【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

文字の大きさ
253 / 1,649
第六章(ライトノア学院試験編、ソフィアとアゼリア、レイドとメル、リリアとサイモンとの出会い)

237 はい、俺がリーフです

しおりを挟む
(リーフ)

「────っ~っ!!~っ!!」

レオンの輝かしい未来を想い、こんなところでフガフガしている場合ではない!と気合を入れ直した俺は、身をよじってなんとかお尻だけはレオンの締め付けから無事脱出。
それから直ぐに足の裏をレオンのお腹辺りにつけて、そのまま抜け出そうと上半身を後ろに引っ張った。
しかし全然抜けない、びくともしない!

「~っ────っ!!!」

そのせいで、俺の顔は散歩を全力拒否するわんちゃんの様になっている。
そんな頑張ってるのに情けない俺の姿に、多分アゼリアちゃんの殺気混じりのイライラした空気と、ソフィアちゃんと他の兵士さん達の戸惑うような雰囲気がそれに混ざり始めた。

「……あれ大丈夫かしら?」

「ちょっと締め付けすぎじゃ……。」

そんな不安を感じている声が聞こえたが、俺はそれどころじゃない。
必死に引っ張っているうちに痺れを切らしたであろうアゼリアちゃんが、何か言おうと口を開きかけた、その時────無事モルトとニールの乗った馬車が、ここに到着した。
それにはっとしたアゼリアちゃんがすぐにソフィアちゃんに耳打ちし、それに分かっていますとばかりにソフィアちゃんは頷きその顔に笑顔を貼り付ける。
そしてアゼリアちゃんを含めた全ての聖兵士達はモルトとニールが乗っている馬車に向かって跪いた。

────ガチャ!

馬車が止まったため、何も考えずに扉を開いたモルトとニール。
目の前に広がる跪く兵士さん達の姿にギョッ!!と目を見開く。

「!!!??!」

「????」

二人はあたふた慌てふためいたが、ソフィアちゃんは気にせず一歩前に出てにこやかに挨拶を始めた。

「お初にお目にかかります。わたくしはアルバード王国第一王女、<ソフィア・ランジェ・アルバード>と申します。
失礼ですが、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

格上の身分である、王女という事。
そして圧倒的とも言える威厳オーラに、モルトとニールは青ざめ、直ぐに膝をつき自己紹介を始める。

「し、失礼いたしました!!わたくしは<モルト・ラルグ・フィンドル>と申します!爵位は男爵です!」

「<ニール・ポイル・ホールド>でございます!同じく爵位は男爵です!」

そして土下座する勢いで頭を下げる二人に、ソフィアちゃんとアゼリアちゃん、そして聖兵士の皆さんは、えっ???という顔をした。
そしてそんな中、一番最初に立ち直ったアゼリアちゃんが、モルトとニールの両名に対しとてもキツイ眼差しを向ける。

「どういう事だ?その馬車は男爵如きが乗れる代物ではないはず……。
それこそ王族か、それに準ずる立場のものしか乗れぬ馬車だぞ。
……さては貴様ら、賊の類だな?」

アゼリアちゃんはそう言いながら腰にさしている刀に手を添え、いつでも攻撃できる体制をとる。
それに焦ったモルトとニールはアワアワしながらアゼリアちゃんに言った。

「ちっ、違います!!こちらは公爵家メルンブルク家のご子息、リーフ様の馬車でございます!
我々はお供として、ご一緒させて頂いているだけです!」

モルトの説明にニールは必死にコクコクと頷くが、アゼリアちゃんの手は、依然刀の柄にセットされている。

「……ほぅ?では、そのリーフ様は、一体どちらにいらっしゃるのだ?
そちらの馬車に乗っていないようだが? 
────……適当な事を言いおって、この下賤どもがっ!!」

とうとう抜かれた刀にヒェッ!!!と短い悲鳴を上げた二人は、必死にキョロキョロと周囲を見渡し俺たちを探すと────お散歩を拒否するワンちゃんの俺と、平然とそれを締め続けるレオンの姿を見つけた。

その瞬間、二人の顔からふっと表情が抜け落ち、同時に目元を覆う。
そして直ぐにシュパッと俺のいる方向を指し示し、堂々とアゼリアちゃん達に告げた。

「「あちらにいらっしゃるのがリーフ様でございます!!」」

アゼリアちゃん、ソフィアちゃん、聖兵士の皆さんはその指し示す方向へと目線を動かし、その先にいる俺とレオンのところでそれを止める。
するとアゼリアちゃんは、サァ~……と青ざめていった。

「もっ、申し訳ございません!!公爵家のご子息様とも知らずにとんだご無礼をっ!!
その罪は、わたくしの命で償います!!どうかお許しを!!」

アゼリアちゃんは土下座をしながら謝った。

レオンに。

そして刀をそのまま首に添え、引こうとしたアゼリアちゃんを、聖兵士のみなさんが必死に止める。
 
「どうかお許しを!!」

「止められなかった、我々の責任です!」

わちゃわちゃと、全力でアゼリアちゃんにしがみつきながら総出で謝る。

レオンに。

「ア、アゼリア!おっ、おやめなさい!!
リーフ様!わたくしができる限りの償いをしますので、どうかお怒りを沈めて頂けませんか?
アゼリアは悪い人間ではないのですが少々思い込みが激しくて……!」

騒がしくなってしまったその場で、ソフィアちゃんまで必死にフォローし始めた。

レオンに。

そうしてワーワーギャーギャーと収集がつかなくなってきたところで、馬車を引いている御者さんが俺を指差し言った。

「あのぅ……リーフ様は、あちらの締め上げられている方のお方ですよね?
そちらのお兄さんは、リーフ様の奴隷の方では……?」

そうですよね?とモルトとニールに確認をとった瞬間、その声が聞こえたソフィアちゃん、アゼリアちゃん、そして聖兵士の皆さんは、ピタリと止まり辺りはシーン……と押し黙る。
そしてその場で聞こえるのは────俺のフガフガという情けない鼻息だけになった。

しおりを挟む
感想 274

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか? いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ? 2025年10月に全面改稿を行ないました。 2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。 2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。 2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。 2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。 第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ
BL
雪のなか3歳の僕を、ひろってくれたのは、やさしい16歳の男の子でした。 ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります! ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

分厚いメガネ令息の非日常

餅粉
BL
「こいつは俺の女だ。手を出したらどうなるかわかるよな」 「シノ様……素敵!」 おかしい。おかしすぎる!恥ずかしくないのか?高位貴族が平民の女学生に俺の女ってしかもお前は婚約者いるだろうが!! その女学生の周りにはお慕いしているであろう貴族数名が立っていた。 「ジュリーが一番素敵だよ」 「そうだよ!ジュリーが一番可愛いし美人だし素敵だよ!!」 「……うん。ジュリーの方が…素敵」 ほんと何この状況、怖い!怖いすぎるぞ!あと妙にキモい 「先輩、私もおかしいと思います」 「だよな!」 これは真面目に学生生活を送ろうとする俺の日常のお話

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

処理中です...