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第五章(ウォッカ編、試験前日、冒険者との出会いとレオンの成長と勘違いと)
(レオン)225 ”可愛い”のその先
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(レオン)
眠ってしまった……?
うるさく鳴っている心臓を押さえながらリーフ様の気配を探ると、一定の呼吸音に心臓のリズムが聞こえてくる。
どうやらぐっすりと眠ってしまった様だ。
そこでやっと固まった身体は動くようになったが、心臓の鼓動は早いままで顔に熱が集まっているのを感じる。
こんなに近くでリーフ様が眠っている……。
いつもよりも近い距離と無防備な寝顔にこんなにも心乱される。
それを改めて考えると不思議で……リーフ様の顔をジッと見つめた。
俺を世界に生み落としてくれた人。
俺に美しい世界をずっと見せてくれる人。
そんな絶対的な神様と言える唯一の人が、こんな手を伸ばせば届く距離にいるなんてなんだか不思議な事だ。
何かを掴む様に、何となく手を開け閉めしながらそう考える。
この世界は酷く残酷で歪んでいて、それが正規のルールとして創られた。
生を与えられた生物は、常に色々なものに踏み乱され傷つけられながら『生』の最終終着点『死』に向かって歩き続けつづける様にできていて、それを俺は知っている。
それが決められた『世界のルール』で、本当はそこに感情など存在しない方がいいと、それも知っているのに……。
「……知っているのに……な……。」
俺は開け閉めしていた手を、こちらに顔を向けて眠るリーフ様の顔にゆっくり手を伸ばし────そのまま頬にソッと触れた。
泣いて、笑って、騒いで、怒って、がむしゃらにこの世界を生きるリーフ様は美しい。
俺はこの世界に、価値など見出すことはできない。
いっそ人も動物もモンスターも、海も山も、空も大地も、全てのモノが『無』になってしまえば、今ある全ての問題は解決するだろうと、森羅万象は常にその答えを出す。
でも、リーフ様はこんな歪な世界で踏み乱されても傷つけられても、そして最終地点が何一つ残らぬ『死』であると分かっていても、その歩みは決して止めない。
その歩みにこそ価値があると思っているからだ。
そしてその姿を、俺は美しく価値あるモノだと思っている。
「…………。」
俺は頬に触れた手をゆっくりと下に滑らして顎に、そして親指でその唇を優しく触った。
リーフ様を構成する顔のパーツ。
魂を入れるだけのただの器なのに、それが俺の心をざわつかせ、そこから1つの感情が前へと押し出されてくる。
先ほども感じた『可愛い』と、そんな言葉が軽く感じる程ドロドロした感情……これがきっと『愛おしい』という感情なのだろうなと、たった今、唐突に理解した。
リーフ様という『個』を成り立たせる全てのモノが俺は『愛おしい』。
その顔も、身体も、性格も、生き方も……その全てが。
「……『可愛い』…………『愛おしい』…………。」
その言葉をブツブツと呟きながら、俺は親指で何度かリーフ様の唇の柔らかさを確かめる様に動かす。
その後は手のひら全体でリーフ様の顔を覆い、ゆっくり、ゆっくりと彼に近づいて彼のすぐ目の前まで移動した。
そして、顔に触れていた手はリーフ様の腰に回し、起こさないように軽くギュッと抱きつくと、その髪に思い切り顔を突っ込み息を吸い込む。
いい匂い……。
リーフ様の匂い……。
これは『幸せ』の匂いだ。
「いい匂い……このままずっと二人きりでココにいたい……。でも……。」
俺がどんなにこの場での永遠を望んでも、何一つ揺るがず前に進み続けるリーフ様は、きっとそれを叶えてはくれない。
『ずっと一緒にいて!』
『行かないで!』
そんな言葉をどんなに叫んだところで、前しかみないリーフ様は決して俺を振り返らない。
無理やり俺の望む世界に閉じ込めたって、リーフ様は気がつけばあっさりとそこからすり抜けて前に進んでいってしまうんだ。
俺を置いて。
それは悲しい。
