【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

文字の大きさ
747 / 1,649
第二十一章

731 あるべき世界へ……

しおりを挟む
(リーフ)

視線の先にいる<リーフ>は、信じられない事にその惨状を見て大笑い!
それとは反対に近くにいたモルトとニールは、その場でヘタリ込み盛大に吐いてしまい嗚咽音が響き、マリオンは吐いてはいないものの口元を押さえガタガタと震えていた。

しかしそんな姿は全く目に入っていない様子で<リーフ>は笑いながら、るんるん♬と鼻歌を歌い、その場でダンスのターンをするかの様に回る。

そして壊れたおもちゃの様にアハハハハ~!!!と笑った後、必死に倒れない様にしているマリオンの髪の毛を正面からガッ!!と掴み、視線を無理やり自分に合わせた。


「楽しい!    楽しい!    楽しい!!!


────あぁ!!     楽しいなぁ!!


こんなに楽しいのは久しぶりだ!アハハハハ!
なぁ、マリオン、お前も楽しいんだろう?
だってお前がやったんだもんな?
この最高のショーをこのリーフのために、用意してくれたんだもんな?
なぁ?そうだろう?」


リーフは嬉しそうに笑いながらマリオンに顔を近づけ頬に軽くキスをしたが、マリオンは震えたまま動かない。

するとリーフは顔をゆっくり離し笑顔を浮かべたまま、マリオンの髪を掴んでいない方の手で────その顔を殴りつけた!


────ピッ!

そのせいでマリオンの鼻と口から血が吹き出しリーフの顔を汚すが、リーフは笑顔を浮かべたままマリオンから目線を外さない。


「笑えよ。」


マリオンは痛みに顔を歪めながら、急に言われた事が分からず眉をピクリと動かしたが、リーフは更にもう一発マリオンの顔を殴りつけた。


「笑え。」


もう一度ゆっくり伝えられる言葉に、マリオンは血まみれの顔でヒクヒクと口の端を上げて笑顔を無理やり作る。

するとリーフはニコッと天使の様な笑顔を浮かべ、マリオンの髪の毛から手を外した。


「あ~良かった!マリオンも楽しそうで俺は嬉しいよ。
俺はとても友達思いだからさ、仲良しの友達が楽しんでくれてないと思うと悲しかったんだ。
俺はマリオンの笑顔が好きだな。
だからずっと、ず~っと楽しく俺の側で俺が楽しめる魔導具を作って一緒に楽しく過ごそう。────分かったな?」


リーフは労る様にマリオンの肩をポンポンと叩くと、また鼻歌を歌いながらくるくると回りながら踊り続けた。

その惨劇の中、いつまでもいつまでも────……………。


────ガガッ……。



ガガガガッ────……。


ザー……。    ザザ──……。


ザザ────……。


そして景色は砂嵐の様に乱れ始め、今度は波の音が遠くの方で聞こえ始める。

そしてザブ~ンっ!!ザブ~ンッ!!と絶えず聞こえる波が激しく打ち付ける音と共に見えてきたのは、大きな海と崖。

そして海側にひときわ大きく突き出た場所の端には巨大なイシュル像とその周りには沢山の剣や槍など沢山の武器が刺さっている見たこともない場所であった。


「ここは一体……?」


キョロキョロと辺りを見回したが、やはり見たこともない場所で首を傾げる。


もしかしてアルバード王国じゃないのかも……?


もう一度イシュル像へ視線を戻し、そう思った瞬間────そのイシュル像の前にチマっとした小さい女の子?が跪き、熱心に祈りを捧げている姿を発見した。


その子は長い茶色い髪をポニーテールにしていて、格好はやや汚れた平民がよく着る緑のワンピースにエプロンの様なものを着けている。

その体の大きさから小さい女の子かと思ったが、漂う陰鬱な雰囲気と仕草から多分見た目通りの年齢ではない?と違和感を感じた。


もしかして人族じゃない……?


そんな事をボンヤリと考えていると、その女の子?はゆっくりと顔を上げ力なく立ち上がった。

その顔は酷くやつれており、顔色は悪く目は窪み隈もある。

そんな今にも倒れそうなその女の子は、イシュル像を見上げてボソボソと小さく呟いた。


「ヒナギクは平和と希望の象徴……。私の希望は貴方だった……。
アゼリア、私の愛する娘……。」


そう言い終わった後、女の子の目からはポロッと涙が一粒溢れ、それからは大雨が降る勢いで次から次へと涙が溢れていった。


「……いつも貴方の幸せを祈っていた。
朝日が昇ると同時に、ここで毎日お祈りを捧げていたのに……。
でも……貴方はもういないのね。私の希望は消えてしまった……。」


その女の子はおぼつかない足取りで一歩、また一歩と崖の方へと歩いていく。


「お金があれば幸せになれると思った。
爵位があれば、私の様に酷い扱いをされないだろうと思った。
だから……私は……っ。」


そしてその女の子は崖の端に立ち、下に広がる海と打ちつけては引いていく波をぼんやりと見下ろした後、スッ……と空を見上げた。


「希望を失ったこの世界に私は存在していない。だから、私は存在できるあるべき所に帰ります。
希望がある世界……アゼリアのいる場所へ。」


そしてその女性は幸せそうな笑顔を浮かべたまま、崖の上から身を投げ────視界から消えてしまった。

しおりを挟む
感想 274

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか? いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ? 2025年10月に全面改稿を行ないました。 2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。 2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。 2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。 2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。 第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜

たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

処理中です...