【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

文字の大きさ
628 / 1,649
第十七章

612 俺が相手だ

しおりを挟む
( リーフ )

レナ先生を見送った後、ゆっくりしていたらもうそんな時間か~とやっと気づく。


「 リリアちゃん、そろそろ行こうよ。 」

「 はい。 」


リリアちゃんは直ぐにジョウロを片付け、俺達はそのまま【 闘技場 】へと歩きだした。


「 実は最近楽しい事があったんですよ。 」

「 へぇ~。なんだい、それは。 」


リリアちゃんは歩きながら、最近の< 平民組 >の様子について話し始め、最近起こった出来事を話してくれる。

その中での一番の話題は、小競り合いが多かったサイモンとメルちゃんの珍事件の数々だったが……なんとこの二人、いつの間にか意気投合して最近『 かっこ可愛い同盟 』なるものを作ったらしい。


「 何だい?それ? 」


聞き覚えのない言葉に質問すると、リリアちゃん曰く、” かっこいいと言われたいメルちゃん ”   と ” 可愛いと言われたいサイモン ”   の、お互い頑張ろうね!────という同盟らしい。


なるほどね~!


二人の事を思い浮かべると、確かに二人とも同じ様な目標を持っているなと初めて気づいた。

仲良くなれて良き良き~♬と喜びながら話を聞いていると、急にリリアちゃんが真顔になって、その場にピタリと止まってしまう。


「 ……??リリアちゃん? 」


周りに木しかない鬱蒼とした場所で止まってしまったので、一体どうしたのか?と尋ねようとしたが、その前にリリアちゃんの方が先に話し出した。


「 ……兄は変わりました。

昔はどこか人と一線置いて、それ以上近寄ろうとしないで逃げてしまっていたのに……。

────本当は ” 人 ” が大好きで凄く優しい人なんです。

でも、いつも巫山戯た振りをして、人と関わる事を諦めてしまう人でした。 」


唐突な話に少々驚いたが、真剣な様子が伝わってきたので、俺も止まって、大人しくリリアちゃんの話を聞く体勢をとる。

するとそれに釣られてレオンは、聞く気はないがとりあえず俺の後ろで大人しく待機……の姿勢をとったので、リリアちゃんはニコッと笑って話を続けた。


「 私達には父はいません。

母が一人で私達を産み落とし、ここまで育ててくれました。

……母はとても綺麗で、兄と容姿が瓜二つの "   男性  "   なんです。

そんな母は今の兄同様、やはり若い頃はエルフ族独自の価値観に悩んでいたそうです。

女性よりも綺麗な外見は、女性には人気がなく男性からも伴侶としては人気がない。

そんな時、出会ったのが   "   人族   "  の父だった様ですが……残念ながら一緒にはなれなかったようですね。 」


淡々と告げられるリリアちゃんとサイモンの家庭の事情だったが、リリアちゃん的にはそれに対しあまり納得していないのは、纏っている空気でなんとなく分かる。


全く~……どんな事情にしろ、子供には真摯に向き合わなきゃダメだぞ!


ふぅ~!と深い深~い息を吐くと、リリアちゃんは同時に視線をやや下に下げ、少し悲しそうな雰囲気を醸し出す。


「 別に私はお互い納得して今の状況なら良いんです。

正直、恋愛なんて不確かなものはどうでもいいし、期待もしていませんので。

……でも、母は毎日夜私達が寝静まると泣いています。

きっと────あまり良くない ” 愛 ” だったんでしょうね。

それを見て、母にそっくりな兄は自分の未来と重ねてしまったのかもしれません。

元々周りの人に受け入れて貰いにくい外見が嫌いで、でも大好きな母とそっくりだからと、母の涙を目にするまでは良かったんですけどね……。

” 綺麗で優しくてかっこいい憧れの母でも一番になれなかった ” という事実を知って絶望してしまったのかなと思います。

素直に弱音を吐ける人でもないので。 」


なるほど……。


俺はリリアちゃんの話を聞きながら、なんでサイモンがあんなにも ” 可愛い ” に拘っているのかを何となく理解した。


サイモンはきっとお母さんが大好きで憧れの人だから、それにそっくりな容姿を持っている自分を褒められる事で証明したかったのかもしれない。


” お母さんは間違っていない ”  

 ” 一番なんだ ” ────って。


親を思う子供の優しい気持ちに感動し、グススンと鼻を鳴らす。


「 そうかいそうかい……。

なんて親思いのいい子なんだろうね。おじさんはもう……凄く感動したっ!

恋愛はねぇ~ホント相性だから!後、タイミング!運!

お母さん達は、そのどれかで躓いちゃったのかもしれないね。

もじもじ遠くから見つめるか、パンを買ってお釣りを渡された時に手が触れてうひょひょ~いしかできない人からすれば、立派に愛を育み、悲しみを必死に見せない様にする君たちのお母さんは凄い人だと思うね。俺は! 」


自分の情けなさを振り払う勢いでそう返す俺に、リリアちゃんの目は点に。

しかし、直ぐに正気を取り戻す。


「 ……いえ、その……。

でも多分、そうじゃなくて……きっと嫌な男に騙されてとかかも……? 」


「 あぁ、その可能性もあったか!

────よし!そうしたらそいつぶっ飛ばそう!

サイモンは強いから絶対負けないよ。大丈夫大丈夫。 」


サイモンの攻撃は非常にトリッキーかつ強力で、並の人間なら一撃で病院送り。

そんな適当で悪い男なら、入院コースのタコ殴りくらいでちょうどいい。


サイモンが負けたら、今度は俺が相手だ!

しおりを挟む
感想 274

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか? いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ? 2025年10月に全面改稿を行ないました。 2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。 2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。 2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。 2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。 第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

いらない子の悪役令息はラスボスになる前に消えます

日色
BL
「ぼく、あくやくれいそくだ」弟の誕生と同時に前世を思い出した七海は、悪役令息キルナ=フェルライトに転生していた。闇と水という典型的な悪役属性な上、肝心の魔力はほぼゼロに近い。雑魚キャラで死亡フラグ立ちまくりの中、なぜか第一王子に溺愛され!?

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

処理中です...