でも同時に、そんなリーフ様だからこそ俺は惹きつけられるし目が離せないし、そんな嫌な感覚を与えてくる『個』ですら、俺は愛おしくてたまらない。
「…………行か……ないで。」
願いを込めて言っても無駄な言葉をボソッと呟き、そのまま手の中に閉じ込める様に強く抱きしめた。
きっとこの先、俺は俺を見てくれないリーフ様によって様々な感情を新たに与えられ、その度にずっとグルグルグルグル振り回される。
でもそれも幸せなんだと、俺は知ってしまったから……俺はある一つの答えを選んだ。
どんなに悲しくても、嫌な感覚を与えられようとも、俺はリーフ様の後を何処までも何処までもついていこう。
どこまでも……どこまでも……。
「だが、今までのように漠然とただ追い続けるだけでは駄目……。俺は、リーフ様の『世界』を理解しなければならない……。」
幸せの匂いを感じながら、リーフ様に言われた沢山の言葉を振り返りそう思った。
それにはきっと沢山の感情が必要で、俺はその全てを持って彼にぶつかっていかなければ、それを永遠に理解できる日はこない。
たとえついて行く為の足が無くなっても。
貴方を見る為の目が無くなっても。
貴方の声を聞く為の耳が無くなっても。
貴方の名前を呼ぶ口が無くなっても。
そして貴方に届く手が無くなっても……。
俺はひたすら貴方を求めて必ず同じ場所へと辿り着く。
そうしたら『死』が訪れた後も、永遠に俺はあなたを逃さない。
俺は、全力でこの世界を楽しみながら前に進むリーフ様が『愛おしい』から、その道を取り上げる選択肢は選ばないだろう。
────あぁ、でも……。もしもその在り方を許さないと言うその時は────……。
「あなたと俺以外のすべてを『無』にするしか選択肢はなくなるでしょうね。
進む『前』が無くなってしまえば選べる道は1つだから。」
『愛おしい人』の幸せの匂いに包まれていると、久しく感じなかった眠気が幸せに連れられやって来た。
それに抗うことなく、俺はゆっくりと目を閉じる。
そして、軽く抱きしめていたリーフ様の身体にもう一方の腕も巻き付け、そのまま強く抱きよせると────……。
「捕まえた。」
そう小さく囁き、俺は今この手にある幸せに酔いしれながら、リーフ様が旅立った眠りの世界へと喜んでついていった。
眠ってしまった……?
うるさく鳴っている心臓を押さえながらリーフ様の気配を探ると、一定の呼吸音に心臓のリズムが聞こえてくる。
どうやらぐっすりと眠ってしまった様だ。
そこでやっと固まった身体は動くようになったが、心臓の鼓動は早いままで顔に熱が集まっているのを感じる。
こんなに近くでリーフ様が眠っている……。
いつもよりも近い距離と無防備な寝顔にこんなにも心乱される。
それを改めて考えると不思議で……リーフ様の顔をジッと見つめた。
俺を世界に生み落としてくれた人。
俺に美しい世界をずっと見せてくれる人。
そんな絶対的な神様と言える唯一の人が、こんな手を伸ばせば届く距離にいるなんてなんだか不思議な事だ。
何かを掴む様に、何となく手を開け閉めしながらそう考える。
この世界は酷く残酷で歪んでいて、それが正規のルールとして創られた。
生を与えられた生物は、常に色々なものに踏み乱され傷つけられながら『生』の最終終着点『死』に向かって歩き続けつづける様にできていて、それを俺は知っている。
それが決められた『世界のルール』で、本当はそこに感情など存在しない方がいいと、それも知っているのに……。
「……知っているのに……な……。」
俺は開け閉めしていた手を、こちらに顔を向けて眠るリーフ様の顔にゆっくり手を伸ばし────そのまま頬にソッと触れた。
泣いて、笑って、騒いで、怒って、がむしゃらにこの世界を生きるリーフ様は美しい。
俺はこの世界に、価値など見出すことはできない。
いっそ人も動物もモンスターも、海も山も、空も大地も、全てのモノが『無』になってしまえば、今ある全ての問題は解決するだろうと、森羅万象は常にその答えを出す。
でも、リーフ様はこんな歪な世界で踏み乱されても傷つけられても、そして最終地点が何一つ残らぬ『死』であると分かっていても、その歩みは決して止めない。
その歩みにこそ価値があると思っているからだ。
