【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第六章(ライトノア学院試験編、ソフィアとアゼリア、レイドとメル、リリアとサイモンとの出会い)

(フラン)294 様々な思い

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(フラン)

カツン……カツン……。

長い廊下を歩き、私はイシュル神彫刻が掘られた巨大な扉の前までたどり着くと、一度ピタリと足を止め大きく深呼吸をした。
そうして気を抜けば錯乱しそうになる己の心を律しながら、目の前の扉をゆっくり開くと、既にこの度の中学院入学院試験に関わった全員が勢ぞろいしている姿が見えてくる。

中央の大きなテーブルを囲う休めの体勢をとった教員達。
更には私と共に審査員をつとめた4人の教員達が既に着席している姿が目に入った。
私はそんな彼らからの視線を受けながら、空いている席にそのまま着席すると、全員の顔を見回した後に話し始める。

「皆の者、ライトノア学院の入学院試験、まずはご苦労であった。皆、各々言いたい事はあるだろうが、まずは結果を確認していこう。────セリナ。」

「はっ!」

茶色い髪に緩やかなウェーブ、セミロングの長さの髪を後ろでビシッと一本で束ね、一片の隙もないと感じるキビキビとした雰囲気にキラリと光るメガネ。
そんなイメージを壊すこと無く<セリナ>は非常に有能で、まだ三十代に届く前という若さにも関わらず副学院長という立場まで得ている。
彼女は返事をした後、その場で起立をし此度の試験結果について述べ始めた。

「まずは午前中の筆記試験ですが、平均点は例年通り平均点は60点でした。
その中でソフィア様とジェニファー様、そしてエルフ族のリリア様が共に90点で一位、そしてスタンティン家ご子息のマリオン様が85点で二位、
続いてレイモンド家のご子息ご令嬢のクラーク様とアゼリア様、そしてメルンブルク家ご子息リーフ様が80点でともに3位です。」

高得点に次ぐ高得点に周りからは、おぉ……と感嘆の息が漏れる。
今年は随分と優秀な生徒が揃っている様だと、私も同様の息を静かに吐きながら、セリナに着席を命じた。

「────次、現時点での合計点数はどうなっている?クルト。」

「はっ!」

私の問いかけに今度はセリナの隣に座るクルトが席を立つ。

今回の審査員の一人。剣や体術の最高責任者<クルト>

三十代半ば、前衛職に相応しい体格に、前髪を残したしたツーブロックショート。
その高い実力から滲み出る強者のオーラによって近寄りがたいイメージがあってもいいのだが、どこか人の良さそうな顔と穏やかな人への態度により、そういったイメージが一切ない好青年である。

「合計点トップは、メルンブルク家ご子息リーフ様で、その点数はなんと!<355点>!!歴代最高点です。」

300点越えもここ100年以上は出ていなかった上、今までの最高得点<305点>を大きく塗り替えた高得点に一同大きくざわついた。
それを片手を上げる事で静めたが、私とて大きな衝撃を受けている。

メルンブルク家が必死になって隠してきた謎多き子供。
恐らくは不義の子であると噂程度は耳に入っていたが、まさかこれほどの実力を隠し持っていたとは……全くの予想外の出来事であった。

実戦において大事なのは現状の素早い判断、そしてそれに対して柔軟に順応すること。
そうして常に最善である状況を作り出すこと、これが難しい事であることは、戦いに身を置く者なら誰でも知っている事だ。
自分なりの戦闘スタイルはある程度確立しているため、その時その時でそれを変えるということは相当高い実力と、更に臨機応変に自分を変えることができる強い精神力、そして多種多様の攻撃パターンと戦いの経験値……。
上げたらきりがないほど必要とされるものが多いというのに、リーフ殿はいとも簡単にそれをやってのけた。

「ふ~む……。」

私は唸り声を上げながら腕を組み、試験の時のリーフ殿の起こした行動の数々を思い出す。

単純な物理的強さを測る剣体術の試験にて、前衛の適性がある者は必ず身体強化を使ってくるが、その身体強化の当たり前の概念『身体強化は均一であればあるほど素晴らしく、強者の証である』をリーフ殿は見事に吹っ飛ばし、何と戦いのエリートである試験官に勝ってしまった。
それだけでも偉業と呼べる程の凄い事なのに、リーフ殿の快進撃はこれに留まらない。

続く魔力操作術の試験では、なんと見たことのない植物を創り出し、更に魔法術の試験ではこれまた全く思いつかなかった方法で『的』を壊してしまった。
これが試験ではなく実戦であれば、その時相手をした者の命は終わっている。

そういった柔軟性の高いトリッキーな戦い方は、戦場において最も有用で、敵にとっては最も厄介な相手になる。

まさに異彩を放つ今世紀最大の天才児!
恐らくこの後、貴族社会は荒れに荒れるだろう。
いつもはお澄まし顔で、内心は常に周りを見下している性悪貴族どもを想像し、思わずニヤリとわらってしまった。

なんといっても体が弱く療養中であったはずの捨て子が、この中学院不動のトップのライトノア学園、その歴代最高点を軽く上回ってしまったのだから。
メルンブルク家はもうその存在を隠すことは出来ない。
これからジワジワと真綿で首を締めるかの様に、自身の捨てた息子に復讐される。
そのあまりにも皮肉めいた復習方法に、ククッと笑いが漏れてしまいそうだ。

口元に手を添え、そんな愉快を必死に散らしていると、クルトの隣から小さく笑う声が聞こえ、私はそちらへと視線を動かす。

「ふふっ。リーフ君のあの白い植物は凄く面白かったわ~。是非色々お話を聞いてみたいなって思っちゃった!」

審査員の一人、かつ生産術最高責任者の<レナ>は、声を弾ませながらそう言った。

20代半ば程、穏やかでおっとりとした顔立ちに、長いウェーブ掛かったカーキ色の髪。
それをサイドポニーテールにし、胸の方へと垂らしている姿は、知性と気品が控えめに漂っている。 
しかし……そんな落ち着いているイメージを裏切り、珍しいものにたいしての興味は人一倍強く、それを前にすれば瞳だけは少年の様にキラキラと輝くことから、どこかチグハグなイメージを受ける女性だ。

レナがそう言いながらキャッキャッと嬉しそうにはしゃぐと、その隣にいる両手を後ろに回し椅子の背に深くもたれかかっていた20代前半~半ばくらいの人物が、待ったを掛けるように騒ぎ出す。

「い~や!あたいは断然!あの変なポーズで投げたファイヤー・ボールが凄いと思うぜ!
あんな魔法の使い方なんて今まで誰も思いつかなかったからな!今度教えてもらお~っと!」

茶色い髪色に、丸みのあるコンパクトショートカット。
くりっとした目と好奇心が強そうな目をしていて、実年齢より若く見られる事が多いこの女性が、最後の審査員のうちの一人。

魔法術最高責任者の<ルーン>である。

そんなレナとルーンの話に触発されたのか、クルトまでそれに参戦し、あーだこーだと言い始める。

「いや、剣体術だったな!一番凄かったのは。これは譲れん!」

「いえ!魔力操作術の方が~……。」

「いやいや、魔法術が~……。」

更には周りの教員たちまで自身の得意分野の結果を推し始めてしまい、一気に部屋内が騒がしくなってしまった。

また始まった……。

騒がしいのがスタンダードな我が同胞達を呆れながら見守っていたが、本日の話題はそれで終わりではない。
私は体の震えを抑えながら、セリナに向かって言った。
        
「……セリナ、の筆記の試験結果は、どうだったのだ?」
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