【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第二十三章

797 自分のやりたい事

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(リーフ)

その直後、怒っているレオンに洗浄魔法を掛けられながら、俺はヒョイッと下を見下ろす。
すると最前線には、大盾を持った守備隊員達が門を中心にズラッと横に並び、その後ろには各々の得意武器を装備した隊員達がいつモンスターが襲ってきても良いようにと、ズラズラ~と並んで待機している姿が見えた。

その光景はまさに圧巻の光景!
か、か、カッコいい~!!

少年だった頃の心を思い出し、ドキドキンッ!と胸を踊らせると、そんな守備隊が並ぶ中央あたり、門の真ん前に見知った2つの背中を見つけ、俺はそこに向かって飛び降りた。

────ドシ────ン!!

その2人の人物の前に勢いよく着地すると、俺をまん丸お目々で見つめてくるのは、守備隊隊長の<ケン>さん。
そしてもう一人、同じく目をまん丸にして俺を見つめてくるのは、なんと【リンゴの隠れ屋】のパン屋店長、かつリーンちゃんのお父さんの<マルク>さんであった。

「ケンさん、マルクさん、こんにちは!
ケンさんがここにいるのは予想していたけど、マルクさんは何でここにいるんだい?」

パン屋さんの店長が守備隊に……というミスマッチ感が凄い状況に対して質問してみると、マルクさんはいつも通りの穏やかな笑みを浮かべてそれに答える。

「リーフ君こんにちは。それはね、実は私はパン屋を開く前は守備隊に勤めていたからだよ。だから今回は特別ゲストってやつかな?」

「えっ!!」

なんとあの穏やかで優しい100%のマルクさん、以前は荒ぶるモンスター達や非常に凶暴な荒くれ者達を相手にする守備隊であったという!

びっくりおったまげ~しながらも、これであの本来の未来でケンさんと共に戦っていた理由が分かった。

人は見かけによらないね~。

しみじみ~とそんな事を思いながら頷く俺と、穏やかに微笑むマルクさんを交互に見てから、ケンさんはタバコに火をつけ、ふぃぃ~……と煙を下に吐き出した。

「ほほ~ぅ?屠ったモンスターは数知れず。悪人相手に我先にと飛び出しぶっ殺す《特攻の死神》がゲスト……ねぇ?
いや~、そんなヤンチャ100%のお前が結婚してガキが生まれて?んっでもってパン屋を始めた時は、幻影魔法の類か何かかと思ったぜ~。今でも信じられねぇわ。」

ぷぷぷ~っ!
吹き出した後に笑い続けるケンさんに、マルクさんは笑顔のまま顔を向け、チィィッ!!と舌打ちする。

えっ?マルクさん、今舌打ちした???

あまりにも似合わないその行為にポカンとしていると、それを真正面から受けたケンさんは、ピタリと笑うのを止めてスィ~と不自然に視線を逸した。
すると、マルクさんは再び仏の様な穏やかな笑顔のまま再度俺の方へ顔を向ける。

「私はね、戦う事以外知らなかった……いや、知ろうとしなかったんだ。
生まれた時から孤児院育ちだったし、資質も戦闘に特化したものだったからね。
才能に流され、自分の価値はそこにしかないんだと思っていた。
でもカルナに……妻に出会ってからそれが変わったんだよ。」

突然話しだしたマルクさんは、そう言って酷く幸せそうに微笑んだ。

マルクさんの奥さんは、リーンちゃんが小さい頃に亡くなっているそうなので、きっと奥さんとの思い出を思い出しているのだろうと思われる。

「彼女は戦闘系にあまり適さない資質でも、必死に努力して傭兵になった凄い人だった。
『何でそんなに頑張るのか?』って聞いたら『人を助けたいと思ったから』って言ってたよ。
私はその時、凄く恥ずかしくなったんだ。
ただ才能があるからと、目的もなく戦う自分を……何も考えずに戦う自分をね。
目的をもってそこに向かって努力する、考える……それができる彼女がカッコいいと思った。
信念を曲げずに進んでいく彼女は、私の憧れだったんだよ。」

幸せそうに微笑むマルクさん。
しかし────不意に眉を下げ、困った様な表情を見せた。

「恥ずかしながら、そんな彼女に心底惚れてしまって、何度も告白してやっと結婚して貰えたんだけど……彼女は口癖の様にこう言っていたんだ。
『私は戦い続けたい。それが夢だから。』
『目の前に助けを求める人がいたらきっと何も考えず飛び出しちゃう。だからごめんね。』────って。
そして、その言葉通り彼女はリーンを生んだ後、子供を助けてあっさりと死んでしまったよ。
凄く悲しかったけど、彼女らしい最後だったって今は思っている。
だから私はそんな彼女を見習って、自分のしたい事を見つけてみたいと思ったんだ。
パンつくりはその一環でやってみたんだけどね、彼女が『おいしい!』って大絶賛してくるもんだから、それがすっかり私のやりたい事になってしまったよ。」

今度は照れながらカラッ!と笑うマルクさんと、そんなマルクさんを茶化すように、ケンさんはニヤニヤ笑う。
そんなケンさんを軽く小突いたマルクさんは、続けて直ぐに真剣な表情になり、自身の手を見下ろした。
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