【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

文字の大きさ
386 / 1,649
第八章

370 神に選ばれし……?

しおりを挟む
( シャルロッテ )


────ガシャンッ!!!!


激しく何かが壊れる音がカールお父様の書斎から絶えず聞こえ、それに合わせる様に怒鳴り声まで聞こえてくる。


「 クソっ!!!役立たず共がッ!!! 」


「 おいっ!!────ッ!!

なぜ応答しないっ!!!まさか本当に……っ!!? 」


そんな怒号が聞こえ、部屋の前で並び控えている従者達は青白い顔でガタガタと震えていた。


私は眉をピクリと上げた後、いつもは家族団らんを楽しむリビングルームへと向かうと、マリナお母様が暴れまわったせいでぐちゃぐちゃになってしまった無惨な内装を見る羽目になってしまう。


部屋に飾ってあった花瓶の全てが砕け散り、下の絨毯は水浸し。

ソファーはズタズタに引き裂かれ、とてもじゃないがこんな場所で安らぎの一時は送れないだろう。

私はそのまま無言で歩き出し、後片付けに追われ床を拭いていた1人の侍女の手を思い切り踏みつけた。


「 きゃあぁぁ────!!! 」


突然の痛みに叫ぶ侍女。

それが更に気に触った私は、醜い顔で私を見上げたその侍女の頬を叩き黙らせると、そのままその近くで花瓶を片付けていた違う侍女を今度は蹴り飛ばす。


すると怯えて地に伏している姿に多少の溜飲が下がったが……まだまだ足りない。


気が済むまで片っ端から目に入った侍女達や執事達に対し暴力を振るっていると、従者達のうめき声とすすり泣く声がする中、グリードお兄様が悲しげな様子で部屋に入ってきた。


お兄様は片手で顔半分を覆いながら私に近づいてきて、その進行の妨げになる倒れ込んでいる侍女を蹴り飛ばしてどかすと、私の前でピタリと止まる。


「 シャルロッテ、気分は悪くないか? 」


「 ありがとうございます。私は問題ありません。


それよりお兄様、お母様は大丈夫でしょうか……?

あの優しくて強き心を持ったお父様とお母様がこんな状態になるなんて……。 」


私の事を気遣ってくれる優しい兄に対し、無理に作った笑顔で対応すると、兄は片手で顔を覆い、大きなため息をついた。


「 ……今やっとお母様は落ち着いてお部屋で休んでおられるところだ。

しかし随分と憔悴なさっておられる。

なんとお可哀想に……。


おれほどお優しいお方の御心を暗くする存在がいるなんて、本当に許せない……っ! 」


怒りに震える兄グリードの言葉を聞き頭の中に思い浮かんだのは、我が家の最大の汚点とも言えるモノ。


あんな神に見放されたような醜き存在に、選ばれし使徒であるお父様とお母様がこんなにも苦しめられるなんて!!


大事な家族が苦しめられたという事実に激しい怒り、悲しみ、憎しみが込み上げ、あまりの激情にフラッと倒れそうになったが、兄グリードはそれを受け止め支えてくれた。


「 あぁ、シャルロッテ!大丈夫か?!

なんてことだろう!!

お父様お母様だけではなく我が愛しの妹シャルロッテまであの邪悪なる存在に蝕まれるなんて!!

やはりアレは我が家の邪神!

アレがいる限り家族全員が不幸になってしまうに違いない!! 」


・・
アレ……。


会ったことも見たこともない我がメルンブルク家の存在しない次男、私の弟にあたる────


” リーフ ”

           ・・
名前を呼ぶのも悍ましいアレは、茶色の髪に緑の瞳そして酷く醜い顔立ちをしていると、準成人を迎えた時にお父様より聞かされた。

そしてそれをどうすることもできず、苦肉の策としてレガーノという田舎町に置いているとも……。


” シャルロッテ様は本当にお美しいですわ~。

お兄様のグリード様も弟君のジョン様も、メルンブルク家の美しさときたら叶う者はおりませんね。


────そういえばもうひとりお体が弱い次男様がいらっしゃるとお噂でお聞きしたことがありますが、本当なのですか? ”


” まぁ!そんな噂は初めて聞きましたわ。

もしいるとすればきっとこんなに美しいシャルロッテ様の弟君様ですもの~。

目も覚めるような美少年に違いないでしょうね! ”


そうして笑う友人たちにどれほど恥ずかしい思いをしたか、くやしい思いをしたか……。

そしてそんな囁かれる声に家族がどれほど傷つけられて悲しみに暮れたのか、もう数え切れないほどだ。


その存在はまさに世を暗黒に飲み込もうとする邪神そのもの!

あんなものが例え中学院の入学試験に無様に落ちようとも、世に認知されること自体大罪なのに!



────ポロッ……。



目を伝う涙が一筋頬を伝い落ちると、それは止めどなく次から次へと流れ落ちていく。

それに気づいたお兄様は私を悲しげにギュッと抱きしめてくれた。


「 とうとう邪神の子が牙を剥いてお父様とお母様に襲いかかったのだろう。

ついこの間まで心穏やかであったのに……。

何があったかは分からないが、こんな事許されるべきではないっ!! 」


『 あんなヤツ早く消えてしまえ!! 』


家族全員の気持ちが1つになるのを全身で感じながら、私もそれを強く望みお兄様をギュッと力強く抱きしめ返す。


ついこの間まで幸せだった家族の時間。

その時のお父様とお母様は、とてもご機嫌な様子で、私も兄も弟も嬉しくてその時間を楽しんだ。

そしてそんな時間はあっという間に終わり、最後にお父様はこう言ったのだ。



「 もうまもなく我々の心を苦しめるものは跡形もなく消えてなくなるだろう。

その日は盛大に家族全員でお祝いをしよう。

大きなパーティーを開いてもいいね。

あぁ、その日がとても楽しみで待ちきれないよ。 」と。


だから、今日はまた皆んなで幸せな時間を過ごせると……そう思っていたのに────っ!


予想した未来との余りの差に、私は唇をギリギリと噛み締めた。


いまやその時の幸せの面影は完全に消え失せ、お母様もお父様も部屋から出てこない。

そしてお兄様は悲しみに暮れ、私は悲しくて悔しくて涙が止まらない。


その状況を作ったのは ” アレ ” !!


私の大事な家族──── ” 世界 ” を壊す者は消え去るべきだ。

それこそが神が決めた ” 正しい ” 世界の在り方なのだから。



そう決意し、私は目を閉じた。



瞼に映るのは幸せそのものである家族の団らんの記憶。



その思い出はゆりかごの様に私の心を揺さぶり、心地よい幸せを心に運んできたが────それと同時にその幸せを壊そうとするアレに対する怒りと憎悪の感情が次から次へと生まれ落ちては、心は真っ黒く染まっていった。

しおりを挟む
感想 274

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか? いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ? 2025年10月に全面改稿を行ないました。 2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。 2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。 2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。 2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。 第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

無能と呼ばれた婚約者は王を完成させる〜替え玉婚約者のはずが、強すぎる王太子に手放してもらえません〜

統子
BL
兄の身代わりとして王太子の婚約者になった伯爵家次男リュシー。 嘘の名を名乗ったはずが、冷静で誠実な王太子リオンは彼を「力の装置」としてではなく、対等な伴侶として扱おうとする。 本物になりたいと願う替え玉と、完成された王太子の静謐な王宮ロマンス。

処理中です...