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第二十章
696 ヨセフ登場!
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(アゼリア)
『一番警戒すべきグレスター卿の娘』
対立派閥の娘、それだけで非常に危険視すべき相手なのは言うまでもなく、もちろん中学院に入る前から常に警戒を怠らず接していた方であった。
だが、突然ソフィア様は変わった。
まるで何かを確かめる様に、目で追いチャンスがあれば会話する────などなど、今まででは考えられない様な行動が目につき始めたので、不思議だとは思っていたのだ。
上を向いていたソフィア様はゆっくりと顔を下げ、そのままパッと私の方へ視線を向ける。
その目は『楽しくて仕方がない!』と言わんばかりに輝いていた。
「実はリーフ様に言われた言葉がきっかけなのよ。以前、リーフ様がこう仰ったの。『ご両親の考えとその子供の考えは必ずしも一緒ではない』と。
それを聞いて私、気づいたのよ。
ずっと色々な方たちの事を、ご両親の人格から勝手にイメージして身構えていたなって。
だからジェニファー様の事も、自分の目でみて判断したいと、そう思ったの。」
『不義の子だから、不出来に決まっている。』
『汚らしい女の子供なのだから、卑しいに決まっている。』
ソフィア様の言葉を聞いた瞬間、そんな言葉が頭の中を風の様に通っていった。
・・・・・・・・・
『こうだからこうのはずだ。』
それはまさしく、私が言われ続けてきた否定の言葉であった。
ジェニファー様に対して持っていた不快な気持ちは一瞬で消え去り、それと同時に襲いくる恥ずかしさと気まずさに、思わず頭を抱え込み穴に入りたい気分になる。
「ううううぅぅぅぅ~…………。」
自分があれだけ嫌な気分を抱いていた事を、私も無意識にしているではないか!
恥ずかしくて恥ずかしくて、思わず心の中で唸り声を上げた。
グレスター卿の子供だからこうであろうと、その行動全てを勝手に妄想しては、悪いイメージを作り出す。
そしてそのイメージは周りで囁かれる声により増長し、自分の考える勝手な人物像は完全に出来上がると────……いつしかそれが『本物』になる。
自己嫌悪に陥り視線を下に向けると、ソフィア様は困った様に眉を下げた。
「自分の事で精一杯だと、視野ってどんどん狭くなってしまうのね。
そして都合のいい言葉しか聞こえなくなって、自分で見ることも考える事もせず他者を評価するようになる。
これって本当に凄く怖い事だわ。
これでは周りに踊らされるだけのお飾り王女ね。マービン様と変わらない……。
だから、これからは自分の目で見て、考えて……全てを使ってその人自身を見極めていきたいと思っているわ。」
僅かに赤くなっているであろう顔を上げてソフィア様の方を見ると、非常に晴れ晴れとしている顔があった。
ソフィア様はきっと『人』に対して希望を見いだせたのだと思う。
周りは『敵』だらけ。
そのため常に人の裏を読み、あの人は『敵』、そしてその子供も同じく『敵』、更にはそれと親しい人たちも『敵』に違いない。
それは無限に続いていき、ソフィア様の目には全ての者達が『敵』に見えていた事だろう。
しかし、その全員が本当にそうではなく、中にはソフィア様の味方だって存在するかもしれない。
疑心暗鬼する心を取り払ってしまえば、その人がどういう人物でどう考えているのか、それは一から自分で確かめていくしかないのだ。
そこには未知への不安や恐怖が存在しているが、同時に希望もある。
その希望がソフィア様の心を照らしてくれたのだと、少なくとも私はそう思った。
「何だか本当に自分がバカみたいだ……。」
ボソッと呟き、ソフィア様と二人で目を合わせて笑いあっていると、突然転移陣の発動を感じ、誰かが【祈りの聖堂】へと転移してきたのを感じた。
その人物は酷く慌てた様子であり、バタバタと大きな音を立てながら私達の方へと走って近づいてくる。
「ソフィア様!!ご無事でしたか!!アゼリアも良くぞ無事で……。本当に先程の現象は一体なんだったのでしょうか?」
歳は50には行かぬ程。
背はそれなりに高いが、戦闘職とは言い難いほっそりとした体型に、聖職者が好んで着る薄い灰色の腰上ほどのマントに足元まで隠れる白い聖衣。
上の位に行くほど、金や銀細工の装飾品を身につけたりするものだが、この人物は随分と簡素で、パッと見ると見習いに見えてもおかしくないほどシンプルな格好であった。
人を安心させるような穏やかなオーラを周囲に放ち、目元には小さく細いメガネ、宝石のアクアマリンを連想させる様な色の髪を切りそろえ、聖職者らしい爽やかさを持った男性。
更に世でいう美しい顔貌を兼ね備え、まさに完璧な聖職者のイメージを持つと思いきや、それが台無しになるような不思議なイメージを持つこの人物こそ────……。
「……<ヨセフ>司教、落ち着いて下さい。ソフィア様はご無事です。」
『司教として、もう少し余裕を持った行動をして欲しい。』
そう遠回しに告げたが、そんな意図など全く気づきもしないヨセフ司教は、マイペースにふぅ~……と息を大きく吐いて額を拭う。
