【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第八章

(ドノバン)346 結末を追う人達

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(ドノバン)

ザザザ────……。
身体強化をフルパワーで掛け、ものすごいスピードで森の中を駆けていく影が2つ。
俺の全力疾走にも難なくついて来ている隣の人物は、明るい光を前方に発見し俺に声を掛けてきた。

「ドノバンさん、もう少しでグリモアの正門に到着しますが、どうしますか?このまま一度街に直行しますか?」

第二騎士団副団長<ユーリス>は、周りを警戒しながら俺の指示を待つ。

俺は王都を襲ってきたグレイド・ワイバーンの群れを倒した後、すぐに回復薬や魔力回復薬をがぶ飲みしグリモアに向かって直行したのだが、その際何かを察したユーリスが着いていくと言い出した。


<魔力回復薬>
魔力を回復する薬。
非常に高価で一般人には敷居が高い。
調合する術者により品質レベルに差があり。


正直あのSランク傭兵【神の戯れ】に、更にはAランク傭兵60名が相手となるとユーリスの戦力は非常にありがたい。
その危険性を全て話した上でついて来てくれたユーリスには、今後頭が上がらないなと感謝しながら、俺はユーリスの問いに答えた。

「周囲の様子を伺いがらこのままとりあえずそこへ向かおう。
悪いな、やべぇ事に巻き込んじまってよ。だがオレ一人だと、ち~とばかし厳しいとこだったから正直助かった、ありがとよ。」

「何言っているんですか、俺は第二騎士団の副団長なんですから悪を罰するのは当然の義務です。
────と言いながら我先に飛び込んで行くお人でしたのでね、俺の剣のお師匠様は。
そちらこそ、もうとっくに騎士団を退団された老骨は引っ込んでて下さい。
子供相手にそんな非道な行いなど断じて許されるべきではない。この俺が派手にぶっ殺してやりますよ。」

「いやいや、俺そんな青クセェ事言って飛び込んだ事一回もねぇよ。
別人だぞ?お前の脳内のお師匠様。……まぁ、適度にぶっ殺そうぜ。」

クソ生意気な発言に、思わずスンッ……と表情を失ったが、これはいつものことなのでとりあえず軽く話を流す。

ユーリスが騎士団に入った時、一応俺はこいつの剣の師匠になったのだが……元々優秀だったのもあって直ぐに頭角を現し、あっという間に大出世。
勿論剣の師匠もお役目御免。
今や師匠である俺や、当時の教育係の先輩達はユーリスに、老骨だのおじさんだのと顔を合わせばチクチクと嫌味を言われている。

全く……。

ため息を吐きながら正門の前まで向かっていると、風に乗り、ツン……とした嗅ぎ慣れた嫌~な匂いが鼻を殴りつけてきたので、俺とユーリスは同時に近くの木に身を隠す。
そして気配を殺しながら互いに目を合わせコクリと頷くと、俺は大剣、ユーリスは折りたたみ型の剣を構え慎重に周囲の気配を探った。

むせ返るような血の匂い。
1人や2人のものではない、もっと大人数のものだ。

────バクンッ……バクンッ……。

俺は愛弟子達の変わり果てた姿を一瞬思い浮かべ、大きく鼓動し始めた心臓を押さえながら意識を集中し、周囲に生きている生物がいないかどうかその気配を慎重に探し始める。
しかし生きている反応は1つも見つけられず、絕望という感情が心に大きく覆いかぶさっていったが────もし最悪の結果になっていたとしてもこれだけの多くの血の匂い……何があったのかを知らなければと、俺は進行方向へ指を動かしユーリスに指示を出す。

『血の匂いの濃い方へ』

『トラップの可能性もあるので慎重に』

それに対しユーリスは表情を引き締めコクリと頷くと、俺達は周囲への探知魔法を展開し、その方向へと進んでいった。
そして濃厚な血の匂いのせいで鼻がバカになってしまった頃、俺達の目の前に飛び込んできたのは────……。

「な……なんだよ……こりゃ~……。」

目の前に広がる信じられない光景に、俺もユーリスも呆然と立ち尽くす。

右を見ても左を見ても、生きているとは決して思えないような死体の数々……。

俺達は直ぐに冷静さを取り戻し、その死体の数々を観察し始めたが、そのあまりに酷い状態に、思わず口元を押さえる。

ミンチの様にグチャグチャになっている者。
潰され原型を留めていない者。
穴だらけの者。
他にも真っ黒に焦げているモノもあれば、凍っているモノまで……。

一貫性の全く無い酷い殺し方だ。
人数から考えても複数人による犯行に違いない。

冷静に分析しながら、俺はある違和感に気がつく。
そのためユーリスにそれを言おうとしたが────ユーリスはそれより先に、俺が感じている違和感と全く同じ事について話し始めた。

「……おかしいですね。この人数にしては戦闘の跡がなさすぎる。
無抵抗で殺されてしまったのか……?
それに血の量も少なすぎます。どこか別の場所で殺したのでしょうか?」

眉を潜めながら考え込むユーリスに、『流石は副団長様!』と心の中で拍手を贈りながら、俺もこの目の前にある状況から様々な考察を巡らせる。

一貫性のない殺し方。
この大人数相手で戦闘跡が一切ない事。
死体に対しての血の量────。

これから導き出される事は、犯人は複数である事。
そしてこの死体は別のところで殺されココに運ばれたという事だが……そう考えると、次は別の疑問がポツポツと浮かび上がった。

一体誰が何の目的でこんなに大量の人々を始末したのか?
まさか暗殺しにきた傭兵達が一般人を捕まえて『遊んだ』のか?

最悪な可能性が頭を過ぎり怒りが湧き上がったが、その死体の山々を改めて見れば、格好からして一般人ではなさそうだ。

俺は顎に手を当てながら、死体の判別できる部位を見つめて首を振る。

全員が戦闘職の者達が着るような……しかも結構お高めな防具をつけていて、更に腰や背中にも同レベルの武器を装着をしている。
バラバラで一切その価値は無くなっている武器や防具を見て、勿体ねぇ~……とブツブツ呟きながらも、確信を得た。

バラバラ死体達は、生前確実に何らかの戦闘系職、かつ高収入が見込めるくらいには出世していた奴らって事。
つまり一般人ではない。

ホッとしながらその正体を探ろうと、比較的形が残っている誰かの上半身に手を伸ばそうとしたその時────その首元にキラリと光るタグを見つけた。

「これは……?」

直ぐにそれを手にとって確認すると、それが首から下げるタイプの傭兵認定タグであることに気づく。

<傭兵認定タグ>は、身につけている者の、名前、所属、ランク等の情報が書かれている名札みたいなモノで、戦闘職についている者達は全員同じ物を着ける事が義務となっている。
その目的としては、外見の激しい損傷を受けて戦死した場合、それが誰であったのかを確認するものであった。

傭兵……?一体何処の……??

疑問に思いながらタグを確認して、ギョッと目を見開く。

「……傭兵ランク……A……だと??」
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