【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

文字の大きさ
772 / 1,649
第二十二章

756 流されている……

しおりを挟む
(クラーク)

「さっちゃんもお姫様抱っこデビュー、リーフ様でしちゃった♡
───あ、そうそう、実はこの先の扉が開かなくて皆で足止めされちゃってるんですよ~。
物理も魔法も駄目だしスキルにも反応なし!
唯一の手がかりがその扉の前の台座なんですけど……なんだか難解なパズルみたいな文字になっていて解析が邪魔される仕様になっているみたいなんですよねぇ~。
今リリア達が、必死に解析している所なんです。」

「へぇ~そうなのかい。
謎解き要素まで用意するなんて、流石はフラン先生だね。」

ぎゅ~と密着しながらの説明に汗を掻いて見守っていると、突然「おいっ!」という不機嫌全開な声と共にリーフ様達の所へ向かってくる人物が……。

「いつまでそうしているつもりだ、この破廉恥エルフめ!
とっとと離れないならば、不敬罪で極刑にしてやるぞ。」

チィィィッ!!と大きな舌打ちと共に、会話に割り込んで来たのはアゼリアだ。
ちなみに後ろには、汗を掻きながらアゼリアを見つめるソフィア様もいる。
サイモンは顔を歪めて自分を睨んでくるアゼリアに対し、余裕そうな様子で顔をコテンッと傾けた。

「あれ~?アゼリアちゃん扉押してたんじゃないの~?───あ、駄目だったんだ~。
う~ん……。ゴリラの力をもってるぅ~アゼリアちゃんでも開かないなら、もう絶対物理じゃ開かないよねぇ?どうしよぉ~。」

「……貴様、ちょっとばかし可愛いからといって調子に乗るなよ?
それにリーフ様は残念ながら動物ではゴリラが一番好きだそうだ!
残念だったな!」

ハンっ!と鼻で笑いながら胸を張るアゼリアを見て、サイモンは『えええ~?』と、さも信じられない!と言いたげな不満気な様子で、クルッとリーフ様の方へ視線を戻す。

「リーフ様趣味悪いですぅ~!
凶暴で乱暴なゴリラよりぃ~可愛くて癒やしてくれる猫ちゃんの方が良くないですか?」

「……猫の刺し身にしてやる。」

アゼリアが殺気混じりの目を向けサイモンに近づこうとすると、直ぐに駆けつけた獣人のレイドが羽交い締め、そして足には同じく獣人のメルがひっつきその動きを止めた。

「お前ほんっとに短気だな!?───っつーか猫の刺し身って……。
……あ、ちょっとジワっとくる。」

「……まずそう。」

プ───ッ!!と吹き出すレイドと、嫌そうな顔でイヤイヤと首を振るメル。
その間にサイモンは、マイペースにリーフ様の腕から降りて、キャーと言いながらその後ろに隠れる。

相変わらずなんて煩さだ……。

苦々しい顔でそのギャーギャー騒ぐ様子を見ていると、今度はスッ……と気配なく横から現れ、リーフ様の両隣に並んだのはリーフ様の側近候補のモルトとニールだ。

「リーフ様……流石は俺達がついていくお方。このモルトは非常に感動しております。
しかし───……なぜだろう?
尊敬とは違う別の黒い感情が俺の心の中に渦巻いております……っ!」

「~~っ!!こ、心が闇に覆われていくっすっ!!
嫉妬という深い闇に飲まれて新たな人格が生まれるぅぅ~!!」

末端とはいえ貴族だしまともな方だと思っていたが……胸を抑えて呻く姿を見れば、そんな考えは吹き飛んだ。
頭が痛くなってこめかみを揉み込んでいると、リーフ様の後ろに隠れているサイモンがチラッと化け物レオンの方へ視線を向ける。

「そういえば最近本当にレオン、大人しくなったよねぇ~?
前なんてぇリーフ様に近づくと、直ぐ殺気が飛び出てたのにぃ~。」

それを知って、何で近づくのか……?

理解に苦しんでいると、リーフ様はサイモンの質問にあっさり答えた。

「あ、それはね~。レオンは何と!等価交換というものを覚えたからだよ!」

「「「「等価交換???」」」」

騒いでいるアゼリアや獣人共、そしてエルフの男に側近の二人はおろか、聞き耳を立てていた同級生達までその言葉を口に出し一斉に頭を横に傾けた。
一旦全員の動きが止まったのを周囲を見て確認した化け物レオンは、突然スススッ~~……とリーフ様に近づいてきたので、後ろに隠れていたサイモンは「キャッ!」と短い悲鳴を上げてアゼリア達の元へ避難する。
それに対しいつも通り無反応なレオンは、リーフ様の目の前に立ち、そのままボソボソと喋り始めた。

「今日は膝枕でチビりんご食べさせて欲しいです。」

「うん!いいよー!」

「頭撫で撫でと耳かき……最後はフッって息を掛けて欲しいです。」

「うん!いいよー!」

「あとマッサージオイルを作ってみたので全身に塗っても良いですか?
顔のパックも作ってみましたのでそっちも……。」

「うん!いいよー!」

「あとは俺の選んだ服を着てガラガラを振りながら子守唄……フリルもまたフリフリ振って欲しいです。」

「うん!いいよー!」

次々と化け物レオンの口から飛び出す気持ち悪い内容の要求達に、レオンの奇行に慣れているはずのリーフ様の取り巻きたちや他の生徒たちも、全員ゾゾ~っと背筋を凍らせた。

何であんな事を言われて平気なんだ?
俺だったら全力で逃げ出すぞ……? 

俺も鳥肌が立ってしまった腕を擦りながら、リーフ様の方へフッと視線を向けると……リーフ様はどこかぼんやりとしていて、よく見れば目も虚ろ気であった。

「…………?」

よくよく観察すれば、どうやら深く考える事なくまるで流れ作業の様にただコクコクと頷いているだけの様だ。

───流されている……。

『俺なんて疲れた時は、ひたすら流されているよ。
ただでさえ頭トリさんのキャパシティーはお猪口だから!』

先程言っていたリーフ様の言葉を思い出し、コレと俺は同じ……と、非常に複雑な想いを抱いてしまった。

しおりを挟む
感想 274

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか? いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ? 2025年10月に全面改稿を行ないました。 2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。 2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。 2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。 2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。 第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

いらない子の悪役令息はラスボスになる前に消えます

日色
BL
「ぼく、あくやくれいそくだ」弟の誕生と同時に前世を思い出した七海は、悪役令息キルナ=フェルライトに転生していた。闇と水という典型的な悪役属性な上、肝心の魔力はほぼゼロに近い。雑魚キャラで死亡フラグ立ちまくりの中、なぜか第一王子に溺愛され!?

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

処理中です...