【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第十九章

663 兄について

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( リーフ )

前世で当然の様にあった車や飛行機、びっくりするほど便利な日常品やユニークで面白いアイテム……。

それがマリオンの手で作ると、今度はどんな仰天魔導具になるのか、考えただけでワクワクする。


面白い魔導具ができたら、レオンと一緒に遊ぼ~っと! 


そう思いながら、すっかり警戒・人見知りモードに突入して睨んでくるレオンの顎を、上機嫌でサスサスと擦ってあげた。

すると、気持ちよさそうに目を閉じてしまったレオンの横で、マリオンは腑に落ちない表情を見せたが、やがてコクリッと頷く。


「分かりました。

では、他にもその夢の魔導具について聞かせて頂けませんか?

全てこのマリオンが作って、リーフ様へ献上致しましょう。」


そう言ってくれたので、俺があれやこれやと思いつく限りの商品について話すと、いつもと変わらず、マリオンはキラキラ目を輝かせながら────……。最後は、僅かに表情を曇らせた。


「…………?」


その変化を目ざとく見つけ、俺はう~ん……?と大きく首を傾げる。

これは以前からそうだったのだが……マリオンは、何故か魔導具に関連した話しをした後、必ず最後は表情を僅かに曇らせるのだ。


一体何でなんだろうねぇ?


何度か気になって、理由を聞こうと思った事はある。

しかし周りを不安にさせない様、弱みを見せたがらないマリオンのこと……きっと皆の前で聞かれると嫌がると思って聞いた事がなかった。


今、周りにマリオンのお友達はいない。

唯一の『その他』の人間レオンは、100%聞いちゃいないため問題ないし……。

────チラッ……。

顎を擦られて、すっかり大人しくなったレオンを見上げ、問題ない事をしっかり確認した。

こうなったレオンは、絶対聞いていないと駄目な事も全て耳には入らない。

今までの思い出を振り返り断言できるため、俺は以前から気になっていたその事について、尋ねてみる事にした。


「マリオンは、何で魔導具作るのが好きなのに、そんな浮かない顔をするんだい?」


結構ド直球で聞いてみると、マリオンは少し驚いた様に目を僅かに見開く。

そしてその後、少し間を置いてから、おずおずと口を開いた。


「顔に……出ていましたか……。

…………その……大した事ではなくて……。

魔導具を作るのは大好きなのですが、俺……じゃなくて、私が興味を持つ物を何でも作っては、両親が悲しむと思ったのです。

それが顔に出てしまっていたのかもしれません。」


「?何故ご両親が悲しむんだい?」


俺が不思議に思いそう尋ねると、マリオンは一度口を閉じた後、意を決したような表情に変わって俺を見た。


「リーフ様は、俺に兄がいる事を知っておりますか?

元は我がスタンティン家の長男であり、正当な次期当主であった実の兄の<レイブン>を。

兄は成人後、俺が7歳になったばかりの頃に、両親から廃爵を言い渡され家から出ていったんです。」


「へぇ~。なら今お兄さんは、平民さんとして別々に暮らしているんだね。」


『マリオンには出て行ってしまったお兄さんがいる』


そういえば、そんな話を以前耳にしたことがある。

確か成人後、直ぐに独立し店長さんになって、頑張っているという話だったはずだ。


15歳でお店を立ち上げるなんて、凄すぎるぞ~?


ほっほほ~ぃ!と、そのおったまげな才能に純粋に驚いていると、マリオンは小さく頷きそのまま話続けた。


「我がスタンティン家は『貴族にのみ魔導具を売る』というブランド力により繁栄してきた家なのですが……。

兄は逆に『平民のみを相手にした魔導具を作りたい』と主張し、両親に酷い言葉の数々をぶつけて口論の末出ていきました。

だから、俺は兄の様に両親を傷つけたくないんです。」


そう言って、黙ったまま視線を下に向けてしまったマリオン。

大体の事情を察した俺は、これは難しいなと腕を組んで考え込んだ。


マリオンパパさんは『貴族のみを相手にした魔導具作り』をしたい。

対してお兄さんは『平民さんのみを相手にした魔導具作り』をしたい。

そんな正反対の意見がぶつかって、どうやら大喧嘩してしまった様だ。


『じゃあ、両方しようよ!』と言いたくなるが……多分、魔導具に関してはお互い譲れないモノがあって、そう上手くいかなかったのだろうと思われる。


好きであればあるほど、努力をすればするほど、それに対してのこだわりは大きくなって譲れない気持ちも大きくなってしまうのは誰でもある事。


むっちりおっぱい派の俺と、チミっ子おっぱい派の友達とで、どちらも主張は曲げずに、結局ポカスカと喧嘩をしてしまった思い出が、今はただ懐かしい……。

若かりし頃の酸っぱい前世の思い出を振り返り、思わず苦笑いしてしまった。


どっちもおっぱいが大好き。

その想いは、俺も友達も同じだった。


つまりマリオンパパさんとお兄さんも、魔道具作りが大好き。

その想いはどちらも変わらない。


ムッチリしたおっぱいを妄想し、モニモニと手を動かしながら、ため息をつく。


つまり、同じ想いが先にあったとしても、進む道まで全て一緒にするのは難しいって事だ。

特にこのマリオンのお家事情は、多分俺のおっぱいへのこだわりより遥かに難しい。


動かしていた手を止め、真面目にスタンティン家の事情について考えてみた。


スタンティン家の代々受け継いできた商売理念、『貴族のみに売る事』。

そうすることで確固たるブランド力を作り、確かな品質、信頼、高級感を作り上げる事は、売買戦略としてはスーパーグット。

それに加えて、実はそれこそがこの世界での無駄な争いを事前に止めるために、ものすご~く役に立つモノだったりする。

俺の脳裏には以前、ソフィアちゃんが言っていた言葉がおもいうかんだ。


『話し合いなどを対等かつ優位に進めるためには、相手を威圧する様な見て分かる高級ドレスなどのアイテムが必要となる事が多い。』


その言葉から分かるように、相手に見て分かる様な分かりやすいアイテムを提示する事から、既に交渉は始まっている。

要は、そのアイテム達は交渉を有利にする大事なアイテムだという事。


『こっちの国は、資金も資源も潤っている!

こちらを馬鹿にして戦いにでもなったら、そちらは大損害だぞ!』


そういった意味を視覚的に匂わせる事で、足元を見るかの様な不利益な要求や争いを、事前に回避することができるのだ。
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