そしてその姿を、俺は美しく価値あるモノだと思っている。
「…………。」
俺は頬に触れた手をゆっくりと下に滑らして顎に、そして親指でその唇を優しく触った。
リーフ様を構成する顔のパーツ。
魂を入れるだけのただの器なのに、それが俺の心をざわつかせ、そこから1つの感情が前へと押し出されてくる。
先ほども感じた『可愛い』と、そんな言葉が軽く感じる程ドロドロした感情……これがきっと『愛おしい』という感情なのだろうなと、たった今、唐突に理解した。
リーフ様という『個』を成り立たせる全てのモノが俺は『愛おしい』。
その顔も、身体も、性格も、生き方も……その全てが。
「……『可愛い』…………『愛おしい』…………。」
その言葉をブツブツと呟きながら、俺は親指で何度かリーフ様の唇の柔らかさを確かめる様に動かす。
その後は手のひら全体でリーフ様の顔を覆い、ゆっくり、ゆっくりと彼に近づいて彼のすぐ目の前まで移動した。
そして、顔に触れていた手はリーフ様の腰に回し、起こさないように軽くギュッと抱きつくと、その髪に思い切り顔を突っ込み息を吸い込む。
いい匂い……。
リーフ様の匂い……。
これは『幸せ』の匂いだ。
「いい匂い……このままずっと二人きりでココにいたい……。でも……。」
俺がどんなにこの場での永遠を望んでも、何一つ揺るがず前に進み続けるリーフ様は、きっとそれを叶えてはくれない。
『ずっと一緒にいて!』
『行かないで!』
そんな言葉をどんなに叫んだところで、前しかみないリーフ様は決して俺を振り返らない。
無理やり俺の望む世界に閉じ込めたって、リーフ様は気がつけばあっさりとそこからすり抜けて前に進んでいってしまうんだ。
俺を置いて。
それは悲しい。
でも同時に、そんなリーフ様だからこそ俺は惹きつけられるし目が離せないし、そんな嫌な感覚を与えてくる『個』ですら、俺は愛おしくてたまらない。
「…………行か……ないで。」
願いを込めて言っても無駄な言葉をボソッと呟き、そのまま手の中に閉じ込める様に強く抱きしめた。
きっとこの先、俺は俺を見てくれないリーフ様によって様々な感情を新たに与えられ、その度にずっとグルグルグルグル振り回される。
でもそれも幸せなんだと、俺は知ってしまったから……俺はある一つの答えを選んだ。
どんなに悲しくても、嫌な感覚を与えられようとも、俺はリーフ様の後を何処までも何処までもついていこう。
どこまでも……どこまでも……。
「だが、今までのように漠然とただ追い続けるだけでは駄目……。俺は、リーフ様の『世界』を理解しなければならない……。」
幸せの匂いを感じながら、リーフ様に言われた沢山の言葉を振り返りそう思った。
それにはきっと沢山の感情が必要で、俺はその全てを持って彼にぶつかっていかなければ、それを永遠に理解できる日はこない。
たとえついて行く為の足が無くなっても。
貴方を見る為の目が無くなっても。
貴方の声を聞く為の耳が無くなっても。
貴方の名前を呼ぶ口が無くなっても。
そして貴方に届く手が無くなっても……。
俺はひたすら貴方を求めて必ず同じ場所へと辿り着く。
そうしたら『死』が訪れた後も、永遠に俺はあなたを逃さない。
俺は、全力でこの世界を楽しみながら前に進むリーフ様が『愛おしい』から、その道を取り上げる選択肢は選ばないだろう。
────あぁ、でも……。もしもその在り方を許さないと言うその時は────……。
「あなたと俺以外のすべてを『無』にするしか選択肢はなくなるでしょうね。
進む『前』が無くなってしまえば選べる道は1つだから。」
『愛おしい人』の幸せの匂いに包まれていると、久しく感じなかった眠気が幸せに連れられやって来た。
それに抗うことなく、俺はゆっくりと目を閉じる。
そして、軽く抱きしめていたリーフ様の身体にもう一方の腕も巻き付け、そのまま強く抱きよせると────……。
「捕まえた。」
そう小さく囁き、俺は今この手にある幸せに酔いしれながら、リーフ様が旅立った眠りの世界へと喜んでついていった。
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