【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第九章

400 正反対

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( リーフ )


しまった~。

レオンはミニマリストタイプだったか……。


あちゃ~と俺は方手で額を覆い後悔する。


余計なモノは買わない、置かない、嫌な人には関わらない。

最近の若者?に流行っているミニマリストタイプ。


レオンのタイプは多分それ。


基本的に俺とレオンは正反対と言っていい気質を持っているので、それが何かの拍子に露見されると大抵はこんな感じになる。


おでこを覆っていた手を下におろしていき、今度は目元を覆うと指の隙間からチラッとレオンの様子を伺う。

すると、先ほどから変わらぬ悲しそうなお顔が見えて、俺も負けずに悲しげな顔になった。


ごっちゃりと物を置きたくなくて捨てたいレオン   VS 何でも取っておきたい俺。


─────カンっ!


頭の中で闘いのゴングが鳴る。


"   これは俺にとって大事な物!

とっておこう! "


"   これはゴミです。

今すぐ捨てましょう。 "


全く正反対の意見がぶつかり合い、ギャーギャーと口が出て、手が出て、喧嘩はヒートアップ!


白熱した言い争いと手の出し合いの果て、とうとうレオンは実力行使で物を捨てようとしたので、俺はそんなレオンに必死に縋りつき、 "   捨てないでぇぇぇ~! "  と叫び─────……。


「 …………。 」



……こういう時ってどうすればいいんだろう?


指の隙間をピチッと閉じて、レオンの悲しげなお顔から視線を外すと、俺の目に映るお先は真っ暗闇。

何も見えなくなってしまった。


合わせすぎても、合わしてもらいすぎても駄目。

多分どっちも辛くなる。


人間関係の難しいのは、結局これに収束する様な気がする。


ソロ~とゆっくり顔を覆っていた手を外し、明るくなった視界の中、レオンに動きがあるまで静かに待つ。


まさに今、人生迷走中の俺たちの間に嫌な空気が漂ったが、突然レオン、俺の手の中にある食べかけの肉巻きパンをガブリッと大きく齧った。

そしてそのまま無心でムシャムシャ食べ始めたので、俺は驚いて固まってしまう。


そ、そんなにお腹が……?


「 ……も、もう一個食べる? 」


あっという間に食べ終えてしまったレオンに、 恐る恐る尋ねると、レオンは肉巻きパンをゴクンっと全て飲み込んだ後、首を横に振った。


「 そ、そっか。じゃあ、俺食~べよ! 」


自分の空腹を思い出し、レオンに頼んで新しい肉巻きパンを取ってもらうと、そのままそれを頬張り舌鼓を打つ。


そして幸せ一杯でもう一口かぶりつこうとすると、またしてもレオンに先に齧られ、そのまま全て食べられてしまった。


「 …………。 」


横取りされた??

すっかり寂しくなったお手々を見た後、続けてレオンへと視線を移す。


「 ……レオン? 」


ちょっとレオンらしくない行動を心配して名前を呼べば、レオンはまたしてもゴクンッと口の中の物を飲み込み、俺にゆっくりと視線を合わせた。。


キラキラ光るレオンの黒目はとっても綺麗。


思わず綺麗だな~とうっかり見惚れていると、レオンは俺の空いている手をニギニギと握りながら幸せそうに笑った。


「 美味しいですね。

…………本当に、凄く ” 美味しい ” ……。


不思議なんです。


リーフ様が持っているものは、なんでも ” 美味しく ” なるし、何でも輝いて ” 見える ” 。


俺はそれが欲しくて欲しくてたまらない。


いつもは無価値だとしか思えないモノも全て。 」



そう言ってレオンは俺の腰に回している手に力を入れ更に拘束を強める。


それに対して俺は……というと─────顔色を一瞬で信号の ” 進め ” の色に変えた。

そして激しく感じるデジャブに、ポンコツ脳から必死にその時の記憶を掘り起こしていく。



あれはまだ俺が大樹であった頃─────。

そろそろ孤児院の園長として箔がついてきたかも~と、思い始めた頃の事だ。


少し前に孤児院を卒業し、社会人として立派に巣立っていった女の子が久しぶりに孤児院へと遊びに来てくれたのだ。

嬉しかった俺は、秘蔵のお茶菓子とお茶を出し楽しくおしゃべりしていたのだが、急にその子の表情がフッと曇ってしまった。


” どうしたの? ”


そう尋ねると、その子は突然まん丸お目々からポロポロと涙を流し始め、そのまま泣き出してしまった。


慌ててティッシュを渡し話を聞いて見ると、その子は俺に悩みを聞いてほしくてきたのだと言い、そのまま嗚咽混じりにそれを話しだす。


” 私、人が持っている物が何でも欲しくなっちゃうの。

全然欲しい物じゃないのに全部欲しくて欲しくて我慢できない。


このままじゃきっと誰かを傷つけちゃうわ……。


私、どうしたらいいのかな ”


そしてまたしてもオギギャャン!と生まれたての赤ちゃんの様に泣き出してしまった彼女を見ながら俺は、うう~ん??と考え込んでしまった。


彼女曰く、なんでも昔からそういう傾向はあって、服にしろアクセサリーにしろ人が持っていると、物凄く価値のあるものの様に思えるそう。

しかし、いざ手にすると "   何でこんなの買っちゃったんだろう……?   "   と酷く後悔するのだそうだ。


最近では友達の彼氏や友達までその対象になってきてしまってほとほと困り果ててしまっているのだと、そう言って下を向く。


それを聞いた俺はというと────何だかそれって不思議な話だなと思い、それをそのまま口に出した。



” なんだか不思議な話だね。

要は100円とかの品物でも、美術館に飾られてたら、凄く価値があるものだって思っちゃうって事かな~?

でも俺は、どっちかというとワゴンセールしている品物の方が好きー。

ゴソゴソ探して良いもの見つけた~ってしたい。 ”


あの掘り出し物見つけた感が溜まらない!


その時の事を思いながらほっこりしていると、その子は突然、吹き出し、"   確かにそうかも!   "   と言って帰宅していったが、後日、なんと今の仕事を辞めて孤児院の職員になってくれたのだ。


こんな安月給、更にあらゆる『 K 』が揃うような過酷な職場より、給料も待遇も良い前の職場の方が100万倍くらい良いんじゃ……。


そう何度も確認したが、彼女は譲らず。

そしてそれから大分経った頃、その時の思い出を語ってくれた。


” 私、ずっと自分に自信がなくて寂しかったの。

でもそれを認めたくなくて、人が持っているものでなんとか埋めようとしていたんだろうな。


そんなものを手にしても満足するのはぜ~んぶ、一瞬だったよ。

心はそんな代用品じゃ埋まらないもの。 ”



ケラケラと笑いながらそう言っていた彼女を思い出し────俺の体は小刻みに震え出す。

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