団だが、勿論それだけでは国の治安は守れない。
そこで様々な用途で作られたのが【ギルド】という組織だ。
これは民間人の手によって運営されているが、国にとっては欠かせない大事な主戦力であるため、例え貴族であろうともその存在を無視することはできない。
その中でも各地に襲いかかる脅威に対し対応するギルドとして主に挙げられるのは主に二つ。
【冒険者ギルド】と【傭兵ギルド】だ。
【冒険者ギルド】は、モンスターや盗賊退治などの危険な依頼から、簡単な子供のお使いまで幅広い依頼をこなす。
それに対して、【傭兵ギルド】の方は、モンスターや盗賊の討伐、争い時の戦力、果ては暗殺まで戦いを専門とする組織である。
戦い専門という内容だけ見れば、傭兵は騎士とそこまで変わりのない仕事の様に見えるが、大きな違いが一つある。
それは、騎士は国に仕え国のために戦う義務があるが、傭兵は何処にも属していないため国のために戦う義務はないという事だ。
そのため、依頼を受けるか受けないかは傭兵次第。
まさに『自由人』というイメージがピッタリであると言える彼らだが、その『自由』こそが、この国にとってなくてはならない存在なのである。
国に仕えない彼らはとにかくフットワークが軽く様々な制約なしで動けるため、何か有事の際は、真っ先に現場に駆けつけることができるのだ。
突然のモンスターや盗賊達の襲撃は、その速さこそが最も大事な事であり、緊急時にはほぼ8割方傭兵が最初に駆けつけている。
しかしそんな性質上、イカれている者達が多いのも事実で、ただ殺しを楽しみたい者や、とにかく暴れたいだけの者などクレイジーな者達も多く所属している。
それこそ、金を積みさえすればなんだってやるような者達も……。
「モンスターの発生増加を理由に、リーフ様がお生まれになった日から随分多くの金を流していたよ。
国民からすれば、私財をなげうってまで平和を守ろうと尽力する公爵様の出来上がりだ。
現に各街の被害は格段に減り、それは願ってもないことなのだがな……。」
「……ひでぇもんだ。奴さんは何がなんでリーフを消し去りてぇらしいな。」
「……そうなのだろうな。」
心の奥底に隠した静かな怒り、それを吐き出すように続けて言った。
「……ドノバン、私には自分の子供をこのように捨て去ろうとする気持ちが全くわからないのだよ。
マリナ様に至っては自身の腹を痛めてまで生み出したお子なのに、愛おしいとは思わないのだろうか……?
私の妻は死ぬのが分かっていても、我が子をこの世に生み落とした。子供が自分の命より愛おしいと言ってな。
私も我が子が愛おしい。それこそ自分の命など惜しくないほどに……お前もそうだろう?」
私の問いかけに、ドノバンは困ったように頭を掻いた。
「まっ、俺もお前も大多数の奴はそうだろうよ。……っていっても、ウチの息子達はもう俺より強ぇ~から慈しむような気持ちはねぇけどな。
世の中にゃー色んな奴がいるんだ。
それこそお前みたいに子供が自分よりかわいい奴もいれば、自分の完璧な人生に影を落とした子供を葬り去たい奴もいる。」
いつもの軽い調子は引っ込め、ドノバンは真剣な眼差しをこちらへ向ける。
「それぞれ一番価値のあるものはちげぇんだ。奴らにとって一番は、子供じゃねぇってこと。
あちらはあちらの価値観に基づき行動する。────で、こっちはこっちの価値観に基づいてそれを妨害する。それだけだ。
リーフはもう俺の弟子だからな。下手なこたぁ~させねぇよ。」
そう言い切ったドノバンの真っ直ぐな瞳を直視できず、僅かに目線を逸らした。
私は未だにレオン君を目の前にすると震えてしまう。
自身の今まで築いてきた価値観が、彼を完璧に受け入れられないでいるのだ。
『自分の価値観に合わないモノは受け入れられない』────そういう点では、私も彼らと大差はない。
「その通りだ。お前は昔からふざけているが、筋はしっかり通ってる。
そういうところは尊敬するよ。……私みたいな偽善者とは違う。」
ドノバンは私の言葉を聞くと、途端にグシャリと渋い顔に変わる。
何故かフラフラし始めたリーフ様を無事部屋まで送り届けた後、私は自身の部屋にて本日受け取った調査書に目を通す。
そして予想通りのその内容にため息を漏らしていると、ドアが開き、顔に大きな紅葉マークをつけたドノバンが入ってきた。
「おう、カルパス、そっちの調子はどうだ?」
「あぁ、あまり良いとは言えないな。……お前の方は絶好調だな。」
私は揶揄う様に、ヤツの紅葉マークを見ながら自身の頬を叩く。
するとドノバンは、へっと短く笑った。
「まぁ~な!俺のモットーは、『去り際スライムの如し』だからな!終わったことは気にしねぇってことよ。 」
<去り際スライムの如し>
スライムは消化液により何でも溶かして食べてしまうため、去った後は綺麗にゴミ一つ残さない事から、終わった事は気にせず、すぐに切り替えられる様の事を言う