イシュル教会【司教】<ヨセフ>
彼はこう見えて、イシュル教会のNO・3。
大司教グレスターに次ぐ階級を持つ、【司教】という立場にある人物である。
『一番警戒すべきグレスター卿の娘』
対立派閥の娘、それだけで非常に危険視すべき相手なのは言うまでもなく、もちろん中学院に入る前から常に警戒を怠らず接していた方であった。
だが、突然ソフィア様は変わった。
まるで何かを確かめる様に、目で追いチャンスがあれば会話する────などなど、今まででは考えられない様な行動が目につき始めたので、不思議だとは思っていたのだ。
上を向いていたソフィア様はゆっくりと顔を下げ、そのままパッと私の方へ視線を向ける。
その目は『楽しくて仕方がない!』と言わんばかりに輝いていた。
「実はリーフ様に言われた言葉がきっかけなのよ。以前、リーフ様がこう仰ったの。『ご両親の考えとその子供の考えは必ずしも一緒ではない』と。
それを聞いて私、気づいたのよ。
ずっと色々な方たちの事を、ご両親の人格から勝手にイメージして身構えていたなって。
だからジェニファー様の事も、自分の目でみて判断したいと、そう思ったの。」
『不義の子だから、不出来に決まっている。』
『汚らしい女の子供なのだから、卑しいに決まっている。』
ソフィア様の言葉を聞いた瞬間、そんな言葉が頭の中を風の様に通っていった。
・・・・・・・・・
『こうだからこうのはずだ。』
それはまさしく、私が言われ続けてきた否定の言葉であった。
ジェニファー様に対して持っていた不快な気持ちは一瞬で消え去り、それと同時に襲いくる恥ずかしさと気まずさに、思わず頭を抱え込み穴に入りたい気分になる。
「ううううぅぅぅぅ~…………。」
自分があれだけ嫌な気分を抱いていた事を、私も無意識にしているではないか!
恥ずかしくて恥ずかしくて、思わず心の中で唸り声を上げた。
グレスター卿の子供だからこうであろうと、その行動全てを勝手に妄想しては、悪いイメージを作り出す。
そしてそのイメージは周りで囁かれる声により増長し、自分の考える勝手な人物像は完全に出来上がると────……いつしかそれが『本物』になる。
自己嫌悪に陥り視線を下に向けると、ソフィア様は困った様に眉を下げた。
「自分の事で精一杯だと、視野ってどんどん狭くなってしまうのね。
そして都合のいい言葉しか聞こえなくなって、自分で見ることも考える事もせず他者を評価するようになる。
これって本当に凄く怖い事だわ。
これでは周りに踊らされるだけのお飾り王女ね。マービン様と変わらない……。
だから、これからは自分の目で見て、考えて……全てを使ってその人自身を見極めていきたいと思っているわ。」
僅かに赤くなっているであろう顔を上げてソフィア様の方を見ると、非常に晴れ晴れとしている顔があった。
ソフィア様はきっと『人』に対して希望を見いだせたのだと思う。
周りは『敵』だらけ。
そのため常に人の裏を読み、あの人は『敵』、そしてその子供も同じく『敵』、更にはそれと親しい人たちも『敵』に違いない。
それは無限に続いていき、ソフィア様の目には全ての者達が『敵』に見えていた事だろう。
しかし、その全員が本当にそうではなく、中にはソフィア様の味方だって存在するかもしれない。
疑心暗鬼する心を取り払ってしまえば、その人がどういう人物でどう考えているのか、それは一から自分で確かめていくしかないのだ。
そこには未知への不安や恐怖が存在しているが、同時に希望もある。
その希望がソフィア様の心を照らしてくれたのだと、少なくとも私はそう思った。
「何だか本当に自分がバカみたいだ……。」
ボソッと呟き、ソフィア様と二人で目を合わせて笑いあっていると、突然転移陣の発動を感じ、誰かが【祈りの聖堂】へと転移してきたのを感じた。
その人物は酷く慌てた様子であり、バタバタと大きな音を立てながら私達の方へと走って近づいてくる。
「ソフィア様!!ご無事でしたか!!アゼリアも良くぞ無事で……。本当に先程の現象は一体なんだったのでしょうか?」
歳は50には行かぬ程。
背はそれなりに高いが、戦闘職とは言い難いほっそりとした体型に、聖職者が好んで着る薄い灰色の腰上ほどのマントに足元まで隠れる白い聖衣。
上の位に行くほど、金や銀細工の装飾品を身につけたりするものだが、この人物は随分と簡素で、パッと見ると見習いに見えてもおかしくないほどシンプルな格好であった。
人を安心させるような穏やかなオーラを周囲に放ち、目元には小さく細いメガネ、宝石のアクアマリンを連想させる様な色の髪を切りそろえ、聖職者らしい爽やかさを持った男性。
更に世でいう美しい顔貌を兼ね備え、まさに完璧な聖職者のイメージを持つと思いきや、それが台無しになるような不思議なイメージを持つこの人物こそ────……。
「……<ヨセフ>司教、落ち着いて下さい。ソフィア様はご無事です。」
『司教として、もう少し余裕を持った行動をして欲しい。』
そう遠回しに告げたが、そんな意図など全く気づきもしないヨセフ司教は、マイペースにふぅ~……と息を大きく吐いて額を拭う。
イシュル教会【司教】<ヨセフ>
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