「はぁ……。つまりまた振られたということか。いつまでもお前は元気で羨ましいよ。
……さて、冗談はこれくらいにして、これが今日上がってきた情報だ。目を通してくれ。」
私が手に持っていた報告書をドノバンへ渡すと、ドノバンはすぐにそれに目を通す。
すると、自然と表情が険しくなっていった事から────それが何を意味しているのか流石に気づいたようだった。
「メルンブルク家の支出表か……。随分とまぁ、【傭兵ギルド】に金を流してるようだな。」
私はそれに肯定を込めて、押し黙る。
この国が持つ戦力で筆頭と言えるのは、王宮が抱える騎士団だが、勿論それだけでは国の治安は守れない。
そこで様々な用途で作られたのが【ギルド】という組織だ。
これは民間人の手によって運営されているが、国にとっては欠かせない大事な主戦力であるため、例え貴族であろうともその存在を無視することはできない。
その中でも各地に襲いかかる脅威に対し対応するギルドとして主に挙げられるのは主に二つ。
【冒険者ギルド】と【傭兵ギルド】だ。
【冒険者ギルド】は、モンスターや盗賊退治などの危険な依頼から、簡単な子供のお使いまで幅広い依頼をこなす。
それに対して、【傭兵ギルド】の方は、モンスターや盗賊の討伐、争い時の戦力、果ては暗殺まで戦いを専門とする組織である。
戦い専門という内容だけ見れば、傭兵は騎士とそこまで変わりのない仕事の様に見えるが、大きな違いが一つある。
それは、騎士は国に仕え国のために戦う義務があるが、傭兵は何処にも属していないため国のために戦う義務はないという事だ。
そのため、依頼を受けるか受けないかは傭兵次第。
まさに『自由人』というイメージがピッタリであると言える彼らだが、その『自由』こそが、この国にとってなくてはならない存在なのである。
国に仕えない彼らはとにかくフットワークが軽く様々な制約なしで動けるため、何か有事の際は、真っ先に現場に駆けつけることができるのだ。
突然のモンスターや盗賊達の襲撃は、その速さこそが最も大事な事であり、緊急時にはほぼ8割方傭兵が最初に駆けつけている。
しかしそんな性質上、イカれている者達が多いのも事実で、ただ殺しを楽しみたい者や、とにかく暴れたいだけの者などクレイジーな者達も多く所属している。
それこそ、金を積みさえすればなんだってやるような者達も……。
「モンスターの発生増加を理由に、リーフ様がお生まれになった日から随分多くの金を流していたよ。
国民からすれば、私財をなげうってまで平和を守ろうと尽力する公爵様の出来上がりだ。
現に各街の被害は格段に減り、それは願ってもないことなのだがな……。」
「……ひでぇもんだ。奴さんは何がなんでリーフを消し去りてぇらしいな。」
「……そうなのだろうな。」
心の奥底に隠した静かな怒り、それを吐き出すように続けて言った。
「……ドノバン、私には自分の子供をこのように捨て去ろうとする気持ちが全くわからないのだよ。
マリナ様に至っては自身の腹を痛めてまで生み出したお子なのに、愛おしいとは思わないのだろうか……?
私の妻は死ぬのが分かっていても、我が子をこの世に生み落とした。子供が自分の命より愛おしいと言ってな。
私も我が子が愛おしい。それこそ自分の命など惜しくないほどに……お前もそうだろう?」
私の問いかけに、ドノバンは困ったように頭を掻いた。
「まっ、俺もお前も大多数の奴はそうだろうよ。……っていっても、ウチの息子達はもう俺より強ぇ~から慈しむような気持ちはねぇけどな。
世の中にゃー色んな奴がいるんだ。
それこそお前みたいに子供が自分よりかわいい奴もいれば、自分の完璧な人生に影を落とした子供を葬り去たい奴もいる。」
いつもの軽い調子は引っ込め、ドノバンは真剣な眼差しをこちらへ向ける。
「それぞれ一番価値のあるものはちげぇんだ。奴らにとって一番は、子供じゃねぇってこと。
あちらはあちらの価値観に基づき行動する。────で、こっちはこっちの価値観に基づいてそれを妨害する。それだけだ。
リーフはもう俺の弟子だからな。下手なこたぁ~させねぇよ。」
そう言い切ったドノバンの真っ直ぐな瞳を直視できず、僅かに目線を逸らした。
私は未だにレオン君を目の前にすると震えてしまう。
自身の今まで築いてきた価値観が、彼を完璧に受け入れられないでいるのだ。
『自分の価値観に合わないモノは受け入れられない』────そういう点では、私も彼らと大差はない。
「その通りだ。お前は昔からふざけているが、筋はしっかり通ってる。
そういうところは尊敬するよ。……私みたいな偽善者とは違う。」
ドノバンは私の言葉を聞くと、途端にグシャリと渋い顔に変わる。
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